ラブライブ! コネクション!!
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Bonus Track 1 普通じゃない μ's が 『ろこどる』 やってみた。
活動日誌5.5 Re : すたーと・だっしゅ! 1
前書き
番外編です!
前話の追加報告。
その部分を詳しく書いてみました。
「……ねぇ、絵里ちゃん達は次のライブ、いつ頃なら平気そう?」
穂乃果と絵里の妹達。雪穂と亜里沙のアイドル研究部への歓迎会の時だった。
彼女達の為に、自分達の為に、新しい明日へ進んでいく為に。そんな意味を込めて歌った彼女達の曲。
歌い終えて、雪穂と亜里沙が感動した表情で拍手を送る中、対面に座る彼女達に笑顔を返した穂乃果は、絵里と希とにこに向かい言葉を投げかけたのだった。
「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん! 何それ? 意味わかんない! ……だって、ラストって言ってたじゃん!」
絵里達の方を向いて笑顔で問いかけていた穂乃果の耳に、雪穂の怒号が聞こえてきた。
雪穂が怒るのも無理はない。
穂乃果は歌う前に雪穂と亜里沙、そして自分達に対して高らかに――
「スクールアイドル μ's としてのラストの曲になります!」
そう宣言していたのだから。
そう、絵里と希とにこは卒業生。もうスクールアイドル μ's としての活動は出来ない。
だけど、穂乃果達にとって μ's は9人だけのもの。だから新しく6人で進んでいく為にラストと宣言したはずなのだ。
ところが他でもない卒業生の3人に対して、次のライブの予定を聞いていた穂乃果。ラストの意味が理解できない雪穂は穂乃果に食ってかかっていたのだった。
そんな雪穂の怒号を聞いた穂乃果は「何を言っているの?」と言いたげな表情を浮かべながら――
「えっ? 最後なのはスクールアイドル μ's だよ? これからやるのは、ローカルアイドル μ's だから!」
平然な顔をして、そんなことを言い放つのであった。
それを聞いた雪穂は愕然とした表情を浮かべたのだが、それもそのはず――
何故なら、彼女達は第3回ラブライブ! ドーム大会の実現に向けて開催された、スクールアイドル達の合同ライブ前日。
その場に集まってくれたスクールアイドル達を前に μ's を終わりにすると宣言していたのだった。
確かにスクールアイドル μ's は終わりなのかも知れない。だからと言って、ローカルアイドルをやると言うのは正直おかしな話だと雪穂は感じていた。
それは穂乃果達全員が――
「限られた時間の中で精一杯輝こうとするスクールアイドルが好き!」
そんな気持ちでいたのだから。
♪♪♪
もちろんその言葉に嘘はないのだろう。
だから、聞いていた全ての人達が彼女達の真摯な表情と言葉に、活動の終わりを納得したのだと思う。
それが舌の根も乾かないうちにローカルアイドルをやると言い出せば、誰でも疑問に思うだろう。いや、それ以前にメンバーですらも最初にローカルアイドルの話を聞いた時には耳を疑ったと言う。
しかし誰もが忘れていたのかも知れない。
スクールアイドル μ's のリーダーが他でもない高坂 穂乃果であることを。穂乃果が小さな枠や常識にとらわれずに、常に新しく光り輝く場所へ引っ張っていくことを。
だけど誰もが知っていたのかも知れない。
スクールアイドル μ's のリーダーが他でもない高坂 穂乃果であることを。穂乃果が引っ張っていく場所には常に全員にとっての明るいミライが待っていることを。
だからこそ周りにいたスクールアイドル達やファン達は、彼女達のスクールアイドル μ's の終わりを納得したのであり、その先の新しい活動を待ち望んでいたのかも知れない。
それが彼女達自身の重荷になっていたのは事実なのだが、穂乃果以外のメンバーを含めたスクールアイドル μ's を取り巻く全ての人が、そんな壁でさえも飛び越えてくれると。
穂乃果と言う少女に魅せられた全員がそう願っていたのだった。
もちろん雪穂だってその1人ではある。
だが、ポンッと目の前に差し出された事実を素直に受け止めることが出来ないのも正直な想いだった。
穂乃果達の駆け抜けた去年1年間は。学院の為に限られた時間の中で精一杯輝いていた彼女達の姿は。形を変えればそれで何事もなかったかのように進められるものではない。
去年1年間の彼女達は誰よりも輝いていた。それは、限られた時間があったから。
限られた時間の中のゴールに到達する時、自分達が1番の高みにいられるように頑張ってきたから。だから彼女達は光輝いていたのだし、その姿に魅せられたのだとも感じていた。
それが、ローカルアイドルとして活動を延長すると言うことは、去年1年間の限られた時間で輝いていた、彼女達の努力や意気込みを無かったことにする。
終わりを迎えるにあたり、あれだけ悩み苦しんでいた彼女達の葛藤が意味を成さないのでは? そんな風に感じているのだった。
だから、誰よりも近くで彼女達のことを見続けてきた1人として――
例え本人達が納得をしたことでも「はい、そうですか?」と簡単に割り切れるものではないのだった。
ローカルアイドルとして、再び自分達の前に現れてくれる穂乃果達は素直に嬉しい。
だけど、スクールアイドルとして1年間やり切ったことを何もなかったかのようにされてしまうのは、見続けてきた人間として――
自分の1年間も否定されているような気がして非常に悲しいのである。
そんな相反する感情が交錯して制御できなくなり、ただただ漠然とした表情を浮かべることでしか感情を保てないでいる雪穂に対して、穂乃果は優しい微笑みを浮かべて言葉を紡ぐのだった。
「あのね? 私、考えたんだけど――限られた時間って、何なのかな?」
「えっ?」
突然の問いかけに戸惑いの声を上げる雪穂に――
「いや、私達が言った……限られた時間の中で精一杯輝こうとするスクールアイドルが好き! って言葉は嘘じゃないよ?」
そう言葉を繋げる。穂乃果の隣で聞いていた他のメンバーも頷く。
そんな他のメンバーの頷きを見た穂乃果は、再び言葉を繋げたのだった。
「だけどさ? 私達にとって μ's は、この9人なんだよ……確かに廃校を阻止するって言う目的の為に集まったのかも知れないけどさ? それでも、この9人だからココまで来れたんだと思うんだ――でもね?」
「……うん」
「確かに去年の春の話なんだから仕方がないのかも知れない……それは、わかっているんだけど……」
「?」
「私と海未ちゃんとことりちゃん……絵里ちゃんと希ちゃんとにこちゃん……花陽ちゃんと凛ちゃんと真姫ちゃん……それぞれに限られた時間はあるんだと思う」
「うん……」
「学年が違うんだから限られた時間が違うのは理解しているけど……私は μ's には公平な時間があるべきなんだと思うの」
「…………」
穂乃果の言葉に相槌を打っていた雪穂も、その言葉に言葉を失う。
そんな雪穂に微笑みを浮かべて――
「だからね? 私は少なくとも花陽ちゃん達が卒業するまではアイドル活動を続けるのが μ's にとって公平なんだと考えたんだ? だけどスクールアイドルとしては活動ができない……だから、ローカルアイドルをやろうって考えたの!」
最後には満面の笑みを浮かべて、そう言い切るのであった。
つまりは――
確かに学年が別々なのだから、学年毎に限られた時間は存在する。
去年のスタートに対して、絵里達には1年しかなかった。しかし1年生だった花陽達には3年あった。
スクールアイドルは卒業を機に活動の終了を余儀なくされる。だから絵里達の活動は卒業を機に終了したのだった。
これが全員同じ学年ならば、穂乃果も納得がいったのだろう。
しかし音ノ木坂学院のスクールアイドル μ's には、各学年から3人が在籍しているのだ。
つまりは、限られた時間と簡単に言っても差が生じている。もちろんそれは全員が了承していることではある。
だが、去年1年間を共に過ごしてきた彼女にとって、簡単に割り切って良い部分ではなかったのだろう。
同じ目的の為に集まり、新しい目的の為に共に頑張ってきた9人。
共に歩んでいく為に先輩後輩の垣根を越えてまで進んできた9人。
そして、スクールアイドル μ's は9人だけのものだと言い切って解散をするほどの9人。
そんな風に全員を思いやり、支えあい、歩んできた見えない絆で結ばれた9人に、卒業と言う2文字で壁を作るのを穂乃果は許せなかったのだろう。
それでも全員で考えて出した結論。そして穂乃果自身も考えて、考えて、悩んで考えて、納得して出した答え。合同ライブで言った気持ちに嘘はなかった。
だけど、それは自分の気持ちに蓋をしていただけ。もちろん、あの時はそれが最良なのだと思っていたことに嘘はない。
でも同時に、心の中で問いただす声が聞こえる――
「それが、貴方の飛びたかった理由?」
そう、あの――
ラブライブ! ドーム大会の実現に向けてPR活動の一環として訪れた海外と。
帰国して数日が経ち、自分達の今後に悩んでいた際に家の近くで再会を果たした――
初めて会ったのに何故か懐かしい、ずっと前から知っているような。
それどころか自分の知らない自分でさえも知っているような。
そんな歌が上手で、不思議な体験をさせてくれた気のするお姉さんの声が、ずっと彼女の心に問いかけ続けていたのだった。
♪♪♪
スクールアイドル達との合同ライブを終えて数日が経ち、雪穂達の入学式を目前に控えた、ある日の午後。
穂乃果は1人自宅を出て、何処かへ歩いていた。
とは言え、彼女は特に目的があって出かけた訳ではない。そもそも穂乃果の頭には自分達のこれからのことしかなかったのだから、無意識に出歩いた可能性が高かった。
自分が飛びたかった理由は、あの時に決めたこと。それ以外にある訳ない。
そんな風に考えていた穂乃果は、自然といつもの練習で利用している神社の境内に足を運んでいた。考え事をしていたせいか小雨が降り続けていることにも気づかずに。
神社でいつものようにお参りを済ませて、絵馬の飾られている場所へと足を進める。
その時、彼女は――
彼女の目に映った光景と、脳裏に過ぎる懐かしい光景。そして、あの日に他のメンバーに言われた言葉を思い出していたのだった。
目の前に広がる光景――。
それは何度も見てきたファンの人達の書いてくれた絵馬。そこに書かれた『みんなで叶える物語』と言う文字。
この言葉は第2回ラブライブ! に出場するにあたり、穂乃果達で考えた μ's のキャッチコピーだ。
この言葉のみんなとは、自分達を応援してくれるファンも含めて全員で物語を叶えていく。そんな意味が込められている。
確かに夢の物語は叶えられたのかも知れない。
だけど、夢の物語は叶えるだけで良いのだろうか?
そもそも夢の物語は本当にみんなで叶えたと言っても良いのだろうか?
新しく芽生える夢の物語があっても良いのではないか?
自分達を含めた全てのみんなが笑顔でやり切ったと、叶えられたと、誰もが納得をして最高の形になったと思えた時、初めて彼女達の幕は閉じるのではないか?
そんなことを考えていたのだった。
そんな彼女の脳裏に過ぎる懐かしい光景――。
大きな水溜りを飛び越える。小さな穂乃果には到底無理な大きさの水溜り。
それでも諦めなかった。例え何度も転んで水の中に飛び込んでしまって、全身が冷たくビショビショになろうとも。
自分が飛ぶと決めたことを諦めなかったのだった。
結果、彼女はその到底無理だと思えた大きな水溜りを飛び越えてしまったのである。
そして、あの日に言われた言葉――。
ことりが留学をする為に旅立とうとしていた日、講堂で海未に言われた言葉。
更に第2回ラブライブ! への出場に乗り気でなかった穂乃果に対してメンバー全員が言った言葉。
「穂乃果の我がままには慣れっこなんです。その代わり、連れて行ってください……私達の知らない、私達じゃ見ることの出来ない場所へ!」
その言葉が再び彼女の心に深く刻まれる。そして、燻っていた自分の気持ちに新たな想いが膨らみかけた。
彼女はキッと小雨の降り続ける天を仰ぐと――
「雨、やめーーーーーーーーーーーーーー!?」
今の自分の持てる精一杯の声で言い放った。
するとどうだろう。彼女の気迫に恐れを感じた天は瞬く間に彼女に従い、雨を降らすことをやめ、雨雲を散らし太陽の光を彼女へと降り注ぐのだった。
刹那、彼女の見上げた空に虹がかかる。太陽の光に降り注がれた虹は幻想的な雰囲気を醸しだしていた。
そんな虹を見上げながら彼女は――
「……うん! 人間、やっぱり……その気になれば何だって出来るんだ! 虹だってかけられるんだ! 私の我がままだって、その気でお願いすれば……9人でアイドルを続けてくれる! このまま、9人でアイドルをやりたいって言えば叶えてくれるんだ! だから――」
「……そんなことだろうと思いましたよ」
「――えっ!?」
誰に聞かせるでもなく言葉を紡いでいた。
ところが、突然返ってきた言葉に驚いて振り向くと、他のメンバーが全員揃って立っていたのだった。
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