ラブライブ! コネクション!!
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Track 1 両手を広げて
活動日誌5 すすめ→とぅもろう! 3
それに気づいた凛さんは、すぐに追いついてきたのだけど――
「ぅぅぅ。なんで穂乃果ちゃんは出来たのに凛には出来ないのぉ? 凛だってリーダーなんだよぉ? ぅぅぅぅ」
そんなことをブツブツと呟いていた。
それを聞いていた真姫さんは背を向けたまま――
「何、言ってんのよ? あんなこと簡単に出来たら、天気予報なんて要らないでしょ? それに、止むんだったらともかく……降らしてどうすんのよ? ……第一、出来なくたって立派なリーダーだって認めているんだから……」
「真姫ちゃん……」
「抱きつかないでよね? こんなところで抱きつかれたら、階段から落ちて入れ替わっちゃうかも知れないから」
「……お断りします!」
「りぃーんー?」
「もうしないニャ……」
正論と苦情を投げかけ、最後に凛さんをフォローしていた。
そんな真姫さんの言葉に悲しげな表情から嬉しそうな表情へ変化させて両手を広げる凛さんを――見てもいないのに制止する真姫さん。仲良しなのがよくわかる台詞だった。
だけど、真姫さん?
階段から落ちて入れ替わるって――凛さんの雨ふれ! 発言に匹敵すると思いますが?
そんな真姫さんの発言を受けた凛さんは突然――
下ろした左腕を直角に曲げて、水平を保った手の平で右肘を受けて――右手の人差し指と親指で自分の髪の毛先を弄びながら、クールに言い切っていた。
どうやら、真姫さんのモノマネらしい。きっと真姫さんの入れ替わりに反応して、真姫さんになりきって拒絶をしたのだろう。
そんな凛さんに、怒気を含んだ声色で声をかける真姫さん。真姫さんの迫力に負けてションボリしながら白旗をあげる凛さんであった。
そう、今の真姫さんと凛さんの会話は全て階段を下りている時にされたもの。どちらも顔を合わせていない。なのに自然と繋がれる会話に、私は2人の時間の濃さを感じていたのだった。
♪♪♪
再び部室の前に戻ってきた私達。ところが、扉を開けても誰もいなかった。
不思議に思う私と亜里沙を横目に、真姫さんと凛さんは続き部屋の方へと歩いていく。
また続き部屋へ移動したのかな? 軽い気持ちで歩いていって、続き部屋の中へ進んだ私と亜里沙の目の前に――
『雪穂ちゃん 亜里沙ちゃん 入部おめでとう』
と書かれたホワイトボードに貼られた張り紙と――その周りを色鮮やかに飾る折り紙。そして、クラッカーの音と共に空へと舞い上がった紙吹雪が映るのだった。
そして目の前でクラッカーの紐を引っ張った、屋上へ行っていた私達以外の人達――と言うより、お姉ちゃんと絵里さんと希さんしかいなかった。
あれ? にこ先輩と花陽さんと海未さんとことりさんは?
そんなことを考えていると――
「……まったく、卒業生を働かせるんじゃないわよ? あと、時間ないんだから期待すんじゃないわよ?」
「……お待たせー! ご飯も美味しく炊けたよー! つやつやだよ? ほかほかだよ?」
「良いタイミングだったようですね?」
「また、にこちゃんのお料理が食べられるなんて嬉しいぃ」
4人が料理と炊飯器を持って入ってきたのだった。
ふと、教室の中央辺りに視線を移した。そこには――
さっき教室にはなかった床の上にレジャーシートが敷かれて、その上にお菓子や飲み物が並べられている。
他には、折り紙で折られた飾りとかがホワイトボードだけではなく壁にも散りばめられていた。
そう、今日卒業生が集まったのは――
私達を屋上へ連れて行ったのは――
私と亜里沙の歓迎会と言う名のサプライズパーティーを開いてくれる為だったのだ。
このパーティーの全貌は、お姉ちゃんが家に帰ってから暴露してくれた。
と言うか、お姉ちゃんの発案らしい――まぁ、やっぱりとしか思えないけどね?
不思議に思っていた卒業生が現れたタイミング――これは予想通り計画されたものだったらしい。
だけど、卒業生の理事長先生や職員室への挨拶――この段階から違っていたようだ。
実は、挨拶に関しては私達のところに現れる前に済ませていたらしい。
――ちなみに、お菓子やジュースやクラッカーは昨日の放課後に2年生が買い集めて今日の朝に生徒会室へ保管していたもの。食材に関しては卒業生が持ち込んだのだと言う。
卒業生は食材を一旦生徒会室に保管して、理事長先生と職員へ挨拶をする。
そして、お姉ちゃん達と合流してタイミングを見計らって私達の前に現れた。
あと、ホワイトボードに貼った張り紙は――今日の生徒会の仕事だったらしい。
――いや、生徒会がそれで良いんですか? まぁ、昨日の時点で今日の仕事は片付けていたらしいから良いんだけど。
その後、挨拶に行くと言って絵里さんと希さんとお姉ちゃんは出て行った。
その時点で絵里さんと希さんは、生徒会室よりお菓子とジュースなどを回収して生徒会室で待機。
お姉ちゃんが食材を持って家庭科室へと運び――鍵を閉めて、絵里さん達のところに戻り、鍵を渡す。
一応、管理責任もあるだろうし、周りに知られたくないからだって?
その足で部室に戻って、にこ先輩に退出してもらう。
にこ先輩は絵里さんのところで鍵を受け取って家庭科室へ行き、調理を始める。もちろん、学院側には使用許可を取っていたみたい。
その後、調理に時間がかかる為に、残った人達で少し雑談をしたあと――凛さんと真姫さんに私達を屋上へと連れ出すようにお願いする。屋上だけしか回らないのに、あんまり時間は稼げないからね?
私達が出て行ったのを確認して、部屋の飾りつけ班と絵里さん達を呼び戻す回収班に分かれて歓迎会のセッティングをした――そんな実に手の込んだサプライズ演出だったのだ。
ちなみに、壁などに散りばめられていた飾り――これは元から続き部屋にあったらしいんだよね。
どこにあったと思う?
隅にあるホワイトボード――いや、見たよ? 私も亜里沙も!
――でも、普通にお姉ちゃん達のラブライブ! への意気込みが書いてあったから、私達は気にも留めずに眺めていたのに――その裏に飾りが既にビッシリ貼ってあったんだって! そんなのわかる訳ないじゃん!?
あと、衣装ケース――確かに花陽さんは衣装を見せてくれた。手に取って見せてくれたのは確かだよ。
でも、衣装は9着もあるから見せない衣装の裏に隠してあったんだって!
どんな宝探しよ?
まぁ、確かに――花陽さんが衣装を取ろうとした時に、真姫さんが慌てて隣の衣装を取らせていた時があった。あれは、たぶん見せる衣装を間違えていたんだろう。
確かに、こう言うのお姉ちゃん好きそうだしね?
何となく何処に隠そうかを悩んでいるお姉ちゃん達を想像したら可笑しくなっちゃった。なんてね。
そんなサプライズ歓迎会は全員が揃ったところで、花陽さんの乾杯の挨拶により幕を開けた。
みんな楽しそうで、懐かしそうで、笑いの絶えない空間。驚きの感情はまだ癒えていないけど、心地よい空間に身を委ねていたのだった。
とにかく、ビックリだらけの歓迎会だった。
もちろん演出もだけどさ? これだけの演出を一昨日お姉ちゃんは思いついたらしい。
確かに、お姉ちゃんにも絵里さんにも入学する前から今日入部届を提出することは話してある。それが可能なのは知っていたから。
だから、絵里さん経由で希さんとにこ先輩へ連絡が入っていても不思議ではないけど? それでも卒業生の都合はバラバラだと思う。
わざわざ私達の歓迎会に出席しなくても問題ないんだし?
だけど、こうして集まってくれた。
こうして手の込んだサプライズを成功させた――とても一昨日思いついた演出とは思えないくらいに。
そんな、スクールアイドル μ's の結束力と適応性の高さに驚かされていたのだった。
♪♪♪
こうして始まったサプライズ歓迎会は、すごく楽しい時間のまま流れていった。
そう、サプライズ――私と亜里沙にとっては今までだって完全にサプライズすぎる演出だったのに、終盤の今、本当のサプライズが私達を包み込む。
とは言え別に手の込んだ演出ではない。どちらかと言えば、起こりうる想定内の出来事なのかも知れない。
でも――
私と亜里沙には1番のサプライズ演出になった。
「……それじゃあ? …………」
歓談を続けていた私達は、そんな花陽さんの一言で彼女を注目する。
花陽さんは私と亜里沙以外――スクールアイドル μ's のメンバーに目配せをする。すると、全員は頷いて一斉に立ち上がった。
唖然とする私達に背を向けながら、座っていたレジャーシートから離れ、横並びに整列して向き直る。
「改めて……雪穂、亜里沙ちゃん。アイドル研究部へようこそ。2人の入部を祝って1曲歌いたいと思います」
センターに立つお姉ちゃんが私達に声をかける。
え? 1曲??
そんな驚きを浮かべる私達にお姉ちゃんは言葉を繋げる。
「今日から、2人が歩きだす……そんな意味と、新しく歩きだす私達へ向けて……この曲が――」
お姉ちゃんが両側にいるメンバーを微笑みの表情で見つめる。メンバーもお姉ちゃんに微笑み返す。そして、正面にいる私達を見つめて――
「スクールアイドル μ's としてのラストの曲になります!」
そう、言い切ると――
「~ ♪ ~」
目を瞑りながら―――
希さん、絵里さん、にこ先輩、海未さんが頭サビの最初のフレーズを――
「~ ♪ ~」
同じように、真姫さん、凛さん、花陽さん、ことりさんが次のフレーズを――
「~ ♪ ~」
更に次のフレーズを8人で歌うと――
「~ ♪ ~」
お姉ちゃんが最後のフレーズを繋げる。
数拍を置いて、スクールアイドル μ's のアノ曲をアカペラヴァージョンで歌う。
そう、文字通り――私と亜里沙だけの為に開催されたライブ。
何万人と言う人達の前で歌っていたお姉ちゃん達が私達の為に――
たった2人の観客の前で歌う――そんな感動で胸がいっぱいになりながら、フルコーラスを聴いていたのだった。
♪♪♪
可能性を感じて進み続けてきたお姉ちゃん達。
前を向いて、上を向いて――駆け抜けてきたお姉ちゃん達。
だけど、その代償に縛られて前に進めないでいたお姉ちゃん達。
もちろん悪い意味ではなくて――輝きすぎていたからなんだけど。
たぶん、お姉ちゃん達だけではない。私達スクールアイドル μ's のファン達だって同じだろう。
でも、それではダメなんだと思う。
戻らないところに留まっていては先には進まない。
ううん、それどころか――輝いていた去年すら、輝きを失ってしまう。
だから、前に進みたい。でも、自分達では進めたくない。
そんな板ばさみだったのかも知れない。
だけど、ずっと先延ばしにも出来ない――だから、今日だったのだろう。
私達が入部することが、お姉ちゃん達の進むキッカケになったんだと思う。
スクールアイドル μ's に憧れて、追いかけて入部をした私達に――立ち止っている自分達を見せたくない。
スクールアイドル μ's に憧れて、追いかけて入部をした私達に――憧れて追いかけ続けてもらえるように、前に進む決意をしたんだと思う。
そんな決意を込めたからアノ曲を選んだのかもしれない。
だって――
可能性を感じたんだ、後悔したくないんだ!
私達の前に私達の道があるんだから――
アイドル研究部全員の新しい道が!
お姉ちゃん達の表情が、そんなことを物語っていた。
お姉ちゃん達の表情を見て、私達はこの学院で駆け抜けていくだろう。
まだ見たことのない輝きの向こうへ――
まだ見たことのない世界の向こうへ――
全ての偶然と言う名の奇跡の欠片を集めながら。
まだ見たことのない明日へと進んでいくんだ。
そんな決意を胸にお姉ちゃん達の歌を聴いていたのだった。
私は今感じている想いがきっと、音ノ木坂学院アイドル研究部。
そして、スクールアイドル μ's と言う奇跡を生んだ――
学院の繋がる想い、託した想い、繋げる想いなのだと感じているのだった。
♪♪♪
私、高坂雪穂。国立音ノ木坂学院の1年生。
去年の廃校騒ぎもなんのその!
真新しい音ノ木坂の制服を身に包み――無事に入学式の新入生の席へと座ることが出来たんだ。
今日から始まるんだ。今日から進むんだ。
隣に座る亜里沙と共に――
私達のスクールアイドルが!
……そんな希望に溢れた私達の学院生活。
素晴らしい先輩や卒業生達。大好きな親友。
そして、大好きなお姉ちゃんに包まれて――
歩みだした偶然と言う名の奇跡の欠片を集める物語。
これは、私と亜里沙と――
みんなで夢見た歌作りの物語。
奇跡の欠片へ私達が両手を広げたばかりの――
そんな始まりのお話なのだった。
=Track 1 → Track 2=
♪♪♪♪♪
追加報告。
いや、すごく恥ずかしいけど綺麗に終わったじゃん?
だからこのまま終わらせたいのは山々なんだけどさ?
実際、お姉ちゃん達のライブは凄く感動したし――これで最後だって感慨深くなっていたから、その時に思ったことを書いているんだけど?
聞いてよ?
お姉ちゃんってば歌が終わった時――私達の拍手を笑顔で受け止めてくれた。
そこは良いの!
でも、私達が拍手を終えると――
「……ねぇ、絵里ちゃん達は次のライブ、いつ頃なら平気そう?」
って、絵里さん達に聞いていたんだよ?
いや、意味わかんないでしょ?
だから――
最後だって言ったでしょ? 次って何よ! って、お姉ちゃんに聞いたのね?
そうしたらさ? 平然な顔をして――
「えっ? 最後なのはスクールアイドル μ's だよ? これからやるのは、ローカルアイドル μ's だから!」
とか言い出してんの!?
要はね? スクールアイドルだから絵里さん達とアイドル活動が出来ないだけで――ローカルアイドルなら特に問題ないだろうって。
お姉ちゃんが思いついたんだって!?
確かに、ローカルアイドルなら問題ないとは思うし――元々メンバーだったのだから、絵里さん達が人気集めにはならないだろうけど。
特にスクールアイドルの定義にローカルアイドルの掛け持ちを禁止する項目もないだろうし――と言うか、誰が思いつくのよ?
まぁ、こんなことを言ってはいるけど――
お姉ちゃんの行動には慣れているし、何より――これからも μ's を見ていられるのは嬉しいかな? なんてね。
これからも、よろしくね? お姉ちゃん。
後書き
Comments 凛
かよちんから――
「リーダーなんだから、読んであげなよ?」 って言われたから、読んでるニャ!
……別に凛は、読みたくなくて読んでいない訳じゃないんだけど。
……まぁ、良いニャ!
ちなみに、無言だった2人に真姫ちゃんが振り向いたのは――
別に無視をされたと思ったからじゃなくて、真姫ちゃんが無視をしたように思われたくなかったからニャ?
わかっているとは思うけど、伝えておくニャ。
だけど、私の語尾。
全然気づかなかったニャ。確かに、入学当初は普通に話していた気がするニャ。
と思っていたら普通に使っていた時もあったみたいだけど?
でも、そんなには出ていなかった気がするニャ。
たぶん μ's に入る前は、かよちんが居る時以外は使っていないと思うニャ!
かよちんには気を許せたからね?
普段から使うようになったとしたら――
きっと μ's に入れたことで、自分の居場所が出来て自分らしさを取り戻せた気がするニャ!
それを気づいていた、かよちんは凄いニャ!
これからは、同じアイドル研究部の一員として――
楽しい学院生活を過ごしていきたいと思っているニャ!
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