ラブライブ! コネクション!!
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Track 1 両手を広げて
活動日誌5 すすめ→とぅもろう! 2
私はふと、衣装ケースの中で、ひときわ異彩を放っている代物に目を惹きつけられていた。
お世辞にも並べられている衣装に合うとは思えない――すごく無骨で大きな鎖。
私と亜里沙は疑問の表情を花陽さん達に投げかけたんだけど――三者三様、全員と目を合わせずに苦笑いの表情を浮かべて天井を見上げていた。
どうやら去年のハロウィンイベントの直前、新たな μ's を試行錯誤していた際に用いた小道具だったらしい。
当然、衣装も鎖を含めた小道具も、借り物だったから返却したんだけど。最終的に自分達らしさを追及することにした時、また道に迷わないように――
焦って変えようとしてもロクなことにならないってことを思い出す為に、戒めとして残すように買い取ったみたい。
そんな話を花陽さんが説明すると――
「ほ、ほら? 凛達が使わなくても、後輩ちゃん達が使うかも知れないニャ? その為に残してあるニャ」
そんなことを凛さんは口走っていた。
いえ、凛さん?
私達だって使いませんから――お断りします!
まぁ、本人達はあんな風に言っていたけど、結局の話――
これも1つの9人の良い思い出の品物だから残したかったんじゃないかなって思う。
衣装ケースにはたくさんの衣装と小物達が眠っている。そして、同じだけのお姉ちゃん達の思い出も眠っているんだろう。
今は存在しないけど――
私達にも衣装ケースに眠る衣装と小物達。そして、思い出が眠る日が来るのかな? そんなことを考えながら、衣装ケースの中を覗いていたのだった。
♪♪♪
「それじゃあ、改めまして」
衣装を眺めていた私達の背後から、花陽さんの声が聞こえてきた。
振り向いた私と亜里沙の前には、花陽さん達が横一列で並んでいたのだった。
「ようこそ、アイドル研究部へ。自己紹介するね?」
満面の笑みを浮かべて花陽さんは告げた。
これも大事なケジメなんだろう――だって、自己紹介なんて必要ないんだし。
そう感じたから私と亜里沙は直立不動で花陽さんを見つめるのだった。
この直後に驚く出来事が待ち受けているとも知らずに。
「改めまして、アイドル研究部部長の小泉 花陽です」
「「よろしくお願いします!」」
花陽さんの挨拶に一礼しながら挨拶する。
そして、視線を隣に向けて――
「リーダーの星空 凛ニャー!」
「「よろしくお願いします!」」
同じように挨拶をして、視線を隣に向けて――
「副部長の西木野 真姫よ」
「「よろしくお願いします!」」
挨拶する――
「……生徒会長の高坂 穂乃果です!」
は?
「……副会長の園田 海未です」
へ??
「……生徒会の……南 ことりでございますぅ」
な、何???
まぁ、お姉ちゃん達がいつの間にか現れて続けて自己紹介をしていたのだった。
と言うか、ことりさん? 何で、その登場台詞なんですか?
ちなみに、ことりさんが言ったのは――
うちのお父さん世代――どちらかと言えば、お祖父ちゃん世代なのかも知れないけど。
その時代で活躍していた、往年の漫才トリオの一世風靡したツカミのネタがモチーフらしい。
まだ、お姉ちゃん達が3人でスクールアイドルを始めたばかりの頃。
ユニット名を考えていた際に、なんか漫才師っぽいユニット名を思いついたらしくて――まぁ、ただ名前を繋げただけらしいし、速攻で却下したらしいけど。
お姉ちゃんがお父さん辺りの影響からか、その漫才師の話の流れで――
「そう言えばさ? ことりちゃんって苗字が南なんだよね? ……じゃあさ?」
そんな悪巧みを、ことりさんに植え付けたらしい。
とは言え、ことりさんも完全に前のめりで聞いていたらしいからお姉ちゃんだけのせいでもないんだけどね?
そんな感じでネタをやれる機会を探していたらしい――って、今やんないでよ!?
まぁ、身内だけの時以外にやられるよりマシかも? だから、やる機会を探していたんだろうし、ね?
ただ、ことりさん――
私もお父さんから聞いただけですけど?
そのネタは別の名前の人がやってツッコミを入れられるから面白いんであって――ことりさんの場合、普通に自己紹介しているようにしか聞こえませんから!
その証拠に――
隣で聞いていた亜里沙は、私の呆れ顔を不思議そうに見ていましたし。
あと、確かにみなみには違わないんですが――字が違いますからね?
まぁ、ここまでは特に驚きはしなかった。
確かにお姉ちゃん達が続いて自己紹介をしたのは想定外だったけど――お姉ちゃん達は生徒会室にいたのだし、あとから来るのは知っていたからタイミング良く現れても不思議ではなかった。
私と亜里沙が驚いたのはお姉ちゃん達にまとめて挨拶した直後。
ことりさんの自己紹介が最後だと思っていた私達の目の前。お姉ちゃん達へまとめて一礼して、頭を上げた私達の目の前に――
「……卒業生の絢瀬 絵里よ」
「……同じく、東條 希や!」
いるとは思っていなかった絵里さんと希さんが立っていたからだ!
あっ、あと2人から少し間を置いて――
「……にっこにこにー! あなたのハートに、にこにこにー! 笑顔届ける……矢澤 にこよ。何か文句ある?」
お決まりのフレーズから、途端に不機嫌な表情と声色に変わって問いただす、にこ先輩も立っていた。
そう――今、私と亜里沙の目の前にはスクールアイドル μ's のメンバーが勢揃いしていたのだった。
そんな驚きを隠せずに絵里さん達を見ていた私達に絵里さんは――
「……たまたま近くを通りかかったから来てみたのよ」
そんなことを苦笑いを浮かべて言っていた。
まぁ、卒業生だから来るのは不思議ではないけど――このタイミングなのは、あきらかに変だ。
とは言え、会えるなんて思っていなかったから素直に嬉しいし、それほど気にはしていなかった。
「花陽? 私と希は理事長先生のところへ行って来るわね?」
「せやね? ……ほな、行ってくるなー?」
「あっ、うん。いってらっしゃい」
「あっ、私も行くよ! 一応、生徒会長だしさ? ……先輩方、ご案内します」
「……それじゃあ、生徒会長さん……お願いするわね?」
絵里さんと希さんは花陽さん達にそう言い残して部室を出て行く――生徒会長としてお姉ちゃんが誘導をしながら。
とりあえず残った私達は隣の部室まで戻り、席に座るのだった。
「へぇー? 中々充実してるじゃない? 今年の研究部も」
唯一、にこ先輩だけは座らずに、研究部の棚をマジマジと眺めていた。
すると、ある1点に目が止まり――
「あら? あんた、ブルーレイBOX手に入れたのね? 良かったじゃない」
例のブルーレイBOXについて花陽さんに声をかけていた。
だけど、普通に『買った』ではなくて『手に入れた』と言うのが――なんとなく勇者のように思えていた。
「う、うん……今回は何とか入手できたよ? ……ちなみに、にこちゃんは?」
「あー、あたし? …まぁ、卒業したからねぇ?」
「「「「「えっ!?」」」」」
にこ先輩の言葉に照れながらも嬉しそうに答える花陽さん。
本当に幸せそうな彼女の表情は天使の微笑みに見えたのだけど――にこ先輩と同じく、入手と言うあたりが勇者の雰囲気にしか思えなかった。
そんな花陽さんは、にこ先輩にも聞き返す。
だけど、にこ先輩の気だるい雰囲気で紡がれた『卒業』と言う単語に私と亜里沙以外の人が驚きの声をあげる。
そんな声を聞き流して――
「アイドル研究部へ貸し出す必要もないし、部屋もいっぱいだから……2つで抑えたわよ」
そんなことを平然と言ってのけたのだった。
にこ先輩の言葉を聞いて私と亜里沙以外の人は唖然としている。にこ先輩は花陽さんと同じく、アイドルが大好きなのだ。まぁ、それ以上なのかも知れないけれど?
私には優劣は付けられないからね。
そしてDVD BOXを3つ持っていた勇者は、にこ先輩らしい。
そんな先輩が気だるそうに卒業と言う表現をしたのだから、花陽さん達はアイドルからの卒業なのかと驚いたのだけど――
ただ単に、学院を卒業したから貸し出す分が要らない。
あと、卒業の際に持ち帰ったグッズが大量にあるから、あまり物を増やしたくないって言う理由だった。
だけどそんな理由があるにも関らず、入手困難の代物を――花陽さんが苦労して入手した代物を2つで抑えたと言うあたり、レベルが違うのだと感じて唖然としていたみたい。
そんな中、部室の扉が開いて――
「にっこちゃーん、絵里ちゃん達が職員室にも挨拶しに行くって言ってるよー?」
「あー、今いくわー。それじゃあ、行って来るわね」
お姉ちゃんが戻ってくると、にこ先輩に絵里さんからの伝言を伝えた。
にこ先輩は了承すると、部室を出て行ったのだった。
♪♪♪
流れ的に前の活動日誌で書いちゃったけど――
にこ先輩が出て行ってからお姉ちゃん達3年生と花陽さん達2年生と私達――8人の会話はココから始まっているのだった。
そう、花陽さんのアイドル好きの話はココからの話だったんだよね?
だから正確には、にこ先輩と花陽さんの会話は何を言っているのか全く理解が出来ないでいたのだった。
だから会話の時に書いていることは、現在全てを知った上で思ったことを書いているだけなんだけど――活動報告なんだし許してね?
そんな風に8人で会話をしていたんだけど――
「ねぇ、凛ちゃんと真姫ちゃんで2人を屋上へ案内してあげてくれるかな?」
「わかったニャー!」
「そうね、良いわよ? ……それじゃあ、案内するわ?」
突然花陽さんは凛さんと真姫さんに、そんなことをお願いした。
凛さんと真姫さんは快く了承すると私と亜里沙に案内をしてくれる為に立ち上がり、扉の方へと歩き出した。私達も立ち上がり全員に一礼をすると、2人のあとをついて行くのだった。
♪♪♪
私達は屋上へ出られる扉の前までやって来た。
凛さんが扉を開けて、先に出るように促してくれた。私達は凛さんと真姫さんに見守られて、屋上へと出ることにしたのだった。
「「…………」」
私達は無言で目の前に広がる光景を見つめていた。まぁ、屋上に来るのは初めてじゃないんだけどね? ライブを見に来ているんだし。
だけど、あの時のようにステージがある訳でもなく――普通に何もない風景が目の前に広がっていた。
だけど――当然、この屋上にも彼女達の思い出が眠っている。
だから彼女達の目には――たくさんの思い出のある風景なんだと思う。
そんな感じで眺めている凛さん達を見て、漠然とそんなことを考えていたのだった。
「……んー、ニャーーーーーーーーーー!」
突然凛さんは雄たけびのような声をあげて、両手を水平にして――まるで飛行機のごとく屋上の奥へと走り出した。
驚いて凛さんを凝視していると――いきなりターンをして此方を向く。そして、此方に向かって踊りながら向かってくるのだった。
凛さんの身体能力は全国でも有数のものらしい――まぁ、頂点に輝いたんだからトップなのかも知れないけど?
そんなハイレベルの凛さんの踊りに心を揺さぶられながら見ていると――私と亜里沙の目の前でピタッと止まり、決めのポーズを取った。
私達は感動して拍手をしようとしたんだけど、凛さんはキッと空を見上げて――
「雨……降らないニャー!」
そんなことを言い出したのだった。
「何言い出すのよ? 当たり前じゃない」
呆れた表情を浮かべて答える真姫さんに――
「だって、前は降ったニャ! 今日だって降水確率60%だって言ってたニャ! 格好よく決まらないニャー!」
そんな事を言い返す凛さん。
どうやら、前に降水確率60%の日に同じように踊っていて、決めのポーズを取った瞬間にザーッと雨が降り出して、PVみたいだねって言われたらしい。だから、今日も格好よく決めたかったみたいだ。
――いや、凛さん、さすがに無理ですから。
そんな私達を無視して、再び空を見上げたかと思うと――
「雨、ふれーーーーーー!」
突然そんなことを天に向かって叫ぶのだった。
「バカなこと言っていないで、部室に戻るわよ?」
真姫さんは凛さんの言動を一刀両断にすると、階段へ通じる扉の方へ歩き出した。私達も凛さんには悪いけど、真姫さんと一緒に歩き出していたのだった。
ページ上へ戻る