Three Roses
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第十六話 姉妹が会いその一
第十六話 姉妹が会い
マイラは王との勅命を受けてだ、それを伝えた司教に俯いた顔で言った。
「王の勅命ならば」
「それならばですね」
「答えは一つです」
それしかないと言うのだった、俯いたまま。
「私も」
「ではその様にお願いします」
「はい」
こう司教に答えた。
「わかりました」
「私としてもです」
司教は厳かな声でマイラに述べた。
「やはり」
「マリーとはですね」
「お会いするべきと思っています」
「そのことは司教も言われていますね」
「以前からそうですね」
「はい、そうでしたが」
「マイラ様がどうしても仰るので」
それでというのだ。
「及びませんでした」
「だからですね」
「今までご説得出来ず申し訳ありません」
こう言って主に頭も垂れた。
「まことに」
「それは構いません、私はどうしてもです」
「マリー様とはですか」
「会えないと思っていたので」
何故会えないのかもだ、マイラは司教に話した。
「所詮妾の子です」
「今もそう言われますか」
「事実ですから」
だからというのだ。
「会うことはです」
「そのことですが」
「何か」
「王は正室、側室の関係なくです」
「生まれた子は、ですか」
「差別がない様にしたいと考えれているとか」
マイラにこのことを話したのだった。
「その様に」
「遺産相続や身分において」
「家督の継承権もです」
「その様にお考えとは」
「ですから」
「私もですか」
「はい、もうです」
それこそというのだ。
「お気になさることはないかと」
「法ではそうなろうとも」
そう言われてもだった、マイラは。
その顔を暗くさせたままでだ、司教に言葉を返したのだった。
「心にあるものはです」
「人の、ですか」
「そう簡単に消えるものではありません」
「法と心は違うというのですね」
「違いますか」
司教の目、知性をたたえたその目を見て問うた。
「そのことは」
「否定しません」
司教は主に自分の考えを素直に答えた。
「そのことは」
「やはりそうですね」
「法はすぐに変えられます、ですが」
「人の心はですね」
「そうはいきません」
こう正直に答えたのだった。
「何世代も残ります」
「それは私も同じです、しかも」
マイラはさらに言った。
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