Three Roses
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第十五話 衰える身体その十六
「毒など何時でも使えるが最後だ」
「では」
「マリー王女にはですね」
「あえて何もしない」
「この度もですね」
「そうだ、むしろマリー王女は味方にしたい」
こうも言った王だった。
「新教徒であってもな」
「立派な方ですから」
「だからこそですね」
「立派な方は味方にするに限る」
「そういうことですね」
「そうだ、有能な者は味方に引き込むべし」
今度は独り言ではなくだ、側近達にはっきりと言った。
「ロートリンゲン家の家訓だな」
「はい、しれでは」
「その様にしていきましょう」
「ではこの度は見守る」
「それに徹しますか」
「そうする、むしろ二人を護るのだ」
マリーとマイラ、彼女達をというのだ。
「王国はこうした時にも仕掛けるからな」
「あの国は時と場所を選びません」
「自分達にとって厄介を見たら即座に排除する」
「その為には毒でも他の手段でもですね」
「平然と使う」
「そうした家ですから」
「二人共優秀だ、そして優秀な敵はだ」
この国は帝国と同じく王国とは数百年来の敵対関係にある、その国においての有能な王女ならばそれだけでというのだ。
「厄介者だからな」
「その厄介な方々をまとめて排除する為に」
「王国は動きますね」
「だからですね」
「王国には注意して、ですね」
「今はお二方を警護される」
側近達も言う。
「それに務めますか」
「この度は」
「そうだ、私はマリー王女も味方にしたい」
こう考えているからだというのだ。
「そして妃も必要だ、そう考えているからだ」
「では」
「その様にされますか」
「そうだ、マリー王女と側近達はどう思っているか知らないが」
おおよそ知っているがあえてこう言ったのである。
「だがな」
「太子は、ですね」
「そうはされない」
「その様にですね」
「ことを進めていきますか」
「そうするとしよう、ではその様にだ」
ここまで話してだ、太子は。
己の杯の中の葡萄酒を一口飲みだ、微笑みを浮かべて言った。
「我々は動く」
「わかりました」
「それでは」
側近達も応えた、そしてだった。
太子は今回はその様に動くことにした、彼は彼の立場から動いていた。
第十五話 完
2016・7・2
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