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平成ライダーの世界

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第六章

 まずは前半に出て来た仮面ライダーシザースこと須藤雅史に仮面ライダーガイこと芝浦淳です。彼等は自身の殺人事件の隠蔽やゲームとしてライダーバトルに参加していました。須藤は人を平気で何人も殺し陥れることも辞さない男でした。刑事でありながら裏の仕事もしており絵に描いた様な悪人です。こうした人物がライダーになってしまうのが龍騎の世界であり非常にインパクトのある出来事ですがこれは実は石ノ森ワールドでは普通にあったことです。龍騎はそうした意味で仮面ライダーの原点に帰った作品でした。悪人でもライダーであるのです。そうしたケースも有り得るのです。善人だけしか仮面ライダーであるとは限らないのです。
 芝浦にしてもそれは同じで非常に嫌な奴です。北岡ですらもう少しましな奴はいなかったのかと顔を顰めさせる程でした。嫌味で意地が悪く傲慢で策謀を好み利己的というとにかく嫌な奴として描かれていました。とにかく戦いをゲームとして楽しみ他人を殺すのもまたゲームでしたとはいっても彼は浅倉に倒されてしまいますがこれはある意味において因果応報でした。須藤にしても芝浦にしても結局己の悪事が自身の結末を招いてしまいました。因果応報は世の常ですが平成ライダーの世界ではそれは実は絶対の定理となっています。道を誤った者は死ぬ、それが平成ライダーです。
 その中で最早道を誤ったとかそうした生半可な言葉で済む人間ではない、いや人間と呼んでいいかどうかすらわからない人物が龍騎には出て来ました。その浅倉威、仮面ライダー王蛇です。
 稀代の凶悪犯ですがその破壊衝動に基づいて徹底的に他人を傷つけ殺していきます。優秀な弟へのコンプレックスから家を焼き家族を殺したのがそのはじまりの様です。そしてそれから野獣の様に生きてきました。その設定自体がもう非常識なものです。彼は人間の世界に生きてはいません。その点で野獣でした。人間の心が不要な世界に生きてきました。
 そして彼はただ凶暴なだけではありませんでした。人質を取る、警察の包囲網を巧みにかいくぐる、生半可な人権派弁護士を利用する、相手の仮面ライダーをその隙を見て倒す、そうしたことを繰り返していきます。非常に狡猾で頭の回転の速い野獣でした。凶暴で狡猾、かつ残忍でした。そうした性格の活動によりライダーバトルの台風の目になりました。
 彼は仮面ライダーガイに仮面ライダーライア、仮面ライダーインペラーを倒しています。テレビ版スペシャルでは仮面ライダーシザースを倒しています。戦闘力においてもまさに圧倒的であり龍騎やナイト、ゾルダも何度か追い詰められています。挙句には契約モンスターを三体も持ちそうした面からもかなり強力なライダーになりました。北朝鮮に核兵器や狂人に刃物どころではなくなっていました。まさに暴虎に翼を与えたものでした。
 その彼が暴れ回ることでライダーバトルは大きく動きました。その中で彼は弟を殺していますが現場にいて浅倉の人間としての感情を期待していた城戸はです。愕然としてそのうえで怒りを感じてです。そのうえで『御前みたいな奴がいること自体が信じられねえ』と言いました。城戸がはじめて見た人間だったのです。
 むしろ野獣と言うべきでしょう。姿形が違えど心が人間ならば人間であるという摂理はここで逆転します。浅倉は姿形は人間ですが人間ではありません。野獣です。
 この危険極まりない野獣は過去の因縁から北岡をとりわけ敵視していました。そのうえで彼とライバル関係になっていきます。
 文明という人間社会の中に生きている北岡と人間社会とは別の世界に生きている野獣である浅倉の対立軸は最後まで残りました。そして最後は倉庫の中での決着となりました。しかし前述の通り北岡と思っていたのは由良でした。それを見て彼はやり場のない怒りを感じ咆哮をあげてです。彼を包囲していた警察の銃弾の前に倒れます。この平成ライダーの世界観さえも決定付けてしまったキャラクターはライダーバトルで倒れてはいません。ライダーバトルとは関係ないことで死んでいるのは皮肉と言うべきでしょうか。
 ここで浅倉が平成ライダーの世界観を決定付けたと述べさせてもらいましたが彼の様な野獣と言うべき存在が仮面ライダーとなり力を持つ、これもまた石ノ森ワールドにおいては存在する定理でありテレビにおいて入れられた重要な要素です。絶対の正義はなく人は時として己の欲望の為に同族同士でも殺し合う、それを描いたのです。そして人とは何か、ライダーとは何か。そうした世界観を三作目の龍騎のこの仮面ライダー王蛇こと浅倉威力が決定付けてしまいました。龍騎以後も様々なライダーが登場します。しかし浅倉程恐ろしいライダーはいなかったでしょう。野獣であってもライダーとなる、そのことを示したのですから。
 この彼と対極の位置にいたのが城戸ですがもう一人いました。それは仮面ライダーライアこと手塚海之です。彼は占い師であり浅倉に襲われたことで夢を絶たれたピアニストの友人でした。
 この友人はライダーバトルを拒んだことによりモンスター、そしてそのモンスターを統括する神崎によって殺されます。手塚は彼の心を受け継いだ形でライダーとなりました。
 彼は凄腕の占い師ですがそれはそのまま彼の個性となっていました。そして戦いを嫌いその為に戦うライダーでした。城戸や秋山に与えた影響はかなりのものでストーリー中盤において浅倉とは対極の、城戸とは違った意味でそうした位置にいてストーリーを形成していきました。
 戦いの無意味さを知っていてそれを何としても止めさせたい、テレビスペシャルでは少し違う位置にいましたがやはり戦いを嫌っていました。龍騎では戦いを楽しんでいるライダーも多い中で彼の存在は異色なものでした。 
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