平成ライダーの世界
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第五章
城戸真司という男は設定でも書かれていますが馬鹿です。知識や教養という問題ではなく人間として馬鹿です。人間観も甘いところがありますし周りが見えていないことも多いです。しかし純粋で一途で生真面目です。あくまで人の為に動きます。こうしたいい意味での馬鹿です。
城戸は戦うことも嫌いで無論剥き出しのエゴや悪も嫌いです。この彼がライダーになりまずは人々を護る為にモンスターと戦います。
最初は秋山に問題視され戦いを吹っかけられたりもしました。しかし最後に秋山は城戸の心を知りました。
どうしても優心を助けられないとわかって自暴自棄になった姿、そして自分の命を賭けて親娘を救った姿を見てです。血を吐き死相を浮かべながらも自分のことを気遣う城戸を見てです。秋山は『御前の方こそ死ぬな!城戸!』と叫びます。これは秋山が最期に辿り着いた心境でした。
城戸は一見すると無力です。しかしそのひたむきさと一直線さが周りにはどうしても目に入ってしまいます。その結果として感化していきました。秋山も優衣も彼がいなくては変わらなかったでしょう。彼の純粋さは非常に大きなものでした。
彼をそうさせたのは周りの影響も大きかったと思います。OREジャーナルの社長であり編集長である大久保大介は後輩である彼をあくまで信じ支え温かい目で見てきました。彼がライダーとしての行動に身を入れなくなり自然と仕事を離れることが多くなってもあえて聞くことはせずその背中を温かく受け止めることにしました。それは最後で彼がライダーとわかってもでした。その彼を最後の最後まで、ライダーバトルが終わった時にも文章を書いていた時も温かい目で見ていました。この戦いに正義はない、という一文で書き終えていますがそこには城戸やライダー達への無限の温かい目がありました。大久保編集長は一見三枚目で道化なのですが実は城戸にとってかけがえのない存在でした。どうしても一直線に突き進んでしまう彼の性格の長所と短所をわかったうえでそのうえで見守り支える。まさに兄でした。彼がいたからこそ城戸も最後の最後までライダーとしてのあり方を何とか諦めずライダーバトルを終わらせる礎になりました。
大久保社長の他の桃井令子は城戸を先輩として支えました。ジャーナリストとしてだけではなく人生の先輩としてもです。彼女は北岡秀一という非常に癖のある人物から好意を寄せられていましたが北岡を惹き付けるものも確かに備えていました。真面目で芯がありそのうえで女性的なものも持っている、そうしたキャラクターです。その彼女と共にいて城戸は多くのものを得ていました。ジャーナリストという意味ではなく人間という意味においてです。非常に大きく素晴しいものを得ていました。島田奈々子も同じで彼女もまた一見すると道化なのですが実際は彼女もまた城戸の周りにいて彼に人間としての温かさを教える存在でした。城戸はOREジャーナルに入って本当によかったと思います。彼はその中で人間として大きく成長し美しい性格になりました。元々そうした人間だったのですがそれ以上にです。この会社に入って多くのものを与えてもらったと思います。
その城戸を見て特に変わったのはやはり秋山連でしょう。クールぶって悪人のふりをしていましたが城戸の一途な心を見てです。少しずつ本来の人間性を見せていきます。彼は何度か、朝倉威を見たりなどしてそのうえで道を見失いそうになります。恋人を助ける為にあえて非情なライダーになろうとしました。しかし彼は絶対にそうはなれないと仮面ライダーライアである手塚海之に指摘されたこともありました。彼は非情になろうとしながらもやはり本来の性格を隠せずそのうえで最後の最後に城戸の死を見てです。完全に本来の自分自身に戻りました。仮面ライダーオーディンに勝利を収めそのうえで恋人を目覚めさせてです。満足した顔で彼もまた眠りに入りました。この最後の最後の戦いの後で神崎は優衣の言葉を受けて遂にライダーバトルもミラーワールドも終わらせました。気が遠くなる程続けられたであろうその戦いを終わらせたのです。秋山は何度も道を踏み外しそうになりましたがそれでも踏み止まり最後まで人であり続け本来の心を維持できました。こうした意味において後述の仮面ライダーファイズの海堂直也と同じでしょう。道を踏み外さずに済み人間でいられました。そしてそれには城戸や優衣、手塚を見てです。人の死や心を見て彼は変わり本来の心を隠さなくなりました。そうした意味で彼は非常に幸せな人間です。
その秋山に御前程度腐った奴は珍しい、と言われたのが仮面ライダーゾルダこと北岡秀一です。彼は人間の欲望を愛していると言いそのうえで贅沢な暮らしをして悪人の弁護も行います。確かに利己主義であり気障な嫌な人物です。しかし彼もまた仮面を被っていました。
彼は少し見ただけでは鼻持ちならない嫌味な人間ですが実は密かに自分と同じ境遇の人間を助けることもあります。また秘書でありボディーガードでもあり運転手でもあり料理人でもある由良悟郎とは非常に強い絆で結ばれています。北岡が完全にどうしようもない人間なら由良はついてこなかったでしょう。城戸を陥れたりもしましたが彼もまた結果としてライダー、即ち人間を殺してはいません。元々殺すつもりもかなり希薄だったようです。例外は彼のライバル的立場にいた仮面ライダー王蛇、朝倉威ですが。
彼は不治の病を患っていてその病状は次第に進んでいます。ライダーになったのは病にかからない不老不死になりたいからです。しかし彼はライダーバトルが進むにつれ次第に神崎はそんなものを渡してはくれない、そもそもライダーバトルは自分達の目的の為のものではないのではないのかと気付いたようです。少なくとも神埼がそう簡単に永遠の命を与えてくれるとは思わなくなっていました。それは事実であり彼もまた気が遠くなる程の戦いの中に生きていたのですから。そしてそれと共にライダーバトルに対して空しさを知り城戸が自暴自棄になると共に何とか優衣を救おうと戦おうとするのを拒みました。城戸のあまりもの悲しさを見ていられなくなったからです。彼はもうライダーバトルから去ろうとさえしました。
しかし最後にです。やはり朝倉との決着をつけようと決意してようやくそこまでこぎつけた令子とのデートよりも戦いを優先させようとしました。しかしそれよりも病の進行が早くです。彼は事切れてしまいました。死んでソファーに横たわる彼の上に一輪の花がありましたがおそらく由良が置いたであろうそれには彼の死と由良との絆がありました。
由良との絆は龍騎においての人の絆を見せるものとして重要なものの一つでした。由良というキャラクターは井上敏樹氏がそのキャラを作り上げ小林靖子氏が絆を作り上げていきました。そうしたキャラクターですが一見して寡黙で不気味な印象を受けますがその実は信義に篤く一途な人間でした。その為自分と似たものを持っている城戸とも気が合ったのでしょう。彼によって北岡もかなり支えられていました。
しかし由良は自分のせいで北岡の病があそこまで悪くなったと思い自責の念にかられていました。実際は違うのでしょうが。それでもそう思っていたのは確かです。
その結果最後の最後で北岡の代わりに朝倉と闘いました。その結果敗れ死ぬことになりましたがその時まで北岡のことを気にかけていました。彼がいてくれて北岡はどれだけ救われたでしょうか。自分が死んでも、北岡自身が既に死んでいても気にかけてくれているのですから。そして北岡にもそれだけのものがあったということでしょう。そうしたことまで見せてくれるキャラクターでした。
北岡は偽悪者でした。しかしこの龍騎、ひいては平成ライダーの世界では悪人がライダーになることもあります。
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