英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第165話
その後探索を続けていたワジ達は”領域”の最奥に到着した。
~象の領域・最奥~
「ククク……待ちくたびれちまったぜ。」
ワジ達が最奥に到着すると聞き覚えのある青年の声が聞こえ、声を聞いたワジ達は声の主―――ヴァルドに近づいた。
「……ヴァルド。」
「ハッ、どうやらその姿がてめぇの仕事着ってわけだ。”星杯騎士団”……教会の極秘部隊だったか?しかも見覚えのあるシスターもいやがるな……って事は最初からてめぇら、グルだったんだな。」
真剣な表情で自分を見つめるワジをヴァルドは鼻を鳴らした後リースにも視線を向けた後目を細めて呟いた。
「……まあ、アッバスさんと極秘に連絡を取り合っていましたので間違ってはいない解釈かと。」
ヴァルドの言葉を聞いたリースは静かな表情で答え
「リース?彼と面識があるのか?」
リース達の会話を聞いていたケビンは不思議そうな表情で尋ね
「……旧市街の子供達に勉強を教えに行った時に見かけた程度。」
尋ねられたリースは静かな表情で答えた。
「まあね。個人的にテスタメンツの時のスタイルの方が好きだけど。ああ、ホストの時に着ているスーツなんかも悪くないかな?」
一方ワジは静かな笑みを浮かべてヴァルドに答え
「……ねえ、ケビンさん。”守護騎士”ってみんなワジ君みたいな人達ばかりなの?」
「いやいやいや!?違うからな!?そいつが特別なだけやって!」
ワジの言葉を聞いてジト目になったエステルの言葉を聞いたケビンは慌て
「そうかしら~?トヴァルの知り合いの”星杯騎士”――――”アイン”だったかしら?その女もとてもシスターとは思えない人格の持ち主だったけど?」
「ブッ!?ア、”アイン”ってまさか…………!」
「あの方と面識があるのですか……」
口元をニヤニヤさせながら呟いたサラの言葉を聞いたケビンは吹き出した後信じられない表情をして口をパクパクさせ、リースは驚きの表情でサラを見つめ
「ええ、面識があるわよ。お酒の方も中々イケる口だったわよ、あのシスター。」
(そ、総長…………一体何をやっているんですか………)
(少しは立場を考えて下さい……)
口元に笑みを浮かべて答えたサラの話を聞いたケビンとリースは疲れた表情になった。
「まあ、”七耀教会”が崇めている”空の女神”自身があんなフレンドリーな人だから十分ありえそうよね……?」
「そ、そうだよね……おかげで僕達の持つ”空の女神”のイメージは粉々に砕けちゃったもんね。」
「アハハ……」
「……そうなのか?……俺はあの性格でいいと思うが。」
苦笑しながら言ったアリサの言葉にエリオットは冷や汗をかきながら頷き、エマは表情を引き攣らせ、ガイウスは不思議そうな表情をした後答えた。
「クク……相変わらず悪趣味な野郎だぜ。チャラけたバイトのやりすぎで頭がマヒしてんじゃねえのか?」
一方ヴァルドは嘲笑しながらワジを見つめていた。
「君に言われたくないね。”力”を手に入れてもその悪趣味な木刀は手放していないみたいだし。」
ヴァルドに見つめられたワジは真剣な表情でヴァルドを見つめ
「当たり前だ……こいつは”象徴”だからな。てめぇみたいな小器用なヤツには込められない魂が宿ってるんだ。」
ワジの言葉にヴァルドは目を伏せて答えた後真剣な表情でワジを見つめた。
「その割には旧市街のアパート、キックでぶっ壊したそうじゃない?列車を脱線させたのだってただの力任せだったみたいだし。」
「クク、よく知ってやがるな。」
「知りたくもないのに勝手に耳に飛び込んできてね。」
口元に笑みを浮かべたヴァルドに見つめられたワジは疲れた表情で呟いた。
「ククク………」
「フフフ……」
するとその時ヴァルドとワジはそれぞれ口元に笑みを浮かべて笑い始めた!その様子を見ていたその場にいる全員は脱力し
(な、何だか気が合っているように見えませんか……?)
(た、確かに……)
(息ピッタリだよねー。)
エリゼとリィンは苦笑し、キーアは無邪気な笑顔を浮かべていた。
「―――ヴァルド。改めて確認させてくれ。君にその力を……いや”グノーシス”を与えたのはマリアベル・クロイスかい?」
その時ワジが静かに一歩前に出て真剣な表情で尋ね
「ああ、あの青いクスリか?そういやそんな名前を言ってやがった気もするな。」
尋ねられたヴァルドは目を丸くした後静かな笑みを浮かべた。
「へっ!?あ、青い”グノーシス”??」
「確か”魔人化”するのは紅色って聞いた事があるけど……」
「それなのにどうして”魔人化”できるのですか?
ヴァルドの答えを聞いたエステルは目を丸くし、リィンとエリゼは驚きの表情で尋ねた。
「クク、あのオンナ曰く俺は”合ってる”そうだぜ?ヤバイ方を使わなくても最大限の”チカラ”を引き出せる素質があるらしい。ま、そのあたりの理屈なんざどうだっていいけどな。」
二人の疑問にヴァルドは不敵な笑みを浮かべて答え
「全然よくないわよ。……あの薬が世間に出回ったら大変な被害が出る事は目に見えているわ。………まさか彼女は他の人達にもその薬を渡しているのかしら?」
ヴァルドの答えを聞いたサラは厳しい表情でヴァルドを睨んで尋ねた。
「さて……そんな様子は無かったがな。クク、得体の知れねぇアマだが個人的に嫌いじゃねぇぜ?自分自身の欲望にどこまで忠実ってところはな。」
「……………………」
「…………(姉さん……)………………」
口元に笑みを浮かべて呟いたヴァルドの言葉を聞いたキーアは疲れた表情で、エマは複雑そうな表情をして黙り込み
「そして君は彼女の甘言に唆されて……際限のない”力”を求めるようになったわけだ。」
ワジは複雑そうな表情で呟いた、
「クク……違うな。俺が”チカラ”に焦がれるのはガキの頃からだ……」
ワジの言葉を聞いたヴァルドは口元に笑みを浮かべて答えた後顔を下に向けて力を溜め始め
「………!(何てとんでもない”負”の”力”……!)」
ヴァルドの様子を見たエマは目を見開いた。
「呑んだくれのオヤジが死んでから旧市街に一人放り出されて……ケンカに明け暮れながらバイパーとイグニスっていう”聖域”を手に入れて……てめぇという喧嘩相手が現れて熱くなっていた時ですら奥底でくすぶり続けていた……」
すると怒りの表情で呟いたヴァルドから膨大な瘴気が現れ始め
「チッ……………」
「……………!」
ケビンは舌打ちをし、リースは真剣な表情になり
「………………」
ワジは厳しい表情でヴァルドを睨み、仲間達と共に一歩下がって武器を構えた!
「それが俺の――――”チカラ”への渇望ってわけだ!」
そしてヴァルドが叫んだその時、ヴァルドの肉体は変化し、巨大な”鬼”の姿になった!
「わわわわわわわっ!?ひ、人が化物に…………!」
「お、”鬼”……!?」
「何てとてつもない力だ…………」
「みなさん、気を付けて下さい!尋常じゃない力が感じられます!」
「中級……いえ、下手をすれば上級魔族クラス……!?」
「これが話にあった”グノーシス”による”魔人化”……!」
魔人化したヴァルドを見たエリオットは驚き、アリサは信じられない表情をし、ガイウスは目を見開き、エマは警告し、エリゼとサラは厳しい表情でヴァルドを睨み
「何かイヤな力を感じる…………」
「全く………努力して遊撃士になった”レイヴン”の連中を少しでも見習って欲しいわ!」
キーアは不安そうな表情で呟き、エステルは呆れた後真剣な表情でヴァルドを睨んで呟いた。
「――――来い、”ヴァリマール”!!」
そしてリィンは手を空に掲げて叫んだ!すると”灰の騎神”ヴァリマールがどこからともなく現れてリィンの傍に現れ、リィンは光に包まれてヴァリマールの中に入って行った!
「えええええええっ!?」
「まさか……”機甲兵”……!?」
「いや……俺達が戦った”機甲兵”とは明らかに姿が違うぞ……」
「話には聞いていましたけど、本当に”騎神”を呼べるなんて……!」
その様子を見ていたエリオットとアリサは驚き、アリサの推測にガイウスは静かな表情で否定し、エマは信じられない表情でヴァリマールを見つめていた。
「ほう?面白くなってきたな………………クク……さあ、てめぇも見せてみろや……”チカラ”への渇望……俺と同類である証を……!」
「……いいだろう。だが……僕のそれは君と同じじゃない。」
「なにィ……?」
ワジの言葉を聞いたヴァルドが不愉快そうな様子で呟いたその時、ワジの背中に”聖痕”が現れた!
「あれってケビンさんの……!」
「ああ……”聖痕”や。」
ワジの聖痕を見たエステルは呆け、ケビンは真剣な表情で頷いた。
「この印が顕れたせいで……全てを手に入れ、全てを失くした。家族も、故郷も、未来も何もかも……”力”に絶望しつつ馴れ合いながら偽りの生を生きて行く………それが”僕”――――ワジ・ヘミスフィアだ。」
「……てめえ…………」
「――――守護騎士第九位、”蒼の聖典”ワジ・ヘミスフィア……この金色の輝きをもって君の”チカラ”を折らせてもらう。――――覚悟はいいかい?」
「クカカ、上等だよ……!」
ワジの言葉を聞いたヴァルドは大声で笑い始めた!
「てめぇという贄を喰らう事で俺の”チカラ”は完成する……!さあ……決着を付けるとしようぜえええっ!!」
そしてワジ達はヴァルドとの決戦を開始した…………!
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