英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第155話
~カレイジャス・ブリッジ~
ロイド達との通信を終えた”カレイジャス”はメルカバ伍号機にも通信をし、サラはエステルと会話をしていた。
「えへへ……まさか最終決戦地でサラさんと一緒に戦えるなんて嬉しいし、心強いわ!」
「フフ……あたしからしたら、正直遊撃士としての実績は当時のあたしを超えているし、実力も既にアンタ達の方が上と思っているわよ。トヴァルから聞いたわよ?ミントと共にS級正遊撃士への昇格が決まったんですって?しかもヨシュアもS級候補に挙がった上、アンタ自身は将来的にS級をも超える歴代初のランク――――SS級に昇格する話も来ているし、アンタ達と一緒に行動している”女神”――――フェミリンスとかいう女神に遊撃士になれば即A級正遊撃士にするっていう条件で勧誘が来ているんでしょう?さすがはカシウスさんの家族ね。」
笑顔で言ったエステルの言葉に微笑んだサラは口元に笑みを浮かべ
「う~ん、あの不良中年親父の家族だからというのは何だか納得いかないわね~。それにフェミリンスの件はともかく、あたしとミントがS級だなんてまだまだ早いとしか思えないし、SS級って言われてもピンと来ないのよね~。ジンさんやクルツさんとかS級遊撃士としてもっと相応しい人達がいると思うし。」
「リベールのクーデター、”異変”、かつてはカシウスさんも関わっていた”D∴G教団”…………そして今回のクロイス家が起こした事件。これ程の多くの国家の問題を解決し、今回の件にも関わるアンタ達なら十分その資格はあるわよ。……それにアリオスさんが遊撃士協会に隠れてクロイス家に力を貸して”支える籠手”の信頼を大きく落としたから、最後の頼みの綱であるアンタ達を昇格させるのも無理ない話だわ。」
「……………………」
サラの言葉を聞いたエステルは複雑そうな表情で黙り込み
「多分、遊撃士協会はアリオスさんのせいで失った”支える籠手”の信頼を回復させるために、世間ではあの”六銃士”とほぼ同等に有名なA級正遊撃士であるアンタ達の活躍で信頼を回復する事を期待しているのだと思うわよ?」
「う”~…………こんなうら若い乙女達に滅茶苦茶期待されても困るわよ~…………」
サラの説明を聞いたエステルは唸った後溜息を吐き
「んん~?それはアタシに対する当てつけなのかしら??」
「アハハ………そこまでは思っていないって。―――それよりサラさんはもう遊撃士に戻らないの?リウイやヴァイスさん達がエレボニアを侵略した事によって、制圧された地域にある撤退した支部が次々と復活し始めて、遊撃士達が活動を始めている話は聞いているけど。」
目を細めて自分を睨むサラに苦笑した後ある事に気付いて尋ねた。
「そうね…………今受け持っている子達が学院を卒業したら戻ろうと思っているわ。既に協会側からも遊撃士に戻らないかという話も来ている事だし。」
「そっか…………サラさんがまた遊撃士に戻る事を待っているね!」
そしてサラの答えを聞いたエステルは笑顔を見せた後画面端末から姿を消した。
「今の人が”ブレイサーロード”ですか……」
「何だか全然貴族には見えない人でしたよね……?」
「しかも何気にあの”剣聖”をぞんざいに扱っていたり、”英雄王”を呼び捨てにしていたし……」
エステルが画面端末から姿を消すとマキアスとエリオットは戸惑いの表情を見せ、フィーは静かに呟き
「まあ、あの子達はよっぽどのことがない限りは”貴族”としての態度を見せないと思うわよ?本人達も”貴族”としての態度は堅苦しいし、自分達には似合わないってボヤいていたし。後”英雄王”達とは友達同士とか言ってたわよ?」
「ええっ!?あ、あの”英雄王”達と……!?」
「皇族と友人同士か……凄いな……」
「フン、例え元平民とはいえ今は”貴族”…………その程度の意識もできないとは”貴族”として失格だな。」
「それは仕方ないと思うが。彼女達は元々平民として暮らしていたとの話だしな。貴族としてのマナーや心構えも学ばずに、”貴族”として振舞えという方が無茶だろう。しかし……”英雄王”達と友人同士というのは正直、信じられないな……」
「家族揃って最高ランクの遊撃士揃いって、ホント、”ブライト家”って恐ろしい一族だね~。」
「フフ……既にカシウス卿を超えているな……」
サラの説明を聞いたエリオットとガイウスは驚き、ユーシスは鼻を鳴らして呟き、ラウラは静かな表情で呟いた後考え込み、ミリアムは静かな口調で呟き、ヴィクターは静かな笑みを浮かべた。
「そう言えば教官……先程の会話で学院の教官を辞めるみたいな事を言ってましたが……」
「本当に遊撃士に戻るのだろうか?」
その時ある事を思い出したアリサとガイウスはサラを見つめ
「ええ………やっぱりあたしは遊撃士をやっている方が似合っているからね。機会があれば戻るつもりだったわ。」
見つめられたサラは頷いた後答え
「寂しくなりますね……」
「そうだね~。サラの授業が一番楽だったしね~。」
エマは複雑そうな表情で呟き、ミリアムは頷いた。
「あんたね……他の教官達の授業では頻繁に寝ていた癖によくそんな事が言えるわね?――――ま、あんた達が卒業するまでは残っているわよ。」
サラはジト目でミリアムを睨んだ後苦笑しながら答えた。
~メルカバ伍号機・ブリッジ~
「エイドスさん、少しいいですか?」
「?」
ブリッジでエステル達やアドル達と会話していたエイドスはケビンに呼ばれた後、既にリースが待機している会議室にまで来た。
「……私だけを呼ぶという事は……何か内密の話があるのですか?」
「ええ…………」
「エステルさん達には知って欲しくない事でして…………本当なら貴女にも知って欲しくないのですが…………私達が信仰している貴女には誤魔化したくないので、是非聞いてもらいたいのです。」
「………一体何でしょうか。」
ケビンとリースの話を聞いたエイドスは真剣な表情になった。
「―――――昨日、教会より連絡が来ました。マリアベル・クロイスが教会の上層部達の過半数の意見によって”外法”認定された事が。」
「幾ら”外法狩り”を廃業したとはいえ、”外法”を狩るのは俺達”星杯騎士”の役目です。ワジにも指示は行っていますが……俺達は今回の戦いでマリアベル・クロイスを”狩ります”。」
「…………そうですか。悲しい事ですが……クロイス家は”やり過ぎました”。”塩の杭”を持っているのもその事が関係しているのですね?」
リースとケビンの説明を聞いたエイドスは重々しい様子を纏った後真剣な表情でケビンを見つめ
「!?何でそれを……!」
エイドスの言葉を聞いたケビンは驚いた。
「――――”塩の杭”は遥か昔夫と出会う前に私が見つけ、封印した”天災”と言ってもおかしくない強大な呪具です。封印した私なら当然”塩の杭”の気配も感じ取れます。」
「んなっ!?」
「という事は”塩の杭”は貴女が遺したアーティファクトではないのですか……!?」
エイドスの説明を聞いたケビンは目を見開き、リースは信じられない表情で尋ねた。
「当たり前です。愛すべき”人”にとって天災となるような物をわざわざ創って人々の為に絶対に遺しません。」
「そうですか………………」
(つーことは”塩の杭”が現れた原因はエイドスさんの封印の術の効果が切れた線が考えられそうやな…………)
エイドスの答えを聞いたリースは安堵の表情で頷き、ケビンは真剣な表情で考え込んだ。
「しかし…………”塩の杭”を持っていても平気な事にも驚きましたが、七耀教会はマリアベル・クロイスを”そこまでして”滅したいのですか?」
「ええ…………”至宝”を創るなんて、貴女にしか許されない所業ですし、しかもその”至宝”を己の野望の為に使った挙句、時間をも自由自在に変えて歴史を捻じ曲げようとする事は絶対に許されない事です。」
「それにマリアベル・クロイスの魔導師としての実力も未知数です。念には念をという意味も込められているのだと思います。」
エイドスに尋ねられたケビンとリースはそれぞれ答え
「……確かにそうですね。”塩の杭”に込められてある呪力はあまりにも凄まじく、よほど強力な結界を張らない限り、”触れるだけ”で触れたもの全てを塩化させる恐るべき呪いがかけられていますからね…………」
エイドスは重々しい様子を纏って頷いた。
その後メルカバ玖号機、伍号機、そしてカレイジャスは”大樹”の中への侵入を開始した。
~2時間後~
ロイド達が大樹へと侵入して2時間後、片手にレンを乗せている”パテル=マテル”は”大樹”の前に現れ
「ウフフ……どうせお菓子より甘いエステルやお兄さん達の事だから止めは刺さないのはわかっているしね。――――不良集団のリーダーさんはレン自らが手をかける程殺す価値もないし、”風の剣聖”はパパ達が手を出さないって約束しちゃったから、殺せないけど…………残りの4人は絶対にこの世から去ってもらうわよ?ウフフ……特にマリアベル・クロイスはどんな惨たらしい殺し方をしてあげようかしら♪――――”パテル=マテル”、大樹の中への侵入を開始して。ただし、”メルカバ”や”カレイジャス”とは別のルートを通って。」
パテル=マテルの片手に乗っているレンは凶悪な笑みを浮かべた後指示をし
「―――――――」
レンに指示をされたパテル=マテルは大樹の中への侵入を開始した………………
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