英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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終章~碧の軌跡~ 第153話
同日、11:00―――
全ての準備を終えたロイド達は決戦地である湿地帯に現れた謎の大樹に向かっていた。
~メルカバ玖号機・ブリッジ~
「―――しっかしまあ、トンでもねーのが現れたよな。」
端末を操作しているヨナは目の前に見える大樹を見て呟き
「本当にあれ、キーアちゃんが出現させたの……?」
フランは不安そうな表情でキーアを見つめ
「うん…………」
見つめられたキーアは静かに頷いた。
「”碧の大樹”―――人による至宝の完成形か。よもや人の子らの妄執がここまでしてのけるとは……」
「あの大樹がどんな力を持っているのか君にもわからないんだ?」
厳しい表情で呟いたツァイトの言葉を聞いたワジは真剣な表情で尋ね
「……うむ。ただあの碧い光からは尋常ならざるものを感じる。七耀の力の全て……特に”幻”、”時”、”空”を併せ持つと言うべきか。エイドスやエイドスの聖母自身もあの大樹を危険視している。」
「そりゃ確かにヤバいな…………」
「”空の女神”自身も危険視するほどの”至宝”か…………」
「”本物”を求めるあまり、”本物を超える偽物”を創るなんて信じられませんね…………」
厳しい表情で呟いたツァイトの言葉を聞いたランディは目を細め、リィンとエリゼは真剣な表情で呟き
「その妄執をもっと他の事に向けていれば、世に役立つ物が創れたというのに…………」
「本当に残念だよね~。」
「創る側として、悲しい事です…………」
セティ、シャマーラ、エリナはそれぞれ複雑そうな表情で呟いた。
「元々”零の至宝”は”幻の至宝”を再現するためにクロイス家の手で創造された…………その過程で”時”と”空”まで併せ持ったという事かしら……?」
「うむ、正直私やエイドス達にもどこまでの事ができるのか見当もつかぬくらいだ。―――と言うより、『出来ない事は無い』と言ってもいいのかもしれぬな。」
不安そうな表情で呟いたエリィの言葉にツァイトは頷き
「なんとまあ…………」
「女神に匹敵する力か……」
ツァイトの言葉を聞いたランディは疲れた表情をし、アッバスは重々しい様子を纏って呟き
「……………………そう言えば気になっていたのだけど……あの”大樹”が現れてから2日も経ったけど何も起こらなかったのかしら?」
複雑そうな表情で黙っていたセシルは真剣な表情でツァイトに尋ねた。
「うむ…………エイドス達の話では時折”時間の流れ”に異常を感じた事があるそうだ。」
「なっ!?」
「それって……!」
「――――俺達がいるこの時間を”無かった事”にしようとした……という事か?」
ツァイトの答えを聞いたロイドとリーシャは驚き、セリカは真剣な表情で尋ねた。
「恐らくな。だが、その事に気付いたエイドス達や”真竜”がそれぞれの力で無効化したそうだ。よってエイドス達がいる限り、最悪の可能性――――”幻の至宝”の力である”因果を操る事”は全て無効化されると思っていい。」
「へえ?さすがは”空の女神”とその一族だねえ?とりあえず彼女達がいる限り、最悪の事態を避けられる事は朗報だね。」
「さすがに”本物”の力には敵わぬという事だな…………」
ツァイトの説明を聞いたワジは興味深そうな表情をし、アッバスが口元に笑みを浮かべた。
「あれ?もしかして君もあの大樹の中にいる”キーア”の力を無効化していたんじゃないの?何せ、”君自身”が起こしている事だし。」
ある事に気付いたワジはキーアを見つめ
「うん…………全て終わった後のキーアには”幻の至宝”の力はほとんど失われたけど…………”因果の干渉”の妨害出来る程度の力は唯一残っていたから…………」
見つめられたキーアは静かな表情で頷いた。
「ほとんど失われた……?」
「一体どうしてそんな事になったのですか……?」
(まさか…………しかしそれなら何故キーアが消滅せず、今この場にいるのだ…………?)
キーアの説明を聞いたリーシャは不思議そうな表情をし、ティオは尋ね、ある事に気付いたツァイトは厳しい表情をした後真剣な表情でキーアを見つめ
「…………………」
「まただんまりか……」
「黙っているという事は話してしまったら未来に影響があるという事でしょうね……」
黙り込んでいるキーアを見たランディは疲れた表情をし、ノエルは複雑そうな表情をしていた。
「……エイドス達もそうですが、キーアも私達にとっては絶対に失う訳にはいかない”切り札”ですね…………」
「というかそっち方面じゃなくても、キーア以外は戦闘面でも切り札に近いよね~?」
「………まあ皆さん、とんでもない強さですものね…………」
真剣な表情で呟いたセティに続くようにシャマーラとエリナは苦笑しながら答え
「それにしてもあの無邪気で可愛いミントちゃんにそんなとんでもない事ができたなんてね…………」
「フフ、人は見かけに寄らないという例ですね。例えで言うとナベリウスとかそうですし。」
「……?……どう……して…………??」
セティ達に続くようにエオリアは苦笑し、リタは微笑み、リタの言葉を聞いたナベリウスは首を傾げた。
「サティア様の事まで”無かった事”にされるなんて、絶対に許されない事です……!」
「ええ……それどころか私達とセリカ様との出会いまで”無かった事”にされた可能性もあるのだから……」
「そんな事、絶対にさせないわ!」
「ま、それを言ったらイリーナ様の件までそうなっていたかもしれないからね…………私もさすがにそれは許せないわ。」
「サリア、よくわかんないですけど、ご主人様達と一緒にいる為に一杯頑張るです~!」
「フン!”人”の身で”因果”を操ろうとする愚行をする愚か者共が…………”神”であるわらわが裁きの鉄槌を降してやるわ!」
真剣な表情で呟いたシュリとエクリアの言葉にマリーニャは頷き、カーリアンは目を細め、サリアは決意の表情をし、レシェンテは怒りの表情で”大樹”を睨んでいた。
「いずれにしても……俺達のやる事は変わらない。アリオスさん、マリアベルさん、イアン先生たち……彼らの真意を確かめつつ、この手でキーアを取り戻すだけだ。」
「ええ……!」
「……はい……!」
「キーアも頑張る……!」
決意の表情で言ったロイドの言葉にエリィとノエル、キーアはそれぞれ力強く頷いた。
「いっや~、何て言うか、マジで武者震いしてきたわね!」
その時グレイスは口元に笑みを浮かべて呟き
「……グレイス。どうしてお前がここにいる?マクダエル元議長と一緒に、船を降りたのではなかったのか?」
グレイスの言葉を聞いたダドリーは呆れた表情で尋ねた。
「うっさいわね~。あたしの勝手でしょ?それにクロスベル市民だって今回の顛末は知りたがるはずよ。まあ、そのあたりのフォローは任せなさいって♪」
「う、うーん………」
「イマイチ不安ですが……」
笑顔で言ったグレイスの言葉を聞いたロイドは考え、ティオはジト目でグレイスを見つめた。
「そう言えば…………局長やリウイお義兄様達…………凄いとしか言いようがないわね……」
「ああ…………たった2日でエレボニアとカルバードを壊滅状態に陥らせた上、今日で同時に首都と帝都を攻めて滅ぼすという話だったからな…………」
「……いくら歪竜や魔導兵器があるとはいえ、市街地戦では市民達を巻き込まない為には使っていないはずです。――――メンフィルもそうですがクロスベルも白兵戦が強い事をゼムリア大陸中に知らしめる結果となったでしょうね。」
「あたしとしては色々と複雑ですけどね……」
不安そうな表情で呟いたエリィの言葉にロイドは疲れた表情で頷き、真剣な表情で呟いたエリゼの言葉を聞いたノエルは複雑そうな表情で呟き
「いや~、あの話にはマジで驚いたわ!しかもヴァイスハイト局長……あ、ヴァイスハイト皇帝か。あの”鉄血の子供達”の”氷の乙女”を自分の配下にしたどころか、エレボニア皇家のあのアルフィン皇女を将来娶るって話でしょ?凄いわね~。」
「……リウイがイリーナ様を娶ったように、クロスベルは諸外国から本物の”国”として見られる事になるでしょうね。」
「ええ…………皇家の血というのは国の”王”になるには必要不可欠ですからね……」
「ったく、あのリア充王は…………とうとう本物のお姫様にまで手を出しやがって……!」
「う~ん……皇女様と仲良くできるかな~?」
「ハア…………よりにもよって”氷の乙女”がクロスベルの所属になるだと?…………今後はあの”氷の乙女”もクロスベルに何らかの形で関わってくる事を考えたら頭が痛くなって来たぞ………」
「”氷の乙女”といえば……エレボニア帝国にあるギルド支部の撤退に関する件で動いていたそうだし…………敵にしたら恐ろしいけど、味方にしたらとんでもなく心強いでしょうね。」
「アルフィン皇女を娶る事もそうだけど…………一体どうやって”鉄血の子供達”を自分の配下にしたんだろうな?話に聞く限り彼らは”鉄血宰相”に絶対服従を誓っているとの話だし……」
グレイスは笑顔で答え、目を伏せて呟いたカーリアンの言葉を聞いたエクリアは真剣な表情で頷き、ランディは溜息を吐いた後悔しそうな表情をし、フランは真剣な表情で考え込み、ダドリーは溜息を吐いた後疲れた表情をし、エオリアは苦笑し、リィンは不思議そうな表情で呟いた。
「まあ、女好きのヴァイスの事だから、実はその”氷の乙女”って女を抱いて骨抜きにしたんじゃないのかしら♪」
「ま、まっさか~…………」
「滅茶苦茶すぎますよ…………第一敵だった相手にそんな短い間でどうやってそんな関係になるのですか……」
からかいの表情で言ったカーリアンの言葉を聞いたロイドは大量の冷や汗をかいて苦笑し、エリィは疲れた表情で呟いた。
「フフ、案外ありえるかもしれませんよ?どんな言葉にも惑わされないつもりだった私もロイドさんが私に向けた”たった一言”で身体だけでなく心も”奪われて”、決意も一瞬で崩壊してしまいましたし。」
「ちょっ、リーシャ!?」
微笑みながら言ったリーシャの言葉を聞いたロイドは慌て
「ええっ!?い、一体何が……!」
「全く…………局長のように多くの女性を侍らすとは…………ガイが知ったら嘆くぞ……」
「フフ、ガイさんだと逆に感心すると思いますけどね……」
ノエルは驚いて声を上げ、ダドリーは呆れた表情で溜息を吐き、セシルは微笑んだ。
「…………ロイド?まさかとは思うけど、リーシャさんとも既にそういう関係なのかしら?今の話からすると私が”初めて”だという話も嘘だったのかしら?」
「エリィ!?ないないない!女神に誓ってそれはないよ!」
そして膨大な威圧を纏ったエリィに微笑まれたロイドは慌てた後何度も首を横に振って答え
「あ、それならさ。エイドス自身もいる事だし、後でエイドスの前で懺悔して全て話せばいいんじゃない?さすがに本物の”空の女神”の前では嘘はつけないだろう?」
「ワジッ!!」
口元に笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞き、ワジを睨んで怒鳴った………………
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