英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~クロスベル警察”特務支援課”の情報~前篇
同日、20:30――――
その後明日の戦いに向けて準備を整え、食事を終えたアリサ達はサラと共にミーティングを始めていた。
~第3学生寮~
「さてと。明日はクロスベル湿地帯で現れた”大樹”に向かい、”特務支援課”と協力して作戦を開始するけど……先程、プリネ姫の使者――――ルクセンベール卿から”特務支援課”や彼らに協力するメンバーについての詳細な情報を渡してもらえたからコピーした書類を貴方達にも渡すわ。……先に言っておくけど、とんでもない豪華メンバー揃いよ?」
サラは多くの書類をアリサ達に配って口元に笑みを浮かべた。
「豪華メンバー揃いって……」
「それほどの強者が揃っているのか?」
サラの言葉を聞いたエリオットは冷や汗をかき、ラウラは尋ねた。
「――――ま、説明を聞いていれば嫌でもわかるわ。まずは”特務支援課”リーダー、ロイド・バニングス。彼は”天使”と”悪魔”をそれぞれ一人ずつと”契約”――――つまり従えているわ。」
「ええっ!?て、天使と悪魔を……!?」
「普通に考えて真反対の存在ですよね……?」
サラの説明を聞いたアリサは驚き、エマは冷や汗をかいて尋ねた。
「ロイド・バニングスの事件解決能力は抜群でね。――――かつてはマクダエル市長暗殺未遂事件、D∴G教団事件を解決したのも彼が動いたからそうよ。正直、彼の捜査官としての実力はクロスベル警察でもエリート揃いの捜査一課クラスと言ってもおかしくないわ。」
「なっ!?マクダエル市長暗殺未遂事件に加えて、”D∴G教団”事件まで……!?」
「ほう………………」
「……俺達より一年年上……と書いてあるな。凄いな……」
「そう言えばオジサンもロイド・バニングスの事件解決能力は褒めてたね~。」
「………それに”教団”にも関わったとなると武術の腕も相当…………」
ロイドの情報を聞いたマキアスは驚き、ユーシスとガイウスは感心し、ミリアムとフィーは静かな口調で呟いてロイドの写真を見つめていた。
「それと彼が従えている天使がとんでもない曲者でね…………”西ゼムリア通商会議”で”鉄血宰相”とロックスミス大統領を嵌めた策を考え、裏で動いていたのはその天使だそうよ。」
「なっ!?」
「馬鹿なっ!?あの”鉄血宰相”に加えてロックスミス大統領もだと!?」
「あの時から僕達”革命派”の旗色が一気に悪くなったんだよね~。」
「……つまりは彼らにとって軍師の役割と言う訳か……」
ルファディエルの説明を聞いたマキアスとユーシスは声を上げ、ミリアムは疲れた表情をし、ラウラは静かな口調で呟いた。
「そうね。”革命派”は彼が従えている天使の策略によってボロボロにされたと言ってもおかしくないわ。」
「…………………」
「フン、とんでもない策士だな…………」
「とても天使とは思えない方ですね……」
サラの説明を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし、ユーシスは鼻を鳴らし、エマは不安そうな表情をしていた。
「――――次に行くわよ。エリィ・マクダエル。”特務支援課”のサブリーダーよ。」
「”マクダエル”というと…………」
「マクダエル元議長と”聖皇妃”の縁者か。」
サラの話を聞いたマキアスはエリィの写真を見つめて考え、ユーシスは静かに呟き
「ええ……確かエリィさんはマクダエル元議長の孫娘でイリーナ皇妃の妹のはずよ。」
アリサは頷いて答えた。
「アリサさんは知っているのですか?」
「うん……とは言っても小さい頃にお母様と一緒に会った事があるIBCのディーター総裁から話を聞いている程度よ。自分の娘―――マリアベルさんの友人で、マクダエル市長にちょうど私と同じくらいの孫娘がいるって。……ただイリーナ皇妃については知らなかったようだけど……」
エマに尋ねられたアリサは頷いた後考え込み
「あの情報は寝耳に水な話だったんだよね~。今でも何でメンフィルがそこまでして”聖皇妃”の情報を隠したのか意味不明なんだよね~。」
ミリアムは不思議そうな表情で答えた。
「―――ティオ・プラトー。”闇夜の眷属”の一人にしてエプスタイン財団の”魔導杖”のテスト用員の第一人者……つまりエリオットとエマにとって先輩にあたる子ね。」
「え…………」
「”魔導杖”の……ですか?」
サラの話を聞いたエリオットは呆け、エマは不思議そうな表情をし
「そう。その子が使っているのは初期タイプの”魔導杖”だそうよ。貴方達二人の”魔導杖”はその子の”魔導杖”のデータを元に作られた改良型よ。」
二人の言葉にサラは頷いて答え
「しかし……何故14歳で既に働いているのだ?日曜学校も卒業していない歳だろうに……」
ラウラはティオの写真を見て眉を顰めていた。
「あ~……その子はちょっと色々と”ワケあり”でね。対面した時は何も聞かないようにして。」
ラウラの言葉を聞いたサラは気まずそうな表情をして答え
「…………どうやら”特務支援課”とやらも俺達”Ⅶ組”のように色々と理由があって集まっているメンバーのようだな……」
ガイウスは静かな口調で呟いた。
「―――――ランディ・オルランド。元クロスベル警備隊所属だったんだけど……その前の経歴が凄いわ。それについてはフィー、貴女の方がよく知っているんじゃないの?」
「ん…………”赤い星座”の団長――――”闘神”バルデル・オルランドの息子にして”赤き死神”。……私も何度かやり合った事がある。”闘神の息子”が猟兵を辞めて、何で警察なんかにいるのかが理解不能だけど。」
サラに視線を向けられたフィーは頷いてランディの写真を見つめていた。
「ええっ!?」
「も、元猟兵がクロスベル警察に……!?」
フィーの話を聞いたアリサとマキアスは驚き
「……それでフィー。このランディという者は実際どのくらいの実力の持ち主なんだ?」
ラウラは真剣な表情でフィーを見つめて尋ねた。
「……正直一対一でまともにやり合ったら私では勝てない。」
「ええっ!?フィーちゃんが!?」
「フィ、フィーって確か”西風の旅団”っていう猟兵団で”西風の妖精”っていう異名で呼ばれて活躍していたんだよね?そのフィーでも無理なの……?」
静かな口調で答えたフィーの言葉を聞いたエマは驚き、エリオットは信じられない表情で尋ねた。
「……”赤き死神”と私の強さのスペックは全然違う。以前私を含めた2個中隊が”赤き死神”が率いる僅かな手勢によって壊滅に追いやられたし、”猟兵”としての実力も恐らくだけどザクセン鉄鉱山で戦った”V”―――――ヴァルカンと同じくらいだと思う。」
「あのテロリストの幹部の一人と同じだなんて……!」
「……相当な強さだわね……」
「フィーをも遥かに超える強さを持つ元猟兵か……」
フィーの説明を聞いたマキアスは驚き、アリサとラウラは真剣な表情でランディの写真を見つめていた。
「―――次はこの3人…………ウィルフレド・ディオンの娘であるセルヴァンティティ・ディオン、シャマーラ・ディオン、エリナ・ディオン。彼女達はかつてクロスベル警察の”特務支援課”に留学という形で所属していたそうだけど、既にクロスベル警察を退職しているのよ。にも関わらず”特務支援課”を助ける為に反対する両親達を納得させて駆け付けたそうよ。」
「ええっ!?じゃ、じゃあ彼女達があの”匠王”の……!?」
「確かリベールの”異変”の解決にも協力した職人であり領主の者だったな……」
「そんな凄い人のご息女達が…………」
「しかも我々より年齢が下なのにも関わらず仲間の為に駆け付けるとは…………」
「……俺達以上に仲間想いな娘達のようだな。」
サラの説明を聞いたアリサやユーシス、エマは驚きの表情で、ラウラとガイウスは感心した様子でセティ達の写真を見つめ
「――――セシル・パリエ・ノイエス。彼女はウルスラ病院の看護師達の纏め役という他のメンバーの中では異色を放っている人物なんだけど……その看護師にはあるとんでもない秘密があるのよ。」
「秘密……ですか?」
「一体なんなんですか?」
マキアスとエリオットはセシルの写真を見つめた後サラに尋ねた。
「――――”英雄王”リウイ・マーシルンの側室の一人にして、”癒しの聖女”にとっては養母に当たる方なのよ。」
「ええっ!?あ、あの”英雄王”のですか……!?と、という事は……」
「……”姫君の中の姫君”の腹違いの母に当たる。」
「ぼ、僕も今初めて知ったし…………それにしても何で”英雄王”が娶った人ってみんな情報局の情報網に引っかからないのかな~?」
サラの説明を聞いたアリサは驚き、フィーは静かな口調で呟き、ミリアムは表情を引き攣らせた後疲れた表情で溜息を吐いた。
「け、けどどうして看護師の方がわざわざ自ら戦場に向かうのでしょうか……?」
「……ルクセンベール卿から話を聞いたけどその人はロイド・バニングスの兄の婚約者でバニングス一家とは家族同然の付き合いがあったらしいわ。恐らくその関係だと思うわよ。」
不安そうな表情で呟いたエマの言葉を聞いたサラは答えた。
「こ、婚約者!?」
「じゃ、じゃあなんで今は”英雄王”と結婚しているんですか……!?」
サラの答えを聞いたアリサは驚き、エリオットは信じられない表情で尋ねた。
「――――その婚約者が殺されたのよ。犯人が不明という形でね。」
「!!」
サラの話を聞いたその場にいる全員は目を見開いて息を呑み
「へ~……この人が犯人不明という形で事件が暗礁に乗り上げた被害者であるガイ・バニングスの婚約者だったんだ~。」
「ミリアムちゃんは知っているの?」
目を丸くして呟いたミリアムの言葉を聞いたエマは尋ね
「うん。当時いたガイ・バニングスっていう捜査官は相当優秀でエレボニアやカルバードからも厄介者扱いされていた捜査官だったらしくてね~。ガイ・バニングス殺害の犯人はガイ・バニングスの存在を疎んだカルバードかエレボニア(僕達)の仕業とまで噂された事もあるくらいだよ?」
「……あたしも話だけは知っているわ。クロスベル警察のガイ・バニングスは当時の遊撃士協会でも知られていた名前だから。」
「……どうやら彼女もまた俺達のように色々と理由がありそうだな……」
ミリアムとサラの説明を聞いたガイウスは目を伏せて呟いた。
「あ、ちなみに彼女はイーリュン信徒で攻撃はできないらしいけど、彼女の護衛として”神狼”が常についているそうよ。」
「”神狼”……ですか?」
「まるでお伽話の中に出てくる存在みたいな呼ばれ方ですね……」
(なっ!?”神狼”ですって!?何故”眷属”が……!確か”彼ら”は”盟約”に縛られて人に力を貸すことはできないはずよ!?)
「ま、実際そんな存在よ?なぜなら―――――」
サラの説明を聞いたマキアスとエマは不思議そうな表情をし、寮の出入り口で聞き耳を立てているセリーヌは驚いた。そしてサラはアリサ達の”神狼”の説明をした。
「ええっ!?”空の女神”の眷属!?」
「馬鹿な……そのような存在、”伝説”の存在ではないか!?」
「……しかしリアンヌ様が存在している以上、そのような存在がいてもおかしくないな……」
”神狼”の説明を聞いたエリオットとユーシスは驚き、ラウラは納得した様子で呟き
「”空の女神”の眷属か…………心強く、そしてありがたい存在だな……」
「け、けどどうしてそのような存在が”特務支援課”の方達に力を貸している上、そのセシルさんでしたか。その方を護っているのでしょうね……?(まさか”私達”の存在も知っているのでは…………)」
ガイウスは口元に笑みを浮かべ、エマは不安そうな表情で呟き
「さあ?”連中”の考えはあたし達にはサッパリわからないわよ。」
サラは溜息を吐いた後疲れた表情で溜息を答えた。
「―――ノエル・シーカーにアレックス・ダドリー。アレックス・ダドリーはクロスベル警察のエリート揃いの捜査一課の中でも特に実力がある捜査官で、ノエル・シーカーはあんた達より歳が一つ上だけどかつての警備隊で”曹長”を務め、警備隊の副司令の右腕的な存在だったそうよ。」
「二人とも若いながらも優秀なんですね…………」
「フン、さっきから聞いていて感じたがクロスベルの精鋭をかき集めたように見えるな。」
サラの説明を聞いたマキアスは驚いてダドリーとノエルの写真を見つめ、ユーシスは鼻を鳴らして目を細めて二人の写真を見つめていた。
「――――リィン・シュバルツァーにエリゼ・シュバルツァー。この二人は”元エレボニア貴族”よ。」
「”元エレボニア貴族”……ですか?」
「………もしかして父上のようにメンフィルに降伏した貴族の関係者なのか……?」
「!!!」
(……まさか…………よりにもよってこんな形で出会う事になるなんて……!)
サラの話を聞いたマキアスは不思議そうな表情をし、ラウラは複雑そうな表情で呟き、リィンの写真を見たエマは目を見開いて息を呑み、セリーヌは厳しい表情をしていた。
「…………――――思い出したぞ。”シュバルツァー男爵家”。温泉郷ユミルを納める男爵家で確か”百日戦役”時、戦う事もせずに降伏し、エレボニア貴族からは”エレボニアの恥さらし”と揶揄されている貴族だ。」
「あ!そう言えばユミルはメンフィル領だったわね……!」
静かな表情で呟いたユーシスの言葉を聞いたアリサは声を上げた。
「そう。………ちなみにもう今だからぶっちゃけるけどリィン・シュバルツァーは貴方達――――特科クラス”Ⅶ組”のクラスメイトになっていたかもしれない人物なのよ。」
「ええっ!?」
「俺達”Ⅶ組”の…………」
疲れた表情で答えたサラの話を聞いたエリオットとガイウスは驚いた。
「彼は身元不明でシュバルツァー男爵に拾われ、そのまま養子にしてもらったという経緯を持っていてね。オリヴァルト皇子もその出身こそが”Ⅶ組”のまとめ役として期待していたのだけど…………彼は既にメンフィル帝国の軍人として特殊任務についていたから、無理だったそうよ。」
「……なるほど。平民であり、貴族でもあるからか。」
「……確かに貴族と平民が入り混じっているこの”Ⅶ組”の纏め役としてピッタリだったかもしれないな…………」
「複雑ね……私達のクラスメイトになっていたかもしれない人とこんな形で会う事になるなんて………」
「そ、そうですね…………」
サラの説明を聞いたユーシスは目を伏せ、マキアスとアリサは複雑そうな表情で呟き、エマは冷や汗をかきながら頷いた………………
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