英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~最後の特別実習~
~トールズ士官学院・会議室~
「しかし少しだけ気になっていたが……何故Ⅶ組の面々をこの場に呼び寄せたのだい?」
気を取り直したオリヴァルト皇子はアリサ達を見回した後ヴァイス達を見つめ
「ああ、それはだな――――」
ヴァイスはオリヴァルト皇子に説明をした。
「……なるほどね。ならばボクもⅦ組の設立を提案した者として君達に謝罪しておかないとね。――――申し訳なかった。ボクの力が及ばなかったせいで祖国がこのような結果になってしまって。」
説明を聞いたオリヴァルト皇子は頷いた後アリサ達を見つめて頭を深く下げ
「そ、そんな……!私達に謝る必要なんてないですよ……!」
「僕達は自分の意志で今まで何とかやって来たんですから……!」
「俺達もこのまま状況に流される訳にはいきません……!」
「……むしろ私達の方でも何かできる事はないか、考えている所です。」
「もし僕達で力になれるような事があれば何でも仰って下さい!」
「”Ⅶ組”として何かできるようなことがあればお手伝いします!」
「……私も……頑張る…………学院の危機の時は何もできなかったし…………」
「僕もみんなと一緒に頑張るよ!”革命派”は終わっちゃったけど、”Ⅶ組”はまだ終わっていないし!」
「ああ…………どのような小さな事でも構わない。俺達に出来る事があれば仰っていただきたい。」
アリサ達はそれぞれ答えた後決意の表情でオリヴァルト皇子を見つめた。
「あなた達…………」
アリサ達の反応を見たサラは驚き
「…………………………」
「フフ……少し見ない内に立派に成長したではないか………」
オリヴァルト皇子は呆け、オーラフ中将は口元に笑みを浮かべてエリオットを見つめていた。
「…………ありがとう。とは言ってもさすがのボクもこの状況で君達にしてほしい事は思いつかないしな…………ヴァイス、そっちで手伝って欲しい事は何かあるかい?あれば是非言ってほしい。」
オリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて答えた後ヴァイスに視線を向け
「…………そうだな……………………」
ヴァイスは考え込んでいた。
「―――!”Ⅶ組”……だったか。お前達、エレボニア帝国の内戦が起きた原因の一つ――――クロイス家に一矢報いる事ができるのならやってみたいか?」
そして考えていたヴァイスは目を見開いた後真剣な表情でアリサ達を見つめて尋ね
「ヴァイスさん、まさか…………」
ある事に気付いたプリネは驚き
「クロイス家というと……」
「内戦の原因になった一つ―――エレボニア帝国の資産を凍結したIBCか。だが、既に貴様とギュランドロス・ヴァスガンとやらがクロスベルの皇となった時点でクロイス家は滅ぼされたのではないか?」
尋ねられたアリサは考え込み、ユーシスは静かな表情で答えてヴァイスを見つめて尋ねた。
「ディーター・クロイスは俺達の手で殺害した。だが、奴の娘であるマリアベル・クロイスはまだ生き残っている。――――”創られた至宝”を使ってゼムリア大陸を支配する為にな。」
「”至宝”…………?」
「…………………………」
ヴァイスの説明を聞いたガイウスは不思議そうな表情をし、サラは目を細めて黙り込み
「あ、あの~……どういう事でしょうか?」
「できれば詳しい説明をして頂きたい。」
エリオットは恐る恐る尋ね、ラウラは静かな表情でヴァイスを見つめて言った。そしてヴァイスはマリアベルがしようとしている事や”D∴G教団”やIBCの関係も含めて説明した。
「ええっ!?”七の至宝(セプト=テリオン)”の一つがかつてクロスベルに存在した上、IBCの創設者がその代替品を作った上、さらに古代の錬金術師は彼らの事だったんですか!?」
説明を聞いたトマス教官は驚き
「何だかお伽話を聞いているような気分ですわ…………」
「あのIBCの創設者の一族が裏でそのような事をそんな昔から企んでいたとは………」
メアリー教官とベアトリクス教官は信じられない表情をし
「まさかかの”教団”とIBCが繋がっていたとは……!奴等の大元の資金源は各国の腐敗した有力者達ではなく、IBCだったのか!」
ゼクス中将は怒りの表情で呟き
「……それでヴァイスハイト陛下。Ⅶ組の生徒達に何をしてほしいのですか?」
目を伏せて考え込んでいたヴァンダイク学院長は真剣な表情でヴァイスを見つめて尋ねた。
「彼らにして欲しい事は唯一つ。俺のかつての部下達――――クロスベル警察”特務支援課”が大切にしている”至宝”として創られた少女――――キーア奪還の援護、そしてできれば魔女マリアベルの討伐だ。人の手で”因果”を操らせる等、あってはならぬ事だ。向こうの戦力も充分だと思うが、戦力は多ければ多いほどいい。」
「Ⅶ組に彼らの手伝いを…………フッ、まさかこんな形で彼らとⅦ組の生徒達が顔を合わせる事になるなんてね。――――それでどうだい?やってくれるかい?恐らくその実習が”エレボニア帝国に所属するトールズ士官学院”としての特科クラスⅦ組”最期の特別実習”になるだろう。」
ヴァイスの答えを聞いたオリヴァルト皇子は驚いた後口元に笑みを浮かべ、そして真剣な表情でアリサ達を見回して尋ねた。するとアリサ達は互いの顔を見合わせ
「はいっ!!」
全員同時に頷いた。
「……ヴァイスハイト陛下。生徒達だけにそのような決戦地へ行かせるのは危険すぎます。相手は”風の剣聖”に加えて、”赤の戦鬼”、”血染め”までいるとの事ですし。彼らの担任である私の同行も認めて頂けないでしょうか?」
Ⅶ組の様子を見たサラはヴァイスを見つめて尋ね
「ちなみにサラ君はかつてA級正遊撃士として名を馳せた強者だから文句なしの戦力だよ。」
「ほう?――――いいだろう。貴女の同行も認めよう。」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたヴァイスは目を丸くした後頷き
「……ありがとうございます。」
ヴァイスの答えを聞いたサラは会釈をした。
「ヴァイスさん。よければ我が軍の飛行艇を一隻、彼らをクロスベルへと運ぶ事を指示しましょうか?」
「…………その方がいいかと。ガレリア要塞が”クロスベル独立国”が保有していた謎の人形兵器によって消滅させられたため、線路も消滅し、鉄道でクロスベルに向かう事は不可能な上、現在の状況では帝国内の飛行船を使う事は不可能ですし……」
クレアが説明を続けた。
「そうだな………」
プリネの申し出とクレアの説明を聞いたヴァイスは頷きかけたその時
「いや…………彼らを決戦の場へと運ぶ飛行艇はボクが提供しよう。」
その時オリヴァルト皇子が申し出た。
「何……?」
「殿下、まさか…………」
申し出を聞いたヴァイスは眉を顰め、ヴィクターは驚き
「”カレイジャス”を彼らの為に使うのですか?」
「まあ…………!それは良い提案ですね!」
目を丸くしたセドリック皇子は尋ね、アルフィン皇女は微笑んだ。
「”カレイジャス”…………もしかしてあの”アルセイユ”の二番艦と言われるアルノール家専用巡洋艦の事ですか?」
「その通り。フフ、かつてリベールの”アルセイユ”がエステル君やボク達を最終決戦地――――”リベル=アーク”や”幻影城”へ連れて行ったように、”カレイジャス”も”Ⅶ組”の面々を最終決戦地へと連れて行く事になるとは、これも”アルセイユ”としての運命かもしれないね。」
目を丸くしたプリネに尋ねられたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて頷き
「―――プリネ姫。アルゼイド子爵を一時的にでいいので、”カレイジャス”の艦長に戻すことを許して頂けないだろうか?元々あの船の艦長はアルゼイド子爵なんだ。彼には”Ⅶ組”を最終決戦地へと連れて行く資格はある。」
「……勿体なきお言葉です…………」
プリネを見つめて言ったオリヴァルト皇子の話を聞いたヴィクターは静かな表情で会釈をし
「……そういう事でしたらいいでしょう。アルゼイド子爵。”Ⅶ組”の方々を無事最終決戦地へと連れて行き……そして全員無事で戻って来て下さい。」
「ハッ!」
プリネの指示に敬礼をして答え
「――――”特務支援課”が最終決戦地であるクロスベル湿地帯に突如現れた”大樹”に突入する時刻は明日の11:00だ。それまでに各自準備を行った方がいいだろう。”特務支援課”の方には俺から連絡をしておく。なので現地で合流し、共に作戦を開始するといいだろう。」
「はいっ!!」
ヴァイスの言葉に”Ⅶ組”は全員頷いた。
「みんな……絶対絶対無事に帰ってきてね!」
「クロウの事は本当に残念だったけど…………君達は必ず無事に生きて帰ってくるんだよ?」
そしてトワとジョルジュは心配そうな表情でアリサ達を見つめて言った。
「任せて下さい!」
「フン、逆にその”特務支援課”とやらが俺達の足手纏いにならなければいいがな。」
二人の言葉を聞いたアリサは頷き、ユーシスは鼻を鳴らし
「アハハ…………でも話を聞く限り、その”特務支援課”って所の人達の方が凄そうなんだけど……」
エリオットは苦笑しながら言い
「―――もし武器や治療薬を新調したいのならトリスタの町郊外に展開しているメンフィル軍の陣を訪ねてみてください。私の一存で軍に保管されてある予備の武器や医薬品を貴方達に無料で分けるように指示しておきます。」
「……それは助かる。なんせ相手はあの”赤い星座”の”赤の戦鬼”や”血染め”なんだから、今の装備では心許ないし。」
「……僕達の為にわざわざありがとうございます。」
プリネの申し出を聞いたフィーは静かな口調で呟き、マキアスは会釈をした。
「―――プリネ姫。サラ・バレスタイン以下特科クラス”Ⅶ組”は明日の決戦の準備のために失礼してもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いません。レーヴェ、先に陣に戻って兵達に私の指示――――トールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”の方々が訪ねた時、軍にある予備の武器等を彼らに無料で分け与える指示を伝えてもらっていいかしら?それとアルゼイド子爵。艦長として色々する事が多いでしょうから、今から”カレイジャス”に向かってもらっても構いませんよ。」
サラに尋ねられたプリネは頷いた後レーヴェに視線を向け
「ああ。―――それでは俺はこれで一端失礼する。」
「ハッ!―――失礼します!」
レーヴェは頷き、ヴィクターは敬礼した後会議室を出て行き
「ミュラー、アルゼイド子爵を”カレイジャス”まで案内してあげてくれ。」
「……わかった。」
オリヴァルト皇子に指示をされたミュラー少佐も会議室を出て行き
「――――それでは失礼します!」
サラとⅦ組の面々も続くように会議室を出て行った。
「オリビエ。お前達はどうするつもりだ?」
サラ達が出て行くとヴァイスはオリヴァルト皇子を見つめて尋ね
「……よければヘイムダルを制圧する際、ボク達も加えてくれないかい?内戦を止める為に集めた戦力――――師匠とミュラー君、そしてオーラフ中将の部隊が各地に散っているんだ。せめて内戦を起こした”元凶”にはボク達も一矢報いたいんだ。」
尋ねられたオリヴァルト皇子は真剣な表情で答え
「……ヘイムダルでしたら招集をかければ、遅くとも4時間後には集合できるでしょう。」
オリヴァルト皇子に続くようにゼクス中将が説明をした。
「……わかった。明日の10:00にヘイムダルに各地に駐屯している連合軍は守備隊を残して一斉に総攻撃を仕掛ける作戦となっている。―――こんな形とはいえ、お前と共に戦える事を嬉しく思うぞ、オリビエ。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
そしてヴァイスとオリヴァルト皇子は握手をし
「お前はどうする、ナイトハルトよ。」
「……自分も従軍します。例えどのような結果になろうと、自分は軍人としての務めを果たすまでです……!」
「フッ、そうか……」
ナイトハルト少佐の答えを聞いたオーラフ中将は口元に笑みを浮かべていた……………
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