英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~”放蕩皇子”オリヴァルト・ライゼ・アルノール~
~トールズ士官学院・会議室~
「オリヴァルトお兄様!ご無事で何よりです!」
「本当によかったです………」
会議室に入って来たオリヴァルト皇子を見たアルフィン皇女は明るい表情をし、セドリック皇子は安堵の溜息を吐き
「やあ、アルフィン。それにセドリックも。ヴァイス達のことだからそこまで酷い事はしていないと思っていたよ。」
オリヴァルト皇子は口元に笑みを浮かべてセドリック皇子達を見つめ
「おお……!セドリック殿下、アルフィン皇女……!よくぞご無事で……!」
ゼクス中将は驚いた後会釈をし
「ゼクス中将…………!」
「お前も無事だったか、ガイウスよ。」
自分を驚きの表情で見つめるガイウスに気付いたゼクス中将は口元に笑みを浮かべ
「と、父さん!?」
オーラフ中将を見たエリオットは驚き
「エリオット!無事で何よりだ~!!空の女神よ、この奇蹟に感謝する……!」
「ちょっ、やめてよ、父さん……!」
驚いているエリオットをオーラフ中将は力一杯抱きしめ
「…………中将。ご子息の無事を確認できて嬉しいのは理解できますがせめて場所を弁えて下さい。」
「ム……仕方ないな…………それより…………お前も無事だったか、ナイトハルト。」
呆れた表情で指摘したナイトハルト少佐の言葉を聞いたオーラフ中将はエリオットから離れた後ナイトハルト少佐を見つめた。
「ハッ。不覚にも敵の新兵器の機能によって敗北し、拘束されてしまい、中将の元に合流できなくて真に申し訳ありません…………君も無事で何よりだ、ミュラー。」
オーラフ中将の言葉に敬礼をして答えたナイトハルト少佐はミュラー少佐を見つめ
「ああ……だが今は互いの無事を確認している場合ではなかろう。」
見つめられたミュラー少佐は頷いた後真剣な表情でヴァイス達を見つめた。
「―――こうしてお会いするのは”影の国”以来ですね、オリヴァルト皇子。このような形で再会する事になってしまうとは悲しい事ですが。」
「フッ、貴女が気に病む必要はないよ、プリネ姫。こうなってしまったのも全てはエレボニアが抱えていた”闇”のツケが一気に返ってきたようなものだしね。……まあ、君にとってはようやくボク達エレボニア帝国に対しての復讐の機会が巡ってきたって所かな?」
真剣な表情で自分を見つめて言ったプリネの言葉にオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて答えた後、レーヴェに視線を向け
「………今俺がこの場にいるのはプリネ姫の親衛隊副隊長としているだけだ。それに現在生きている”ハーメルの民”はそのような事は望んではいない。」
「…………そうか………………」
「……………………」
静かな表情で答えたレーヴェの話を聞いたオリヴァルト皇子は頷き、ゼクス中将は目を伏せて黙り込んでいた。
「”ハーメルの民”!?」
「まさか…………”ハーメルの悲劇”で生き残った民がいらっしゃるのですか!?」
一方セドリック皇子とアルフィン皇女は驚き
「なっ!?」
「まさかお二人は…………」
二人の反応を見たミュラー少佐は驚き、オーラフ中将は信じられない表情をし
「………………一体どこでその話を?」
オリヴァルト皇子は呆けた後真剣な表情で二人を見つめて尋ねた。
「――――俺が教えた。クロスベル問題の詳しい内容や、”鉄血宰相”の抱えている闇やお前がしようとしていた事なども全て含めてな。」
「………………なるほど、君が…………おや?君は確か宰相殿の………………どうして君までそこにいるんだい?」
ヴァイスの答えを聞いたオリヴァルト皇子は納得した表情でヴァイスを見つめた後、クレアに気付いて目を丸くし
「なっ!?貴女は……!」
「”鉄血の子供達”の”氷の乙女”!何故貴女がそこにいるのだ!?」
「それに”光の剣匠”殿まで……!」
ミュラー少佐とゼクス中将は驚きの表情でクレアを見つめ、オーラフ中将は驚きの表情でヴィクターを見つめた。そしてヴァイスとプリネは二人の事情をそれぞれ説明し、説明を聞き、ヴィクターの説明を聞いたオリヴァルト皇子達は納得していたが、クレアの事情を知るとはそれぞれ固まった!
「ば、馬鹿な……!?そんな普通ならあり得ない方法であの”氷の乙女”を寝返らせただと……!?」
我に返ったゼクス中将は愕然とした表情をし
「~~~~~っ~~~~~」
(同情するぞ……何度も自分の情事を他人に話されているようなものだしな……)
クレアは顔を真っ赤にした顔を俯かせ、ラクリールは同情の視線でクレアを見つめ
「いや~、さすがに今のはボクも驚いたよ♪まさか彼女とそんな羨ましい関係になって、寝返らせるなんて♪さすがだよ、ヴァイス!ボクも見習わないといけないようだね♪」
「それ以前にもっと見習うべき事があるだろうが、この阿呆!」
オリヴァルト皇子は笑顔で答え、オリヴァルト皇子の言葉を聞いたミュラー少佐は怒鳴ってオリヴァルト皇子を睨んだ。
「ハッハッハッ!残念ながら女性の”全て”をわかっていないお前では無理だな。大方まだ一人も抱いていないのだろう?」
オリヴァルト皇子の言葉を聞いたヴァイスは笑った後口元に笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめ
「クッ……!確かに君の言う通りだね……!愛の伝道師であるにも関わらず、”真なる愛”を知らぬとは何たる不覚……!」
「ヴァイス殿!この阿呆にこれ以上余計な事を教えないで頂きたいっ!」
ヴァイスの言葉に本気で悔しがっている様子のオリヴァルト皇子を見たミュラー少佐はヴァイスを睨んで怒鳴り
「エリオットよ!あのような女を侍らしている男に決してなるでないぞ!?」
「ええっ!?無理無理無理!僕にはそんな事、絶対できないから!?」
さらに真剣な表情で叫んだオーラフ中将の言葉を聞いたエリオットは驚いた後首を何度も横に振って答えた。
「フム……しかしお前のその中性的な容姿なら、”その筋”を好む女性達には可愛がられ、愛されると思うぞ?」
「ええっ!?」
そしてヴァイスに言われたエリオットは驚き
「た、確かに言われてみれば…………」
「エリオットの可愛らしい容姿なら十分にありえる。しかも声もどっちかというと女性だし。」
「アハハ…………」
アリサは冷や汗をかいてエリオットに視線を向け、フィーは静かに呟き、エマは苦笑し
「ちょっと!?それはどういう意味だよ!?僕って、そんなに男らしくないの!?」
3人の言葉を聞いたエリオットは焦った様子で叫び
「エリオットよ!決してそこらの馬の骨の女に騙されるでないぞ!?」
「父さんも本気で心配しないでよ!?」
真剣な表情で叫んだオーラフ中将の言葉を聞いたエリオットは必死の表情で叫び
「中将…………」
「フフ……相変わらず親馬鹿ですな……」
オーラフ中将の様子を見たナイトハルト少佐は片手で頭を押さえ、ゼクス中将は口元に笑みを浮かべ
「セドリック。貴方も他人事じゃないわよ?」
「ア、アルフィン!?」
アルフィン皇女に真剣な表情で見つめられたセドリック皇子は驚きの表情で声を上げ
「フム……確かに言われてみればセドリックのその容姿なら年上のレディ達にウケる事、間違いなしだね♪」
「兄上まで!?」
からかいの表情のオリヴァルト皇子に見つめられたセドリック皇子は再び声を上げた。
「…………色気に騙されない為に、ある程度成長して来たら”女”を教える為に娼館に連れていって体験させた方がいいかもしれんな……」
「フム……それは良い提案だね♪」
「もう、ヴァイス様ったら…………セドリックはアルノール家の跡取りなのですから、せめて最高級の女性を用意してあげてくださいよ?」
その様子を見たヴァイスは考え込み、オリヴァルト皇子は笑顔で頷き、アルフィン皇女は溜息を吐いた後、真剣な表情でヴァイスを見つめ
「ちょっと!?3人共、僕を置いて滅茶苦茶な相談をしないで下さいよ!?」
3人の会話を聞いたセドリック皇子は慌てた様子で声を上げ
「この阿呆は…………!」
「オリヴァルト殿下……お戯れはそこまでにしてください…………それにアルフィン皇女も……」
ミュラー少佐は顔に青筋を立て、ゼクス中将は疲れた表情で溜息を吐いた。
「ヴァイス、一体どうやって”氷”の心を溶かしたのか、後で詳しく聞かせてもらってもいいかい♪」
「フッ……他ならぬお前の頼みならいいだろう。」
そして笑顔で尋ねてきたオリヴァルト皇子の言葉を聞いたヴァイスは口元に笑みを浮かべ
「お二方とも、もうこれ以上は止めて下さい!!」
クレアは顔を真っ赤にして二人を睨んで怒鳴った。
「アハハ……あの二人は相変わらずですね……」
「ええ…………二人ともある意味大物ですね……」
その様子を見ていたツーヤとリアンヌは苦笑した。
「いや~、まさか君のそんな顔を見れるなんてね♪すっかりヴァイスに骨抜きにされたようだねえ?フフ、昨夜は一体どんな熱い夜だったのかな?」
一方クレアの様子を見たオリヴァルト皇子は酔いしれた表情をし
「そうでしょう!?あたしも一瞬別人かと思いましたよ♪ホント、昨夜は一体どんなことがあったのか非常に気になりますよねえ?」
サラは頷いた後口元をニヤニヤさせながらクレアを見つめ
「クッ…………!」
見つめられたクレアは悔しそうな表情で身体を震わせて顔を真っ赤にしていた。
「ほ、本来なら重苦しい雰囲気になるはずなのに、何だか脱力するような事ばかり起こっている気がするな……」
「ア、アハハ……で、でも重苦しい雰囲気になるよりはよっぽど良いと思うよ?」
一連の流れを見ていたジョルジュは表情を引き攣らせ、トワは冷や汗をかいて苦笑していた。
「フフ…………――――さてと。オリヴァルト皇子、おふざけはそこまでにして、私達を尋ねてきた理由を聞きましょうか。何故、投降をしてきたのですか?」
ヴァイス達の一連の流れを微笑みながら見ていたプリネは真剣な表情になってオリヴァルト皇子を見つめた。するとその場に静寂が訪れた。
「――――今起こっているエレボニア内での”全ての戦争”を終結させるために投降しに来たのさ。―――エレボニア皇族たるボクが連合側に降伏する事でエレボニア帝国は事実上滅び…………”自国領に巣食う反乱分子を滅ぼす為に”残りの”貴族派”と”革命派”を連合側が全て掃討し、元エレボニア領に住まう人々に平和を訪れさせてくれる事を願うと同時に元エレボニア領に住まう人々の連合側に対する反抗の意志を少しでも防ぐ為にね。」
オリヴァルト皇子は静かな表情で答えた。
「お兄様……」
「兄上……」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたアルフィン皇女とセドリック皇子は静かな表情でオリヴァルト皇子を見つめ
「それは……オリヴァルト皇子もエレボニア帝国が滅ぶことを受け入れたと判断してよいのですか?」
プリネは真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。
「ああ。……アルフィン、セドリック。君達も既にそのつもりだからこそ、ヴァイス達と共にいるのだろう?」
「…………はい。」
「……すみません、兄上。僕達だけで勝手な判断をしてしまって…………」
オリヴァルト皇子に視線を向けられたアルフィン皇女とセドリック皇子はそれぞれ静かな表情で答えた。
「君達がそう決めたのならボクからは言う事はないよ。恐らく父上達も既にここまで攻め込まれてしまったら、無駄な血を流さない為にも同じ判断をくだされるだろうしね。―――それで。ボク達アルノール家は今後どうなるのかな、ヴァイス………いや、”クロスベル皇帝”ヴァイスハイト陛下と言った方がいいかな?」
「別に今まで通りの呼び方で構わん。お前達アルノール家に関してだが―――――」
そしてヴァイスはオリヴァルト皇子達にアルノール家が今後どうなるかについて説明した。
「アルフィン皇女がそのような事を提案されるとは…………」
「………………」
「少し見ない内に随分と成長されましたな………」
説明を聞いたゼクス中将は驚き、ミュラー少佐は信じられない表情でアルフィン皇女を見つめ、オーラフ中将は驚きの表情で呟き
「…………なるほど。フッ、君にならアルフィンとセドリックを任せても安心だな。例え敗戦国の姫君とはいえ、女性の涙が大嫌いな君の事だからアルフィンを大切にするし、アルフィンの願い通りセドリックを立派な為政者へと育ててくれるのだろう?」
オリヴァルト皇子は静かな表情で頷いた後、口元に笑みを浮かべてヴァイスを見つめ
「ああ。最初聞いた時は内心、驚いたぞ。弟の為とはいえ、そこまで考え付いていた上、覚悟もできていたとはな。」
見つめられたヴァイスは頷いて答えた。
「ハッハッハッ!なんせ自慢の妹だからね♪いや~、これで唯一の心配事がなくなって安心したよ。おかげでボクは気楽に以前のように不世出の天才にして漂泊の演奏家であるオリビエ・レンハイムとして活動できるからね♪今度は大陸中を回って、大陸に住まう皆に愛を伝えないとね♪いや、まてよ……?リウイ陛下達に頼んで異世界に行って、異世界で活動するのもアリだな♪」
「…………宿題も片付けられなかった貴様にそんな事をさせると思っているのか?ヴァイス殿、このタワケは一生死ぬまで馬車馬のようにこき使ってくれて構わん。」
笑顔で答えたオリヴァルト皇子の言葉を聞いたミュラー少佐は顔に青筋を立てて呟き
「ミュラー君、ヒドイ!……ハッ!それもまた君の愛なのかい!?」
オリヴァルト皇子は叫んだ後酔いしれた表情でミュラー少佐を見つめた。
「…………今この場でエレボニア国民を代表して、袋叩きにしてやろうか?」
「ゴメンなさい、調子に乗り過ぎました。」
「殿下…………少しは場と状況を考えて発言して下さい…………」
そして顔に青筋を立てて自分を睨むミュラー少佐の言葉を聞いたオリヴァルト皇子は疲れた表情で答え、ゼクス中将は疲れた表情で溜息を吐き、その場にいる全員を脱力させた………………
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