英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~アルノール家の謝罪~
~トールズ士官学院・会議室~
「フフ………私達の前でも見せてくれましたわね、その器の大きさは。」
「凄いな…………改めて自分の力不足さや”皇”としての器のなさを痛感させられるよ……」
その様子を見ていたアルフィン皇女は微笑み、セドリック皇子は驚いた後疲れた表情で溜息を吐いた。
「…………セドリック殿下、アルフィン皇女。お二人がご無事で何よりでございます。――――お二人の口から確認しておきたいのですが、本当にお二人はもう戦う事を諦めたのですか……?」
そしてヴァンダイク学院長はアルフィン皇女達に会釈をした後真剣な表情で尋ねた。
「――――はい。ヴァイス様……いえ、ヴァイスハイト陛下よりエレボニアが抱えているさまざまな”闇”を聞かされ、私達は自分達が皇族なのにも関わらずどれほど世間知らずであるかを思い知らされました。」
「……今の僕達にエレボニアを導く資格はありません。国を大きくするが為に守るべき民達を犠牲にしたにも関わらず、今まで目を逸らし続けた上、民と貴族の確執がこれほど深い事にも気付かず…………結果内戦が起きる事を許してしまい、最後には長年積もりに積もっていたクロスベルの民達の怨嗟が爆発し、このような結果となってしまいました。―――申し訳ありません。僕達アルノール家が不甲斐なかったせいでこんな事になってしまって。」
「……私達アルノール家はエレボニア帝国が滅ぶことを受け入れます。罵倒や恨み言もあるのなら仰って下さい。幾らでも聞きましょう。」
ヴァンダイク学院長の言葉にアルフィン皇女とセドリック皇子は静かな表情で答えた後、二人はその場で頭を深く下げた。二人の行動にその場にいる全員は驚き
「あ、頭をお上げ下さい、アルフィン皇女、セドリック殿下!」
我に返ったハインリッヒ教官は慌て
「殿下達に罪はありません……!むざむざ内戦が起きる事や他国に侵略される隙を作る事を許してしまった我々軍人に責があります……!」
「エレボニアの状況を何とかしようとしたオリヴァルト殿下に対して、肝心な所で力になれなかった私にも責任があります。申し訳ありません………」
「父上…………我々の力不足でこのような結果となってしまい、申し訳ありませんでした、セドリック殿下、アルフィン皇女。」
ナイトハルト少佐は真剣な表情で叫び、ヴィクターは頭を深く下げ、ヴィクターの行動を見たラウラも続くように頭を深く下げ
「……我々エレボニア貴族にも責任の一端があります。己の欲を満たす為に平民から税を搾り取った挙句、内戦まで起こしてしまったのですから…………」
「それは父さん達――――――”革命派”にも責任があります!もっと他にもやり方があったかもしれないのに、内戦まで起こしてしまって……!申し訳ありませんっ!」
「クロスベルの民達を脅す為に”列車砲”を提供し…………あまつさえ一部の社員達の暴走で内戦に加担した私達”ラインフォルトグループ”にも責任があります……!本当に申し訳ありませんっ!」
ユーシスとマキアス、アリサはそれぞれ頭を深く下げて答え、続くようにその場にいるメンフィルやクロスベル関係の者達を除いた者達も続くように頭を下げて謝罪の言葉を次々と言った。
「「…………………………」」
その様子を見たプリネとレーヴェは目を伏せて黙り込んでいた。
「……どうか顔をお上げ下さい、セドリック殿下、アルフィン皇女。むしろ責められるべきは一つに纏まり切れなかったエレボニアに住まう全ての人々です。殿下達だけの責任ではありませぬ。」
「……ありがとうございます。皆さんにそう言って頂けるだけでも少しだけ気が楽になります。」
「―――――メンフィル、クロスベル共にエレボニアに住まう人々を虐げない事はここにいるヴァイスハイト陛下と現在バリアハートに駐屯しているリウイ陛下が確約してくれましたので、それほど酷い状況になる事にはならないと思われるのでご安心下さい。」
ヴァンダイク学院長の言葉を聞いたセドリック皇子とアルフィン皇女はそれぞれ顔を上げて答えた。
「…………お二人……いえ、アルノール家は今後どうなるのですか?」
二人の答えを聞いたマカロフ教官は複雑そうな表情で尋ね
「――――戦争終結後父上達が”無事”なら保護して頂き、”貴賓”として扱ってくれるそうです。そして僕とアルフィンはヴァイスハイト陛下の元で皇族として一から鍛え直して頂く事になりまして…………何れ僕が一人前の皇族となったその時、元エレボニア領の領主として任命される事になるそうです。」
「そして私はヴァイスハイト陛下の側室として嫁ぐ事になっております。……セドリックを立派な為政者に育てて頂く条件として、そのようにして頂く事を私が提案しましたので。」
「ええっ!?ア、アルフィン皇女が……!?」
「侵略した国の皇に嫁ぐなんて普通に考えてありえない…………」
セドリック皇子とアルフィン皇女の答えを聞いたエリオットは驚き、フィーは信じられない表情をし
「そ、その……アルフィン皇女は平気なのですか…………?祖国を侵略した国の皇の元に嫁ぐなんて……」
メアリー教官はヴァイスを気にしながら恐る恐ると言った様子で尋ねた。
「失敬な。こう見えても俺に嫁ぐ女性は皆、幸せにする主義だ。アルフィン皇女も必ずや幸せにしてみせよう。」
するとヴァイスは口元に笑みを浮かべて答え
「フフ…………ヴァイスハイト陛下自身もこう仰っているので心配しないで下さい。それにまだ接した時間は短く、ヴァイスハイト陛下の全ては知りませんが……ヴァイスハイト陛下……いえ、ヴァイス様は私が知る限りの貴族の紳士の方々とは比べものにならないぐらいの素敵な殿方ですわよ♪」
「ハ、ハア…………?」
微笑みながら言ったアルフィン皇女の説明を聞いたメアリー教官は戸惑いながら頷き
(ね、ねえ、エマ。もしかしてアルフィン皇女って……)
(アハハ…………あの様子ですと一人の女性としてヴァイスハイト陛下に恋しているようですね…………)
小声で尋ねてきたアリサの言葉を聞いたエマは苦笑しながらヴァイス達を見つめていた。
「重要会議中の所、失礼します!緊急の報告があるゆえ、会議を中断する事をお許しください!プリネ姫、よろしいでしょうか!」
するとその時扉がノックされて、兵士の声が聞こえてきた。
「―――入って来て報告をしてもらって構いません。」
「ハッ!失礼します!」
そしてプリネの答えを聞いた兵士は扉を開けて会議室の中に入り
「何があったのですか?」
入って来た兵士にツーヤが尋ねた。
「ハッ!実は先程一隻の巡洋艦がこの町に近づいた上…………通信で我が軍への投降を希望している上、さらにプリネ姫と話がしたいと。」
「巡洋艦だと……?」
「一体何の為に投降して来たのでしょうか?」
兵士の報告を聞いたレーヴェは不思議そうな表情をし、ラクリールは眉を顰め
(…………まさか………………)
(あの方が姿を現したのか……?)
クレアとヴィクターは考え込みながら驚きの表情をし
(お、おい。まさかとは思うが……)
(ああ……その巡洋艦が俺達の知る巡洋艦だとしたら…………)
小声で話しかけてきたマキアスの言葉にガイウスは静かに頷き
「―――――それで、私と話をしたい者とは何者ですか?」
プリネは静かな表情で尋ね
「ハッ!エレボニア皇族、オリヴァルト・ライゼ・アルノール皇子と名乗っております!」
プリネの疑問に兵士は敬礼をして答えた。
その後プリネ達は兵士に指示をし、少しの時間が経つとオリヴァルト皇子、ミュラー少佐、ゼクス中将、エリオットの父親であるオーラフ中将が会議室に入って来た………………
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