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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~トールズ士官学院制圧作戦~中篇

~トールズ士官学院・職員室~



「報告!正門前に展開している部隊のおよそ7割が壊滅しました!」

「何とか耐えろ!バリアハートから援軍が来れば戦況を建て直せるはずだ……!」

職員室で教官達を見張っていた隊長は部下の報告を聞いて表情を歪め

「た、大変です!バリアハートがクロスベル、メンフィルの連合によって制圧されたとの情報が入りました!」

「何だとっ!?」

さらに新たに入って来た兵士の報告を聞いた隊長は驚き

「なっ……!?バリアハートが落ちたですって……!?ハーケン門から進軍したにしてはあまりにも速すぎるわ……!」

「―――――!!クロスベルのベルガード門方面からの挟撃か……!」

「…………という事はディーター・クロイスは崩御し、”六銃士”達による”クロスベル帝国”が建国されたという事じゃな……」

職員室にいる武術、実戦技術を担当している教官の一人、サラ・バレスタインは信じられない表情をし、軍事学を担当している教官であり、エレボニア帝国軍に所属しているナイトハルト少佐は目を見開いた後厳しい表情をし、エレボニア帝国軍の名誉元帥であるヴァンダイク学院長は重々しい様子を纏って呟き

「何てことだ……セントアークに続いてエレボニアの歴史ある都市であるバリアハートが他国の連中に土足で踏みにじられるなんて…………」

士官学院の教頭であるハインリッヒ教官は表情を青褪めさせ

「……この調子だとルーレやオルディスも制圧されてるような気もしますけどね。」

「アハハ~……もしかして僕達はエレボニア帝国が滅ぶ瞬間を見る事になるかもしれませんね…………」

導力技術と自然科学を教えている教官―――マカロフ教官は目を伏せて呟き、エレボニアの歴史と文学を担当している教官、トマス教官は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「お父様達はご無事かしら………」

「……それにクロスベル、メンフィルの連合に制圧された地域に住む人々がどのような状況になっているのかも心配ですね…………特にエレボニア帝国は長い歴史の間、クロスベルの民達を苦しめていたのですから…………”クロスベル帝国”が今までの恨みを晴らしていなければよいのですが…………」

音楽、芸術、調理技術を担当している教官であるメアリー教官は不安そうな表情で呟き、医学を担当しており、保険医でもあるベアトリクス教官は真剣な表情で呟いた。

「さ、さらに……ルーファス様が敵将―――”クロスベル皇帝”ヴァイスハイト・ツェリンダーの手によって討ち取られ……………屋敷に軟禁中のアルフィン皇女とセドリック殿下は連合側に拘束されたとの情報も入りました!」

「なっ!?」

兵士の報告を聞いた隊長は目を見開き

「馬鹿なっ!?セドリック殿下とアルフィン皇女が敵国の手に落ちたというのか!?」

「何という事じゃ………………」

「し、しかもルーファス様まで討死されるなんて…………!」

「……………………………」

ナイトハルト少佐は信じられない表情をし、ヴァンダイク学院長は嘆き、ハインリッヒ教官は表情を青褪めさせ、サラは目を伏せた。

「報告!ルーレも連合側に制圧され……バリアハート、ルーレを中心に連合軍が進軍し、次々と我が国が納める都市や町が制圧し続けています!ザクセン鉄鉱山も連合の手に落ちました!さらにはログナー侯爵を始めとした多くの貴族の方々も討死されました!!」

その時新たな兵士が慌てた様子で入って来て報告し

「なあっ………!?」

報告を聞いた隊長は口を大きく開けて絶句し

「―――――終わったな。この調子だとノルディスとヘイムダルが落ちる日も近いな。」

「…………これがメンフィル帝国の”本気”か…………いくら内戦で国内が安定していない状態とはいえ、わずか一日にしてエレボニア帝国を壊滅状態に陥らせるとは…………」

マカロフ教官は疲れた表情で溜息を吐き、ヴァンダイク元帥は重々しい様子を纏って目を伏せて唸り

「ア、アハハ…………本当にエレボニア帝国が滅びますね…………」

「古くより伝統があるエレボニアが滅ぶなんて………………わ、私達はこれからどうなるんだ…………?」

「空の女神(エイドス)よ……どうかエレボニアの民達にお慈悲を…………」

「お願いします……私はどうなっても構いません……どうかその代わりに生徒達の命を助けてあげてください…………!」

トマス教官は大量の冷や汗をかきながら呟き、ハインリッヒ教官は表情を青褪めさせ、ベアトリクス教官とメアリー教官はその場で強く祈り

「クッ…………!肝心な時に軍人として国の窮地に戦えないとは……!」

「…………会長がご無事だとよいのですが…………それに今回の戦争でザクセン鉄鉱山が制圧された事に加えて多くの株主の方達――――ログナー侯爵閣下達が亡くなった事により、多くの貴族が滅ぶか取り潰しになった事はラインフォルトグループにとっても大打撃ですし…………このままだとラインフォルトグループは下手をすれば倒産してしまいます…………」

ナイトハルト少佐は悔しそうな表情で唇を噛みしめ、ラインフォルト家に仕え、”Ⅶ組”の寮の管理を任されているメイド―――シャロン・クルーガーは心配そうな表情で呟き

「…………恐らく遊撃士協会も”百日戦役”の時のように仲裁には動かないでしょうね。遊撃士協会はエレボニア帝国軍の手によって多くの支部が撤退させられたのですから…………」

サラは重々しい様子を纏って呟いた。するとその時扉が斬撃によって真っ二つにされて破壊され、そこからプリネ、ツーヤ、レーヴェ、エヴリーヌと数人の兵士達が部屋に突入して来た!


「き、貴様らは……!」

「ヒッ!?」

「も、もうここまで来たのか……!?」

プリネ達を見た兵士達は驚いたり悲鳴を上げ

「――――遅い。フェヒテンケニヒ!!」

「十六夜…………”破”!!」

「エクスヴェングス!!」

「ギャアアアアアアアアアア――――――ッ!?」

そしてプリネ達の強襲を受けた兵士達は次々と絶命し

「クソ――――――――――ッ!薄汚い簒奪者共が―――――ッ!!」

「撃て――――ッ!」

生き残った隊長や兵士達は銃撃を放ったが

「無駄ぁっ!!」

エヴリーヌはプリネ達の前に雷撃を放って銃弾を防ぎ

「キャハハハハハハハハッ!!死ね死ね死ね――――――――――ッ!!」

「ギャアアアアアアアアアア――――――ッ!?」

凶悪な笑みを浮かべて神速で次々と魔力の矢を放って、放たれた矢は残りの兵士達を四肢に命中した瞬間爆散し、さらに頭をも爆散させ

「どっかーん!!」

続けて魔術――――贖罪の雷を放って兵士達の死体を真っ黒焦げにした!

「キャアアアアアアアアアアアアッ!?」

エヴリーヌの残虐な攻撃によって無惨な姿となった兵士の死体を見たメアリー教官は悲鳴を上げ

「うっさいなあ…………せっかく敵を殺してあげたのに。―――そんなに死体を見るのが嫌ならすぐに消してあげるよ。審判の轟雷!!」

メアリー教官の悲鳴を聞いたエヴリーヌは顔を顰めた後雷の魔術を再び兵士達の死体に放ち、雷の魔術を受けた兵士達の死体は一瞬で灰となった!

「なんと惨い事を…………」

「弓に魔術………まさか”魔弓将”か?………………まさに異名通り”魔弓将”だな…………あの容姿であんなえげつない殺し方をするなんて…………」

エヴリーヌの行動を見たベアトリクス教官は重々しい様子を纏い、マカロフ教官は厳しい表情で呟き

「あら……?あの方は…………」

レーヴェを見たシャロンは首を傾げ

「――――!!確かあんたは…………”執行者”No.2――――”剣帝”レオン=ハルトッ!!」

サラは目を見開いて厳しい表情で声を上げ

「それに”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”や”蒼黒の薔薇”に加えて”魔弓将”までいるとは……!」

ナイトハルト少佐は真剣な表情でプリネ達を見つめた。



「…………?貴様は……!何故、貴様がいる。――――”死線”のクルーガー。」

一方シャロンに気付いたレーヴェは眉を顰めた後厳しい表情でシャロンを見つめ

「え…………」

「レーヴェさんのお知り合いなんですか?」

レーヴェの言葉を聞いたプリネは呆け、ツーヤは不思議そうな表情で尋ねた。

「―――ああ。その女は”執行者”だ。”執行者”No.Ⅸ―――”死線”のクルーガー。2年前の帝都を中心としたギルド襲撃事件の作戦に参加した。――――まあ、その事についてはお前の方がよく知っていると思うがな。――――元A級正遊撃士”紫電(エクレール)のバレスタイン”。」

尋ねられたレーヴェは答えた後不敵な笑みを浮かべてサラを見つめ

「ええそれはもう、嫌というほど知っているわねえ。まさかこんな所であんたに会えるとは夢にも思わなかったわよ、”剣帝”。2年前は随分と世話になったわねえ?」

見つめられたサラは厳しい表情でレーヴェを睨み

「フッ…………2年前のギルド襲撃事件には俺は関与していないぞ。その頃の俺の動向については遊撃士協会の情報にもあったと思うが?」

見つめられたレーヴェは口元に笑みを浮かべて答えた。

「よく言うわよ……襲撃した”猟兵団”――――”ジェスター猟兵団”の猟兵達に貴方が稽古してあげたって聞いたけど?」

レーヴェの言葉を聞いたサラは溜息を吐いた後厳しい表情でレーヴェを睨んだ。

「”執行者”…………!」

「全員、油断しないで下さいっ!」

「ハッ!」

その時プリネは驚き、ツーヤは警戒した様子でプリネの前に出て号令をかけ、兵士達と共にシャロンを睨みながら武器を構えて警戒していた。

「フフ……そんなに警戒しないで下さい……今の私は武装を解除されている状態なのですから。ですから、貴女達に危害を加える事はできません。」

対するシャロンは微笑みながら答えた後困った表情をして両手を上げ

「あっやしいわね~…………あんたならあたし達の知らない間に自分の武器を領邦軍の連中からくすねていそうだけど?」

シャロンの言葉を聞いたサラはジト目でシャロンを見つめ

「サラ様は私を買い被りすぎです。第一そういう事に関しましては”漆黒の牙”――――サラ様もご存知の今は遊撃士であるヨシュア様の専門分野ですわ。―――それにプリネ姫達に加えてレオンハルト様までいる以上、例え武器があったとしても私如きの腕では勝ち目はありませんわ。」

サラに見つめられたシャロンは苦笑した後静かな表情でプリネ達を見つめて言った。

「―――よく言う。貴様は多数を相手にした戦いが得意分野だろうが。どれほどの多くの敵がいようと、今まで得意のワイヤーで敵の動きを封じ、一瞬で仕留めてきただろうが。」

シャロンの言葉を聞いたレーヴェは不敵な笑みを浮かべ

「ですからそんなに警戒しないで下さいよ。第一今は”そちらのお仕事”は休業中ですわ。今の私はラインフォルトグループに仕えるメイドですので。」

シャロンは微笑みながら答えた。

「…………その言葉、信じていいのですね?」

シャロンの言葉を聞いたプリネは厳しい表情でシャロンを見つめて尋ねた。

「はい。そこまで疑うのでしたらこの場で服を全て脱ぎましょうか?」

「………………いいでしょう。―――ただし、少しでも不穏な動きをすればわかっていますね?」

シャロンの答えを聞いて少しの間考え込み、真剣な表情でシャロンを見つめて尋ね

「承知しております。それに私とてプリネ姫達を敵に等回したくありませんわ。」

尋ねられたシャロンはスカートを摘み上げて頭を下げ

「フン、どこまで本当なんだか…………」

サラは鼻を鳴らした後ジト目でシャロンを見つめた。



「――――さてと。最初に言っておきますが私達は貴方達に危害を加えるつもりはありません。現在各部隊に分かれて校舎内にいる領邦軍の殲滅に当たっていますが…………士官学院生並びに非戦闘員や一般市民達には危害を加えないように厳命してあります。」

そしてプリネは教官達を見回した後説明をし

「…………寛大なご処置、感謝致します、プリネ姫。儂の名はヴァンダイク。この学院の学院長を務めている者です。」

説明を聞いたヴァンダイク学院長は安堵の表情になった後会釈をした。

「……貴方が……―――初めまして。プリネ・カリン・マーシルンと申します。―――これよりトリスタ並びにトールズ士官学院は我ら連合側の指揮下に入ってもらいます。」

ヴァンダイク学院長を見たプリネは若干驚いた後会釈をし、そして真剣な表情で答え

「…………………………わかりました…………ただ……できれば士官学院生達や市民達、教官達も自宅や寮に返すことを許可して頂きたい……皆、領邦軍達によって監視、監禁されていた為、疲労が溜まっています。」

「ええ、構いませんよ。学院長殿を含めた皆さんもそれぞれ自由にされて構いません。”自国領の民”に不自由をさせる訳にはいきませんし。」

ヴァンダイク学院長の話を聞いたプリネは頷いた。

「”自国領の民”ね…………」

「クッ……!戦う事もできずに敵に膝を折るとは…………!」

サラは目を細めてプリネを睨んで呟き、ナイトハルト少佐は唇を噛みしめて壁を殴った。

「あ、あの……!関係ない話なのですが一つ聞いてもよろしいでしょうか……?」

その時メアリー教官が不安そうな表情でプリネを見つめ

「?どうぞ。私に答えられる範囲ならばお答えしますが。」

「そ、その……お父様達は…………”アルトハイム家”は無事なのでしょうか……?」

「”アルトハイム家”…………ああ、”アルトハイム伯爵家”ですか。…………ええ、ご家族の方々は無事ですよ。彼らも”ハイアームズ侯爵家”の方々のように我が軍に降伏しましたから。」

「!!ああ……!空の女神(エイドス)よ………感謝致します…………!」

プリネの答えを聞いて目を見開いた後その場で祈り

「よかったッスね、メアリー教官。」

「はい……!心配して頂きありがとうございます、マカロフ教官……」

口元に笑みを浮かべて言ったマカロフ教官の言葉を聞いたメアリー教官は頬を僅かに赤らめて答えた。

「自分の方からも聞きたい……!何故メンフィルはクロスベルの呼びかけに応えてこのような暴挙に出た……!今までエレボニア帝国はメンフィル帝国に対して敵対行動等取らなかったはずだ…………!」

その時ナイトハルト少佐は怒りの表情でプリネを睨んで叫んだ。

「――――色々とありますが……その中の一つはエレボニアに住む民の為です。」

その時リアンヌがヴィクターを連れて職員室の中に入って来た………… 
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