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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~Ⅶ組の決意~

~トールズ士官学院・1年Ⅶ組~



「ギャアアアアアアアアアアアアア―――――ッ!?」

「!?今の悲鳴は……!」

突如聞こえてきた悲鳴を聞いたアリサは驚き

「……恐らく領邦軍の連中だな。大方メンフィル兵に殺されたのだろう。」

「あわわわわわわっ!もうここまで来るなんて……!」

「エリオット、落ち着け。逆らいさえしなければ、敵とみなされる可能性は低くなる。」

ユーシスは重々しい様子を纏って呟き、エリオットは慌て、エリオットの様子を見たガイウスは忠告した。するとその時扉が開かれ―――

「…………どうやら皆、無事のようだな。」

ヴィクターが教室に入って来てアリサ達を見回して安堵の溜息を吐いた。



「父上!?」

ヴィクターを見たラウラは驚き

「じゃ、じゃあさっき兵を殺害したのは…………」

「状況から考えて”光の剣匠”だろうね~。」

「”光の剣匠”が相手した方は哀れとしか言いようがない……」

「ああ……エレボニア帝国が誇る剣士に一般兵が勝てる訳ないな……」

不安そうな表情で呟いたエマの言葉を聞いたミリアムは静かな表情で答え、目を伏せて呟いたフィーの言葉を聞いたマキアスは重々しい様子を纏って頷いた。

「父上!何故、祖国を裏切ったのですか!?」

その時ラウラは血相を変えて尋ね

「……………………私がメンフィルに屈した理由の一つはサザーランド州を制したレグラムの町にメンフィル軍による戦艦や飛行艇の艦隊が一斉に近づき……私達に圧倒的な戦力の違いを思い知らせたのだ。そして無益な血が流れる事を嫌うプリネ姫から提案があったのだ。降伏すれば、戦を仕掛けないとな。そして新たな国―――メンフィルに忠誠を誓う証として、エレボニアを滅ぼすまで従軍し、共に戦う事。だからこそ、今私はこの場にいる。」

「!!」

ヴィクターの説明を聞いて目を見開いて息を呑んだ。

「平民達に被害を及ぼさない為にも妥当な判断だったかと思います…………」

「……いくら何でも”人”の身で戦艦や飛行艇に敵うはずがないしな…………」

「………………………」

ユーシスとガイウスは重々しい様子を纏って呟き、マキアスは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「―――そして。もう一つの理由は仕えるべき主を見つけたからだ。」

「仕えるべき主……?」

ヴィクターが呟いた言葉を聞いたエマは不思議そうな表情をし

「――――まさか。あの女性騎士…………”槍の聖女”殿と非常に似ていた方ですか!?」

ある事に気付いたラウラは信じられない表情をして尋ねた。

「……既にお前も見たか、”あの方”を。その通りだ。」

「なっ……!?」

「う、嘘!?本当に本物の”槍の聖女”!?」

「馬鹿な……数百年前の人物だぞ!?」

「何で生きているの~!?」

ヴィクターの答えを聞いたラウラとアリサ、ユーシスは信じられない表情をし、ミリアムは混乱し

「も、もしかして”槍の聖女”は”闇夜の眷属”なのかな??ほら、”闇夜の眷属”って長生きだって話だし……」

「……でも、それだとおかしい。”闇夜の眷属”――――異世界の種族達が現れたのは”百日戦役”時だし……」

エリオットの推測を聞いたフィーは考え込みながらエリオットの推測を否定した。

「……にわかには信じ難いが”本物”だ。直に私も剣を合わせてみてわかった…………あの方―――リアンヌ様は”人の身である限り絶対に勝てない存在”だ。私自身、防戦一方どころか、加減をされた状態で一方的に蹂躙されたからな。」

「父上が!?」

「て、手加減した状態で”光の剣匠”相手に一方的に戦うなんて…………」

「……しかしそれなら疑問も残る。何故エレボニアの英雄であった彼女がメンフィルと共にエレボニアを滅ぼす為に動いているのだ……?」

ヴィクターの説明を聞いたラウラは驚き、マキアスは口をパクパクさせ、ガイウスは考え込みながら言った。するとその時



「――――全ては民の為です。」

なんとリアンヌが教室に入って来た!

「!!」

「あ…………!」

「あ、ありえん……!レグラムの町にあった石像と瓜二つではないか!?」

「ど、どうやら本物のようですね…………」

リアンヌを見たラウラは目を見開き、ユーシスは信じられない表情をし、エマは驚きの表情で呟いた。

「フフ……数ヵ月前、我が城に巣食っていた魔物を私に代わって退治しようとした事……感謝致しますよ。」

そしてリアンヌはアリサ達を見回して微笑み

「え……?”槍の聖女”の城……?」

「何の事を言っているんだ……?」

リアンヌの言葉を聞いたエリオットとガイウスは戸惑い

「あ――――――――――――――ッ!もしかしてあの時僕達を助ける為に槍を投げて球体みたいなのを破壊してくれた人!?」

ある事を思い出したミリアムはリアンヌを指さして叫んだ。

「ローエングリン城の事か……!」

「そ、それに”槍の聖女”が持っているその槍はあの時”ノスフェラトゥ”を召喚した大元を破壊した槍と同じですね…………」

ミリアムの言葉を聞いたユーシスは目を見開き、エマは信じられない表情でリアンヌが持っている槍を見つめ

「……………………」

ラウラは呆けた表情をしていたが

「こ、こうしてお会いする事ができて光栄です、リアンヌ様!で、ですが……一体何故貴女ほどの方がメンフィルと共にエレボニアを滅ぼす為に戦っているのでしょうか……?」

すぐに我に返って緊張した様子で答えた後、不安そうな表情で尋ねた。そしてリアンヌはヴィクターにした同じ説明をアリサ達に話した。

「……”平民達の為にエレボニアを滅ぼす”か。内戦を起こした”貴族派”と”革命派”、そして”エレボニア帝国自身”を滅ぼし、メンフィルとクロスベルという新たな”秩序”の元でなら平民達は穏やかに過ごせると貴女は考えたのか。」

「「…………………………」」

「た、確かに一理あるが……いくら何でも暴論すぎます!!”国”自体を滅ぼした挙句、他国に支配された方がまだマシだなんて……!支配された地域の人々が今度、どのような苦境に立たされるのか考えた事はあるのですか!?」

リアンヌの説明を聞いたユーシスは重々しい様子を纏って呟いた後皮肉気な笑みを浮かべ、アリサとラウラは複雑そうな表情で黙り込み、マキアスはリアンヌから目を逸らしながら言った後、リアンヌを睨んで尋ねた。

「実例としてメンフィル領となった元エレボニア領の民達の暮らしは以前より豊かになり、穏やかに過ごしていますから、大丈夫でしょう。」

「それは…………」

「そ、そういえば……クラブにいるメンフィル領出身の人から聞いた事があるよ……メンフィル領になってからは納める税金が安くなって生活に余裕が出た上、頻繁にメンフィル兵達が街道の魔獣を退治してくれるって…………」

「……俺も中将から聞いた事がある…………メンフィルは敵には容赦ないが、民に対しては平等に扱うと。」

リアンヌの答えを聞いたマキアスは答えが見つからず黙り込み、エリオットは複雑そうな表情で呟き、ガイウスは静かな表情で語り

「フン、それに比べて今のエレボニアはこの有り様だからな…………よりにもよって侵略された国に平民共の生活を指摘されるとは……エレボニアも墜ちたものだな。」

ユーシスは鼻を鳴らした後不愉快そうな表情をした。

「クロスベルと共に挟撃を仕掛けた事によってもはやエレボニア帝国は風前の灯と言っていいでしょう。既にバリアハート、ルーレもメンフィルとクロスベルの連合軍によって先程制圧されたとの情報が入りました。」

「ええっ!?」

「馬鹿なっ!?”四大名門”の本拠地が1日で同時に3か所も制圧されただと……!?」

リアンヌの説明を聞いたアリサとユーシスは驚き

「―――さらに。ザクセン鉄鉱山も制圧され、”ラインフォルトグループ”の兵器開発工場も全て連合側が差し押さえました。もはやエレボニア帝国側は抵抗できる力は現存の戦力のみと言っていいでしょう。エレボニア帝国が滅ぶのも時間の問題です。」

「そ、そんな!?そんな事をされたら、”ラインフォルトグループ”は……!」

「倒産確定…………武器を主力に売っていた”ラインフォルト”としては兵器開発工場を取られた上、ザクセン鉄鉱山の資源まで使えなくなったらおしまい……」

「アリサさん…………」

続けて説明したリアンヌの話を聞いたアリサは表情を青褪めさせ、フィーは静かに呟き、エマは心配そうな表情でアリサを見つめ

「!!ゼリカさんは!?アンゼリカさんはどうなったの!?」

ある事に気付いて血相を変えて声を上げた。

「あ…………!」

「ルーレが落とされたという事はログナー侯爵家も当然滅ぼされたか降伏したかのどちらか……」

アリサの言葉を聞いたエリオットは目を見開き、フィーは静かに呟いた。

「……ログナー侯爵は討死し……アンゼリカ嬢は降伏し……敵対の意志はないと連合側に伝えた後は連合側からは解放されたそうだ。」

「よ、よかった…………」

「不幸中の幸いだな……」

ヴィクターの説明を聞いたアリサは安堵の溜息を吐き、ガイウスは静かな表情で言った。



「それと……ユーシス君。気をしっかりして聞いて欲しい事がある。」

その時ヴィクターは重々しい様子を纏ってユーシスを見つめ

「…………………兄の事ですね?」

見つめられたユーシスは真剣な表情でヴィクターを見つめて尋ねた。

「あ……………」

「バリアハートが落ちたって事はバリアハートを護っているユーシスのお兄さんは殺されたか降伏したかのどっちかだよね~。」

二人の会話を聞いたエマは目を見開き、ミリアムはユーシスを見つめて言った。

「…………ルーファス殿はクロスベル皇帝ヴァイスハイト・ツェリンダー相手に勇敢に戦い……名誉の死を遂げられたそうだ。」

「…………………………」

「そんな…………あの人が………………」

「ユーシスさん…………」

ヴィクターの答えを聞いたユーシスは目を伏せて黙り込み、マキアスは信じられない表情をし、エマは心配そうな表情でユーシスを見つめた。

「…………兄の遺体はどうなったのですか?」

「ヴァイスハイト陛下の命により、手厚く葬られたそうだ。」

「そうですか…………わざわざ教えて頂き感謝いたします…………」

ヴィクターの説明を聞いたユーシスは若干身体を震わせながら会釈をした。

「後はミリアム君。クレア憲兵大尉もバリアハートに軟禁されているセドリック殿下とアルフィン皇女を奪還する為に鉄道憲兵隊と共にバリアハートに現れたそうだが、連合側に敗北し、鉄道憲兵隊は全滅、クレア憲兵大尉自身は捕えられたそうだ。」

「そっか……クレアちゃん、負けちゃったんだ…………オジサンの最後の頼みであるクレアちゃんも負けちゃったんじゃ、もうオジサンや僕達―――”革命派”は終わりだね~…………」

「父さん…………」

「あのクレア大尉が…………」

「それに鉄道憲兵隊が全滅するなんて、相手はよほどの手練れ…………」

そしてヴィクターの情報を聞いたミリアムは目を伏せて呟き、マキアスは複雑そうな表情で呟き、エリオットは驚き、フィーは静かな口調で呟いた。

「!?ち、父上……!今、セドリック殿下とアルフィン皇女がバリアハートに軟禁されていると仰いましたが……まさか!?」

その時ある事に気付いたラウラは血相を変えてヴィクターを見つめ

「ああ。殿下達は既に連合側に身柄を拘束され…………お二方はエレボニア帝国が滅ぶ事を受け入れ、ヴァイスハイト陛下……いや、クロスベル帝国に忠誠を誓ったそうだ…………」

ヴィクターは重々しい様子を纏って答えた。

「そんな……皇族が……よりにもよってそのお二方がエレボニア帝国が滅ぶ事を認めてしまえば……」

「兵達も士気を失くして終わり…………」

「……まあ、貴族は敗北を受け入れるとはとても思えんな……」

「内戦を起こしたくらいなんだから、絶対ありえないよね~……しかもその相手がクロスベルだなんて。まあ、その原因の仲間である僕が言えた権利はないけど。」

ヴィクターの答えを聞いたマキアスは信じられない表情をし、フィーは重々しい様子を纏って呟き、ガイウスは目を伏せて呟き、ミリアムは外を見つめて言った。



「……明日あたりにでもプリネ姫が学院の教官の方達を集めて今後どうなるかについて説明する事になるでしょう。少なくても貴方方や学院の方々、市民の方々に危害を加える事は一切ありませんので、そこの所は安心しておきなさい。―――行きますよ、アルゼイド子爵。」

「ハッ。…………今はまだ戦闘中だから教室に待機している事を勧める。戦闘が終わればメンフィル軍が解放するバレスタイン教官がすぐにお前達に指示を与えに来るだろう。」

そしてリアンヌがヴィクターと共の部屋を出て行った。

「……私達にできる事ってもうないのかしら……?」

二人が出て行くとアリサは静かな口調で呟き

「アリサ。気持ちはわかるが……」

「もう僕達にどうこうできる問題じゃないよ…………」

アリサの言葉を聞いたマキアスは複雑そうな表情になり、エリオットは肩を落として呟いた。

「――――だが、俺達にもできる事は必ず何かある。…………例えそれがどのような小さな事でも。」

「……そうだな…………私達はいつも自分達に出来る事を精一杯して頑張って来た。必ず何かあるはずだ。」

その時目を伏せて考え込んでいたガイウスは目を見開いて決意の表情で呟き、ガイウスに続くようにラウラも呟き

「ま、こうなったら僕も最後まで付き合うよ。もうどうせ、僕達”革命派”は終わりだしね~。」

「フン……この俺が中途半端で投げ出す訳がなかろう。――――例え兄上が死のうと、俺は悲しみや復讐に囚われて立ち止まる訳にはいかん。それが誇り高き”貴族”だからな。」

「私も……”Ⅶ組”の一員として何かできる事があればしたいです……!」

ミリアムは静かな口調で呟き、ユーシスは鼻を鳴らした後決意の表情になり、エマは目を伏せて呟いた後目を見開いて決意の表情になり

「君達…………ええい、こうなったらもう自棄だ!僕も最後まで付き合う!」

「アハハ……みんなが決めたのなら、僕も最後まで付き合うよ。僕だってみんなの仲間なんだから。」

クラスメイト達の反応を見て驚いた後真剣な表情になったマキアスの言葉を聞いたエリオットは苦笑した後決意の表情になり

「例え何があろうと私達は私達…………きっと私達に出来る事が何かあるはずだわ……!」

「ああ……!」

「……空の女神(エイドス)よ……どうか俺達に風の導きを…………」

エリオットに続くようにアリサとラウラも決意の表情になり、ガイウスはその場で祈った。



後にこの決意がトールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”の”最後の特別実習”へ導くきっかけとなる……………… 
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