英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第149話
~オルキスタワー・屋上~
「う、ううっ…………おじさま………………!」
絶命したディーターの死体を見たエリィは泣き崩れ
「ごめんね、エリィ…………こうなる事もわかっていたのに、教えられなくて…………!」
エリィの様子を見たキーアは辛そうな表情で涙を流してエリィを抱きしめ
「エリィさん……………キーア…………」
ティオは辛そうな表情でエリィとキーアを見つめ
「なんで……なんでここまでするんですか!?ディーターさんだって操られていたのに!?」
ロイドはヴァイス達を睨んで叫んだ。
「操られていたとはいえ、自らの野望の為に民や警備隊員達を犠牲にした罪は重い。”自分の意志”ではなく、何者かに脅迫されて実行したのならまだ情状酌量の余地はあるが…………」
ロイドの言葉に対してヴァイスは真剣な表情で答え
「ディーターの場合は”自分の意志”で今回の事件を引き起こした。だったらもう、許す余地はなしだ。しかもそいつは”D∴G教団”を操っていた黒幕の一人でもあるからな。そんな世界の”害”は生きる権利はねえ。」
ギュランドロスは厳しい表情で答えた。
「クッ………………!」
(まあ、正論ね。……今まで”正道”を歩んで来たロイド達には受けがたいでしょうけど。)
「………………………」
二人の答えを聞いたロイドは唇を噛みしめ、ルファディエルは納得した表情を見せた後複雑そうな表情になり、ランディは目を伏せて黙り込んだ。
「クスクス、それにしてもまさか無傷の”神機”が一機手に入るとは思わなかったわ♪”ヴァイスハイト皇帝陛下”、”ギュランドロス皇帝陛下”。この”神機”は我々メンフィルが頂いても構わないですか?」
一方レンは小悪魔な笑みを浮かべてアイオーンを見つめた後ヴァイス達に尋ね
「まあ、かなり惜しい気もするがいいだろう。今の俺達ではそいつは扱えないから猫に小判だ。ただし、”対価”は貰うがな。」
「……だな。ヴァイスの言う通り”対価”として既にメンフィルが占領した地域のいくつかはクロスベルに分けてもらうぜえ?」
尋ねられたヴァイスは頷き、ギュランドロスは口元に笑みを浮かべて尋ね
「了解しました♪まあ、その件につきましては”全て終わって”からリウイ陛下やシルヴァン陛下と話し合って決めるという事で。――――ところでもう一機、”神機”みたいなのがあるけど、一体どういう事かしら?ここに来るまで端末で状況を見ていたけど貴方が操っていたわよねえ?」
尋ねられたレンは上品な仕草をして答えた後、興味深そうな表情でリィンを見つめた。
「!!…………はい。その人形兵器……いや、”騎神”は俺が操縦しました。」
「兄様………………」
レンに見つめられたリィンは目を見開いた後頷いて答え、エリゼは心配そうな表情でリィンを見つめた。
「どういう事か、説明してもらうわよ、リィン・シュバルツァー。これは”メンフィル皇女”である私の命令です。」
「………了解しました。実は――――――」
そしてリィンはレンに”騎神”やエイドスが教えてくれた自分の事を説明した。
「フーン……まさかミントが空の女神まで連れてきていたなんてねえ?ま、いいわ。とにかく話を聞く限り、その人形兵器―――”灰の騎神”ヴァリマールだっけ?それはリィンお兄さんしか操縦できないのよね?」
「……はい。」
「そう。じゃあ、パパ達に事情を話してその”騎神”は貴方専用のメンフィル帝国の”兵器”として登録して、メンフィル帝国軍が保管して、整備などもするように手配しておくわ。それでいいわね?戦いになったら貴方が呼べるからいいでしょう?」
「…………お願いします。正直俺一人ではこれをどうしたらいいのか、困っていましたので…………」
レンの言葉にリィンは頷き
「あの………兄様の所属が変えられるような事はないですよね?その……例えば機工軍団に所属とか。」
エリゼは心配そうな表情で尋ねた。
「ああ、その辺りは安心していいわよ?こんな兵器が扱えるのならむしろリフィアお姉様の親衛隊としても手放したくない戦力の上、この事を知ったリフィアお姉様の性格上、絶対に手放さないと思うし。それは貴女も良く知っているでしょう?」
「た、確かにそうですね…………」
レンの答えを聞いたエリゼは苦笑し
「ま、とりあえずお姉様には逸早く教えておくわね♪…………………あ、リフィアお姉様?忙しい所悪いんだけど、お姉様にとってとっても素晴らしいお話があってね―――――」
レンはエニグマで通信を開始した。
「ええ……ええ…………わかったわ。本人達に伝えておくわ。――――――先程の話を聞いたリフィアお姉様が貴方達シュバルツァー家の爵位を上げる事をシルヴァンお兄様に進言する事を決められたそうよ。」
「え………………」
「シュバルツァー家の爵位を…………?」
通信を終えたレンの言葉を聞いたリィンは呆け、エリゼは戸惑った。
「ええ。だって、長女のエリゼお姉さんはリフィアお姉様お付きの侍女の上、リフィアお姉様の専属侍女が一人しかいないとはいえ、”姫将軍”さんやママと同じ”皇族専属侍女長”の位はあるし……長男のリィンお兄さんはリフィアお姉様の親衛隊に所属した上、”騎神”なんていうレンの”パテル=マテル”とも並べるほどの”兵器”を手に入れ、操れるようになったんだから、それほどの優秀な人材を出したシュバルツァー家の”昇格”は当たり前でしょう?メンフィルは実力主義なんだし。ちなみに”伯爵”の爵位を与える事を考えているそうよ。ま、元々エリゼお姉さんがリフィアお姉様お付きになった時点でその話は考えていたそうだから、遠慮する必要はないわ♪」
「”伯爵”……………!」
「な、何だか実感がわかないですね、兄様…………」
レンの説明を聞いたリィンは驚き、エリゼは戸惑った。
「皆さん……無事ですか!?」
「みんな、怪我をしていない!?」
その時待機していたメンバー――――ノエルやダドリー達、そしてセシルがロイド達に近づいてきた。
「みんな…………」
「今のは一体…………それにあの巨大な樹のようなものはなんだ……!?」
ノエル達を見たロイドは複雑そうな表情をし、ダドリーは真剣な表情で尋ねたが
「――――なっ!?こ、これは…………!」
ディーターの死体に気付いて目を見開き
「ディーター・クロイスの死体……という事は…………」
「ディーターさん………………」
「……………………」
「やっぱり局長達が殺しちゃった訳?それに見かけない人形兵器もあるけど、一体何なんだい?」
リーシャは真剣な表情でヴァイス達を見つめ、セシルは辛そうな表情で呟き、ノエルは複雑そうな表情で黙り込み、ワジは真剣な表情で尋ねた。
「………ディーター・クロイスの事はある程度予想できたからまだいいとして……お前達、あの樹は一体何なんだ!?」
「そ、それは……」
「何と言ったらいいのか俺達も正直わかんねえだよな…………」
ダドリーに尋ねられたティオとランディは言いよどんだ。
「…………どうやらまだ終わりじゃないみたいだな。」
その時セルゲイやセティ達がロイド達に近づいてきた。
「課長……!それにセティ達も……!」
「下の方は大丈夫なんスか?」
「ああ、魔導兵どもが消えたんで無事タワーに乗りこめた。しかし……………」
ロイドとランディの言葉に頷いたセルゲイはディーターの死体と謎の大樹を順番に見回した。
「……いったい、何がどうなってやがる?」
「はい…………」
「それが…………」
セルゲイに尋ねられたロイド達は事情を説明した。
「そ、そんな事って……」
「まさかイアン先生が黒幕の一人だったとは…………」
「……………………」
事情を聞き終えたノエルは信じられない表情になり、ダドリーは考え込み、セシルは複雑そうな表情で黙り込み
「正直信じられませんね…………」
「どうしてこんな事をしたんだろうね~……」
「彼にもきっと深い”闇”があったのでしょうね……」
セティ、シャマーラ、エリナは複雑そうな表情で呟いた。
「……なるほどな。政財界に国際情勢、警察にギルド、様々な裏事情にも通じている人物か。あの先生がその気になれば確かに全てを段取れただろう。問題は動機だが……今はそれどころじゃなさそうだ。――――局長、ギュランドロス司令。”あれら”も”今後の為に”貴方達が用意したのですか?」
セルゲイは疲れた表情で溜息を吐いた後目を細めてある方向に視線を向け
「え―――――――」
セルゲイが視線を向けた方向にロイド達も見た。そこには魔導戦艦や魔導兵器、そして”歪竜”の軍団が空に浮かんでいた!
「な、な、な……!?」
それを見たダドリーは口をパクパクさせ
「あ、あれは”神機”を破壊した…………!」
「オイオイオイ……!あんなのありかよ!?」
「あんな兵器がゼムリア大陸で暴れ回れれば………」
ノエルは表情を青褪めさせ、ランディは厳しい表情で叫び、ティオは不安そうな表情になり
「やれやれ……参ったね…………まさか本当に”竜”を……しかもあれほどの数を量産する技術が異世界にあるとはね……」
「……………あの”竜”達は感じる力からして確実に我が同胞である”レグナート”の上を行っているな…………」
ワジは溜息を吐いた後真剣な表情になり、ツァイトは厳しい表情で言った。するとその時
「ヴァイス様!!」
漆黒の軍服やドレス、鎧を身につけたリセル達が次々と現れた……………!
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