FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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シリル無双!!
前書き
九月なのに暑いよぉ・・・
レオン「溶けるよ・・・」ドロドロ
シリル「蒸発する・・・かな?」モアモア←煙出てる
ソフィア「ソフィアが突っ込み役なの珍しいけど・・・何から突っ込めばいいの?」
『一回戦の競技は【壁ドッヂボール】となりました!!』
「壁・・・ドッヂボール?」
不思議な競技名に首をかしげる面々。俺たちだけではなく、リオンさんやカグラさん、他の大会出場者たちも周りとどんな競技なのか推測しあっているようだった。
「ドッヂボールはわかるけど・・・」
「壁ってのが気になるよね?」
みんなも知っているであろうドッヂボール。サッカーボールくらいの大きさのボールを相手に当てて、当たった人は外野に外れていくゲームだ。他にも細かいルールはたくさんあるが、大まかなところはこんな感じじゃないだろうか?
『それでは!!初戦の会場に皆さん移動をお願いします!!』
ドッヂボールっていうから広いところでやるのかと思っていたら、どうやらここではなく別のところでやるらしい。大会運営者に案内されるがままに向かったのは、魔法学校の室内闘技場・・・
「あ、ここが魔法学校なんだ」
ウェンディは以前依頼で来たことがあるから反応が薄いけど、俺にとってここは初めて来る場所。それだけで心踊るが、これから大会に入っていくので緊張感を忘れたらいけないよな。
「小さき魔術師はこちらにお願いします」
中に入っていくと、リオンさんたちのチームとは別の場所へと案内される。どうやら一試合一会場となっているようで、俺たちとその対戦相手が案内されたようだ。
『それでは!!当競技のルール説明に入りたいと思います!!』
バスケットボールコートぐらいの大きさの部屋へと案内されると、取り付けられたスピーカーから開会式の司会者と同じ声が場内にアナウンスされてくる。ルール説明は人手をかけないために、部屋ごとにするのではなくまとめて行うようだ。
『ルールは簡単!!こちらで用意されたゴムボールを使用し、相手に当てたら、当てられた選手は退場となります!!』
審判らしき人物から投げ込まれた青いボール。それを受け取ってみると、プニプニして柔らかい。これなら当てられても痛くはないだろうけど、柔らかい分取るのが少々難しそうだな。ケガしないのが優先なんだろうし、仕方ないだろうけど。
『ボールは床につく前に取った場合はセーフ!!そのままゲームを続行できます。当たって他者が弾いたボールをノーバウンドで取った場合は、取ったのが敵味方関係なくそのプレイヤーはセーフです!!』
つまり、相手が弾いたボールは一度バウンドさせてから取らないと損するのか。普通と言われれば普通のルールだけど、間違って取ると色々と残念だな。
『他者が弾いたボールにノーバウンドで触り、そのプレイヤーも弾いた場合は両者ともに退場となりますので注意してください』
味方が当たった場合は助けるために取りたいところではあるけど、その行為にもリスクはあるということ・・・それどころか、流れ弾が当たって一気に全滅なんて場合も考えられるな。ほぼ無理だろうけど。
『そして!!ここからが重要です!!このドッヂボールには外野が存在しません!!内野のすぐ周りには壁を配置させております!!この壁にボールが当たって跳ね返ってきた場合は、投げたプレイヤーから直接投球されたとみなされ、相手チームから投げられたボールに当たった場合は退場となります』
壁から跳ね返ってきたボールにも要注意。床でバウンドしたって扱いじゃないから、当たるとダメになっちゃうのか。だから壁ドッヂボールか、色々と考えてるな。
『当てられた選手は即座にゲームからはリタイア!!どちらかのチームのプレイヤーがいなくなった時点で試合終了となります』
外野からボールを当てて復活することはできない。当てられたら即座に終了のゲーム。無理にボールを取って主導権を握ろうとするのは危険が伴う・・・意外と難しいね、ドッヂボールのくせに。
『ルールは以上です!!質問がある方はお近くの審判にご質問ください!!質問を終えた部屋から試合に移っていただきます』
そう言って途切れるアナウンス。別に質問するようなこともないだろうし、そのまま始めてもらっていいんだけど。
「体のどこに当たってもアウトなのか?」
指定されたコートに入ろうとしたところ、対戦相手の一人が審判にそんな質問をしている。その人物の方を向いた時、思わずギョッとしてしまった。なぜなら俺たちの対戦相手全員、かなりゴツゴツした筋肉質の大男たちだったからだ。
「え?何あの人たち」
「この街の傭兵ギルドの人たちだよ。魔法は使えないけど、その分運動能力が高いから偉い人の護衛とかもよくやってるんだよ」
思わずレオンに話しかけると、彼はなんてことないような感じの話し方で説明してくれる。
「はい、体のどこに当たってもアウトです。服にかするだけでも失格となりますので、注意してください」
傭兵ギルドの人の質問に丁寧に答えてくれる審判。服にかすってもダメなのか、じゃああんまりダボダボ着ていると失格になりやすくなっちゃうな。そう考えた俺は服を正していたりする。
「他に質問はございますか?なければさっそく競技に入ります!!」
予選が時間がかかりすぎだったこともあり、できることなら巻いていきたいといった考えが見え見えの運営の姿を見て少し笑ってしまう。夜までに終わらせなければ花火に間に合わなくなってしまうからなんだろうけど、これは予選にあんな競技と出題者を選んだ人が悪い。だから俺たちは焦って動くことはないだろう。やるからには勝ちたいし。
「ルールは先ほど話した通りです。ジャンプボールから始めようと思いますので、両チーム代表者を一名出してください」
それを聞いた瞬間、全員の表情が固まった。相手は全員リオンさんくらいの背丈の男たち。対してこちらは全員まだまだ伸び盛りの子供たち。ジャンプボールなんか勝てるわけないし、下手に中央にいると速攻で当てられてしまう恐れがある。どうしたものだろうか・・・
「俺行くか」
手を上げ、名乗りを上げたのは氷の神。身長的にはソフィアかシェリアだろうけど、運動性能で言ったら間違いなくこいつだろう。レオンならボールを取られても、持ち前の能力の高さで交わすなりしてくれそうだし。
「うん、レオンがいいと思う」
「だね」
「頑張ってね!!レオン!!」
「無理はしないでね」
「了解」
満場一致で送り出された少年は、コートの中央へと小走りに向かっていく。対して相手の代表は向こうのチームで一番背の高い人物が選ばれていた。たぶんトビーさんと同じかそれよりも高いくらい・・・勝てそうな気がしないんだけど・・・
「では行きます」
その声と共に膝を軽く曲げる二人の男。そして真上に投げられたボールを見ると、ここぞといったタイミングが彼らがジャンプする。
「あ、無理だわ」
見た感じすぐにわかった。レオンのジャンプ力は相当なものなんだけど、背丈があまりにも違いすぎたせいで到底届きそうには見えない。相手チームの代表はボールを自分たちのコートに落とすと、待ち構えていた一人の青年がそれをワンバウンドで取り、地面に着地したばかりのレオンに向かって思いきり投げ込む。
「どわっ」
お腹付近に目掛けて投じられたそれを、レオンは倒れ込むようにして回避する。
「キャッ!!」
彼が避けたボールがウェンディに真っ直ぐに飛んでくる。少女は驚いて頭を抱えてしゃがみこみ、ギリギリでそのボールを交わしていた・・・が!!
ドンッ
ポヨッ
「あたっ」
ウェンディは壁際に立っていたこともあり、彼女の避けたボールはすぐ後ろの壁へとぶつかり、少女の頭へとぶつかる。その結果、彼女はバランスを崩してしまい、前にお腹から倒れていた。
「アウト!!退場です!!」
審判からそう言われると、突然目の前にいたはずのウェンディが消えてしまう。驚いて辺りを見回していると、彼女はこの会場が見渡すことができる観客席の、審判の後ろの空いている席へと転送されていた。
「ここは魔法使うんだ」
「コートから出ている間、ゲームを止めないようにするためだろ」
ウェンディに当たったことでその場に留まっていたボールを拾い上げるレオン。なんかウェンディの当たり方がショボすぎて、ちょっと・・・いや、かなり反応しづらいんだけど・・・
「なんだろう・・・もっとハデな当たり方の方がよかったよね」
「だよね!!そこ気になるよね!?」
ソフィアも同じことを考えていたらしく、コート上段の観客席にいるウェンディを見上げながら同意を求めてきたので、俺も同じように反応する。ただ、ケガすることなくウェンディがゲームからリタイアしたので、安心したといえば安心したんだけどね。
「でも、いきなり一人減っちゃったよ?」
「このまま勢いで押し切られたりしないよね?」
ボールはこちらが持っているけど、人数的にはこちらの方が一人少ない。その分コートを広くは使えるけど、壁が周りを囲っているせいで後ろに下がりすぎてもダメだし、難しいところである。シェリアの言う通り、先に主導権を取った向こうにこのままズルズルとやられないか心配だ。
「いや、大丈夫だ」
不安な気持ちになっている俺たちだったが、ボールを空中に投げて遊んでいた少年だけは違った。片手で潰してしまうのではないかというほど強くボールを握った彼は、不敵な笑みを浮かべ、向こうのコートにいる五人を見据える。
「このゲームには必勝法がある。それも、うちだけが使える必勝法が」
「「「「「!?」」」」」
わずか数秒程度の時間でこの不思議なドッヂボールの特徴を捉え、勝つための手段を思い付いたというレオン。それには敵も味方も、第三者である観客たちも驚きざわついていた。
「え!?何それ!?」
「教えて!!どんなどんな!?」
シェリアとソフィアが興味津々といった感じに氷の神に詰め寄っている。レオンは彼女たちを押し退けると、なぜか俺に持っていたボールを投げ渡してくる。
「シリル」
手招きをしてくる少年に歩み寄ると、彼は周囲の人間に聞こえないようにと配慮して、耳元で囁くように話しかけてくる。
「シリルならこのゲーム、楽に勝てるよ」コソコソ
「え?」
唐突にそんなことを言われて間抜けな声が出てしまう。俺なら勝てるってどういうことなのかな?もう少し詳しく聞いてみるか。
「シリルの目ならさ、相手が動く方向わかるじゃん?それの応用で壁にどうぶつければどこに跳ね返るかもわかると思うんだよ」
そう言われるとなんとなくではあるが納得してしまう。今までやってみたことはないが、イメージさえ掴めればそれをするのも難しくはないだろう。だけど・・・
「これって魔法使っていいの?」
魔導士じゃない人も出ているこのゲーム大会。当然普段やっていることが優位に働く人もいれば、そうじゃない人もいる。その中で自分たちしかできないことをやるのは、はたしていいのだろうか?
「それは大丈夫。俺らまだ子供だから咎められないよ」
ニヤッと悪役のような笑みを見せる彼を見て、思わず苦笑い。こういう時は自分たちが年少であることを利用するのか・・・汚いような気もするけど・・・
「そうも言ってられないか」
負けたら後でレオンがうるさそうだし、この先のゲームもどんなものか気になる。なので、ここはレオンの策に乗っかり、やってみることにした。
「そこだぁ!!」
ボールを握り、腕を思いきり振ってボールを放つ。放り出された球体は人がいない方向へと飛んでいっており、はたからみたら暴投だけど、今回はこれでいい。なぜなら・・・
ドンッ
ポヨッ
「うおっ!?」
壁目掛けて投球したからだ!!俺が投げたボールは壁にぶつかると、近くにいた傭兵ギルドの人に当たり、床を転々としている。
「アウト!!退場です!!」
当てられたその人はルールに乗っ取り、ウェンディのそばの席へと転送される。これで人数は五分と五分。だけど、さっきとはちょっとだけは状況が違う。
「ほい、取ったっと」
床を転々としていたボールをこちら側が取ったことだ。これも俺の計算通り!!すごいねこの目に入れた魔水晶!!おかげでこのゲーム、ずっと主導権を握ったまま戦えそうだよ。
「ほれ、シリル」
「よし!!」
拾ったボールをすぐさまパスするレオン。それを受け取ると、目を輝かせながら解放し、イメージした軌道に乗るようにボールを投じる。
「あたっ!!」
「うわっ!!」
今回は壁を使わず、あえて直接攻撃を仕掛けることにした。理由は、相手がそれを全く警戒していなかったため。たぶん、レオンが必勝法を見つけたと言った後、俺に耳打ちし、直後に壁を使った攻撃を行ったから、そういう作戦なんだと向こうが勝手に勘違いしてくれたんだろう。おかげで、二人一度に敵を退場させることができた。これで残るはあと二人。
「っお!!」
今度はボールが跳ね返って来なかったため、向こうが攻撃を仕掛けてくる。
「ソフィア右!!」
「おっけ!!」
彼らは俺ではなく狙いやすそうな少女を攻撃しようとするが、離れていても軌道と回転はわかるから、どこに避ければいいのかわかるんだよね。
壁に当たって跳ね返ってきたボールを、初めに避けたソフィアがキャッチする。彼女はそこから振り返りパスを出してくるので、ボールを握り直して右腕を振るう。
「危ねっ!!」
再び直接的に敵を狙ってみると、さすがは傭兵ギルド、体を横にずらしてギリギリのところで交わしてくる。というと思ったか?
カスッ
「あ・・・」
ギリギリで回避したかに見えたが、ボールが柔らかい分不規則に変化しており、服を掠めて退場させることができた。そしてそのボールは勢いをほとんど殺すことなく奥の壁にぶつかると、こちらから見て右側の壁に当たってシェリアの元へとやって来る。
「やべっ!!」
そう言ったのは敵チームの最後の一人。彼はコート内を広く使って逃げていたのだが、今はボールを取ったシェリアの目の前に来てしまっており、大ピンチの状況に陥っていた。
「これで・・・終わり!!」
手を伸ばせば届くほどの距離しかなかったため、シェリアが当てるのは容易いことだった。相手は反応の速さで何とかしようとしていたが、最も取りにくい足元を狙われてしまい、なすすべなく当てられてしまう。
「ゲーム終了!!勝者!!小さき魔術士!!」
「「「やったぁ!!」」」
予想もつかなかった圧勝にばんざいしている俺とシェリアとソフィア。よく見ると観客席でウェンディも大喜びしていたし、今回は早々に退場させられたけど、また彼女と次のゲームに参加できるのがうれしくて、最後まで大騒ぎしていたのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
先に言っておきますが、ウェンディは一、二回戦では活躍しません。だからその辺はご了承ください。
次は二回戦です。どんなゲームになるかはお楽しみに。
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