英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第141話
街の探索をしていたロイド達は山道方面にある聖堂に顔を出した。
~クロスベル大聖堂~
「おぬしは………」
自分に近づいてきたロイド達の中にいるある人物―――ワジを見たエラルダ大司教は表情を厳しくし
「やあ、エラルダ大司教。お久しぶりだね。」
ワジは呑気に挨拶をした。
「……そういうことか。ワジ・ヘミスフィア、おぬしはやはり……シスター・リースを隠れ蓑に、この私の目をまんまと誤魔化したというわけだ。………”封聖省”の考えそうなことだ。」
ワジを睨んだエラルダ大司教は呟いた後表情を厳しくした。
「フフ、その件に関しては改めて謝罪させていただくよ。だけど、僕達を受け入れなかった事が原因でゼムリア大陸中が混乱に陥り、”国”同士の力関係も大きく変わる事になった上、さらに西ゼムリア大陸内での教会の権威が落ちた事も関係している気がするけど?」
「おい、ワジ……!」
ワジの言葉を聞いたロイドは声を上げ
「………確かに今回の件に関しては、頑なにおぬしらの介入を拒み続けたこの私にも一因があろう。糾弾こそすれ、謝罪などされる義理はないはずだ。実際今回の件で教会はむざむざと二大国がメンフィルとクロスベルの連合によって滅ぼされる事を容認するという聖職者とはとても思えない信じ難い判断をしたのだからな。………そして教会がそう判断せざるを得ない状況を作ってしまった原因の一人である私も教会の判断を糾弾する資格は最初からない。」
エラルダ大司教は重々しい様子を纏って答えた。
「大司教さま………」
「相変わらず厳しいお人だよなあ。」
エラルダ大司教の言葉を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ランディは溜息を吐いた。
「まあ、あなたの立場を考えると詮無いことだとは思うけどね。フフ、今後は僕達の行動に少しだけ目を瞑ってくれるようにしてくれると嬉しいんだけど。」
「お、おいおいワジ……」
「要求が露骨すぎです。」
ワジの提案を聞いたロイドは戸惑い、ティオは呆れ
「やだなあ。ケビンの船にいる”彼女”に頼む事と比べればこの程度、大した事ないよ。」
「ア、アハハ………」
「た、確かにそうだね………」
「あの方が教会に口を出したら、教会の方達はみんな従わざるを得ないものね………」
静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞いたリーシャとノエルは苦笑し、エリィは疲れた表情で言った。
「………二つ返事で答えることはできぬ。だが、改めて検討はさせてもらおう。この私も、頭を冷やして自分を見つめ直す時間が必要なようだ。」
一方エラルダ大司教は重々しい口調で答えた。その後ロイド達はそれぞれの家族―――ガイやノエルの父の墓参りをした後、ある墓の前にいる墓守の老人が気になり、近づいた。
「おお、おぬしらか………あの障壁が消えたと思うたら、とんでもない事が起こってしもうたのう。あの独立宣言以来、墓参りに来る物も減ってしまった。こんな状況でわしにできるのは、墓の掃除をしてやることくらいじゃ。」
「………あの。こちらの墓は一体、どなたのものなんでしょうか?」
墓守の話を聞いたロイドは考え込んだ後墓に視線を向けて尋ねた。
「なんじゃ、知らなかったのか?………ふむ、まあおぬしらなら特に問題はあるまい。”彼”とも親しいようだしな。」
「えっ………」
「俺達の知り合いなのかよ?」
「………うむ。ここに眠っている者達の姓は『グリムウッド』………つまり、イアン・グリムウッド殿のご家族なのだ。」
「イアン先生の……!?」
「そ、そうなんですか……!?」
墓守の話を聞いたティオとエリィは驚いた。
「……まごうことなき事実じゃ。15年ほど前に、ある不幸な事故で奥さんとお子さん二人の命が失われてしまってな……いつも週末のたびに墓参りに来てはご家族のことを偲んでおったよ。墓石は風雨で痛んでしまったが………何やら願掛けをしておるらしくてな。それが成るまではあえて修繕せずに手入れするよう頼まれておるのじゃ。」
「そうだったんですか………」
「あの先生も色々あるらしいな………」
墓守の説明を聞いたエリィは疲れた表情をし、ランディは複雑そうな表情をし
(”不幸な事故”ね……………アリオスの妻やシズクと一緒の理由だとしたらイアンも協力している可能性はあるわね………今回の件を引き起こすまでディーターは最初は国際社会に詳しい彼に相談しながら”クロスベル独立国”の法を決めようとしていたか―――――――!!まさか………!ディーター……アリオス………マリアベル………この3人を繋げる事ができ……さらに国際情勢をよく知る人物で該当するのは……!そうなると………ガイを殺害した”第三者”は…………………)
ルファディエルは考え込んだ後ある事に気付いて目を見開き、そして厳しい表情をした。
「あの独立宣言以来、彼も忙しいのかなかなか訪れていないが……よかったら、これからはお前さん達も参ってやるといい。……彼女たちも寂しかろうしな。」
「……………はい、わかりました。」
その後イアンの家族の墓の目の前で黙祷をしたロイド達は街に戻り、途中でアルカンシェルに寄った。
~アルカンシェル~
「ああ、あなたがたは………!」
「特務支援課の皆様ではありませんか……!」
アルカンシェルに入って来たロイド達を見た受付は驚き、支配人は明るい表情をした。
「お二人とも、ご無事でしたか。」
「もしかして、他の方達もこちらに?」
「はい、スタッフもアーティストも皆さん一通りそろっています。」
「ちなみに今は、新しく再構成した舞台の練習に一丸で取り組んでいる所でして。突然の戒厳令と外出禁止令には戸惑いましたが………自宅に戻るくらいなら、ここで練習をしていようと全員で話し合って決めたのです。」
「なるほど………頭が下がります。」
支配人の話を聞いたティオは目を伏せ
「………………」
リーシャは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「もしかして……そちらにおられるのはリーシャさんですか?」
その時リーシャに気付いた受付は驚き
「リーシャさん………」
支配人は静かな表情でリーシャを見つめた。
「………ご無沙汰しています。皆さんがご無事で何よりでした。」
リーシャは目を伏せて軽く会釈をした後微笑んだ。
「いえ………リーシャさんもよくぞ顔を見せてくれましたね。色々と事情がおありなのは承知していますが………よろしければ、練習の様子を見て行ってあげて頂けませんか?シュリさんをはじめ、皆さん全力で取り組んでいらっしゃいますので。」
「……………そう………ですね………少し覗いていく程度なら………」
「リーシャ………」
支配人の言葉を聞いて呆けていたリーシャは微笑みながら答え、リーシャの答えを聞いたロイドは明るい表情をした。そしてロイド達は劇場の中に入った。劇場の中に入ると舞台には多くの劇団員たち、そして踊り娘の衣装を身につけてたシュリが演技をしていた。
「これは………」
「フフ、『金の太陽、銀の月』の追加シーンだね。」
「シュリさん、すごいです………」
シュリの演技を見ていたロイドは驚き、ワジとティオは静かな笑みを浮かべて呟き、そして舞台に近づいた。
「おや、君達は………リーシャ君――――リーシャ君じゃないか!」
近づいてきたロイド達を見た劇団長は目を丸くした後リーシャに気付いて驚いて声を上げた。
「リーシャ姉………?」
劇団長の言葉を聞いたシュリは演技を止めてロイド達を見つめ
「ほんとだ、リーシャじゃないか!」
「はは、何かの間違いじゃないよな。」
「……間違いない、確かにリーシャだ。」
「ふふ、これで最後の気懸りがなくなったわね。」
シュリに続くように劇団員達も明るい表情でリーシャを見つめた。
「………皆さん………あの、本当にすみませんでした。」
劇団員達の反応を見たリーシャは驚いた後頭を下げた。その後ロイド達は劇団長達に事情を軽く説明した。
「そうか、今は支援課の皆さんと一緒に………」
「はい、今はまだ全てをお話しできませんが………ですが、けじめを付けたらその時はちゃんと………」
劇団長の言葉に頷いたリーシャが静かな笑みを浮かべたその時
「ふふ、リーシャったら何をそんなに追い詰められたような表情をしているの?」
「え………?」
微笑みながら答えた劇団員の言葉を聞き、リーシャは呆けた。
「そうですわ、誰もあなたにそんな顔をしてくれだなんて頼んでいませんし。」
「ああ、ホント。せっかくの美人が台無しだな。」
「プリエさん………セリーヌさん、ニコルさん……」
「とにかく………やることをやったら一刻も早く戻って来てくれ。」
「だな、俺もまだまだリーシャと試してみたい演技もあることだし。」
「テオドールさん、ユージーンさん………」
「ふふ、私も衣装を準備して待っていますからね。」
「私は舞台装置を準備して、ね。」
「カレリアさん、ハインツさん………」
次々と自分にかけられる励ましや応援の言葉を聞いたリーシャは一筋の涙を流して目を伏せ
「…………リーシャ姉……」
「シュリちゃん………」
「ここは………アルカンシェルは………リーシャ姉の居場所だから。リーシャ姉が何を抱えているか、オレにはわからないけど………ここはリーシャ姉の………そしてイリアさんやオレの帰ってくるべき場所でもあって……」
「………シュリちゃん………」
そして涙を流して自分を見つめて言ったシュリの言葉を聞いたリーシャは涙を再び流し始めた。
「オレ……何があってもこの場所をずっと守ってるから………だから…………」
「うん………うん………シュリちゃんの気持ちは十分伝わったわ。ちゃんと戻ってくるから………だから心配しないで、約束する。」
シュリの言葉に頷いたリーシャは微笑んだ。
「約束………本当だな、リーシャ姉。嘘つきは針千本なんだからな!」
「うん………わかってる。」
「リーシャ………」
二人の会話を聞いていたロイドは明るい表情をし
(フフ、よかったわね………)
(クク、闇の住人を光へと導いたイリア(あの女)も只者じゃないが………何より闇から引き揚げたロイド(この男)は凄すぎだね…………)
ルファディエルは微笑み、エルンストは口元に笑みを浮かべた。
「……ロイドさん、そろそろ行きましょう。みんなも練習があることだし………私達も急いで目的の場所に向かわないと。」
「ああ………そうだな。」
そしてロイド達は劇場を去って街の探索に戻った
~西通り~
「………………………(さっきのピート君、クイントさん、そしてニールセンさんの話………)」
施錠されてあるイアンの事務所の前まで戻ったロイドは考え込み
「ロイド………どうかしたの?」
「イアン先生の事務所に何かあるんですか?」
「今は留守みてぇだが………」
ロイドの様子を見たエリィ達は不思議そうな表情をして尋ねた。
「……いや、なんでもない。今は行くとしよう。」
(…………………)
エリィ達の疑問に疲れた表情で答えたロイドはエリィ達を促し、ロイド達が歩いている中、ルファディエルは目を細めて考え込んでいた。
車の状況を確かめるついでにロイド達は懐かしの支援課のビルに寄った。
~特務支援課~
「………特務支援課………」
「帰って来た………わね……」
ビルの中に入ったロイド達はキーアと過ごした日々を思い出した。
あ、帰って来た!おかえり~!
行って来ます!
―――よし。それじゃあ鍋を始めよう。キーアが準備してくれたから肉、魚、野菜―――タップリある。たくさん食べて、早めに休んで……明日に備えよう!
いただきます!
「…………………」
特務支援課で過ごした日々を思い出したロイドは複雑そうな表情で黙り込み
「……ハハ。何だか懐かしすぎるぜ。」
「はい……」
口元に笑みを浮かべて言ったランディの言葉にティオは頷き
「フフ………さすがに感慨深いね。」
ワジは静かな笑みを浮かべた。
「でも、思ったよりも荒らされていませんね……てっきり国防軍の捜索が入っているかと思いましたが。」
一方周囲を見回したリーシャは不思議そうな表情をした後微笑み
「ひょっとして、キーアへの配慮があるかもしれない。大統領サイドにとってあの子は余りに重要な存在だ。大切にしていた場所を荒らして機嫌を損ねたくないのかもしれない。」
ロイドは静かな笑みを浮かべて推測し
「……なるほどねぇ。」
(まあキーア頼りの大統領サイドにとってはキーアの機嫌を損ねたら一瞬で崩壊するのは目に見えていただろうしね。)
ロイドの推測を聞いたランディは頷き、ルファディエルは納得した様子でいた。
「なんか露骨ですが……変わってないのは嬉しいです。」
そしてティオが呟いたその時
「ニャ~。」
支援課のビルにロイド達が来る前から住み着き、ロイド達が世話をしている黒猫――――コッペがロイド達に近づいてきた。
「コッペ……!」
「そう………無事でいてくれたのね。」
コッペを見たロイドは驚き、エリィは明るい表情をし、ティオはコッペに近づいた。
「にゃーご。にゃう、にゃん。」
「……そう、お疲れ様。ええ、ええ……少し留守にしていただけです。また………きっと戻ってきます。」
「なんて言ってるんだ?」
コッペと会話しているティオを見たランディは不思議そうな表情で尋ねた。
「どうやら、あれからずっとここで暮らしていたみたいで……わたしたち”同居人”のことも一応、気にかけてくれたようです。」
「はは、そっか。」
「ふふっ、ネコにしては珍しいくらい律儀ね。」
「せっかくだからエサも用意してあげようか。」
その後ロイド達はコッペにキャットフードを用意した後、それぞれの部屋の状態を確かめた後キーアの部屋に入り、部屋の机の上に置いてある石に気付いた。
「これは………」
石を見たロイドは驚いた後考え込み
「へえ、白い石か。なかなか綺麗じゃねえか。」
「これって確か……ミシュラムでロイドさんがキーアにプレゼントした……?」
ランディは感心し、ティオはロイドに尋ねた。
「ああ、ミシュラムのビーチでキーアにあげた『ホワイトストーン』だ。」
「キーアちゃんが置き忘れて行ったのかしら……?」
ティオの疑問にロイドは頷き、エリィは考え込み
「けど確か未来のキーアはその石をペンダントにして肌身離さず持っているよね?」
ワジは不思議そうな表情で言った。そしてロイドはホワイトストーンを手に取った。
ねぇ、ロイド………みんな
その時ロイド達の頭の中にキーアの声が響いてきた!
「…………ぇ……………」
(――――残留思念……!まさか契約している私にまで聞こえてくるなんて……!)
(ほう~、あのガキんちょ、我輩達の予想以上のとんでもない力の持ち主だな。)
(へえ?今のはあたいも驚いたよ。)
(……さすがは”至宝”の存在といった所か………)
(”創られた存在”とはいえ、まさかこんな真似ができるとは………)
頭に響いた声にロイドは呆け、ルファディエルは驚き、ギレゼルとエルンストは興味深そうな表情をし、ラグタスは重々しい様子を纏い、メヒーシャは真剣な表情で呟いた。
キーア、しあわせだったよ
だけど
だけど
だけど
さよなら
「………………………」
頭に響いたキーアの声を聞いたロイドは呆け
「い、今のは……キーアちゃん……?」
リーシャは戸惑い
「間違いねえだろう。………だが、どこから……?」
ランディは目を細め
「ロイドさんが手にしたそれに、残留思念のようなものが込められているのを感じます。………哀しみや迷いを無理やり押し込めたような……」
ティオが複雑そうな表情で説明した。
「キーアちゃん……」
「……やれやれ。あそこまで無邪気だった子が……未来のキーアもきっと同じ事をこの時代の僕達に教えたんだろうね………」
(まだ幼子だというのにこれほどの哀しき決意をさせるとは……!)
(外道め……!いくらエリィの知り合いとはいえ、奴等は滅すべきだ……!)
エリィは悲しそうな表情をし、ワジは複雑そうな表情で言い、ラグタスとメヒーシャは怒りの表情になった。
「…………なあ、みんな。キーアが何故イーリュン教に入信して”太陽の聖女”と呼ばれるようになったか知っているか……?」
「ロイド……?」
「まさか……未来のキーアから聞いたのですか?」
複雑そうな表情で言ったロイドの言葉を聞いたエリィは不思議そうな表情をし、ティオは驚きの表情で尋ねた。
「ああ――――」
そしてロイドはエリィ達に何故キーアがイーリュン教に入信し、”太陽の聖女”と呼ばれる事になったかを説明した。
「キーアちゃんがそんな事を………」
「やれやれ………確かにそんな事を想っているのなら、”聖女”と称されてもおかしくないし、僕達も”聖人”認定するだろうね………あの無邪気だった子が変われば変わるもんだね………」
説明を聞いたリーシャは驚き、ワジは溜息を吐き
「未来のキーアがどことなく陰りのある笑みをたまに浮かべる事がありましたが…………まさか今回の件の事をそこまで自分を責めていたなんて………」
「過去の奴等(俺達)が未来を何故知ってはいけないかの意味がようやくわかった気がするな………」
「ええ………変えられるものなら変えたいわね………キーアちゃんが罪悪感を持つ事はないのに……」
ティオやランディ、エリィは複雑そうな表情で呟き
「…………これでもう…………迷いの一片も完全に無くなった。キーアがあんな……心を押し殺したような気持ちでずっといたなんて…………そんな状況は、絶対に間違っている!」
ロイドは怒りの表情で呟いた。
「そうね………そんなのが正しい事であるわけがないわ。」
「……こうなったら、なにがなんでもキー坊の元に辿り着かなきゃな!」
「ええ、未来のキーアが浮かべていたようなわたし達のキーアの笑顔を取り戻すためにも……!」
ロイドの言葉に続くようにエリィ達は決意の表情になり
「ああ……行こう、みんな。(キーア……待っててくれ。絶対に迎えに行くからな……!)」
ロイドは力強く頷いた。そしてロイドはキーアが残したキーアの力が宿ったホワイトストーン――――『零の神珠』を回収してビルを出て車に近づいた。
~西通り~
「俺達の車………二台とも何とか無事みたいだな。」
車の状態を確かめたロイドは明るい表情をし
「しかしこれって確か、1台はディーター市長にある程度、融通してもらって、もう一台はヴァイスハイト局長のコネで手に入れたんだよね?フフ、それらを使って局長とギュランドロス司令が彼を処刑しに行くなんて皮肉が利いているじゃないか。」
ワジは笑顔で言った。
「…………そうね、本当に。」
「洒落になっていません……」
ワジの言葉を聞いたエリィは疲れた表情で頷き、ティオはジト目で言った。
「ま、経緯はどうあれ、こいつらも支援課の一員だ。ちゃんと使えるかどうか、中もチェックするとしようぜ。」
「ああ、そうだな。」
そしてロイド達は1台の車の中に乗った。
「わぁ…………初めて乗りましたけど素敵な内装ですね。」
車内を見回したリーシャは微笑み
「はは、サンキュ。」
ロイドは笑顔で答え
「この車、キーアもお気に入りでしたよね。」
ティオは口元に笑みを浮かべて言った。
「――――整備状況もいいし、問題なく動かせそうだな。この様子だともう一台の方も大丈夫だろう。」
「ああ、後で念の為に確かめようぜ。」
そしてロイドの言葉にランディは頷いた。
「それに実際の突入の時はノエルとリィンにそれぞれ運転してもらった方がよさそうだな。」
「ま、あの二人はプロだからな。」
「これで突入用の車輛は確保できましたが…………いったん課長達の所に戻りましょうか?」
「そうね、最終的な段取りも聞いておきたいし………」
ロイド達が考え込んだその時何かの音が聞こえ始めてきた。
「これは………」
「車載の通信器だな。何処かからの連絡みてぇだ。」
「……ロイド、どうするの?」
「ああ………とりあえずONにしよう。みんな、念のため声は立てないように頼む。」
そしてロイドが通信器の部分をONにした。
「―――お久しぶりね。特務支援課のみんな。キリカよ。キリカ・ロウラン。」
するとなんとキリカの声が聞こえてきた。
「ええっ………!?」
「キリカさんッスか!?」
キリカの声を聞いたロイドとランディは驚き
(泰斗の”飛燕紅児”…………)
リーシャは真剣な表情になった。
「カルバードの諜報機関のお姉さんか………まだクロスベルにいたとはね。」
「………私達の動きを全て把握しているんですか?」
ワジは静かな表情で呟き、エリィは真剣な表情で尋ねた。
「この状況であなた達がどう動くか予測しただけよ。……まあ、”六銃士”と”英雄王”によるあの”宣言”はさすがに予測できなかったけどね。忙しい中、時間を取らせて申し訳ないのだけど………”情報交換”をする気はないかしら?」
「それは……………―――了解です、キリカさん。どちらに行けばいいんですか?」
「クロスベル駅、3番ホームに停車している列車の2番車輛に。駅に人気は無いから安心するといいわ。」
「わかりました。3番ホームの列車の2番車輛ですね。ところで………レクターさんもそちらに?」
「フフ、ご明察。―――それでは待ってるわ。」
「……相変わらず千里眼みたいな人ですね。」
キリカが通信を切るとティオはジト目で呟き
「しかもレクター大尉もいるみたいだけど……」
エリィは複雑そうな表情で言った。
「ま、行ってみるしかねえだろ。」
「ああ……クロスベル駅に行こう。」
「フフ、了解。」
「……もしもの時のために備えはしておきましょう。」
その後もう一台の車の状況を調べたロイド達は駅に向かった…………
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