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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第142話

駅に到着したロイド達は指定の場所に向かった。



~クロスベル駅~



「―――来たわね。」

「よ、久しぶりだな。」

ロイド達の気配に気付いたキリカとレクターはそれぞれドアの近くにいるロイド達に声をかけた。

「………ご無沙汰しています。」

「なるほど、列車の通信器から支援課の車に連絡したんですね。」

「ご明察。」

そしてロイド達は二人に近づいた。

「フフ…………改めて見ると錚々たる顔ぶれね。星杯の守護騎士と伝説の凶手が一緒なんて。」

「当然、僕の背景くらいそろそろ掴んでいるか。」

「………………………」

口元に笑みを浮かべて言ったキリカの言葉を聞いたワジは口元に笑みを浮かべ、リーシャは真剣な表情でキリカを見つめた。

「まさか貴方方がクロスベルに残っているとは思っていませんでした。あれから、ずっとこの街に?」

エリィは疲れた表情で言った後真剣な表情で尋ねた。

「ああ、調べることが色々とあったからな~。だが、これでようやくエレボニアに帰れそうだぜ。」

「調べる事……?」

レクターの言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情をした。



「ちなみに、俺達以外にもリベールの関係者が動いてるんだが………ひょっとして知ってるか?」

「ああ……R&Aリサーチのレインズさんですね。もしかして彼とも協力を?」

「ええ、この件に関してはお互い情報交換をしているわね。民間の調査会社にしては優秀な情報網を持ってるし。」

「ま、民間だと人手不足だろうから各地に人を回しきれないで苦労してんだろうけどな~。」

「それはともかく………”鉄血宰相(アンタのボス)”が撃たれて行方不明の上、局長達やメンフィルがエレボニアに宣戦布告しただろうが?こんな所で油売ってていいのかよ?」

レクターの話を聞いたランディは目を細めて尋ねた。

「ああ………ギリアスのオッサンと数日前の”クロスベル帝国”の宣言のことか。オレが急いで帰ったところで助けられるワケでも、オレ一人でメンフィル軍と戦えるワケないしなー。それにあのオッサンにしてみりゃ、自分の事もクロスベルの事も想定してた局面のうちだろうしよ。」

「え……!?」

「想定していたって……自分が撃たれることを!?」

レクターの説明を聞いたエリィは驚き、ロイドは尋ね

「クロスベルの事というのは………今回の事件のことですよね?まさかヴァイスさん達の宣言は入っていないでしょう?」

ティオも続けて尋ねた。

「あのオッサンにとって全ては遊戯盤の”駒”だからな。クロスベルが至宝を手に入れて、独立どころか大陸全土の支配を目論もうとしていること………帝国軍が返り討ちに遭った隙に貴族勢力が帝都を占領したこと………その結果、自分が撃たれて瀕死の重傷を負ったことによって泥沼の内戦が始まったこと……にも関わらず、クロスベルという不可侵の”壁”ができたことによって共和国の侵攻を食い止められていること。あのオッサンにとっては全て想定していた展開だろうさ。……まあ、”六銃士”達がいつかクーデターを起こして二大国に宣戦布告する事も読んでたみたいだが……さすがにメンフィルと手を組むことまでは読めていないと思うぜ?」

「……くっ…………」

「そ、そんな……」

レクターの答えを聞いたロイドは唇を噛みしめ、エリィは信じられない表情をし

「……化物だね、本当に。」

「……にわかにはちょっと信じ難いですね……」

ワジは真剣な表情で呟き、リーシャは目を伏せて呟いた。



「まあ、”結社”も帝国方面で動き出しているみたいだけど……本当に恐ろしいのは、”鉄血宰相”かもしれないわね。己すらも”駒”として利用し、荒ぶる激動の時代を作り出す………まさに傑物―――いいえ化物だわ。そして彼が作り出した激動の時代に乗るかのように私達には一切気付かれずにメンフィルに協力を取り付け、”覇道”を行く事を名乗り上げた”六銃士”………彼らもまた”化物”だわ。」

「…………………」

「ヤバいオッサンだとは思ったがまさかそこまでとは……まあ、局長達も局長達だが………」

キリカの言葉を聞いたロイドは黙り込み、ランディは疲れた表情をし

「………ディーター大統領はその事に気付いているんですか?」

エリィは真剣な表情で尋ねた。

「さて、どうなのかしらね。こう言ってはなんだけど………ディーター・クロイスという人物はパフォーマンスは超一流だわ。でも、実際の政治家としては……やや疑問を感じざるを得ないわね。経営者としての観点からしか政治を動かしていないという意味で。政治家としてはヴァイスハイト・ツェリンダーやギュランドロス・ヴァスガンの方がよっぽど向いているわ。」

「まあ実際俺達に隠れてメンフィルと協力を取り付けて、通商会議では俺達を嵌めた挙句、ディーター・クロイスから市民達の人気を全て引っさらったものなあ。さすがは”王”を名乗っているだけはあるねえ?」

エリィの疑問にキリカが答え、続くようにレクターが口元に笑みを浮かべて答えた。

「それは………」

「……………………」

二人の答えを聞いたロイドは驚き、エリィは黙り込んだ。

「まあ、”六銃士”の過去がどんなものだったかはわからないけど、ディーター・クロイスはあくまで根は銀行家なのでしょう。”クロイス家”の使命にしても娘の方に任せ切りのようだし。」

「それは……」

口元に笑みを浮かべて言ったキリカの言葉を聞いたティオは驚き

「……ご存知でしたか。」

ロイドは真剣な表情になった。



「ま、こっちにはこっちの情報ソースがあるんでね。ちなみにこれを機会に聞きたいんだけどよ。”六銃士”達は一体どうやってメンフィルと同盟を結べたんだ?」

「それは………………」

「………まあ、別に話してもいいかと。今更知った所でヴァイスさん達とリウイ陛下達の同盟が崩れる事はないでしょうし。」

レクターの疑問を聞いたロイドは複雑そうな表情をし、ティオは静かな表情で言った。そしてロイド達は何故リウイ達がヴァイス達と仲がいいかなどの説明をした。

「”影の国”でできた”絆”…………ジンから話は聞いていたけど、さすがにそれは考えた事もなかったわ。」

ロイド達の話を聞いたキリカは重々しい様子を纏って呟き

「とはいえ、転生とか普通に考えてありえねえから、そらオレ達には予想できないし理解もできないわな。しかもギュランドロス・ヴァスガン達は世界どころか時まで超えているんだろう?そんな夢みたいな話、普通なら誰も信じねえぜ。それで話を戻すがアンタらがあの競売会で保護したチビッコ…………あの子が”核”となって”至宝”が誕生した経緯はおおよそ掴んでいる。」

レクターは口元に笑みを浮かべて言った後話を戻して真剣な表情で答えた。

「…………………………」

「やれやれ……世俗の勢力がそこまで掴んでいるとはね。」

レクターの答えを聞いたロイドは目を伏せて黙り込み、ワジは複雑そうな表情で言った。

「誤解して欲しくないけど……私にしても、そこの彼にしてもあくまで情報畑の人間よ。個人的な一存で”至宝”をどうこうしようとか考えているわけではないわ。ただ、大陸全土の混乱に陥れる契機(きっかけ)となったこの事件…………その絵を描いた『真の黒幕(フィクサー)』が誰なのかが知りたいだけなの。」

「…………!?」

「真の……黒幕(フィクサー)!?」

(………………………)

キリカの話を聞いたロイドとエリィは表情を厳しくし、ルファディエルは目を細めていた。

「先程言ったように、ディーター大統領はあくまで経営者としての側面が強すぎるわ。マリアベル嬢も底知れないけど政治面よりは、魔導技術方面を一手に引き受けているみたいだし。かといって”風の剣聖”は…………黒幕というには余りに自戒的でストイックすぎるでしょう。」

「ギリアスのオッサンにしても”結社”にしても…………クロスベルの状況を利用したり、利害の一致で協力はしたが主体的に行動してるわけじゃない。―――誰かいるハズなんだ。政治、経済、歴史、国際情勢……クロイス家やD∴G教団、”結社”の動きに至るまで…………”全て”に通じた上で各方面に働きかけながらここまでの絵を描いたヤツが。」

「おいおい……マジかよ。」

「少々、陰謀論じみているような気もしますが……」

キリカとレクターの推測を聞いたランディは疲れた表情をし、エリィは複雑そうな表情をし

「確かに………パズルのピースが足りてないような気はします。」

ティオは目を伏せて言った。

(…………まさか………………そうなると………兄貴を殺した”真犯人”もあの人なら辻褄が合う…………!)

一方今までの出来事を思い出し、ある人物が思い浮かんだロイドは厳しい表情をし

(十中八九”彼”ね…………となるとガイを殺害したのもやはり…………)

ロイドと同じ人物を思い浮かべたルファディエルも厳しい表情をしていた。

「まあ、そのあたりの確認ができないかと思ったのだけど………貴方たちにも確証は無さそうだし、この程度にしておきましょう。時間も無いし、もう一つの用件に入らせてもらうわね。」

「もう一つの用件……?」

キリカの言葉を聞いたロイドが不思議そうな表情をしたその時

「うむ、簡単なことだ。『オルキスタワー攻略作戦』、手伝ってやろうと思ってな!」

レクターが意外な提案をした。

「ええっ!?」

「おいおい、いきなりすぎんだろ!?」

「事件の概要がわかった以上、クロスベルに留まる必要はないのだけど…………このまま去るというのも少しばかり寝覚めが悪いから。」

「で、でも……ディーター大統領が失脚すれば……クロスベルは…………」

キリカの言葉を聞いたエリィは言い辛そうな表情をし

「フフ、それはまた別の話だから気にしないで。万が一祖国(カルバード)が窮地に陥った時、オルキスタワーの攻略を手伝った恩を盾に交渉する事だってできるし………それに慢性的な膠着状態に陥られてもこちらとしては困るのよ。」

キリカは口元に笑みを浮かべて答え

「『ポムっと』だってクリア直前に放り投げるのも気持ち悪いしなー。ま、それと同じってことだ。」

レクターも続けて答えた。

「同じと言われても……」

「……というか何時の間に『ポムっと』のアカウントを入手してるんですか?」

レクターの答えを聞いたエリィは苦笑し、ティオはジト目でレクターを見つめた。

「でもまあ、戦力が増えるのはいいことだね。」

「課長さんに相談してもいいかもしれませんね。」

「……わかりました。こちらの拠点に案内するので俺達に付いて来て下さい。」

その後、ロイド達はセルゲイ課長にキリカたちを紹介し……お互い情報交換をした上で作戦に協力してもらう事になった。そしてロバーツ主任によるオルキスタワーへのハッキングがとうとう成功し………『オルキスタワー攻略作戦』がすぐに決行される事となった…………… 
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