英雄伝説~菫の軌跡~(閃篇)
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第39話
その後地下道を進んでいたリィン達は古代の墓場らしき場所に出て、そこで現れた魔獣を撃破した後奥へと向かった。
~地下墓所~
「フッ……ここまでは概ね作戦通りだ。無事に、ここを抜けられれば全ての目的を達せられるだろう。」
「ああ……!」
「俺達の初陣としては上出来と言えるだろうさ!」
リィン達が追いついて来る少し前ギデオンはアルフィン皇女とエリゼを抱えているテロリスト達を見て口元に笑みを浮かべ、テロリスト達も口元に笑みを浮かべて頷いた。
「あなた方は……」
「……わたくし達を攫ってどうするつもりなのですか?お父様に身代金を―――という訳でもなさそうですね?」
「皇女殿下におかれましてはしばしのご辛抱を……我々はエレボニアの伝統と秩序を重んじる憂国の士。その象徴たる血筋に仇名すことはあり得ません。」
アルフィン皇女の問いかけにギデオンは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「……その物言い……」
「フフ、別に貴族に親近感を持っている訳ではありません。私を始め、我々の同志の殆んどが平民出身ですゆえ。ですが”あの男”の存在だけは許す訳にはいかない……!」
「”あの男”……」
「いずれにせよ、そう言う事なら殿下は解放してください。傷つけられる虜囚ならばわたくしだけでも十分でしょう。」
「エ、エリゼ!?」
エリゼの申し出を聞いたアルフィン皇女は信じられない表情でエリスを見つめた。
「ほう……君は?皇女殿下のお付きならばそれなりの身分とお見受けするが。」
「エリゼ・シュバルツァー。北部ユミルの領主、テオ・シュバルツァーの娘です。末席ながら貴族の身、人質としては成立するでしょう。」
決意の表情でエリスはギデオンを見つめ
「ああもう……!」
エリゼの言葉を聞いたアルフィン皇女は自分の望んでいない事を口にしたエリゼにかける言葉がわからず、そんな自分にいらついて声を上げた。
「フフ、なかなか見所のあるお嬢さんだ。思わぬ駒が手に入ったがさてさて、どうしたものか―――」
その様子を見ていたギデオンが感心していたその時!
(……!)
(追いついたか……!)
リィン達がギデオン達に追いついてきた!
(……先行するよ。)
(私も行こう……!)
そしてフィーとラウラはリィン達の前を走って更にギデオン達に近づき
(レンはみんなのサポートに回るわ……!)
(威嚇は任せてくれ……!)
(僕も足止めなら……!)
レンとマキアス、エリオットもそれぞれリィンを見つめた。
「(みんな、頼む……!)―――そこまでだっ!!」
「なにっ……!?」
「あ……」
リィンの怒鳴り声にギデオンは驚き、エリスは呆けた。するとその時マキアスとレンがショットガンと双銃で威嚇射撃を行い、それを見たテロリスト達は撤退しようとしたが
「うおっ……」
エリオットが放った下位アーツによって足止めされ、その隙を狙ったラウラとフィーが先に回り込んだ!
「な……!?」
「兄様……!」
「み、皆さん……!」
「―――ここまでだ。殿下とエリゼを解放してもらおうか。」
「あまりの不敬、見過ごすのはさすがに躊躇われるが……」
「大人しく解放するなら見逃さないでもないぞ?」
「こいつら…………」
「………………」
リィン達に包囲されたテロリスト達は唇を噛みしめてリィン達を睨んだ。
「…………6対3。勝ち目はないよ。少なくとも二人を連れて逃げ切るのは不可能。」
「その、まずは二人を解放してもらえませんか?」
「フフ……恐れ入った。”トールズ士官学院”……まさかここまでの逸材たちを育てていたとは。」
絶対的不利な立場でありながら、ギデオンは不敵な笑みを浮かべていた。
「―――世辞は無用。二人を解放するかこのまま睨みあうかだけだ。言っておくが……二人に傷一つでも付けたら一切の容赦はしないと思え。」
「ぐっ……」
「……こいつ……」
リィンの言葉にテロリスト達は唇を噛みしめ
「兄様…………」
「リィンさん……」
エリゼとアルフィン皇女は驚きの表情でリィンを見つめていた。
「……わかった、降参だ。少なくとも我々に勝ち目が無い事だけは認めよう。」
「それじゃあ……」
「二人を解放してくれるんだね?」
「ああ―――”彼”に勝てたらな。……やれ。」
エリオットの問いかけに答えたギデオンがテロリスト達に視線を向けるとテロリスト達は一旦しゃがんでハンカチを取り出したその時
「うふふ、そうはさせないわよ♪」
「グアッ!?」
「か、身体が……!?」
「「キャッ!?」」
レンが魔眼を発動して二人の動きを止め、レンの魔眼によって身体の動きを封じ込められた二人は抱えていたエリゼとアルフィン皇女を落とした。
「こ、これは……どういう事だ!?身体が動かないだと……!?」
テロリスト達同様レンの魔眼によって身体の動きを封じ込められて地面に跪いたギデオンは驚き
「これは……ヨシュアの戦技の『魔眼』。レンも使えたんだ。」
ギデオン達の身体の動きが封じ込められた理由を察したフィーは目を丸くして呟いた。
「うふふ、最近になるけどね♪―――今よ!リィンお兄さん!ラウラお姉さん!今の内にエリゼお姉さんとお姫様を!」
「ああ……!」
「殿下、今お助けいたします……!」
レンの指示によってリィンとラウラがテロリスト達が落としたエリゼとアルフィン皇女を抱き上げ
「エリゼ、大丈夫か!?」
「兄様……はい……!」
「皇女殿下、お怪我はありませんか!?」
「ラウラさん……みなさん……本当にありがとうございます……!」
「二人を救出したらすぐにテロリスト達から距離を取って!」
更にレンの指示によって二人を救出したリィンとラウラはテロリスト達から一旦距離を取り
「マキアスお兄さんとエリオットお兄さん、フィーはそれぞれテロリスト達に遠距離からの攻撃を放って怯ませて!」
「ああっ!」
「うん……!」
「了解……!」
「うおっ……!?」
「ぐあ……っ!?」
「がが……っ!?」
レンの指示によってマキアス達はそれぞれ銃や下位アーツでギデオン達を攻撃してギデオン達を怯ませ、その隙にレンが一瞬でギデオンに詰め寄ってギデオンが腰につけていた笛を奪い取ってギデオンから離れた!
「うふふ、こんな大事な物を腰につけているなんておバカさんねぇ?」
「なっ!?き、貴様、いつの間に”降魔の笛”を……!?」
意味ありげな笑みを浮かべたレンがわざとらしく見せた笛を見て驚いたギデオンは自分の腰につけていた笛がない事を一瞬で確認した後信じられない表情をし
「こんな物はこうしちゃったら使えない……でしょう!?」
レンは笛を宙に投げると一瞬の早業で鞘から抜いた双剣を振るって笛を真っ二つに割った!真っ二つに割られた笛は面に叩きつけられ、怪しげな気を放っていたがやがて霧散した!
「お、おのれ……よくも”降魔の笛”を……!」
自分にとって切り札となる笛を破壊された事にギデオンは怒りの表情でレンを睨み
「これでチェックメイトだな……!」
「何をするつもりか知らないけど、これ以上は何もさせないよ。」
仲間達と共にギデオンを包囲しているマキアスは勝ち誇った笑みを浮かべ、フィーは真剣な表情でギデオン達を睨んだ。
「くっ……!」
「どうしてこうなったんだ……!?」
「………………おのれっ…………!」
マキアスの言葉を聞いたテロリスト達とギデオンは悔しそうな表情で唇を噛みしめてマキアス達を睨みつけた。
「―――フフ、このあたりが潮時でしょうね。」
「……っ!?」
「わあっ!?」
「ぐっ!?」
するとその時女の声が聞こえた後、崖から飛び降りた女がエリオット達に法剣を振るい、女の攻撃によってエリオットとマキアスは吹っ飛ばされ、フィーは咄嗟にしゃがんで回避したが、上から放たれた自分とレン目がけて放たれた怒涛の銃撃を回避する為にレンと共に後ろに跳躍してギデオン達から距離を取った。
「な……」
「こやつら……!?」
それを見たリィンは驚き、ラウラは厳しい表情で女や銃撃を放った大男を睨んだ。
「あらあら、すばしっこい小猫ちゃん達ね。フフ、あたし好みだわ♪」
焦眼の女がフィーを見つめて呟いたその時
「クク……さすがは”西風の妖精”と”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”か。」
巨大な重ガトリング砲を片手に持つ大男が柱から飛び降りた!
「くっ……!?」
「同志”S”……それに同志”V”か………」
「き、来てくれたのか……!」
「よかった、これで……!」
二人の登場にマキアスは唇を噛みしめ、ギデオンやテロリスト達は安堵の表情をし
「こやつら……」
「……………………」
「テ、テロリストの仲間……」
「フウ……ちょっと面倒な事態になってしまったわね……(最悪”魔人化”での戦闘も考慮しないといけないわね……)」
ラウラとフィーは二人を警戒し、エリオットは不安そうな表情をし、レンは疲れた表情で溜息を吐いた後真剣な表情で二人を警戒していた。
「やれやれ、今回は任せてもらおうと言っていたはずだが……だが、正直助かったぞ。」
「悪ィな、”G”の旦那。だが、ここでアンタが捕まったらさすがに幸先が悪いからな。」
「フフ、無粋とは思ったけどお邪魔させてもらったわ。同志”C”と一緒にね。」
大男と女が言ったその時
「―――そういう事だ。」
仮面を被り、漆黒のマントを身に纏う謎の男―――”C”が現れた!
「……!?」
「……仮面……?」
「……フフ……」
リィン達が警戒している中、”C”がギデオン達に近づいた。
「同志”C”……まさか君まで来るとはな。私の立てた今回の作戦、それほど頼りなく見えたか?」
「いや、ほぼ完璧に見えた。しかし作戦というものは常に不確定の要素が入り込む。そこの”Ⅶ組”の諸君のようにな。」
「……くっ…………」
「僕達の事まで……」
「……何者……?」
「ふぅん?(うふふ、まさかクロウお兄さんがテロリストの親玉だなんてねぇ?しかも…………クスクス、お兄さんの計画、たっぷりと利用させてもらうわ♪)」
”C”に見つめられたリィン達はそれぞれ”C”を警戒している中”グノーシス”の力で”C”達の記憶を読み取っていたレンは意味ありげな笑みを浮かべていた。
「本作戦の主目的は既に達した。”我らの悲願”を果たす為にもここは無用の争いを避けるべきではないか?」
「……その通りだ。」
そして”C”の指摘にギデオンは頷いた。
「我らはこれにて失礼させてもらう。無論”本日は”これ以上の騒ぎを起こすつもりはない。異存は無いかな、Ⅶ組の諸君?」
「……あるに決まってるだろう……!」
「恐れ多くも殿下達を攫った事……」
「とても帝国人として許せるものじゃないな……」
「6対6でレンが味方の状況か……ちょっと有利な状況かな。」
「………み、みんな………」
「皆さん………」
「兄様………」
”C”の言葉を聞いたリィン達が怒りの表情で”C”達を睨んでいる中フィーは戦況を推測し、リィン達の様子を見たエリオットやアルフィン皇女、エリゼは心配そうな表情でリィン達を見つめていた。
「――――ハア。リィンお兄さん達、せっかく向こうが大人しく退くって言っているんだから、戦っちゃダメよ。」
「ほう……?」
「!?何を言っているんだ、レン……!?」
「殿下達を攫った不敬者達を見逃せというのか……!?」
「君は遊撃士なのに、殿下達にも危害を加えたテロリスト達を見逃すことに何とも思わないのか!?」
その時溜息を吐いたレンがリィン達に忠告し、レンの忠告を聞いた”C”が興味ありげな様子をしている中リィンとラウラ、マキアスはそれぞれ反論し
「むしろ”遊撃士”だからこそここは見逃すべきだって言っているのよ。」
「へ……そ、それってどういう事??」
レンの意図が理解できなかったエリオットは戸惑いの表情で訊ねた。
「あのねぇ……レン達の最大の目的はテロリスト達に誘拐された二人の救出。その最大の目的を果たした上テロリスト達も大人しく退くって言っているのに、せっかく助けた二人をテロリスト達との戦闘に巻き込んだり、戦闘の隙に二人がまた誘拐されてしまうリスクをわざわざ背負ってまで、これ以上テロリスト達と交戦するなんて愚の骨頂よ。」
「そ、それは………」
「くっ……!」
「………確かにレンの言う通りだね。」
「レンさん………」
呆れた表情で指摘したレンの正論を聞くとマキアスは複雑そうな表情をし、大切な妹と祖国の皇女を戦闘に巻き込んだり、再び誘拐されてしまう可能性を指摘されたリィンは悔しさによって唇を噛みしめ、フィーは冷静な様子でレンの正論に頷き、自分達の身を一番心配しているレンの意見にエリゼは目を丸くしてレンを見つめていた。
「しかし、レン……!」
一方ラウラはまだ納得していない様子でレンに反論しようとしたが
「それと援軍に現れたその仮面の男を含めたテロリスト達の幹部と思われる3人の実力を考えたらレン達の方が不利よ。フィーのように実戦経験が豊富な訳でもなく、レンのように実戦経験が豊富かつ達人クラスでもないどころか”戦士としても半人前”のリィンお兄さん達が自分達より実力が高い3人相手にエリゼお姉さんとお姫様を守りながら戦うなんて、それこそ”最悪の結果”――――レン達がやられて、お姫様とエリゼお姉さんがテロリスト達に誘拐されるという”結果”になってしまうかもしれないわよ。」
「………ッ………!」
レンの正論に対して反論が思い浮かばず、唇を噛みしめて黙り込んだ。
「”二兎を追う者は一兎をも得ず”って言う諺があるでしょう?確実にエリゼお姉さんとお姫様を助けたいんだったら、避けられるリスクは可能な限り避けるべきよ。」
「………わかった。みんなもいいな?」
「わたしは元々レンの意見に賛成だから、異存はない。実際レンの言う通り、二人を確実に助ける為にも避けられるリスクは避けるべき。」
「僕達は異存ありまくりだが…………」
「殿下達の身の安全を考えると口惜しいが退くしかないな………」
「う、うん……そうだよね……」
「兄様………」
「すみません、皆さん………わたくし達の為に……」
エリゼとアルフィン皇女を確実に助ける為という理由を聞いてようやく冷静になったリィンは仲間達にテロリスト達を見逃す事を促し、促された仲間達はレンの意見に納得しているフィーを除いてそれぞれ悔しさを感じてテロリスト達から下がってアルフィン皇女とエリゼを守るように二人の前で武器を構えている中エリゼとアルフィン皇女はそれぞれ辛そうな表情でリィン達を見つめていた。
「クク、さすが”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”。戦っていもいないのに俺達の実力を見抜いた事も驚いたが、”落とし所”をよくわかっているじゃねぇか。」
「うふふ、あの年齢で冷静に状況を把握して、護衛対象の安全を確実にする為に敵を見逃す事も躊躇わないなんてさすが民間人の安全を第一に考える遊撃士協会が”特例”で認めた幼きA級正遊撃士だけあって、まさに遊撃士の鏡のような判断ね。」
一方リィン達が自分達から離れる様子を見守っていた大男と女は感心した様子でレンを見つめ
「クク……”帝国解放戦線”―――本日よりそう名乗らせてもらう。静かなる怒りの焔をたたえ、度し難き独裁者に鉄槌を下す……まあ、そういった集団だ。」
不敵な笑みを浮かべた”C”は自分達の組織の名を名乗った。
「”帝国解放戦線”……」
「そ、それに独裁者って……」
”C”達の組織の名を知ったマキアスが呆け、何かを察したエリオットが驚いたその時
「―――そこまでです!」
何とクレア大尉率いる”鉄道憲兵隊”がサラ教官と共にリィン達の所に駆けつけた!
「サラ教官、クレア大尉……!」
「間に合ったか……!」
「クク……どうやら時間のようだな。」
クレア大尉の登場にリィン達が明るい表情をしている中”C”は懐からスイッチらしき物を取り出し
「え……」
「まさか……」
それを見たエリオットが呆け、フィーが厳しい表情をしたその時
「それでは諸君―――また会おう。」
”C”がスイッチを押すと大きな音が聞こえ、更に周りが揺れ始めた!
「なっ……!?」
「ば、爆弾……!?」
「クク、あばよ。」
「それじゃあね♪可愛い仔犬ちゃんたち。」
「フン……せいぜい生き延びてみせるがいい。」
そして”C”達が撤退するとサラ教官がリィン達に警告した。
「崩れるわ、早くこっちへ!」
「は、はいっ!」
「くっ……洒落になってないぞ!?」
「リィンお兄さんはエリゼお姉さんを!ラウラお姉さんはお姫様をお願い!」
「ああ……!」
「承知……!」
そしてリィンとラウラはそれぞれエリゼとアルフィン皇女を抱き上げ、仲間達やサラ教官達と共に崩れ落ちて行くその場から撤退した―――――
後書き
と言う訳でレンちゃんの活躍によってエリゼとアルフィンは眠らされる事無く救出され、更にはギデオンはボス召喚を封じられましたwwちなみに皆さんはお気づきと思いますが、この物語では最強キャラの一人であるレンちゃんだけで帝国解放戦線のCや幹部達全員を余裕で制圧できますwwまあ、原作のレンちゃんでも一人で制圧できるような気はしますがww
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