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英雄伝説~菫の軌跡~(閃篇)

作者:sorano
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第40話

~地下墓所~



「ふ~、まったく。ヒヤヒヤさせてくれるわね。でも、全員無事でよかったわ。」

安全地帯まで撤退したサラ教官は安堵の表情で溜息を吐いてリィン達を見回した。

「お、おかげさまで……」

「はあ……さすがに死ぬかと思いましたよ……」

「というか一足遅すぎ。」

「ゴメンゴメン……って、こりゃあ追跡は無理っぽいわね。」

「……ええ………」

「”帝国解放戦線”か……」

サラ教官の言葉にラウラは頷き、リィンは考え込んでいたが

「うふふ、ところでリィンお兄さん。いつまでエリゼお姉さんをお姫様抱っこし続けるつもりなのかしら♪」

「へ………って、悪い、エリゼ!」

「い、いえ……むしろずっとし続けて欲しかったくらいですし……」

からかいの表情のレンに指摘されると慌てた様子でエリゼを下ろして立たせ、リィンに謝罪されたエリゼは小声でリィンから視線を逸らして呟き

「?何か言ったか?」

「な、何でもありません!」

「??」

不思議そうな表情で訊ねて来たリィンの質問に顔を赤らめて答え、エリゼの様子にリィンは不思議そうな表情をし

「殿下、大丈夫ですか?」

「ええ。本当にありがとうございました……」

ラウラに下ろされて地面に立ったアルフィン皇女はラウラ達に感謝の言葉を述べた。



「レン……一つ聞いてもよいか?」

「何かしら?」

「先程そなたは殿下達の安全を確保する為にそなたとフィーと違い、実戦経験が未熟な私達はテロリスト達と戦うべきではないと言っていたが……もしあの時あの場にいたのがそなたとフィーだけだったのならば、あのテロリスト達を捕縛できたのか?」

「ラウラ………」

ラウラの質問を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし

「そうねぇ……もしあの場にレンとフィーだけしかいない状態でもレンの”魔眼”でテロリスト達の動きを封じ込めて二人を救出できたし、テロリスト達を捕縛するつもりだったのなら、救出した二人をフィーに安全な場所まで誘導させて、レンが残ってテロリスト達と戦って後から駆けつけて来るフィーと連携して戦っていたでしょうけど……幾らなんでも全員の”捕縛”は無理だけど何人かを”始末”してからの”捕縛”ならできたと思うわよ?」

「……まあ、わたしとレンだったら”G”っていう眼鏡の男と配下の二人のテロリスト達は確実に”始末”できたね。」

「し、”始末”って………」

「うふふ、当然”殺す”事に決まっているでしょう?―――確か帝国の法律でも、激しい抵抗をする犯罪者相手なら、殺しても問題なかったでしょう、クレアお姉さん?」

レンの説明にフィーは納得し、二人の話の中から出て来た不穏な言葉を聞いたエリオットが不安そうな表情をしている中、レンは話を続けた後クレア大尉に訊ねた。



「………ええ。もし本当にそのような状況が実現しましたら、6対2でレンさんとフィーさんが不利な状況なのですから、”正当防衛”が成立する上殿下達の人命救助という大義名分もありますから、例えお二人がテロリスト達を殺害したとしても罪にはならなかったでしょうね。――――むしろ、それどころか皇帝陛下がレンさんとフィーさんに感謝してお二人に勲章を贈ったり、テロリスト達を殺害した件でお二人を責める人々を陛下の権限で黙らせると思います。陛下にとって大切なご息女であられる皇女殿下とアルノール皇家と親しい間柄である”シュバルツァー男爵家”のご息女であられるエリゼさんを救出し、帝都を騒がせたテロリスト達を無力化したのですから。」

「…………………」

「ハア………ちょっと、レン。幾ら犯罪者相手でも”人を殺す覚悟をしろ”なんて話、この子達にはまだ早すぎるわよ。この場にはリィン達だけでなく、戦いとは無縁の皇女殿下やリィンの妹もいるのよ?」

クレア大尉の答えを聞いたリィン達がそれぞれ重苦しい雰囲気を纏って黙っている中サラ教官が呆れた表情で溜息を吐いてレンに指摘した。

「あら、リィンお兄さん達は”士官学院生”――――”軍人の卵”なんだから、”敵を殺す覚悟”はあって当たり前でしょうし、エリゼお姉さんやお姫様だって貴族に皇族なんだから、ユーシスお兄さんがよく口にしている”貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”を果たす為に民を守る貴族や皇族として民に危害を加える”賊”を最悪殺す覚悟がある事は当たり前だと思うのだけど?実際クローゼお姉さん――――クローディア姫は”戦い”を嫌ってはいるけど”祖国を守る為に自らの手で敵を排除する覚悟”もあったからこそ、結果的には敵、味方共に死人は出なかったけどクーデターや”リベールの異変”の時もレン達と一緒に戦ったし。」

「……………」

「レンさん………」

「ぐっ………ちなみにテロリスト達の幹部ってのはあんたの見立てだとどのくらいの強さだったのかしら?」

レンの厳しい意見であり、正論でもある話を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情で顔を俯かせ、エリゼは複雑そうな表情でレンを見つめ、レンの正論に対して反論できなかった為唸り声を上げたサラ教官は話を変える為にレンにある事を訊ねた。



「そうね……”C”っていう仮面の男はサラお姉さんと同じレベルね。”V”って言う大男の方は高ランクの猟兵団の部隊長クラスで、”S”っていう眼帯のお姉さんはC~B級遊撃士レベルって所かしら。」

「そう…………」

「レン……あの時俺達に退くように言ったのは、もし戦闘になったら”俺達が足手纏いになる”からでもあったのか?」

「リィン………」

レンの答えを聞いたサラ教官が重々しい様子を纏っている中複雑そうな表情でレンに質問するリィンの様子をエリオットは心配そうな表情で見つめていた。

「ハッキリ言ってしまえばそうなるわね。ただでさえ救助並びに護衛対象が二人もいるのに、半人前のリィンお兄さん達と一緒に達人(マスター)クラスに近い強さの3人を含めた計6人のテロリスト達を無力化するなんて無謀な事はレンは絶対にしないわ。例え交戦するとしてもリィンお兄さん達に二人を安全な場所まで誘導させる役をさせて、サラお姉さん達が駆けつけてくるまでフィーと一緒に戦っていたわ。サラお姉さんだって、その場にいたとしてもレンと同じ判断をしたのじゃないかしら?」

「……そうね。相手の実力を考えると二人の救助を確実にするかつ味方を気にせずに”本気”を出して戦う為にもあんたと同じ判断をしたでしょうね。あんたの話通りの強さだと、今のこの子達が戦うには正直言って”無謀”な状況だわ。相手が一人だけだったならまだあたし達がフォローに回ればこの子達がいても勝てたでしょうけど、さすがに三人同時が相手だとフォローしきれないから無理ね。」

「もしサラもいた場合だとリィン達にエリゼ達を安全な場所に避難誘導してもらっている間に、眼鏡の男達を速攻で殺害した後わたしが眼帯の女、サラとレンがそれぞれ仮面の男と大男を一対一で相手すれば、先に制圧した方がまだ戦っている味方の援護に回れるからサラがいたら、高確率で制圧できただろうね。」

レンの意見にサラ教官は複雑そうな表情で同意し、フィーはサラ教官がいた場合の状況を推測した。

「………ッ……!」

「くっ………僕達にもっと力があれば……!」

「………………」

「………まだまだ精進が必要……と言う事だな。」

「兄様……」

「皆さん……」

一方レンの意見に同意したサラ教官とフィーの話を聞き、自分達がレン達にとっては”足手纏い”である事を思い知らされたリィンとマキアスは唇を噛みしめ、エリオットは辛そうな表情で黙り込み、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、リィン達の様子をエリゼとアルフィン皇女は心配そうな表情で見つめていた。



「―――ま、テロリスト達を見逃したことに関してそんなに重く受け止める必要はないから気にする必要はないわよ。軍人の卵とは言えリィンお兄さん達はまだ”学生”なのに、テロリスト相手に二人を無事に救出したという普通に考えればベストな”結果”を出したのだから。第一テロリスト達の制圧なんて”学生”のレン達がする事じゃなくてクレアお姉さん達――――”軍”がする事よ。そうでしょう、クレアお姉さん?」

「はい。私達より先に先行してお二人を救出して頂いた事は本当に助かりました。もしリィンさん達が先行してくれていなかったら、私達がテロリスト達に追いつけず、二人がテロリスト達に誘拐されるという”最悪の事態”に陥っていた可能性は十分に考えられていたでしょう………お二人を救出した所か、リィンさん達も全員無事である事に安心しました。レンさんの仰る通りテロリスト達をどうにかする件は我々”軍”の役目ですので、リィンさん達はどうかお気になさらないでください。」

レンに視線を向けられたクレア大尉はレンの意見に同意して頷いた後リィン達に気遣いの言葉をおくった。

「……お気遣い、ありがとうございます。それとレン、頼みがあるんだけど、聞いてもらってもいいか?」

「兄様……?」

「先に言っておくけどレンが”八葉一刀流”の皆伝者だからって言う理由でレンに”八葉一刀流”の剣術を教えてくれなんて頼みなら、お断りよ。リィンお兄さんが”初伝”止まりなのはユンおじいさんの考えなんだからリィンお兄さんと同じユンおじいさんの教え子のレンが勝手な事をする訳にもいかないし、レンはリィンお兄さんの”家族”でもないんだからそんな事をする”義理”はないもの。」

クレア大尉に会釈をした後レンを見つめて何かを頼もうとするリィンの様子にエリゼは不思議そうな表情をし、リィンの質問の内容を先に予測したレンは冷たい答えを口にした。

「ハハ……確かに”八葉一刀流”の皆伝者の一人であるレンに”八葉”の剣を教えてもらいたい気持ちもあるけど……俺がレンから教えて貰いたいのはレンが遊撃士時代に培ってきた”実戦の知識”だ。」

「あら………」

「へ……じ、”実戦の知識”??」

リィンは苦笑した後レンが予想していた答えとは異なる答えを口にし、リィンの頼みの内容を知ったサラ教官は目を丸くし、マキアスは不思議そうな表情で首を傾げた。



「みんなもオリヴァルト殿下からレンの遊撃士時代の活躍を聞いただろう?遺跡探索に犯罪者の心理の推測、人質の救出等様々な”戦闘以外の実戦”に対する知識も豊富で、それぞれの状況に対する判断もすぐにできる。今回だってレンの咄嗟の判断と指示でテロリスト達が二人に何かする前に救出できた上ノルドの時のように”G”という男に魔獣を呼ばせなかったし、テロリスト達の援軍が来た時もエリゼと皇女殿下の身の安全を確実にする為に二人を誘拐した事に熱くなり過ぎていた俺達に冷や水をかけて、冷静な判断をするように忠告してくれただろう?」

「それは…………」

「ま、いい案だと思うよ。リベールのクーデターや”異変”の解決に関わったレンの方が遊撃士として残した功績もサラより上だし。」

「ぐっ……こ、この娘は……!」

リィンの説明を聞いたラウラが真剣な表情をしている中フィーの話を聞いたサラ教官は唸り声を上げてフィーを睨んだ。

「実戦の知識ならレンに頼らなくてもサラお姉さんがちゃんと授業で教えてくれるじゃない。」

「フーンだ。1年の授業で教える事は主に戦闘関連で、犯罪者の心理や人質の救出とかそう言った戦闘以外の知識については2年になってから教える事の上授業でも教えない内容もあるから、あたしは今すぐには教えられないわね~。勿論その子達が先にそれを学ぶことを望んでも、例え担任でも教官として一クラスに贔屓はできないから、教えないわよ~っだ。」

「サラ、大人げなさすぎ。」

そしてレンの指摘に対していじけた様子で答えたサラ教官の話を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中フィーがジト目で指摘した。



「フム……だが、そう言う事であれば、我らも戦闘以外の実戦の知識についてレンから色々学ぶべきだろうな。」

「勿論戦闘の知識に関しても学ぶべきだが、今後の”特別実習”でも戦闘以外の知識や判断が求められるだろうし、そもそもオリヴァルト殿下はそのつもりでレンをトールズに入学させたのだから、僕達もレンから色々と学ぶべきだな。」

「えへへ……今の話をB班のみんなにも後で説明したら、B班のみんなもきっと僕達と同じ答えを出すだろうね。」

「えー……ただでさえ昔の(よしみ)のサービス価格でオリビエお兄さんの依頼を請けて長期間拘束される上レンにとっては学ぶことは何もない学生をやってあげているのに、今後のレンの人脈や遊撃士の功績にもならない上、何の見返りもなくレンが今までの経験で培って来て手に入れた豊富な知識を無料で教えるなんて、絶対嫌よ~。第一オリビエお兄さんもリィンお兄さん達に手取り足取り教えてくれなんて、依頼していないし。」

それぞれがレンから学ぶ雰囲気になっている中その場の空気をぶち壊すかのようにめんどくさそうな様子で答えたレンの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「あんたね………遊撃士は見返りを求める職業じゃないでしょう?」

「というか前々から感じていたけどレンって、遊撃士より”猟兵”の方が似合っているよ。報酬分はしっかりと働いて、報酬分以外は働くつもりはない考えなんだから。」

サラ教官は呆れた表情でレンに指摘し、フィーはジト目でレンを見つめて呟いた。



「あの……でしたら、レンさん。わたくしからの”依頼”と言う事でリィンさん達が望むレンさんの知識を教えて差し上げてもらえませんか?」

「ひ、姫様……!?」

「ええっ!?」

「そ、そんな……!殿下にそこまでしていただくなんて、恐れ多いですよ……!」

するとその時アルフィン皇女がレンを見つめて申し出、アルフィン皇女の申し出を聞いたエリゼとエリオットは驚き、マキアスは恐縮した様子で答えた。

「フフ、わたくしとエリゼを助けて頂いたわたくしができるせめてものお礼ですから気にしないでください。」

「皇女殿下………」

「お気遣い、ありがとうございます。」

アルフィン皇女の話を聞いたリィンが驚いている中ラウラは会釈をした。



「ふぅん?でもお姫様はその”依頼”に対する”報酬”としてレンに一体何を支払うつもりなのかしら?先に言っておくけどレンはただでさえオリビエお兄さんの”依頼”で特殊な内容の依頼を請けている最中なんだから、”お金如き”じゃ動かないわよ。例え何千万、何億ミラを積まれようとね。――――ま、それ以前に幾ら帝国の皇女とはいえ、私的な理由でそんな大金を用意はできても使用するなんて無理でしょうけど。」

一方レンは意味ありげな笑みを浮かべてアルフィン皇女に問いかけた。

「ちょっ、レン!?」

「最後のは幾らなんでも言い過ぎだ……!今すぐ殿下に謝罪するんだ、レン……!」

レンの指摘を聞いたエリオットは表情を引き攣らせ、リィンは真剣な表情でレンに注意した。

「いいんです、リィンさん。実際レンさんの仰る通り幾ら帝国の皇女とはいえ、私的な理由でそんな大金を使用してしまえば、民達に示しがつきませんし、皇族失格ですもの。私達”皇族”は民達が納めてくれる税で生きているのですから。」

「殿下……」

「姫様…………」

「……………」

しかしアルフィン皇女の制止と制止した理由を聞いたリィンはエリゼと共に辛そうな表情をし、アルフィン皇女同様民達の税で生活している”貴族”であるラウラもアルフィン皇女の気持ちを理解していた為複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「その……わたくしの事情に合わせて頂く形で申し訳ないのですが、わたくしでできる事でしたら何でも構いませんので仰って下さい。」

「そうねぇ……だったら、お姫様には面白い事をしてもらおうかしら。」

「面白い事、ですか?」

「今年の夏至祭最終日に宮殿で開かれるパーティーにリィンお兄さんを招待して、お姫様にとって初めてのダンスパートナーに指名してリィンお兄さん以外の男の人とは踊っちゃダメって言ったら、ちゃんとそうしてくれるのかしら♪」

「レンさん!?」

「ちょっ!?何でそこで俺が出てくるんだよ!?」

アルフィン皇女の言葉に対してからかいの表情で答えたレンの話を聞いたエリゼとリィンは驚いた。

「うふふ、お姫様自らがパーティーに招待した所かお姫様にとって初めてのダンスパートナーに指名され、更にはお姫様がリィンんお兄さん以外の男の人とダンスをするつもりはないって帝国の人達がみんなが知ったら、帝国の人達もそうだけど世界中の人達も面白い反応をすると思わないかしら♪」

「まあ~、どう考えてもリィンが皇女殿下の将来のお相手に見られる事は間違いなしでしょうね~♪」

「サラ教官!そんな他人事(ひとごと)のように言わないでくださいよ!」

「レンさん!先日は私の事を応援すると仰って色々としてくれたのに、どうしてそのような事を姫様に提案されたのですか!?」

小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの説明に続くようにサラ教官はからかいの表情でレンの説明を補足し、リィンは疲れた表情でサラ教官に指摘し、エリゼは信じられない表情でレンを見つめて訊ねた。



「クスクス、冗談よ、じょ・う・だ・ん♪」

「まあ、そうだったんですの?わたくしは元々リィンさんを誘いたかったのですから、レンさんがそれをお望みならば本気でそのつもりでしたのに。」

「いい”っ!?」

「姫様!?」

そして笑顔を浮かべたレンの言葉に対して目を丸くしたアルフィン皇女の答えを聞いたリィンは表情を引き攣らせ、エリゼは驚き

「うそうそ、本気にしないで♪」

「………………しりません。兄様のバカ……」

「いや、何でそこで俺が責められるんだよ……」

からかいの表情で答えたアルフィン皇女の答えを聞いたエリゼはジト目でアルフィン皇女を見つめた後頬を膨らませて明後日の方向へと視線を向け、エリゼの答えを聞いたリィンは疲れた表情で肩を落とし

(な、何だかあの二人、妙に息が合っている気がするんだけど……)

(ふむ、言われてみれば………)

(二人とも人をからかう事が趣味のようなものだから、すぐに仲良くなったんだと思うよ。)

(僕達は決して会わせてはいけない二人を会わせてしまったのかもしれないな……)

一方その様子を見守っていたエリオット達は小声で囁き合っていた。



「うふふ、”報酬”はお姫様に対する”貸し”と言う事で勘弁してあげるわ。勿論いつか利子ごみでお姫様ができる事でちゃんとその”貸し”を返してもらうわよ?」

「ふふ、わかりました。その時が来ればわたくしでできる事でしたら何でも仰って下さい。」

「き、君なあ………」

「帝国の皇女相手に利子ごみの”貸し”を堂々と作るなんて、そう言う厚かましい所も相変わらずだね。」

「ハア………エステル達は一体どうやってこの娘の手綱を握っていたのかしら?」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの提案に微笑みながら頷いたアルフィン皇女の様子を見守っていたリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中マキアスとフィーは呆れた表情でレンを見つめ、サラ教官は疲れた表情で溜息を吐いた。

「フフ………」

一方その様子をクレア大尉は微笑ましそうに見守っていたが

「………情報局の分析通りでしたね。幾つかのルートは押さえていますが網にかかるでしょうか?」

「……難しいでしょう。帝都地下は未知の区画が多すぎます。ある程度で捜索を切り上げて市内の治安回復に専念してください。」

「イエス・マム。」

「状況終了、各方面に通達せよ。」

部下の問いかけを聞くと表情を引き締めて振り向いて部下達に指示をした。

「………………”帝国解放戦線”―――――ようやく姿を現しましたね。」

そしてクレア大尉は真剣な表情で奥を見つめて呟いた。


 
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