英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~守護神の復活~
~夜・ハーケン門・司令室~
夜の闇に包まれる中、メンフィル軍はハーケン門の周囲で駐留し、さらにヴォルフ砦の周辺の街道でもルースやサフィナ、そしてシェラ率いるメンフィル軍が駐留し、いつでも進軍を開始できるような状態にしていた。
「―――それでは既にアリシア女王より話は来ていると思いますが、我らメンフィル軍、これよりハーケン門を通過させて頂きます。」
「……承知しました。ですがプリネ姫……いくつかお尋ねしたい事があるのですが。」
リベール王国軍のトップであるモルガン将軍はプリネの言葉に会釈をした後真剣な表情でプリネ姫を見つめた。
「何でしょう?答えられる事ならお答えしますが。」
「………まず貴女達の軍の中にいるあの”竜”のような姿をした生物や見た事もない戦車や人形兵器らしき物、そして戦艦は一体なんなのですかな?」
そしてモルガン将軍は窓から見える光景に視線を向けて尋ねた。窓から見える光景――――そこには魔導技術によって創られた地上型魔導装甲――――”パフォス”と”グロウ=ロウ”、そして”アシュラクナーナ”の軍団、ラインフォルト社から購入し、大量生産した最新型の戦車”アハツェン”の軍団、さまざまな属性の石象兵や竜の軍団が存在し、さらにその周囲には魔導外装―――”グラン”、レザァ=ボウ”、”アシュラクーナ”の軍団が存在し、空には飛行艇の軍団や歪竜―――”ペルソアティス”やゼラウソラス”の軍団、超弩級魔導戦艦―――”ヴァリアント”、”フォーミダブル”、”マグナニム”がそれぞれ数機ずつ滞空し、その周囲には”ルナ=ゼバル”が無数に滞空していた!
「――――あれらは全て我々の世界で技術で創られた存在です。エレボニア帝国に潜入している諜報員によると”機甲兵”や”騎神”なる未知の兵器が存在しているという情報があり、それらに対抗する為に創られた兵器です。ちなみにあれら全ての技術を我々に教えた”クロスベル帝国”の方々には”報酬”としてあの軍団のおよそ3分の1にあたる数を譲渡する契約となっており、既に転移魔術でクロスベル帝国の方々に譲渡済みです。」
「なっ………!?」
「ク、クロスベルまであんなとんでもない兵器を……!?」
プリネの説明を聞いたモルガン将軍は目を見開き、モルガン将軍の側にいた副官は表情を青褪めさせ
「………それともう一つ………プリネ姫。今回の戦争に参戦する事は貴女の本意なのですか?」
モルガン将軍はすぐに気を取り直して真剣な表情で尋ねた。
「……………正直な所、戦争は嫌いです。―――ですが私はメンフィル皇族。戦争が起こった際には先頭に立って兵達を鼓舞するのが義務。そしてその戦争によって民を救い、国を栄えさせる事ができるのなら、喜んでこの手を血で染めましょう。」
「…………………………」
辛そう表情で言った後決意の表情で言ったプリネの言葉を聞いたモルガン将軍は押し黙り
「それでは失礼し………あ。――――そうでした。リベールにとっての朗報を今この場でお伝えしておきます。」
「朗報……?」
会釈をして退室しかけようとしたその時、ある事を思い出したプリネの言葉を聞き、不思議そうな表情をした。
「―――先程”身喰らう蛇”の”盟主”を父――――リウイ陛下達が討ち取ったとの報告が入りました。」
「なっ!?」
「け、”結社”のトップが!?」
プリネの情報を聞いたモルガン将軍と副官は驚いて声を上げ
「はい。――――後は”盟主”の意志を知り、未だ”結社”を継続させる事が可能と思われる残りの”使徒”達全員を討伐する為に既にメンフィルは本格的に動き始めています。」
「………………………」
プリネの話を聞いたモルガン将軍は目を見開いて絶句した。
「それで、できればその件についてモルガン将軍の方からアリシア女王陛下やカシウス准将達にお伝えしておいてくれませんか?」
「………承知しました。」
「ありがとうございます。―――それでは今度こそ失礼します。」
モルガン将軍の返事を聞いたプリネは会釈をした後部屋を出て行った。
「まさかこんなにもあっけなく”結社”のトップとやらが殺害されるとは想像もできませんでしたな……」
プリネが出て行った後副官は驚きの表情でモルガン将軍を見つめて言い
「………これが”ゼムリア大陸真の覇者”………メンフィル帝国の”本気”か……………その事を考えると”百日戦役”での戦いも大幅に手を抜いていたというのか……………」
モルガン将軍は重々しい様子を纏って呟いた。
「将軍………メンフィルがいる上、あれほどの兵器を手に入れたクロスベルがメンフィルと挟み撃ちで二大国に戦争を仕掛けてしまえば、エレボニアとカルバードは………」
「間違いなく滅ぼされるだろうな。どう考えても現存する導力兵器では”あんな兵器”や魔獣………いや”竜”や石象兵の軍団に敵うとはとても思えん。………このゼムリア大陸は一体どうなるのであろうな………」
そして不安そうな表情で呟いた副官の言葉に答えたモルガン将軍は窓から見える光景を見つめて重々しい口調で呟いた。
「―――お待たせしました。シルフィアさ……いえ、リアンヌ様。”槍の聖女”と称され、そして”メンフィルの守護神”と称えられているシルフィア様の生まれ変わりである貴女の活躍、期待させて頂きますね。」
「……陛下達に再び忠誠の証を捧げる為に全力で戦わさせて頂きます。」
プリネに微笑まれたアリアンロード――――リアンヌは会釈をし
「フッ……それにしてもまさか”鋼の聖女”が味方になった上、既に”盟主”まで滅されているとは夢にも思わなかったな……」
「え、ええ………こんなとんでもない事、誰も予想できなかったでしょうね……」
その様子を見ていたレーヴェは苦笑し、ツーヤは表情を引き攣らせていた。
「――――では行きましょう。まず最初の目標はトリスタを占拠している”帝国解放戦線”と”貴族派”の領邦軍の殲滅ですね。」
「そしてトリスタを拠点にし、帝都ヘイムダルに進軍……最終的には”結社”の”使徒”の”第二柱”―――”深淵”のクロチルダを討ち取る事……ですね。」
「くふっ♪どれだけ長く遊べるかな♪」
そしてプリネは仲間達に促し、ツーヤは真剣な表情で呟き、二人の言葉を聞いたエヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべ
「進軍上、通過する事になるレグラムの町を守る”光の剣匠”が厄介になるかもしれませんが………彼は私が引き受けるか説得をしてみましょう。」
「フッ……”光の剣匠”と”鋼の聖女”の戦いか。できれば見てみたいものだな………」
リアンヌは静かな表情で呟き、レーヴェは不敵な笑みを浮かべて行った。
「――――全軍、注目!!」
そして半刻後、レーヴェは号令をかけて兵達に自分達を注目させ
「―――これより混迷に満ちたエレボニア帝国に住まう”民を救う為”、エレボニア帝国に侵略します!総員、決して民に手を出してはいけません!!」
「ハッ!!」
『聖剣ジークリンデ』を空へと掲げて叫んだプリネの号令に兵達は敬礼をして答え
「さらに皆にすばらしい報せがあります!―――本日、”メンフィルの守護神”と称えられたシルフィア様が生まれ変わった方が現れ、我が国に再び仕える事となりました!」
プリネの叫びを聞いた兵達はそれぞれの顔を見合わせてどよめき始めた。
「―――静粛に!!」
その様子を見たツーヤが叫ぶと兵士達はどよめきを止めてプリネに注目した。するとそこにリアンヌがプリネの隣に移動し
「―――メンフィルと偉大なるリウイ陛下達を守護する兵達よ。我はシルフィア・ルーハンスの生まれ変わりであるリアンヌ・ルーハンス・サンドロット!!今まで訳あって姿を隠していたが再びリウイ陛下達が立ち上がり、民の為に戦うと聞き、参上した!これより我が武の全て……メンフィル帝国と陛下達に全て捧げよう!!」
リアンヌは槍を掲げて号令をかけ
「おお………!あの誇り高さ………ここからでも感じるすざましい”力”………まさにシルフィア様だっ!!」
「”聖皇妃”に続いてついに……ついに”メンフィルの守護神”も復活したぞ……!」
それを見たシルフィアが生きていた時代からメンフィルに仕えている古参の隊長や将軍達は驚きの表情や嬉し涙を流して呟き
「オオオオオオオオオォォォォオオオオオオオ――――――――――ッ!!」
「誇り高きメンフィルに栄光あれッ!!」
「勝利は我らにありっ!!」
リアンヌの号令に応えるかのように兵達はそれぞれの武器を掲げて歓声を上げた!その後プリネ達率いるメンフィル帝国軍は闇の中、混迷に満ちたエレボニア帝国へと進軍し始め、ヴォルフ砦でもルース、サフィナ、シェラ率いるメンフィル軍が混迷に満ちたカルバード共和国に進軍し始めた!
こうして………”メンフィルの守護神”シルフィアの生まれ変わりであるリアンヌを加え、さらに士気を高めたメンフィル帝国軍は闇夜の中、混迷に満ちた二大国との距離を徐々に狭めて行った………………
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