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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第132話

~星見の塔~



「………とんでもない話だったな………」

リアンヌが消えるとランディは疲れた表情で溜息を吐き

「………今聞いた話は他の人達には伝えない方がいいかもしれませんね………」

「………確かにそうだね。」

リーシャは複雑そうな表情で呟き、ワジは重々しい様子を纏って頷いた。

「そういえば、エリィ。リアンヌさんを知っているような言い方をしていたけど……」

「何だか、物凄く思わせぶりなやり取りをしていましたよね?」

一方ある事に気付いたロイドとティオはエリィに尋ね

「………そうね。今以上に混乱させてしまいそうだからあまり言いたくはないけど………私の考えが正しければ――――彼女は250年前の人間だわ。」

尋ねられたエリィは目を伏せて言った後真剣な表情で答えた。

「なにィ………!?」

「それは一体………!?」

エリィの答えを聞いたランディとリーシャは驚き

「あら……じゃあ既に”神格者”なんだ。」

カーリアンは目を丸くして言った。

「250年前、エレボニアで帝位を巡る激しい継承者争いが起きたことがあったの。争いは帝国全土に波及し、遂には”獅子戦役”という名前で呼ばれる事になったのだけど………その時、中立の立場から戦乱を終わらせるべく立ち上がったとある女性の武人がいたの。リアンヌ・サンドロット――――麗しき黄金の髪をなびかせ、”鉄騎隊”という一団を率いて戦場を駆け抜けた人物よ。」

「あ………」

「それって……」

エリィの情報を聞いたロイドとティオは呆け

「ま、まんまじゃねーか!?」

ランディは驚きの表情で声を上げた。

「帝国では誰でも知っている歴史上の有名人物だね……しかも通り名の一つが”槍の聖女”リアンヌだったか。」

「そんな人がかつてエレボニアに………」

(まさにシルフィアにピッタリな人物ね………)

ワジの話を聞いたリーシャは真剣な表情になり、カーリアンは目を伏せて考え込み

「”鉄機隊”に”鉄騎隊”………”槍の聖女”に”鋼の聖女”か。外見といい、確かにあまりにも符号が揃いすぎている……」

「それにシルフィアさんも自分のかつてのファミリーネームを含めて同性同名で名乗っていましたしね。」

ロイドは目を伏せて考え込み、ティオは真剣な表情で言った。

「……でも250年前、自らの働きで平和が戻った直後、彼女は命を落としたはずよ。謀殺されたとか、病気だったとか、色々と諸説があるのだけど……」

「そういえば。シルフィアさん、”主”が自分の存在を危ぶんで謀殺されかけたって言ってましたけど……」

複雑そうな表情で言ったエリィの言葉を聞いた後ある事を思い出したティオはエリィを見つめ

「………”槍の聖女”が当時忠誠を誓っていたのは確か”獅子戦役”を終わらせ、即位した当時の皇帝―――”獅子心皇帝”ドライケルスだったはずだよ。」

「という事はドライケルス皇帝が”槍の聖女”の存在を危ぶんだという事か………」

ワジの話を聞いたロイドは考え込み

「恐らくそうでしょうね………当時の民の支持はドライケルス皇帝とリアンヌ・サンドロットにわけられていたという諸説だったし……」

エリィは重々しい様子を纏って呟き

「ま、要するにそのドライケルスって奴はリアンヌを利用するだけ利用して、自分の地位が危なくなると気付いて、排除しようとしたのね。」

カーリアンは目を伏せて言った。



「しかしまあ、あんなとんでもない力の持ち主があの”英雄王”達と組んだら”盟主”とやらもたまったもんじゃねえだろ?」

「た、確かにそうね………」

そして口元に笑みを浮かべて言ったランディの言葉を聞いたエリィは冷や汗かいて苦笑し

「というか今後メンフィルにはシルフィアさん……いえ、リアンヌさんまで力を貸すという事になりましたね。」

「た、ただでさえ強者揃いなのに………そこに彼女まで加わってしまったら、誰もメンフィルを止められない気がするのですが……」

「た、確かにそうだな……」

「フフ、少なくともこの世界では絶対無理でしょうね♪」

ティオは静かな表情で呟き、リーシャは表情を引き攣らせ、リーシャの言葉にロイドは苦笑しながら頷き、カーリアンは不敵な笑みを浮かべて言い

(やれやれ………まさかこんなあっけない形で”身喰らう蛇”が終わるなんてね………)

ワジは心の中で溜息を吐いた。

「――――いずれにしても彼女もクロスベルから去ってしまった。”結社”の事は頭の隅に置いて、私達の問題に集中しましょう。」

「ああ……そうだな。より――――鐘の共鳴を止めよう。上手く行けばクロスベル市の”結界”を解除できるはずだ。」

その後ロイド達は協力して大鐘を押さえて共鳴を止めた。するとクロスベル市を覆っていた結界は全て消えた!



「―――こちらダドリー。”結界”の消滅を確認した。これより教会艇(メルカバ)へのコンタクトを試みる。」

結界が消える様子を物陰から見ていたダドリーは誰かと通信をしていた。一方結界が消えた報せはディーター大統領の耳にも入った。



~オルキスタワー~



「”結界”が消滅しただと!?くっ………”結社”の連中も不甲斐ない。こうなったら残りの”神機(アイオーン)”を都市防衛に回して、”赤い星座”の猟兵達の全戦力も防衛に回すか………―――国防長官を呼べ!ベルとシグムントもだ!!」

報せを聞いたディーター大統領は拳で机を叩いた後怒りの表情で声を上げ

「しょ、承知しました……!」

ディーター大統領の指示に頷いた警備員は慌てた様子で部屋を出て行った。



「青い”壁”が……」

一方結界が消える様子を別室で見ていたシズクは不安そうな表情をし

「………心配は無用だ。お前に害が及ぶ事はないから安心するといい。」

シズクの側で見ていたアリオスは口元に笑みを浮かべて言った。

「っ……!わ、私のことよりお父さんの方が……!絶対にヴァイスハイトさん達、お父さんを許さないよ………!……どうして……どうしてこんなことに……!お母さんだってきっと……哀しんでるはずだよ………!」

その時シズクはアリオスに抱き付いて涙を流して声を上げた。

「……そうだな。サヤがいればきっと……困った顔で説教されただろう。―――シズク。お前に一つ、頼みたいことがある。」

シズクの言葉を聞いたアリオスは静かな笑みを浮かべて言った後、真剣な表情でシズクを見つめて言った。



「………………………」

一方結界が消える様子をキーアは悲しそうな表情で屋上から見つめていた。

「フフ……してやられましわね。」

その時マリアベルがキーアに近づいてきた。

「ベル………ディーターが捜してるみたいだけど行かなくてもいいの?」

「うふふ、お父様にはもう少し焦っていただきましょう。やはり”鐘”の共鳴がないと”結界”の展開は難しいですか?」

「……うん、今のままだと。あの(アイオーン)達は動けるけど”空”の力は使えないかな……―――ロイド達、来るよ。」

「フフ、困りましたわね。これでは予定通り動くしかなくなってしまいますわ。”彼”のプラン通りに。」

キーアの話を聞いたマリアベルは口元に笑みを浮かべて言った後怪しげな笑みを浮かべ

「…………………」

キーアは黙り込んでいた。

「全てはキーアさん次第……わたくし達は従うだけです。ここで降りるか――――それとも”全てを叶えるか”。そろそろ選ぶ時ですわよ?」

「…………うん。最初から、他に道が無いのはキーアにもわかってたから……ロイドやエリィ、ティオやランディ、シズクやみんなのためにも………―――きっと全てを叶えてみせる。」

そしてマリアベルに尋ねられたキーアは考え込んだ後微笑みながら答えた。



~同時刻・メルカバ伍号機・ブリッジ~



「それじゃあ次は最後の戦いの時に来るね。」

一方その頃”未来のミント”は”現代のミント”に言い

「うん。」

未来の自分の言葉にミントは頷き

「エターナルソードよ、力を貸して!!」

ミントは剣で空間を斬って空間の中に入って消えた!

「あはは………それにしてもまさかこんな事になるなんてね……」

「さっきミント達が手分けして連れて来たアドルさん達やナユタやノイ、後はクレハさんはまだ何とかわかるとして………まさか貴女達まで来るなんて………」

ミントが消えるとエステルは苦笑し、ヨシュアは驚きの表情で目の前にいるエステルが腰に付けている神剣と同じ神剣――――”天秤の十字架(リブラクルース)”が収められてある鞘を腰につけ、自分達の母であるレナそっくりの容姿をした女性と、かつて”影の国”で共に戦った仲間であり、空の女神(エイドス)の母でもある女神フィーナそっくりの容姿をし、空の女神(エイドス)の父、”冒険家”アドルの瞳の色と同じ色の瞳を持つ女性を見つめ

「ハハ…………オレらからしたらとんでもない事かつ、凄い光栄な事ですわ………」

「………かつてのゼムリア大陸の混沌した状況を収め、平和をお過ごしの所、わざわざ私達の時代にご足労して頂いた上、力まで貸して頂くなんて………本当にありがとうございます―――――我らの大いなる女神………”空の女神(エイドス)”。」

「まさか御身の姿を拝める時が来るとは……本当に光栄です!!」

「今まで生きていて本当によかったです……!」

ケビンは苦笑した後胸に手を当てて頭を下げ、リースは静かな笑みを浮かべて女性の一人―――”空の女神(エイドス)”に会釈をし、リースに続くように星杯騎士達はそれぞれ会釈をした……………! 
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