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SECOND

作者:灰文鳥
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第一部
第三章
  第二十話『魔法少女のお茶会』

 その日、数日ぶりの魔獣狩りをすべく、いつもの公園に詠がいた。そこへ翠がやってくる。
翠  「待ちました?詠さん。」
詠  「うんうん、別に…って言うか、どうしたの翠、その髪…」
翠  「ええ…ちょっと…」
 翠が伏目がちに答えたので詠はその追求はしなかったが、感想は言ってみた。
詠  「そう…。何だか翠、音符みたいね。」
翠  「変…ですか…」
詠  「うんうん、変じゃないよ。私は可愛いと思うなぁ。」
 翠は可愛いと言われ、少し照れた。
翠  「…ありがとう、詠さん。」
詠  「ところでさあ、あなたこの前、まどかの事追ってったじゃない。あの後私、ほむらに会ってまどかがどこに行ったか聞かれたのよね。あれって結局どうなったのかしら?」
翠  「ええ、あれはですね…」
 そこへ遅れて幸恵がやって来た。
幸恵 「あーあ、仕事だからしょーがない。」
詠  「ええ、そうよ。どお、つまらない理由で魔法少女になんて、ならなきゃ良かったでしょう。」
幸恵 「べーつにぃ。私、魔法少女になったの唯さんが目当てだった訳じゃないんですけどぉ。変な勘繰り止めて貰えませんかねぇ、静沼中の人。」
翠  「幸恵、これから私達は仲間としてやって行かなくっちゃいけないんだから。詠さんもお願いしますよ。」
詠  「それにしてもほむらったら遅いわね。またあのまどかって子に何かあったのかしら?」
 翠は事実を言い難かった。
キュゥべえ「ほむらならもう来ないよ。」
 キュゥべえが暗がりから現れ、答えた。
詠  「え?ほむら、どうかしたの?」
キュゥべえ「彼女には別の場所に行って貰ったよ。まあ転属ってやつだね。」
幸恵 「えーっ、ここ人数減ったのにぃ。じゃあ私も転属したーい。」
キュゥべえ「君は駄目だよ。君には魔法少女としての貢献値が全く無いからね。ところで翠、君はマミの使っていた部屋に住みたいとは思うのかな?」
翠  「えっあの部屋に、ですか…」
キュゥべえ「うん、実はあの部屋はマミ買い取りの物件でね。マミがいなくなってしまったからどうしようかと思っていたんだけど、もし君が使いたいのならそのまま名義を君に移してもいいよ。まあローンみたいな形で貢献値から引かせて貰うけど、君ならすぐに払い終わるんじゃないのかな。」
翠  「私が…あそこに…」
キュゥべえ「まあ考えておいてよ。でも出来るだけ早く答えを出してくれるとありがたいかな。あんな良物件がずっと空き間だと、いろいろ問題が出て来るからね。」
 そう言い終わるとキュゥべえは立ち去ろうとした。
詠  「あら、もう行ってしまうの?」
キュゥべえ「まあ、僕も何かと忙しい身なんでね。魔獣狩り、頑張ってよね。」
 そしてキュゥべえは去って行った。
翠  「…では、魔獣狩りに行きましょか。」
 三人は狩りに出た。
 魔獣空間の中は特に変わった事は無かった。三人が入ると、まるで人間の臭いを嗅ぎ付けて寄って来るかのように魔獣達が近付いて来た。それが普通の魔獣空間の中なのだ。
 翠と詠が積極的に戦っているのに対して幸恵は殆ど戦おうとせず、やる気が全く無いのが露骨に分かった。
詠  「ちょっと幸恵、何やってんのよ。」
幸恵 「何って?あんたらがピンチにでもなったらちゃんと助けてやるわよ。」
詠  「魔獣をターミネートしないとカースキューブが得られないのよ。あんた新人のくせにノルマ分も殺ろうとしないなんて、いい根性してるわね。後で泣きを見るわよ。」
幸恵 「あーそーですか、そりゃどーも。じゃあ後でしくしく泣かして貰いますんで。」
 二人の遣り取りに慌てて翠が飛んで来た。
翠  「二人共、何しているんですか。戦闘中に気を抜いていると、死んでしまうかもしれませんよ。」
幸恵 「翠さあ、こう言っちゃなんだけど、あんたってかなり強いよね。私達要らなくない?こんな普通の敵、あんた一人で充分だよね。今度からさ、翠一人で魔獣狩りやっちゃってよ。何かあった時だけ呼んでくれればいいからさあ、そうしよ。」
 さすがにこの意見には翠も呆れてしまい、翠は詠の方を見た。詠も呆れ顔で見返し、結局幸恵を放っといて二人で魔獣を倒した。
 狩りが終わり結界から出ると、幸恵はさっさと帰ってしまう。
幸恵 「じゃあ翠、考えといてね。」
 幸恵が消えると詠も翠に不満をぶつける。
詠  「あんまり言いたくないんだけど、彼女連れて来たのあなたなんだし、クラスメイトでもあるんだから、もっとはっきり注意して欲しいわ。そりゃこっちにも唯の事とかあったけど、戦わないってちょっと酷過ぎると思うのよね。」
翠  「すみません、詠さん…」
詠  「別にあなたを責めている訳ではないのだけれど…あーあ、マミさんがいた頃は良かったわね。」
 詠はそう言って帰って行った。

  ♢

 幸恵の実家では幸恵の母が、娘がいなくなったと悩み苦しんでいた。
幸恵母「あなた。娘が、娘がいないの。」
幸恵父「おい、この家に娘なんていなかったろう。しっかりしてくれよ。」
幸恵母「いえ、確かにいたのよ。」
幸恵父「じゃあ名前は何て言うんだい?」
幸恵母「名前は…名前は…」
幸恵父「名前も覚えていない子がいたって言うのかい。よく考えてごらん、娘なんていなかったから名前も思い出せないんだよ。」
幸恵母「いいえ、いたの。私達の大切な娘が…一人…名前は…確か…」

  ♢

 ある日、キュゥべえが幸恵の部屋にやって来た。
キュゥべえ「幸恵、君に伝える事がある。」
幸恵 「何ですか、急に…」
キュゥべえ「君はカオスキューブの最低ノルマ分すら提供していないよね、だからこちらからも今の生活のレベルを維持するだけのものを提供する事が出来ない。よって次の内からレベルを落とす物を選んで貰うよ。」
幸恵 「うふぇ…」
キュゥべえ「支給生活費の減額、学費の安い学校への転校、家賃の安い住居への転居。さあ、どれを選ぶ?」
幸恵 「…生活費の減額って、今でもギリギリなんすけど…」
キュゥべえ「あのさあ幸恵、見滝原って随分といい学校だよ。ここだって結構いいマンションなんだよ。こう言っては何だけど、君の活躍からすると身分不相応もいいところさ。今の生活費だってかなりおまけして払っているんだけどね。」
幸恵 「学校ってどこになるんすか?」
キュゥべえ「まあ普通に考えて、一番近い公立の静沼中になるだろうね。」
幸恵 「静沼っすか…」
 幸恵は困った。唯でもいるならまだしも、今の友達と別れてまであの詠のいる学校へ通う気にはなれない。
幸恵 「じゃあ…引っ越しで…」
キュゥべえ「分かった。それじゃあ、今すぐ支度してよ。」
幸恵 「ええっ!?」

  ♢

 翠の部屋にキュゥべえがやって来た。
キュゥべえ「翠、そろそろ答えは出たのかな。」
翠  「そうですね…」
 翠も今の部屋に愛着が無い訳ではなかった。陽子と過ごした夜が頭をよぎる。
翠  「マミさんのお部屋に、移らせて頂こうと思います。」
キュゥべえ「うん、そうするといい。あそこは君にこそ相応しいと思うよ。じゃあ早速ハウスクリーニングしておくから、君も引越しの準備をしておいてよ。」
翠  「待って。マミさんの部屋ってひょっとしてそのままなの?」
キュゥべえ「ああ、そうさ。次が決まってから対処するんだよ。場合によってはクリーニングの必要とか無いだろ、僕も無駄な出費は出来るだけしたくないからね。」
翠  「…そのままで、いいよ。」
キュゥべえ「ん?どういう事だい。」
翠  「マミさんの部屋、ハウスクリーニングしないでいいよ。必要なら私が自分で掃除するから…」
キュゥべえ「ハウスクリーニング代は君からは取らないよ。」
翠  「そういう事じゃないの。私…マミさんとの思い出も大切にしたいから…」
 キュゥべえは目をつぶって言った。
キュゥべえ「うーん。あんまりそういうのはお勧め出来ないんだけどね…」
 キュゥべえは尻尾を振りながら続ける。
キュゥべえ「まあ、君ならいいか。そういう事ならいつでも引っ越すといい、名義はもう君の物にしてあるからさ。」
 そしてキュゥべえは翠の部屋から去って行った。

  ♢

 幸恵の新居は木造モルタル製のぼろいアパートだった。二階建てのそれは一つの階に四つの部屋が並んでいた。幸恵はその一階の3号室に入って行った。
幸恵 「えー…マジで…」
 そこは幸恵が今まで行った事すらも無いような部屋だった。幸恵にとってそれは、テレビや映画にのみ出て来る実際には存在していない架空のもの、と思っていた場所であった。暗く汚く何だかジメジメしているその部屋の中には入る事さえ幸恵は躊躇した。だが他に行く当ても無い彼女はそこに住むしかなかったのだ。
 幸恵は意を決し靴を脱いで部屋の中に上がると、その真ん中辺りに持って来た鞄と共に座り込んだ。
幸恵 「何とか…なるよね…」
 幸恵はそう自分に言い聞かせた。

  ♢

 翠はマミの部屋にやって来た。ソファーの上に茶色いクマとピンクのウサギを見つけると、それを手で優しく撫でた。
翠  「寂しかったよね…」
 そして三角形のクリスタルテーブルの前に座ると、そのテーブルに手を載せた。そして暫く考え込んでいた翠は思い付いた事を口に出した。
翠  「そうだ!お茶会をしよう。そうすればみんなきっと…」

  ♢

 朝、幸恵は憤っていた。ぼろアパートの薄い壁は隣家の騒音を遮ろうとはせず、一晩中男女の痴話げんかや子供のぐずる声や二階の住人の蠢く音を幸恵に伝え続けた。
 ぼろ布団を頭から被って、幸恵は叫んだ。
幸恵 「こんなの堪えらんないよ!」
 逃げるように登校すると、翠が話し掛けて来た。
翠  「幸恵、私今日、魔法少女のお茶会を開く事にしたわ。だからあなたも来て。」
 幸恵は〝なんじゃそりゃ〟と思ったが、あのぼろ部屋に少しでもいなくていいのなら大歓迎だった。
幸恵 「ふ~ん。あんたの部屋でやんの?」
翠  「うん。あっ私の部屋って言っても前に来たあの部屋じゃなくって、元マミさんの部屋なんだけどね。」
幸恵 「ふ~ん。分かった、行くよ。」
翠  「詠さんも呼ぶけど、いいよね。」
幸恵 「うんいいよ、別に…」
 放課後、翠と幸恵は詠と合流して翠の新居へと向かった。
詠  「マミさんの部屋かぁ…久しぶりね。あっ御免なさい、今はあなたのお部屋よね。」
翠  「いいですよ、詠さん。私だってまだそう思ってますから。」
 そして一行はその建物の前に到着した。
幸恵 「ちょっ、嘘でしょ!翠、ここに住んでんの?」
翠  「うん。」
幸恵 「…」
 一行はコンシェルジュに見送られ、その高層階のコンドミニアムにやって来た。
翠  「さあ、入って。」
 中に入った幸恵はつかつかと部屋の奥まで進み、呆れるように窓から見える街を見下ろした。
翠  「今お茶入れますね。」
詠  「手伝うわ、これでも茶道部だったのよ。」
 観光客のように部屋の中を見回す幸恵をよそに、翠と詠は三角形のクリスタルテーブルの上にお茶の用意をし終えると席に着いた。
翠  「幸恵、そこに座って。」
 半口を開けた幸恵は言われるままに席に着くと、今度はテーブルや食器をまるで品定めでもするかのようにしげしげと見始めた。
翠  「えーと…三人になっちゃたけどこれかも頑張って行こー、という訳でカンパ~イ。」
詠  「カンパ~イ。」
 そう言って翠と詠はカップを持ち上げた。二人がそうするようにと幸恵の方を見詰めると、思い出したように幸恵も自分のカップを持ち上げて言う。
幸恵 「乾杯…」
 何ともぎこちない幸恵を置いて、翠と詠が話し出す。
詠  「ああそうだ、ごめんなさい。私ったら何か手土産でも持ってくればいいのに、手ぶらで来ちゃったわね。」
翠  「そんなのいいんですよ、急に私がお呼び立てしたんですから。それよりマミさんみたいにお手製ケーキって訳にはいかなくって申し訳ないです。既製品なんでマミさんの物のように心がこもってなくって…」
詠  「えー、何言ってんの。これ裏通りにあるボン・シェフのケーキでしょ。あそこのケーキってたっかいのよねぇー。随分奮発したんじゃないの。」
翠  「ええ、なにせ栄えある私主催のお茶会第一回目ですからねえ。そのくらいはしますよ。」
詠  「でもまあ、翠ならこれくらい楽勝なんでしょうね。それともここの家賃分で、実は少し辛いとか?」
翠  「いやー、まあ…楽勝です。へへ。」
詠  「ふふふっ、そうでしょうね。」
 黙々とケーキを食べていた幸恵が口を開いた。
幸恵 「あの、さあ…」
翠  「なあに?」
幸恵 「翠ってどのくらいカースキューブ出してんの…」
翠  「それは、日によるけど…」
詠  「翠は凄いわよお、両手一杯山盛りに出した時なんて、あのキュゥべえが驚いていたもの。たしかブンブン尻尾を振りながら〝翠以外でこんな事が出来るのはこの星ではゼノビアとフローラぐらいだろう〟とか言ってたわよね。きっとゼノビアとフローラって外国の魔法少女の事なんでしょうけど。」
翠  「うん、でもあの時って…」
詠  「まあそうなんだけどさあ、その辺り過去は過去って事で…」
幸恵 「あのう…詠…さんは、どのくらいお出しで?」
詠  「私?う~ん、そりゃ日によるけど。狩りの後なら4,5個は出してるかな…」
幸恵 「そうですか、どうも…」
 結局このお茶会での幸恵の会話はそれだけだった。翠と詠はマミの思い出話で一通り盛り上がると満足し、その後、今後の方針を話し合った。やがて詠は帰宅する運びとなった。
詠  「申し訳ないんだけど、私まだ実家だからもう帰らなきゃ。」
翠  「まあ実家だと出るのが大変でしょうけど、一人暮らしは何かと面倒ですよ~。」
詠  「そう、だけど私もいつかはね…じゃあ、これで御いとましますね。お片付け手伝わなくってごめんなさいね。」
翠  「お構いなく。それじゃあまた明日の狩りの時に。」
詠  「うん、また明日。」
 そして詠は帰って行った。
 詠がいなくなると幸恵が翠に話し掛けて来た。
幸恵 「翠ぃ、あのさ…」
翠  「なあに?」
幸恵 「あのさ…あのさ…私もいい生活とかしたいんだ…」
翠  「うん…」
幸恵 「ここまでとは言わないけどさ、前の暮らしぐらいにはさ、したいんでさ…」
翠  「…」
幸恵 「だからさ…」
 幸恵は突然、ガバッと翠にひれ伏した。
幸恵 「だからお願い!私がカースキューブ稼ぐの手伝って下さい、お願いしますぅ…」
 幸恵はただ単に今の生活苦から逃れたくて言ったのだが、翠は自分が開いたお茶会の効果が出て幸恵がやる気を出したのだと思った。
 翠は幸恵の手を持って彼女を起こすと、ニッコリとほほ笑んで言った。
翠  「そう、やっとその気になってくれたのね。勿論手伝わせて貰うよ、幸恵。」

  ♢

 次の日の夜、魔獣狩りに行く前に小腹の空いた翠は冷蔵庫を物色してみた。するとその奥にかつてマミが作り置いていたと思しきケーキを見つけた。翠はそれをスンスンと嗅いで確かめ、たぶん大丈夫そうだと判断して食べ始めた。
翠  「これは…レアチーズケーキって…ことよね…」
 いつもの公園に翠が向かうと、他の二人がそこで待っていた。
翠  「待った?」
詠  「いえ。」
 その時、翠はなんだかお腹が騒がしくなってきたことを感じ始めた。
幸恵 「じゃあ翠、お願いね。」
翠  「うっうん、任せといて。」
 そして三人は魔法少女に変身した。すると翠はお腹の違和感が消えたのでホッとした。
 魔獣空間の中に入ると、翠は幸恵がトドメを刺し易いように魔獣の手足を射抜いていった。身動きの取れなくなった魔獣に、幸恵のハンマーが容赦なく叩き落される。
詠  「それって、そういう作戦なの?」
翠  「うん、まあそうです。」
詠  「ふ~ん。何か幸恵だけ得ねぇ。」
翠  「でも、やっと幸恵がやる気を出してくれたから…」
詠  「まあ、そうよね。ところで知っているとは思うけど、魔獣をターミネートすると何か負荷みたいなのが掛かって体が重くなるじゃない。あんなに沢山のターミネートを急にして、幸恵大丈夫なのかなあ。」
翠  「え!ターミネートって負荷が掛かるんですか?知らなかった…」
 詠は苦笑気味に言った。
詠  「あなたって…どんだけ規格外なのよ、もう…」
 相当数の魔獣を叩き潰した幸恵が二人の許へとやって来た。
幸恵 「ハアハア…結構やったよね、私。」
翠  「幸恵、大丈夫?かなり疲れているみたいだけど…」
幸恵 「ハアハア…だっ大丈夫よ、これくらい…ハアハア…」
 幸恵は明らかに息が上がっていた。
詠  「…今日はもうこれで終わりにした方がいいわね。」
翠  「そうですね。幸恵、いいよね。」
幸恵 「うん、まあこれぐらいにしとくわ。」
 三人が結界から出ると、息の上がっていた幸恵はすぐに変身を解いた。するとそれにつられるように詠も変身を解いた。翠もそれに倣って変身を解くとその途端、激しい腹痛に襲われかなりヤバ気な便意を模様した。慌てて翠が変身し直すと、それを見てすぐに他の二人も同様に急いで変身した。
詠  「何!?翠…」
 詠と幸恵は武器を構え翠に背中を預けるように近寄って来た。緊張した面持ちの二人に最初翠は何があったのか把握しかねていたが、やがて自分がやや前屈みに険しい顔で慌てて変身した為に、他の二人は何か警戒すべき緊急事態が起こったと判断して変身をした事に気が付いた。翠は本当の事を言おうか迷ったが、あまりに格好悪い理由だったので誤魔化す事にした。
翠  「うんうん、何でもない。気のせいだったみたい…」
詠  「そう、ならいいのだけれど…」
翠  「よっ、夜も遅いし変身したままで帰りましょ。あっ、でも幸恵が疲れているのなら私が送るけど、どうする?」
 幸恵は今住んでいるぼろアパートの事を知られる事が恥ずかしかった。
幸恵 「いっ、いいよ別に。それぐらいできるよ。」
翠  「じゃ、じゃあこれで解散ね。またね。」
詠  「ええ、また。」
 そして三人はその場から散って行った。
 魔法少女達が立ち去った後、暗闇の中から響亮がその場に歩み出て呟いた。
亮  「ふ~ん、完璧に気配を消したつもりだったんだけどな…やはりあの翠って子は一味違うようだね…」
 
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