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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第八話~ライ~

 
前書き
話し合いです。

ライの戦闘を早く見たいという人はもう少し待ってください。
ある人との模擬戦を予定しているので。

 

 
リニアレールの戦闘から一夜明け、ライはシャマルと隊長室に向かっていた。これからのライの処遇を話し合うためである。
 隊長室に向かう間、ライは自分のことをどこまで話すか考えていた。始めは自分についてある程度話すつもりでいたのだが、リニアレールの事件と管理局の現状を把握し、考えを改めた。
 前日の事件終了後、ライは情報端末を借りこの世界を独自に調べた。ウーノから説明されていたのはあくまでも触りだけで詳しくはなかったのだ。そこで今度は自分から詳しく調べることにしたのだ。
 その結果、管理局に対する不信感を抱いた。当初、ライは管理局を「魔法を使用することを主体とした警察、または軍のような組織」と認識していた。しかし蓋を開けてみればある意味ブリタニア帝国に近い組織であった。軍事力だけでなく政治としての権力も握り、それを抑える組織も存在しない。利用した情報端末に映される情報は美辞麗句を用いてそれを隠そうとしているが、もとの世界でブリタニアとナンバーズの国を知っているライには通じなかった。
 そしてもう一つライの目にとまったのは質量兵器の導入案である。それは魔法を使わずにライにとっては馴染みの深い銃などの現代兵器を利用することである。現段階では魔法の方が優秀なため採用されていないがここでライのKMFの情報がネックになる。前日の戦闘でKMFの有用性をある意味立証してしまったのだ。もしライがKMFのデータを管理局に引き渡せば魔法と質量兵器のパワーバランスが崩れ、最悪元の世界で起こった虐殺に近い戦闘が起こる可能性もある。
 それらを踏まえた話し合いについて考えていると二人は隊長室に到着し入室した。



機動六課隊長室


 入室するとそこにははやてとフェイトの二人が机を挟み向かい合って座っていた。

はやて「おはよう、ライ。昨日はよう寝れた?」

フェイト「おはよう、ライ。」

ライ「おはようございます。八神さん、ハラオウンさん。」

はやて「硬いな~。敬語はいらんし、はやてでええよ。」

フェイト「私もフェイトでいいよ。」

ライ「…わかった。はやて、フェイト。」

 ライの言葉を聞きはやてとフェイトは満足した笑顔を浮かべた。そしてライはフェイトの、シャマルははやての隣にそれぞれ座り話し合いを始めた。

はやて「二人から聞いたんやけど、ライの住んでた世界については私も把握した。今からはライのことにつて話してくれん?」

 はやての言葉を聞きライは移動中に考えてきた『嘘を混ぜた真実』を話始めた。

ライ「僕は元の世界ではエリア11…日本にあるアッシュフォード学園に通っていた。」

フェイト「えっ…学生だったの?」

ライ「意外かい?」

フェイト「あっ、えと、その…」

自分の質問にあたふたするフェイト見て、苦笑しながら話を続ける。

ライ「僕は元々身寄りがなくて、その学園の理事長のご好意でそこに通っていたんだ。」

 そのことを聞き少し暗い空気になるがライは明るい口調で三人に声をかける。

ライ「そんな顔をしないで。それでも僕は幸せだったから。それに支えてくれる友達もいたから。」

 ライの言葉で少し空気が軽くなったところではやてが質問する。

はやて「学生やけどKMFに詳しかったんはなんで?」

ライ「知り合いにKMFの技術者がいて、その知り合いからよくデータや戦闘の動画を見せてもらっていたんだ。だから昨日も指示を出せた。」

はやて「指揮に慣れとったんは?」

ライ「学園にいたときは生徒会に所属していて、その時によくイベントの準備で指揮をとっていたからそのおかげだと思う。」

はやて「へ~、イベントって?」

 ライの言葉にはやては食いつく。フェイトも興味深々なのかライの言葉を期待して待っている。
 二人がここまで反応するのには理由があった。なのはを含めた三人は中学を卒業してすぐに管理局に入局している。しかも在学中も管理局の仕事を手伝っており、そのせいで学校の行事にほとんど参加できないでいたのだ。そのためライの話す学園での生活に惹かれるのは当然と言える。

ライ「文化祭で巨大なピザを作ったり、学園全体で鬼ごっこみたいなことしたり……あと男女逆転祭りとかかな?」

フェイト「男女逆転祭り?」

 ライの最後の単語に疑問を持ったフェイトはオウム返しにつぶやいて首を傾げる。残りの二人も同じく首を傾げている。それに気付いたライは説明を始める。

ライ「女子は男装、男子は女装してその日一日を過ごす祭りだよ。途中から言動も反転させてたりしてた。」

 ライは少し遠い目をしながら説明する。その姿を見たフェイトは少し心配になってライの方を見ていた。しかしはやてとシャマルは違った。ライの説明を聞くなりいきなり後ろを向き二人だけで話始める。

はやて「シャマルわかっとるな?………で……を………するんやで。」

シャマル「わかったわ。私も……で…を……するけどいい?」

はやて「もちろん!面白いは正義や!」

 話を終えた二人は正面に向き直る。その二人の会話が聞こえていなかったフェイトは二人に尋ねた。

フェイト「二人共どうかした?」

はやて「ううん。なんでもないで!」

シャマル「ええ、なんでもないわ!」

ライ・フェイト「「?」」

とてもいい笑顔で答える二人に疑問を持ちつつもライは話を続ける。

ライ「あとは何が聞きたい?」

 その言葉ではやては気を引き締め直し質問する。

はやて「昨日二人が聞いたギアスってなんなん?」

 その質問にライの中の警戒が上がる。少し口調を固くしライは確認をとる。

ライ「……これから話すのはここにいる三人以外の人間には教えないと誓えるか?」

はやて「………約束する。これからの会話の内容は外部には漏らさん。シャマルもフェイトちゃんもええな?」

 はやての言葉に二人が頷くことを確認してからライは語りだす。

ライ「僕のギアスは絶対遵守の王の力。僕が他人に対しこの力を使えば、その相手は僕の命令に絶対に従う。」

フェイト「洗脳ってこと?」

ライ「違う。相手を支配する。」

フェイト「えっと…違いがよくわからない。」

ライ「洗脳は相手の意識を騙すことで認識を誤認させる。だから解くことも可能だしかけられた本人が疑問を抱くこともある。でもギアスは違う。騙すことをせず、誤認させずに命令を遂行させる。解くことも疑問を抱くこともなく相手の心を捻じ曲げる。」

ライの説明を理解し絶句する三人。そんな中はやては質問をかける。

はやて「魔法文化のない世界でどうやってその力を手に入れたん?」

ライ「わからない。」

はやて「え?」

ライ「さっき僕には身寄りがないと言ったけど、正確には記憶がないところを学園で保護されたんだ。」

フェイト「そんな…」

ライ「僕がこの力に気付いたのは保護されてからだ。だから知らない。」

 空気がかなり重くなる。
 ライの説明を聞きフェイトとシャマルは一つの仮説を立てた。それはライが実験動物と同じ扱いを受けていたかもしれないということ。昨日の検査で発覚したライの身体データと今の話でそれを想像できてしまったのだ。
 二人がライの過去を考えている最中にはやてがライに質問する。

はやて「…まだ隠してることがあるやろ。」

ライ「……」

はやて「昨日も言ったけど、沈黙は肯定と取らしてもらうで。」

ライ「…なぜわかった?」

はやて「昨日の戦闘指揮は学生が出せるようなものやないし、そしてそれ以上にライには貫禄があった。あれは戦闘を経験した人でないと持てんものや。」

ライ「……」

はやて「話してくれんか?」

ライ「……僕の記憶が無いことが分かってから、最初にしたのが血液検査だ。」

ライのいきなりの話題にまた疑問の顔をする三人。

ライ「そして分かったのが僕が日本人とブリタニア人のハーフだということ。」

はやて・フェイト・シャマル「「「!」」」

ライ「だから僕は黒の騎士団に入隊したんだ。」

フェイト「じゃあ…」

ライ「うん。僕は元の世界ではテロリストだ。そしてブラックリベリオンで戦闘中に撃墜されて、気がついたらこの世界にいた。」

はやて「……」

ライ「僕を捕まえるか?」

 はやては正直迷っていた。始めはライを六課に入れるつもりだった。KMFの知識と戦闘指揮の能力の高さ、そして昨日の検査で発覚したリンカーコアの存在。戦闘員としてライのような存在は貴重なのだ。しかしライの経歴がはやての予想を超えていた。経歴を偽り彼を六課に入れることは後ろ盾を使えば可能と思われる。しかし、ライの経歴がバレた場合六課の存続が危うくなる。ハイリスクハイリターンなのである。
 はやてはライを見極めるために問いかける。

はやて「ライはどうして戦ったん?」

ライ「誰もが笑って過ごせる優しい明日を迎えるために。」

ライははやてからの質問にはっきりと答える。その瞳には強い意思と決意が宿っていた。それを確認したはやては自分の選択に決意し言葉を紡ぐ。

はやて「ライの世界は次元世界やなくて平行世界。やから現時点でライの帰る方法は無いんや。」

ライ「わかってる。」

はやて「それで、もし良かったら民間協力者としてこの機動六課に協力してほしい。」

ライ「え?」

はやて「どうや?」

ライ「でも僕は…」

はやて「過去は変えることは出来ん。でも未来を変えるために今を生きることは出来る。」

ライ「……」

はやて「ライはどうしたい?」

ライ「…一つ約束して欲しい。もし僕のギアスが暴走したら僕を殺して欲しい。」

はやて「……」

ライ「ギアスは使えば使うほど力を増す。そして最後には暴走し自分の意識でのオンオフができなくなる。もしそうなったら…」

 ライが最後の言葉を言おうとした瞬間、はやてとフェイトの二人がライの頭を包むように左右から優しく抱きしめた。

はやて「そんなことは絶対にさせへん。ライにギアスは使わせん。だからそんな自分を傷つけることは言わなくていいんやで?それにライはそんなことするはずない。いったやろ、これでも人を見る目はあるって。」

フェイト「もうそんな悲しい目をしないで。苦しければ正直に言ってもいいんだよ。」

 二人はライがこの力に苦しんでいることに気づいていた。そしてこれまでにライを支えられる人がいなかったことも察していた。ライは支える側に立つことがあっても支えられる側に立つことは無いのだと。
 二人からの言葉を聞き静かにライは涙を流す。

ライ「……ありがとう」

二人の腕から解放されたライはこの世界に来て一番の笑顔と感謝の言葉を送るのだった。


 
 

 
後書き
今回のことでライの警戒心はやや下がります。
でも管理局に対してはまだまだ疑っています。

はやてとシャマルが伏線はりましたが回収はもう少し先です。

ご意見・ご感想をお待ちしております。m(_ _)m 
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