英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第110話
~アルモリカ村~
「さて、無事降りられたけど………しかしここって、村のレンゲ畑だった場所だよね?」
村の畑一面が見える位置まで移動したワジはロイドに尋ね
「ああ……随分様子が変わってるけど。」
尋ねられたロイドは真剣な表情で答えて異様な景色になっている畑を見つめた。
「まさか『プレロマ草』がこんなに咲いているなんて……」
「”幻獣”が村に現れないか心配ですね……」
異様な景色―――『プレロマ草』が畑一面に咲いた状態を見たエオリアは真剣な表情をし、リタは考え込み
「……これもキーアが覚醒した影響なのかもしれません。」
「………………………」
ティオは疲れた表情で呟き、キーアは辛そうな表情で黙り込んでいた。
「ツァイト。幻獣の気配はどうでしょう?」
「ふむ、今のところ出現する気配は無さそうだ。当面はあの法陣を頼りにしても問題なかろう。」
「わかった。とりあえずトルタ村長に挨拶した方が良さそうだな。」
「はい。行ってみましょう。」
その後ロイド達は村長宅を訪れて村長に事情を話した。
「―――なるほど。そんな事があったのか。最初、そちらの狼殿と共に訪ねて来た時は腰を抜かすかと思ったが。」
「す、すみません。」
「そんなに驚く事かなー?」
「うーん、どちらかというと”幽霊”の私を見た方が驚くと思うのですが?」
「何を言っているの!リタちゃんはどこからどうみても可愛い女の子よ♪」
村長の話を聞いたロイドは申し訳なさそうな表情をし、キーアとリタは首を傾げ、エオリアは嬉しそうな表情でリタを見つめ
「ふむ、どうやら私の配慮不足だったようだな。」
ツァイトは静かな口調で言った。
「いやいや、伝説の神狼殿にこうしてお目にかかれるとは光栄の至りですわい。村には”国防軍”とやらもほとんど来ることはないし……好きなだけ滞在してくれるといいじゃろう。」
「……ありがとうございます。」
「とても助かります。」
村長の申し出を聞いたロイドとティオは会釈をし
「えっとね………この頃のディーター達はメンフィルやキョクチョー達がいつ戦いを仕掛けてくるのかを警戒していて、アルモリカ村にはほとんど目を向けていなかったの。」
「なるほど………という事はよほど油断していなければ、見つからなさそうね。」
「そうなると……メンフィル領が近接しているベルガード門あたりは凄い厳重な警備になっているでしょうね。」
キーアの話を聞いたエオリアとリタは考え込み
「しかし病院の方でも批判的な人は多かったけど……ここでもディーター大統領はあまり評判が良くないみたいだね?」
ワジは真剣な表情で村長に尋ねた。
「うむ……元々この村とは縁の薄い人物ではあるからな。『独立国』などと言われても全くピンと来ぬし……例の”幻獣”が現れたせいで農作物の収穫も落ち込んでおる。なのにたまに国防軍とやらが見回りに来る程度の対応じゃ。……ギュランドロス殿が司令だった時は彼が司令に就任した時期あたりからは警備隊の者達が頻繁に見回りに来てくれたというのに………」
「そうでしたか……」
「……ぞんざいすぎますね。」
「クロスベル市から出られないミシェル達も歯がゆい思いをしているでしょうね……」
村長の説明を聞いたロイドは溜息を吐き、ティオは呆れ、エオリアは複雑そうな表情で呟き
「街の者が周辺の村里を省みぬのは世の常……しかし、どうもそれが行き過ぎているようだな。」
ツァイトは重々しい様子を纏って呟いた後厳しい表情をした。
「うむ……わしも正直、ついていけないものを感じる。かといって、この村の影響力などクロスベル市の人口に比べればあって無いようなもの……もはやわしらの希望はクロスベルの各所に散らばって潜伏している”六銃士”達じゃな。」
「え……局長達が?」
「そういえば局長達はこの辺りに潜伏しているという話だったね……」
村長の話を聞いたロイドは不思議そうな表情をし、ワジは真剣な表情で呟き
「もしかして局長達―――”六銃士”がこの村に姿を現した事があるのですか?」
ティオは真剣な表情で尋ねた。
「うむ…………ヴァイスハイト殿とアル警視……じゃったか。彼らや彼らの同志達がそれなりの頻度に村に姿を現して情報交換をしてくれたり、食料を配給してくれているのじゃ。……勿論彼らが姿を現した時は村人達が協力して国防軍が来ないか見張っておるし、国防軍に聞かれても知らないフリをしている。」
「そうだったのですか………」
「フム………狙われている立場でありながらも民を案ずるとは…………それに軍の長でありながら村里の民を案ずる事や民達に慕われている事といい……………ヴァイスハイトとギュランドロスこそ、まさに”真の王者”だな。」
村長の説明を聞いたロイドは驚き、ツァイトは感心し
「うむ……わし達もそう思っておるよ。」
ツァイトの言葉に村長は頷いた。
「しかし食料を配給って……一体どこからそんなにたくさんの食料を手に入れているのでしょう?潜伏しているのならそんな余裕はないと思うのですが……」
一方ティオは考え込み
「恐らく”ラギール商会”が極秘裏でメンフィル帝国から受け取って、それをわけているのではないかしら?」
「確かに転移魔術などを使えばクロスベル領への侵入や脱出は簡単ですものね。」
エオリアは推測し、エオリアの推測を聞いたリタは納得した様子で頷いた。
「………あの。局長達がどのあたりに潜伏しているとかわかりますか?」
「いや、さすがにわしらもその事については彼らからは聞いておらん。まあ、わしやデリックの代わりに村人達を代表してヴァイスハイト殿達と情報を交換し合っているハロルド君ならもしかしたら知っているかもしれんが………」
そしてロイドに尋ねられた村長は答え
「ハロルドさん……!?」
村長の答えを聞いたロイドは驚いた。
「そういえば……家族で遊びに行くと言っていたような。」
ティオはある事を思い出し
「うむ、ちょうど異変の時、一家で遊びに来ておってな。その後すぐに街道の移動制限が出されたからそのまま留まっているんじゃよ。」
ティオの言葉を聞いた村長は頷いて説明した。
「そうだったんですか……」
「ハロルド君の一家なら宿の2階に滞在しておる。よかったら顔を出すといい。」
「ええ、わかりました。」
「さっそく訪ねてみようか。」
その後ロイド達はハロルド達が滞在している宿屋の部屋に入った。
「あー、おっきなワンちゃんだ~!」
ロイド達が部屋に入るとコリンがツァイトを興味深そうな表情で見つめ
「皆さんは……!」
「おお……ロイドさん!よかった……ご無事だったんですね!」
ソフィアやハロルドはロイド達を見て明るい表情になった。
「……ハロルドさん、どうもお久しぶりです。」
「……『おっきなワンちゃん』とは私のことだろうか?」
ロイドはハロルドに会釈をし、ツァイトは尋ね
「ふふ、ナイスな呼称かと。」
(……もしこの場で姿を現せば我も『おっきなクマさん』と言われそうだな……)
ティオは静かな笑みを浮かべ、ラグタスは冷や汗をかき
「そうだよねー。ツァイト、とっても賢くておっきなワンちゃんだよ♪」
キーアは嬉しそうな表情でいい
「アハハ、神狼も形無しだね。」
ワジは笑い
「何だかフェミリンスさんの件以降、伝説の存在のイメージがどんどんと崩れているような気がしているのだけど……」
「フフ、確かにそうかもしれませんね。」
エオリアは冷や汗をかき、リタは微笑んでいた。その後ロイド達はハロルド達に事情を説明した。
「ロイドさんたちが逮捕されたという噂を聞いて本当に心配していました。何でも脱走犯として指名手配されたそうですが……ご無事そうで本当に良かった。」
「はは……ありがとうございます。」
安堵の表情で言ったハロルドの言葉にロイドは笑顔で答え
「あの、他の支援課の皆さんはどうなさったんでしょうか?」
「……残念ですが、離れ離れになっています。詳しい居場所もわからない状態で……」
心配そうな表情で尋ねたソフィアの言葉にティオは不安そうな表情で答えた。
「そうでしたか……心配ですね。」
「……ハロルドさんたちは異変の時、ちょうど村を訪れていたみたいですね?」
「ええ……最初は何が起こったのやら、皆目見当がつきませんでした。訳もわからないまま街道の移動制限が出されて街にも戻れなくなってしまって。」
「でも、村の方々には本当にお世話になっています。宿の主人は、ほとぼりが冷めるまで滞在していくよう言って下さって……コリンも、村の子供達とすっかり仲良くなったみたいで。」
「カミーユくんやプーリーちゃんがいっぱいあそんでくれるんだよ~。ワンちゃんも今度一緒に遊ぼうね~!」
嬉しそうな表情で話すソフィアに続くようにコリンは笑顔で話をしてツァイトを見つめ
「フフ、考えておこう。」
見つめられたツァイトは口元に笑みを浮かべて答えた。
「はは……ありがとうございます。まあ、そういうわけで私も恩返しに村のお手伝いをさせて頂いてるんです。とは言っても、時々訪れる国防軍との交渉やヴァイスハイトさん達との情報の交換を引き受けるくらいなのですが。」
「いえ、この状況下だととても大切な役割かと。ハロルドさんのようなベテランの商人なら、交渉もかなり慣れているでしょうし。」
ハロルドの話を聞いたティオは納得した様子で頷き
「はは、本当に大したことはないんですが。」
ティオの言葉を聞いたハロルドは苦笑していた。
「ロイド君、ヴァイスハイト局長達の居場所を聞かなくていいのかしら?」
その時エオリアがロイドを促し
「っと、そうでした。ハロルドさん、局長達―――”六銃士”達がこの辺りに潜伏しているという話を聞いているのですが、どの辺りに潜伏しているか聞いていませんか?」
促されたロイドは頷いた後真剣な表情でハロルドに尋ねた。
「残念ながら………私の方も知らされていません……ですが、国防軍と交渉している時に気になる話を聞いたんですが……」
「気になる話……?」
「ええ、何でも古道の途中にあるアルモリカ古戦場のあたりで国防軍が抵抗勢力――――”六銃士派”と”闇夜の眷属”の混合部隊に襲撃を何度も仕掛けられ、その度に撤退する状況に陥ったそうです。定期的に巡回しているようですが……成果は上がっていないようですね。」
「アルモリカ古戦場……かつて幾度となく血が流され、教団が本拠地と定めた宿業の地か。あの遺跡には隠れた通路なども多い。ヴァイスハイト達や”六銃士派”、そして”ラギール商会”とやらが身を潜めるには適しているだろうな。」
ハロルドの話を聞いたツァイトは真剣な表情で説明し
「ああ……恐らく局長達はそこにいるんだろう。準備を整えて行ってみるか。」
ツァイトの説明を聞いたロイドは頷いた後真剣な表情になった。
その後準備を整えたロイド達は古戦場に向かって行った……………
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