英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第106話(断章終了)
~タングラム丘陵~
「え……………」
声を聞いたロイドが驚いて声が聞こえた方向を見つめると、なんと蒼い法衣を纏ったワジ、白い法衣を纏ったアッバス、その後ろからはリースとケビン、さらにはセリカ、レシェンテ、リタ、エオリアがロイド達に近づいてきた。
「ワジ、どうして………それにアッバスにセリカさん達……エオリアさんにリースさん、それにあなたは!?」
ワジ達を見回したロイドは驚いた後ケビンに視線を向けた。
「―――久しいな、バニングス。」
「ご無沙汰しています。」
アッバスとリースはそれぞれロイドに声をかけ
「………どうやら無事脱出できたようだな。」
「フフ、ご無事で何よりです。」
「絶望的な状況でありながら抗う意志を示すとは………なかなか見上げた根性だったぞ!」
「中々熱い台詞だったわよ、ロイド君♪」
セリカは口元に笑みを浮かべ、リタは微笑み、レシェンテは感心し、エオリアはウインクをしてロイドを見つめ
「やー、オレとは4ヵ月ぶりくらいかな?覚えとってくれて嬉しいわ。」
ケビンは懐かしそうな表情でロイドを見つめた。
「確かあなたとリースさんは教会の『星杯騎士団』………ワジ、もしかしてお前――――!?」
見つめられたロイドは溜息を吐いた後ある事に気付いて驚きの表情でワジを見つめ
「フフ………七耀教会、星杯騎士団所属。守護騎士第九位―――”蒼の聖典”ワジ・ヘミスフィアさ。改めてよろしく頼むよ。」
見つめられたワジは自分の正体を明かした!
「………………………」
ワジの正体を知ったロイドは口をパクパクさせ
「フフ、とても驚いていますね。」
「無理もないわよ……私だって初めて知った時同じような反応だったし……………」
ロイドの様子を見たリタは微笑み、リタの言葉を聞いたエオリアは苦笑していた。
「………ちなみに自分は騎士団の正騎士の立場にある。ワジの補佐が主な任務だ。」
さらにアッバスは説明を補足し
「………それと俺達はリースを通じてここに姿を現した。――――エオリアの希望でな。」
セリカも説明を続けた。
「………ああもう!いきなりすぎて何が何だか。そ、それじゃあ……リースさんと最初に会った時、お互い何も言わなかったのは……?」
説明を聞き終えたロイドは混乱した後ある事に気付いて驚きの表情で尋ね
「………すみません。知らないフリをしていました。ヘミスフィア卿の潜入捜査は極秘とされていましたので。」
尋ねられたリースは申し訳なさそうな表情で答えた。
「で、彼女が来てくれたおかげでエラルダ大司教の注意が完全に逸れてくれたってワケさ。いや、ホント助かっちゃったよ。―――しかも”嵐の剣神”達という出鱈目な存在達を味方にしちゃってさ。」
「お役に立てて幸いです。」
口元に笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞いたリースは軽く会釈をし
「……勝手に俺達まで星杯騎士団の戦力扱いにするな………あくまで一時的に力を貸しているだけだ。」
「というか教会にとって天敵である”神殺し”や”古神”、さらには”幽霊”のわらわ達に力を借りて恥や屈辱とは思わんのか、お主たちは?」
セリカは静かな口調で呟き、レシェンテは呆れ
「アハハ、僕は使える物は何でも使う主義でね。そんなお堅い考えはしないよ。」
レシェンテの言葉を聞いたワジは笑いながら言った。
「ま、リースの場合、どう考えても普通のシスターには見えへんやろうからなぁ。大司教もさぞ面食らったやろ。」
「……大きなお世話。というかケビンは人のことは言えないと思う。」
そして溜息を吐いた後苦笑しながら言ったケビンの言葉を聞いたリースはジト目でケビンを見つめた。
(なんか誰一人として普通の聖職者には見えないんだが……)
その様子を見ていたロイドは冷や汗をかいて苦笑し
(”星杯騎士”ってみんなこんな人達ばかりなのかしら……?)
エオリアは呆れた表情でケビン達を見つめていた。
「―――まあ、改めての自己紹介はこのくらいにして。僕達がこの場に現れたのはそちらの彼に呼ばれたからでね。」
「ツァイトに……?」
ワジの話を聞いたロイドは不思議そうな表情でツァイトに視線を向けた。
「うむ、そうさせてもらった。おぬしの決意が固いのであれば協力者は必要かと思ってな。」
「あ………」
ツァイトの説明を聞いたロイドは声を上げてワジ達を見つめた。
「僕が潜入していた事からもわかると思うけど……騎士団はある程度、今回の事態を予測していてね。ただ、クロイス家の陰謀やキーアの正体についてはわからないことも多かったんだ。先日、彼と再会した折に、一通り教えてもらったけどね。」
「しかし”幻の至宝”は消滅しており、それに代わる新たな至宝が人の手で生み出されたとなると……事態は『古代遺物』を回収する騎士団の役割から外れてきてな。このままでは介入する口実がなくなってしまう所だった。」
「かといって”結社”がこの事態に絡んでいるとなるとオレらも放ってはおけん……そこで”君”という口実に頼らせてもらおうと思ったんや。」
「………!」
ワジ達の説明を聞いたロイドは目を見開き
「そういうこと―――君に協力させてもらう形で僕達は今回の事件に介入させてもらおうと思う。どうだい、ロイド?」
「―――俺達はヴァイス達―――クロスベル警察局長、警備隊司令に雇われている形で今回の事件に介入する。………まあ、エオリアの場合は理由は違うが。」
「そうね。―――私はクロスベルの遊撃士としてロイド君の力になるわ。」
「………………………エオリアさんはいいとして、他の人達に一つ確認させてくれ。あんたたちは……キーアをどうするつもりだ?」
ワジ達の話を聞いたロイドは考え込んだ後厳しい表情でワジ達を睨んで尋ねた。
「フフ、安心して下さい。メンフィル帝国………いえ、”ゼムリア同盟”は事態が終息すればキーアちゃんには一切手を出さない事をヴァイスさん達と約束をしています。」
「局長達が!?………という事は局長達は既にメンフィル帝国と手を組んでいる上、やっぱりキーアの事なども含めて全てわかっていたのか……!それに”ゼムリア同盟”って一体………」
リタの説明を聞いたロイドは驚いた後考え込んだ。
「…………………」
一方ロイドの質問を聞いたワジは複雑そうな表情で黙り込み
「……難しい質問やねぇ。」
ケビンは溜息を吐き
「でも、誤魔化しても始まらないと思います。」
「うむ、正直なところをまずは伝えるべきだろう。」
リースとアッバスはワジやケビンに助言をした。
「……そうだね。”零の至宝”だけど―――正直、”空の至宝”より遥かに危険で厄介な存在だ。現時点で、力の全貌が見えていないにも関わらず、ここまでの状況を作り上げた。―――君、いま大陸諸国がどうなっているか知ってるかい?」
「いや……エレボニアの方で内戦が始まったのは噂で聞いたけど。」
ワジに尋ねられたロイドは目を丸くした後真剣な表情で答えた。
「ぶっちゃけ、直接のきっかけはクロスベル方面に投入された帝国軍師団が壊滅したことでな。帝国軍もプライドがあるから次々と師団を送り込んだんやけどあの人形どもに全部返り討ちにされて……それで帝国軍が混乱しとる隙に貴族勢力の連合軍が帝都を電撃占領したんや。」
「!!」
「結果、鉄血宰相は凶弾に倒れ、行方知らず……………帝国全土を巻き込んだ内戦が長期化し始めている状況だ。さらには皇帝夫妻は城に軟禁、オリヴァルト皇子は行方知れず、皇位継承権があるセドリック皇子やアルフィン皇女もそれぞれ貴族派に捕えられてどこかに軟禁されているという情報もある。」
「一方、共和国の方でもクロスベルに端を発する経済恐慌が発生し……テロが活発化した事によって非常事態宣言が出されています。」
「ちなみにメンフィルはすぐに本国の国庫に溜め込んである膨大な国家予算や皇族の財産を解放して、各領の被害を受けた者達に援助を始めておるし、リベールにも援助を始め、リベールと連合を組んでクロスベルと完全敵対している状況じゃ。」
「……そうだったのか……」
ケビン達の説明を聞いたロイドは溜息を吐いた。
「勿論、それ以外の国だって恐慌や混乱とは無縁じゃない。特に今までエレボニアとカルバードに押さえつけられていた地域ではキナ臭い動きも出始めている。―――そんな中、ディーター大統領は各地に働きかけているらしいんだ。クロスベルを盟主とする新たな秩序に参加するようにとね。」
「その一方、メンフィルは援助や膨大な戦力や国力を盾に各地域に呼びかけている。同盟を組むかメンフィル帝国領となり、『クロスベル独立国』とクロスベルと組んだ各地域と戦う事を。」
「………世間ではクロスベルを盟主とした『ゼムリア連合』とメンフィル帝国を盟主とした『ゼムリア同盟』の戦争がいつ始まってもおかしくないと言われている状況よ。」
「さらにクロスベル郊外の各地に散らばって潜伏しているヴァイス達―――”六銃士”も機を窺って”六銃士派”の者達と共に反乱を起こすつもりじゃ。」
そしてワジとセリカ、エオリア、レシェンテはそれぞれ真剣な表情で説明をし
「………………………当然、その背景には”至宝”の力があるわけか。」
説明を聞き終えたロイドは厳しい表情で黙り込んだ後目を伏せて呟いた。
「もちろん。かつては大陸最強と言われたエレボニア軍をあっさり撃退できるだけの力だ。しかも、今は”結社”が用意した4体の人形兵器しかないけど……それが増産されて、全てが”至宝”の力を受けて大陸全土に飛ばされたりしたら?」
「くっ………キーアは……あの子はそんなことはしない!」
ワジの言葉を聞いたロイドは唇を噛みしめて叫んだ。
「―――ちなみにあの人形兵器は至宝が操っているわけではない。至宝の力を受け、自律的に行動する”守護者”のような存在だろう。あの”殲滅天使”が使っている”パテル=マテル”という機体同様。」
「あ………」
「……その意味では、その子の意志とは関係なく勝手に動いとるってことやね。それどころか、関係ない連中に利用される可能性だってある。」
「キーアちゃんの意志とは別に……それだけの”力”が持つ危険性は無視できないという事でしょう。」
「…………………――――貴方達の意見はわかった。それでも構わないから……今は協力を頼みたいと思う。」
アッバス達の説明を聞いたロイドは黙り込んだ後、ワジ達を見回して言った。
「へえ……?てっきり申し出を突っぱねるかと思ったけど。」
ロイドの返事を聞いたワジは目を丸くして尋ね
「俺だけで何とかなる事態じゃないのは確かだからな……解決が長引けば長引くほどあの子も苦しむかもしれない………」
尋ねられたロイドは複雑そうな表情で答えた。しかし
「――――だが!もし、あんた達が勝手にキーアの処遇を決めようとしたら!全力を持って阻止するとだけは今、この場で言っておく!例えその相手が局長達や”大陸最強”と恐れられるメンフィル帝国、そしてリウイ陛下達でも!俺だけじゃない!エリィやティオ、ランディだってきっと同じ事を言うはずだ!理屈も道理も関係なく――――ただあの子の”保護者”として!」
ワジ達を睨んで怒鳴った!
「あ……………」
「………フム………」
ロイドの言葉を聞いたリースは呆け、アッバスは考え込み
(おおおおおおおおおおおおおっ!今日は熱い展開ばかりじゃねえかっ!!)
(フフ、やっぱり兄弟ね………)
ギレゼルは興奮し、ルファディエルは静かな笑みを浮かべ
「フッ………」
(クク、久方ぶりに見ただの。”真なる正義”の意志を持つ人間を………)
セリカは静かな笑みを浮かべ、ハイシェラは口元に笑みを浮かべ
「「フフ…………」」
「うむ!見事な決意じゃ!」
リタとエオリアは微笑み、レシェンテは感心した。
「ハハ、秀才君っぽいのにメチャメチャ熱い兄さんやな。ワジ、お前が気に入るのもわかる気がするで。」
ケビンは苦笑した後ワジに視線を向け
「フフ、愛してるといっても過言じゃないけどね。」
ワジは笑顔で答えた。
「ワジ、俺は本気で―――!」
そしてロイドがワジを睨んだその時
「―――星杯の騎士として女神の名に賭けて誓おう。あの子の処遇に関しては君達の意見を必ず聞くことを約束する。………僕らの立場としてはこのあたりが限界なんだけど。どうかな?」
ワジは胸に手を当てて宣言し、ロイドに確認した。
「ああ……十分だ。」
「―――決まりだな。」
「よし、そんなら早速動き始めるとしようか。」
ロイドの返事を聞いたアッバスは呟き、ケビンは頷いた後片手を空へと掲げた。すると何かの機械音が聞こえてきた。
「な、なんだ……?」
音を聞いたロイドは戸惑い
「フム……随分と懐かしい響きだ。教会の”天の車”か。」
ツァイトは静かな口調で呟いた。するとその時ロイド達の目の前に白き飛行艇が二機、空間から姿を現して着陸した!
「ひ、飛行艇……!?」
飛行艇を見たロイドは驚き
「星杯騎士団で使っている”メルカバ”という作戦艇です。ステルス機能に加えて光学迷彩機能を備えています。」
「これを使って極秘裏にクロスベル領空に潜入する………心の準備はいいかい、ロイド?」
リースは説明し、ワジは説明を補足した後ロイドに尋ね
「ああ―――もちろんだ!」
尋ねられたロイドは決意の表情で頷いた!
(キーア……それにみんな……どうか待っていてくれ………!)
そしてロイドは決意の表情でクロスベル市を見つめていた。
その後ロイド、ツァイト、エオリア、リタはワジとアッバスと共に”メルカバ”の玖号機に、セリカとレシェンテはケビンとリースと共に”メルカバ”の伍号機に乗り込んだ……………
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