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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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5章~特務支援課復活~ 第107話

~七耀教会・星杯騎士団所属・特殊作戦艇・メルカバ(きゅう)号機・ブリッジ~



「―――手筈通り、”人形”はオレらが引き受ける。くれぐれも気ぃ付けてな。」

ブリッジ内の画面端末にリースと共に映ったケビンは艦長席に座っているワジに言った。

「フフ、そちらこそ。”外法(げほう)狩り”―――いや”千の護手(まもりて)”。渾名を変えたばかりなのにお役御免にならないようにね。」

ケビンの言葉を聞いたワジは静かな笑みを浮かべて答え

「ハハ、確かにな。」

ワジの言葉にケビンは苦笑した。

「しかし”千の(ルフィナ)”殿から頂戴した渾名とは……良き名を名乗られたな、グラハム卿。」

「………おおきに。」

「………………………」

アッバスの言葉を聞いたケビンは静かな口調で呟き、リースは黙り込み

(色々あるみたいだな……)

その様子を見ていたロイドは考え込んでいた。

「―――ロイド君。大変かと思うけど気張りや。クロスベルの今の状況では外部からの助けはアテに出来ん。唯一可能性があるのはメンフィルやけど………向こうが何を考えているのかはさすがのオレらもわからん。鍵を握るとしたら、今まで君がクロスベルで培ってきた絆やろ。」

「培ってきた絆………―――わかりました。肝に銘じておきます。」

ケビンの助言にロイドは考え込んだ後頷き

「ロイドさん、女神(エイドス)の加護を。それとエリィさんのこと、どうかよろしくお願いします。」

「ええ、勿論です!」

リースの言葉にロイドは力強く頷いた。

「………俺達はケビン達にリベールまで送ってもらった後、一度レウィニアに戻って残りの”使徒”達も連れてくる。その時が来れば反撃の時だ。―――エオリア、俺達が戻ってくるまでの武運と無事を祈っているぞ。………リタ、エオリアの事は任せた。」

「お任せ下さい、主。」

「ありがとうございます、セリカさん。……でも”神殺し”の貴方が一体誰に祈るんですか?」

そしてケビンとリースの姿が消え、入れ替わるように姿を現したセリカの言葉にリタは会釈し、エオリアは頷いた後苦笑し

「………そうだな………俺の場合は”正義の大女神”アストライア―――いや、サティアになるな。」

エオリアの言葉を聞いたセリカは静かな笑みを浮かべて答えた後姿を消し、そして画面端末は元の場所に戻った。するとその時飛行艇内は蒼い光に包まれた。

「なんだ……?」

蒼い光に包まれた様子にロイドは首を傾げ

「光学迷彩機能を起動した。もちろん完璧ではないし、使用すると速度が落ちるなどのデメリットもあるがな。」

「このまま潜入したらすぐに高機動タイプの人形が迎撃に現れるだろう。まともにやり合ってもまず勝ち目はないだろうから伍号機に引きつけてもらう。」

アッバスとワジは説明をした。

「なるほど……その隙に潜入するわけか。」

説明を聞いたロイドは納得し

「ふむ、星杯の守り手の手並み、見せてもらうとしようか。」

元の狼の姿に戻ったツァイトは静かな口調で呟き

「うーん、わざわざ逃げなくても主達が壊せばいいと思うのですが?」

「アハハ………セリカさん達だと本当にやりかねそうだから冗談になっていないわね……」

リタは首を傾げ、エオリアは冷や汗をかいて苦笑していた。そしてケビンを艦長とする”メルカバ”はステルス機能を発動したワジを艦長とする”メルカバ”と共にクロスベル市に突撃し、空中で徘徊している紫色の”神機アイオーン”TYPE-β型を惹きつけて去って行き、ワジを艦長とする”メルカバ”はクロスベルの領地への潜入を成功させた。



~作戦会議室~



「―――何とか潜入できたけどクロスベルそのものが”至宝”と一体化しているような状況だ。ここから先は注意して動かないとまた人形が飛んでくるだろうね。」

「この飛行艇に頼るのも限界があるということか。」

ワジの説明を聞いたロイドは考え込み

「私が操れる”ウルの聖槍”や”ロアの魔槍”でもあれだけ早い動きだと撃ち落すのは難しいでしょうし………それ以前に私の攻撃が効くかどうかがわからないですからね……」

「……というかあんなとんでもない人形兵器を生身で破壊する事を前提で言うなんて、非常識すぎよ………」

リタの説明を聞いたエオリアは疲れた表情で溜息を吐いたが

「フフ、主の”使徒”になったからにはその”非常識”が”常識”になりますよ?エオリアさんもこのゼムリア大陸で生きる人々にとっては”非常識な存在”になっているのですから。」

「まあ確かにいずれはそうなるでしょうね………」

静かな笑みを浮かべて言ったリタの言葉にエオリアは苦笑していた。

「たしかに、この船の大きさだと地上に降りればプレロマ草を介した”綱”に捉えられるであろうな。」

一方ツァイトは真剣な様子でワジに言った。

「そう、このままだと着陸すらできなくなってしまう………そこで七耀脈の力場の”隙間”を探知・発見して行こうと思うんだ。」

「力場の”隙間”………?」

ワジの説明を聞いたロイドは不思議そうな表情をし

「ふむ、七耀脈の力場は本来、大地そのものを覆う巨大なものだ。だが大きな流れ同士の間にたまに”隙間”が生じる事がある。」

「なるほど……そういった”隙間”なら着陸しても気付かれないわけか。」

ツァイトの説明を聞いて納得した。

「フフ、そういう事。で、今いる地点が、ちょうどその場所ってわけさ。」

そしてワジは地図を広げて印をした。

「ウルスラ間道の中洲………前に幻獣が出現した場所の近くか。でも、よく見つけられたな?」

「フフ、異変が起きる前にアッバスと調べておいたのさ。で、少し小細工をしてからクロスベルを脱出したってわけ。」

「な、なるほど。」

「……さすが。抜け目がないわね。」

「お見事です。」

「ふむ、用意周到なことだ。」

ワジの説明を聞いたロイド達はそれぞれ感心した。

「ま、今はここだけだから今後も着陸できそうな”隙間”を探して行く必要があるけどね。―――それで、どうする?どうせ”結界”があるからクロスベル市には入れないけど。」

「……そうだな。それでも一度降ろしてもらおう。少しでもクロスベルの状況を知っておきたいし………ウルスラ病院がどうなっているか確かめておきたい気がする。」

「フフ、了解。」

ロイドの言葉にワジが頷き

「ならば降りるとしようか。」

ツァイトが答えたその時、全員がツァイトを注目した。



「む、どうした?」

「いや、今更ではあるけど……ツァイトってどうして俺達を助けてくれるんだ?」

「それにリベールの竜の話だと……君達聖獣って”至宝”を巡る因縁については”見守る”だけで介入できないんじゃなかったっけ?」

「然り―――古の”盟約”がある。だが、”幻の至宝”が失われた現在、私の本来の使命も既に終わっている。この身を縛る”禁忌”も薄れた故、ある程度自由に動けるというわけだ。人の子らに少しばかり力を貸してやるくらいはな。」

「なるほど………」

「それでマフィアの軍用犬事件でも俺達を手伝ってくれたのか……」

ツァイトの説明を聞いたワジとロイドは頷いた。

「うむ、そういう事だ。無制限の助力は出来ぬが……しばらくの間だけはこのまま力になってやろう。一応”警察犬”とやらに登録されている身でもあるしな。」

「ハハ、わかった。ありがたく力を貸してもらうよ。」

ツァイトの申し出を聞いたロイドは苦笑し

「うーん、前から偉そうな狼だとは思っていたけど……口調といい、やっぱり偉そうね。」

「まあ、本物の聖獣ですから偉くて当然なのですけどね。」

エオリアとリタは苦笑していた。

「しばらくはこのメンツで動くことにはなりそうだな。―――地上に降りたい時はアッバスに声をかけてくれ。あと、この”メルカバ”内部にも幾つかの設備が整っている。装備・道具・工房機能―――必要ならクルーに声をかけるといい。もちろん、エオリアさんやリタも利用してくれていいよ。」

「ああ、了解だ。」

「ありがとう、助かるわ。」

「ええ、オーブメントの調整が最大の難点でしたものね。」

ワジの言葉にロイド達はそれぞれ頷いた。

「っと、そうだ。エオリアさん、リタちゃん。局長達がクロスベルのどこに潜伏しているとかわかりますか?」

その時ある事を思い出したロイドはエオリア達に視線を向け

「あら、どうしてそんな事を知りたいのかしら?」

ロイドの質問を聞いたエオリアは不思議そうな表情をしていた。

「………国防軍からクロスベルを取り返すには局長達――――”六銃士”や”六銃士派”の人達の力は必要不可欠ですから。」

エオリアの言葉を聞いたロイドは考え込んだ後答え

「確かにクロスベル市に攻め入る時、”六銃士”や”六銃士派”の警備隊員や警官達の力は必要だね。」

ロイドの答えを聞いたワジは納得した表情で言った。

「私はセリカさんやワジ君達と共にクロスベルを脱出して、その日以降クロスベルに訪れた事はないから詳しい場所までは知らないけど…………通信で連絡を取り合ったセリカさんによるとギュランドロス司令、ルイーネ一佐、パティルナ中尉と警備隊員はガレリア要塞跡周辺に、エルミナ大尉はミレイユ三尉と共にマインツ方面に、そしてヴァイスハイト局長とアル警視や警官達は”ラギール商会”や襲撃の時に現れた協力者達、そしてエルファティシアさんと共にアルモリカ方面に潜伏しているらしいわ。」

「そうですか………(”ラギール商会”………という事はリーシャも恐らくアルモリカのどこかに………)」

エオリアの答えを聞いたロイドは考え込み

「というか通信って一体どんな方法で取り合っているんだい?さすがにエニグマではそんな長距離で連絡を取り合うなんて無理だろう?」

ワジは不思議そうな表情で尋ねた。

「それが……メンフィル領で発掘された通信用の”古代遺物(アーティファクト)”やそのアーティファクトを元に開発した通信用端末を使っているそうよ。」

ワジに尋ねられたエオリアは苦笑しながら答え

「ええっ!?」

「やれやれ………僕の立場からしたら見逃せない話だけど、メンフィルには”盟約”を盾にアーティファクトを回収できないからな………」

「フム………しかしいくら本物があるとはいえ、アーティファクトに似た物を開発するとは異世界の技術はすざましいものだな………」

「そうですか?私からしたら私達の世界と違って、科学的な技術が発展しているゼムリア大陸の技術も十分凄いと思いますが……」

エオリアの答えを聞いたロイドは驚き、ワジは疲れた表情で溜息を吐き、ツァイトは重々しい様子を纏って呟き、リタは首を傾げていた。



その後ロイド達はそれぞれの準備を始めた…………… 
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