英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第94話
~港湾区~
「なんだよ、随分と遅かったじゃねーか。まあいっか、とっとと行くとしようぜ!」
ロイド達がヨナに近づくとヨナは不満そうな表情をした後、気を取り直して言った。
「ちょっと待て……いきなり訳わかんないぞ?」
ヨナの言葉を聞いたロイドは戸惑い
「ったく、相変わらずマイペースな小僧だな。」
ランディは呆れた。
「っと、そっか。ちゃんと話してなかったな。いや、実はさー。ジオフロントの端末室までボクを連れてって欲しいんだよ。」
「ジオフロントの端末室って………」
「以前爆破されたあの部屋か?」
ヨナの話を聞いたノエルは不思議そうな表情をし、リィンは尋ねた。
「あれはジオフロントのB区画にある『第8制御端末』。連れてって欲しいのはC区画の『第4制御端末』さ。いや~、他の制御端末だとあんま自由が効かないんだよな。」
「ヨナ、また懲りもせずに……」
ヨナの説明を聞いたティオは呆れ
「『導力ネット基本法』は既に施工されているんだし。さすがに違法占拠を手伝うわけにはいかないわよ?」
エリィは呆れた後ヨナを睨んだ。
「ていうか、話を聞いた時点で止めざるを得ないんだが……」
「い、いや、一応は違法じゃないんだって!ボクの今の立場は財団のエンジニアなんだから!ジオフロントの制御端末の管理資格も持ってるんだっての!」
そしてロイドに睨まれたヨナは慌てた様子で説明した。
「………ティオ、どうなんだ?」
「管理資格は本当ですがそれでもグレーな感じですね。導力ネット基本法ももう少し整備されるべきかと。」
「うーん……」
「さすがにちょいと微妙じゃねえか?」
「そうですね、グレーゾーンの行為を手伝うわけにも………」
「ああもう、アタマ固すぎだっての!”結社”だったか?あの変な連中が導力ネットにも色々仕掛けてきたんだろ?今も何かされていない保証がどこにあるんだっつーの?」
ティオの話を聞いて答えを渋らせているロイド達を見たヨナは声を上げた後尋ねた。
「それは……」
「……確かにそれは言えるかもしれないな。」
「主任も気にはしてたけど忙しくて手が回ってねーし。動きやすいボクが援護射撃してやろーってんじゃん。感謝こそされ、渋られるのはおかしくね?それにボクがグレーゾーンってんだったら、そっちの”叡智”や”六銃士”のやってることの方がグレーどころか完全にアウトなんじゃねえか?」
(あら……まさか私まで引き合いに出してくるなんてね。)
ヨナの言葉を聞いたルファディエルは目を丸くし
「ったく。口だけは達者な小僧だな。」
ランディは呆れて溜息を吐いた。
「……でも確かに気になるといえば気になります。あの”道化師”の少年……ノバルティスという博士……財団を超えるネットワーク技術を確かに持っているようでしたから。」
「………………………」
そしてティオの意見を聞いたロイドは考え込み
「―――わかった、手伝おう。ただし、明らかに違法なハッキングは控えてもらうぞ?それと地下で何日も過ごさないで部屋のベッドで寝る事。それが条件だ。」
ヨナの依頼に頷いた後条件を出した。
「おいおい、勘弁してくれよ~?なんでこの天才ヨナ様がそんなリアルに合わせないと―――」
ロイドの条件を聞いたヨナは条件を跳ね除けようとしたが
「ジロッ……」
「うっ………」
ロイドに睨まれて怯んだ。
「ふふっ、そういうのはロイドは厳しいものね。」
「まあ、そんくらいの条件は呑んだ方が無難かと。」
「あーもう、わかったよ!その条件でいいからとっとと連れてってくれ!制限ガチガチのオルキスタワーの端末なんてもう耐えられないんだってば!」
「ま、本音はそんなトコか。」
「うーん……やっぱり少し不健全だなぁ。」
「う、うっせーな。それでC区画だけど……もう準備はいいのかよ?他のジオフロント区画と同じく、魔獣とかいると思うぜ?」
「そうだな……大丈夫だ。」
ヨナに尋ねられたロイドは頷き
「へへ、そんじゃとっとと降りようぜ。」
「降りるって……」
「どういうことだよ?」
ロイドの返事を聞いて言ったヨナの言葉を聞いたノエルとランディは不思議そうな表情をした。
「ああ、C区画の入口はこの灯台にあるんだぜ?知らなかったのか?」
「そ、そうなのか?」
「フフン、見てなって。」
驚いているロイドを見たヨナは自慢げに胸を張った後灯台の壁に仕掛けてある装置に触った。すると壁が動いて扉が現れた。
「こんな所に………」
それを見たエリィは驚いた。
「よし、そんじゃあとっとと入るとしようぜ。」
そしてヨナは扉を開いてジオフロント内に入り、ロイド達も追って行った。その後ジオフロント内を探索したロイド達は途中に現れる魔獣を倒しつつ進んでいると端末室の前に巨大な清掃ロボが現れ、その清掃ロボがネットワークを通じて自分達の正体を見破った事に驚きつつも撃破をして、ヨナの目的である端末室に入り、ヨナは端末で調べ始めた。
~ジオフロントC区画~
「フンフン……どうやらさっきのマシンは1ヵ月前に放たれたみたいだな。無線で導力ネットに接続する装置が詰まれてたらしくて……『ノバルティス』とかいう管理者名が記録に残ってるぜ。」
「ノバルティス……あの白衣の男か。」
「どうやら”結社”の中でもかなりの地位の人みたいだけど。」
ヨナの話を聞いたロイドとエリィは考え込み
「マッドっつーか……薄気味悪いオッサンだったよな。」
「……ひょっとしたら戯れに試作品を放ったのかもしれません。何というか、そういうのが大好きそうな性格みたいですから。」
ランディは目を細め、ティオはジト目で呟き
「見た目以上に危険人物なのは間違いなさそうですけど……」
「リベールの”異変”に参加したのも”実験”の為だそうだからな………かなりの危険人物だろう。」
ノエルは考え込み、リィンは真剣な表情で言った。
「まーでも、アレ以上は放たれてないみたいだし。これで心置きなく引き篭もれるってわけだな!いやー、タワー近くだから回線速度もメチャ速な上に制限もほとんどないし……YEAH!第4制御端末、サイコーッ!」
一方ヨナは嬉しそうな表情で言った後叫んだ。
「ノリノリだなぁ。」
「やっぱり引き篭もる気マンマンじゃねーか。」
「ヨナ……主任には一応、報告を入れるんですよ?あんまり勝手はしないように。」
ヨナの様子を見たロイドは苦笑し、ランディは呆れ、ティオはジト目で注意し
「あー、はいはい。後はボク一人で大丈夫だからとっとと帰ちゃっていーぜ?―――おっと、こんな所に新しいサーバーが出来てんじゃん。いやー、クロスベルのネット環境もなかなか充実してきたよなー。」
「すっかり夢中のようだな……」
ティオの注意を投げやりに答えたヨナを見たリィンは呆れ
「ふふ……でも大丈夫みたいですね。」
ノエルは微笑んだ。
「ええ、”結社”の動きはちょっと心配だけど……」
「まあ、たまに様子を見に来るとしよう。このまま引き篭もり続けないかもちょっと心配だしな。」
「ですね。」
その後ロイド達はジオフロントを出ると既に夕方になっていた。
~夕方・港湾区~
「ちょうど夕方か……」
「今夜は外食だし……仕事もここまでかしら。」
「はい………」
そしてロイド達は少しの間黙り込んだ。
「―――皆さん。色々とお世話になりました。短い間でしたけど……本当に勉強になりました。」
するとその時ノエルはロイド達に敬礼をした。
「ノエル……こちらの台詞だよ。」
「……ちょうど3ヵ月くらいだったわね。」
「わたしと一緒だったのは2ヵ月くらいですか……」
「なんつーか……寂しくなっちまうよな。」
「あはは……あたしも名残惜しいです。それに結社や猟兵団に黒月……幻獣とか蒼い花の問題も……全然解決していないのに離れるのが申し訳なくって………」
「ノエル………」
肩を落としたノエルを見たロイドは複雑そうな表情をし
「―――まあ、立場は違ってもクロスベルを想う気持ちが同じならいいんじゃないか?って、いずれメンフィル軍に帰る俺が言うのもおかしな話だけど。」
リィンは慰めの言葉を言った。
「リィンさん………」
「それに一段落ついたらまた戻ってくればいい。将来は期待されている身なんだし。視野を広げられるから勉強になると思うぞ。俺自身も色々と勉強になったしな。」
「フフ……確かにそうですね。」
リィンの言葉にノエルは微笑み
「ま、確かにソーニャ副司令もそのつもりでお前を出向させたんだろうしな。」
「ノエルさんさえ良かったら是非、また一緒に働きましょう。そうでなくても休日とか一緒に遊びに行ってもいいし。」
「……わたしも車の運転とか教えてもらいたいです。年齢制限のせいで今回は教われませんでしたし。」
ランディやエリィ、ティオもそれぞれ声をかけた。
「あはは……グス。よろこんで!」
3人の言葉にノエルは一筋の涙を流して笑った。
「………―――ありがとう、ノエル。君の運転と、戦闘技術と行動力には何度も助けられたけど………何よりもその真っ直ぐなところにいつも勇気付けてもらったと思う。」
「ロイドさん………」
「離れてても俺達は仲間だ。警備隊で困った事があったら是非、俺達を呼んでくれ。俺達もノエルの助けが必要な時は遠慮なく頼らせてもらうから。」
「……あ………………」
そして笑顔のロイドに見つめられたノエルは顔を赤らめ
「はい―――喜んで!」
笑顔で答えた。
(さすがだな………)
その様子を見ていたリィンは苦笑し
(一瞬で良い所を持っていきましたね……)
(ま、まったくもう……」
ティオはジト目になり、エリィは呆れ
(ハハ、こりゃお嬢ももう少し積極的にならないと油断していたら足元をすくわれるかもな。)
(うっ………)
口元に笑みを浮かべて言ったランディの言葉を聞いたエリィは表情を引き攣らせた。
「?どうしたんだ?」
ランディ達の様子に気付いたロイドは不思議そうな表情をし
「って、ああ……!」
ノエルは顔を赤らめて声を上げた後慌ててロイドから距離を取った。
「す、すみません。別にそういうわけじゃ……」
「んー、そういうわけってどういうわけかねぇ?」
「せ、先輩!」
「はぁ……まったくもう。」
「???」
ノエル達の様子を見ていたロイドは首を傾げた後ティオに近づき
(……ティオ、何の話だ?)
小声でティオに尋ねた。
(………さあ?自分で考えてみてください。)
(なんか怒ってるし………)
しかしジト目で答えたティオの言葉を聞いて疲れた表情になり
(くかかかかかっ!やはりロイドはロイドだったな!)
(ハア………)
ギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは疲れた表情で溜息を吐いた。
その夜、ロイド達は中央広場のレストランでノエルの送別会を開いた。セルゲイやキーアはもちろん、ツァイトも特別に入店させてもらい、楽しくも名残惜しい夜は過ぎて行き……そして翌朝―――荷物をまとめたノエルは特務支援課のビルを去って行った。
~早朝・ジオフロントC区画~
「んーっ………!っと、何時だっけ?……って、もう朝かよ!?」
翌日、徹夜で端末を操作していたヨナは時間を見て驚いた。するとその時ヨナのお腹が鳴った。
「はあ……さすがに腹が減ったぜ。んー、あのピザ屋、何時からやってたっけ?たしかあの店、導力ネットを試験導入するとか言ってたよな……フフン、調べりゃ一発で……あれ……?なんだ……?このゴミみたいなデータ……」
そして朝食を頼む為にヨナは端末を操作していたある違和感に気付き
「いや、データじゃないのか……?……構造体……?いや、それよりも遥かに……………なんだよ――――コレ。」
違和感に気付いたヨナはさらに端末を操作して違和感の正体を見て、呆けた表情で呟いた。
2日後――――
クロスベルの国家独立の是非を問う、住民投票が施工された。
その結果は、即日開票され………その1週間後―――クロスベルは”運命の日”を迎えた。
まず国家独立の是非を問う住民投票の結果は7割以上の投票を以って『国家としての独立』が採択され………ディーター市長は周囲の反対を押し切って国家独立を宣言し………国家独立するにあたってさまざまな宣言をした。その宣言の中には強力な国防・治安維持能力をもつ組織として、警察と警備隊を統括する『国防軍』なる組織の存在の設立もあった。
そして周辺諸国の反応はエレボニア、カルバードの両大国は提言を断固却下し………リベールとメンフィルは独立宣言は性急、レミフェリアは事実確認を要請中という意見を出し……そしてアルテリアは公式上の発表予定はないとしているが、『国家は1日で成るものではない』とコメントをしている。
また市内でも突然発表で混乱し………歓迎する声もある中、困惑する声もあった。
さらにディーター市長はオルキスタワーにて緊急会見を開き、IBCが預かる各国の全資産の凍結を宣言、クロスベル独立を承認しない限り資産凍結は解除しないとした。その行動によって各国の経済に甚大な影響を与え始めていた。
そしてディーター市長の行動に業を煮やしたと思われるエレボニア、カルバード政府に加えてメンフィル政府はそれぞれ公式会見を行い、即座に資産凍結を解除するようクロスベル自治州、IBCに要求。要求を受け入れなければ実力行使も辞さない事を宣言し………エレボニア、カルバードは既に軍を展開し始め………メンフィルでもそれぞれの領で軍が集結し始めていた。
また………ディーター市長の独立宣言、各国に対するIBCの資産凍結によるクロスベル市内が混乱する中……さらに混乱する状況となった。
それは”六銃士”全員が姿を消し………また、”六銃士派”と思われる警官、警備隊員もそれぞれの家族に”六銃士”達を信じ、クロスベルの”真の守護”の為に警察、警備隊から一時的に離れるという手紙を残したまま………全員姿を消してしまった。そして翌日……………
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