英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第73話
~ローゼンベルク工房~
「こ、ここは……」
「……凄いです……」
広大な地下空間を見たロイドやティオは驚き
「しかしまさか、この屋敷の地下にこんな場所があったとは……」
ランディは疲れた表情で溜息を吐いた。
「何気に導力ネットの端末らしきものもありますし……まさかレンさん―――”仔猫”はここから無線でネットに介入して……?」
そして端末を見つけたティオが考え込んだその時
「――――それで、何の用だ?」
ヨルグが作業をしながらロイド達に声をかけ、声をかけられたロイド達はヨルグに近づいた。
「その……時間を割いていただいてありがとうございました。実は、幾つか貴方にお聞きしたい事がありまして。」
「フン……大方、カンパネルラがちょっかいをかけたという所か。」
ロイドの言葉を聞いたヨルグは鼻を鳴らして答えた。
「……!」
「爺さん、あんた……」
ヨルグの言葉を聞いたロイドは真剣な表情でランディと共にヨルグを見つめた。
「―――カン違いするな。確かにわしは”結社”の関係者だがあくまで一介の人形師に過ぎぬ。”結社”の計画そのものに直接かかわっているわけでもない。」
「そ、それじゃあ……あのカンパネルラという少年が何をしようとしているのか貴方はご存知ないと……?」
「知らぬし、知る立場でもない。ただ……彼は”使徒”ではなく”執行者”だ。実際に”結社”が進めようとする『計画』を提案する立場にはない。それを企画・立案しているのはあくまで”使徒”という事になる。」
「ちょ、ちょっと待ってください……」
「な、何だか話が急すぎて理解が追いつかないというか……」
「重要な内部情報みたいだけど簡単に喋っちゃってもいいわけ?」
ヨルグの話を聞いたエリィは制止し、ノエルは戸惑い、ワジは目を丸くして尋ねた。
「フフ……別に禁ぜられておらぬからな。それに、この程度の情報ならば知る者はそれなりにおるだろう。教会やギルド、大国の諜報機関ならばとっくの昔に掴んでいるはずだ。」
「……………………」
ヨルグの言葉を聞いたロイドは黙り込み
「にも関わらず、貴方はここで人形を作り続けている……しかも敵であるはずのレンさんの”パテル=マテル”すらも直して。」
ティオは真剣な表情で言った。
「そもそも”結社”の全貌を知る立場にはないからな。パテル=マテルを直したのはわしの作品であるあの子が”真の主”を見つけ、自分をあの男の手から解放した”主”である”殲滅天使”の為に再び戦いたいという”意志”を汲み取って直したまで。例えば人形兵器ですらもここ以外の複数の工房の技術からも成り立っている代物だ。言うならば、ここは無数にある巨大な”蛇”の尻尾の一つ……ギルドや教会あたりが簡単に乗り込んでこないのはそういった理由もあるのだろう。」
「なるほど……」
「ただ摘発するよりは必要に応じて情報を引き出す……その方が利用価値があるってか。」
(だからレン姫もパテル=マテルを直す職人で彼を選んだのか……)
ヨルグの話を聞いたロイドは頷き、ランディは呟き、リィンは考え込んでいた。
「そう、それに加えてこの工房にも”備え”がある。もし、お前達が逮捕令状を取ってここに踏み込んできた場合……発見できるのはおそらくがらんどうの工房だけだろう。……”殲滅天使”と”魔弓将”はその知恵、力で強引に”備え”を突破してきたが……お前達に同じ真似はできるか?」
ヨルグに言われたロイド達は全員黙り込んだ。
「フフ、何なら今この場でわしの身柄を拘束してみるか?またとない機会かもしれんぞ。」
「―――いえ、遠慮しておきます。確かに貴方からは……話を伺うだけの方がよさそうだ。」
「……ロイド……」
(そう……それでいいのよ。目の前の”敵”に目が眩んで、”真実”を見誤ったら本末転倒だわ。)
「ちょ、ちょっと納得はできませんけど……」
ロイドの答えを聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ルファディエルは頷き、ノエルは残念そうな表情をしていた。
「ふふ、賢明だな。どうやら具体的に色々と聞きたい事があるようだが……3つに絞るがいい。答えられる内容ならば答えよう。」
「……わかりました。(この老人から聞きたい事。それは……)……ではまず、結社の”使徒”についてお願いします。」
ヨルグに促されたロイドは考え込んだ後言った。
「”蛇の使徒”―――大いなる”盟主”の意を受け、計画を実現する七人の幹部のことだ。わしも全員について詳しく知っているわけではないが……近々、このクロスベルを訪れるという使徒たちならば知らぬでもない。」
「それは……F・ノバルティスという人物以外にもいるという事ですか?」
「ほう。まさか奴の事を知っていたとはな。誰から聞いた?」
ロイドの言葉を聞いたヨルグは目を丸くした後尋ね
「レーヴェさんです。メンフィルがどこからかカンパネルラとF・ノバルティスがクロスベルにいるという情報を手に入れて、わざわざ教えてくれたのです。」
「なるほど、”剣帝”か。……そのF・ノバルティスとやらだが、”第六柱”にして結社の技術ネットワークである”十三工房”を統括する男だ。結社きっての理論家にして貪欲きわまる技術者……まあ、タチの悪い男だとだけ言っておこう。」
「……そんな風に言われましても。」
「ど、どうタチが悪いんですか?」
ヨルグの話を聞いたティオは呆れ、ノエルは真剣な表情で尋ねた。
「良くも悪くも、自分の知的好奇心を満たすことしか考えていない男だ。どのような目的でこの地を訪れたつもりなのかは知らぬが……少なくともクロスベルにとって良い予兆とはとても言えぬだろう。」
「…………………」
「……確かに聞いた限り、タチが悪そうではありますね。」
「……そしてもう一人……”鋼”の名を冠する”第七柱”がクロスベル入りするという情報がある。」
「”鋼”……?」
「なんつーか……ちょいとヤバそうな響きだな?」
「……”第七柱”………まさか、アリアンロードという名ですか?」
「リィン……?」
「ほう。その者の事も知っておったか。」
リィンの言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情をし、ヨルグは感心し
「もしかして”剣帝”がメンフィルに話したのかい?」
「ああ……何でもレオン少佐がそのアリアンロードという人物が使う本来の武器でない剣を使った時でようやく互角に戦えたとてつもない強さを持つ武人らしい。レオン少佐の話だと”結社最強”の武人といってもおかしくないそうだ。」
「ええっ!?」
「剣を使わせたら人間の中では”最強”の部類に入るあのレーヴェさん相手に得物でない剣で互角ですか…………」
ワジに尋ねられ、答えたリィンの話を聞いたエリィは驚き、ティオは信じられない表情をしていた。
「それで実際そのアリアンロードとやらは相当の腕を持っているのかよ?」
一方ある事が気になったランディはヨルグを見つめて尋ね
「フフ……少々謎めいた人物だが、その男の言う通り、武の腕は相当だ。一つ、言えるとしたらお前達全員が束になって挑んでも敵わぬほどの達人ということくらいか。それこそ、その中に”執行者”No.2であった”剣帝”すらも足元にも及ぶまい。」
「俺達全員でも……!?」
「………確かに私達ではレーヴェさんに勝てるかどうかすらも相当怪しいですものね……」
「つーか、あの銀髪って”執行者”の中でもナンバー2だったのかよ!?」
「そんな人すらもあしらう人って一体……」
ヨルグの話を聞いたロイドは驚き、ティオは複雑そうな表情をし、ランディは信じられない表情で声を上げ、ノエルは不安そうな表情をし
「へえ……?随分と自身満々じゃないか?」
ワジは口元に笑みを浮かべて尋ねた。
「まあ、忠告程度に思っておけ。”第六柱”と違い、高潔な人物とは聞いているが……下手に挑んだりしたら間違いなく返り討ちに遭うだろう。―――――例え”六銃士”全員が揃ったとしても、正直わからないな。”第六柱”に対抗できるとすれば……それこそ”英雄王”や”空の覇者”、後は”戦妃”ぐらいだろう。」
「きょ、局長達ですらも怪しくて、リウイお義兄様達でようやく互角って………」
「リウイ陛下達クラスの達人なんて、一体どんな腕だ……?」
「……さすがにセリカさんやハイシェラさん、フェミリンスさんクラスはないと思いますが………」
「つーか、あんな超出鱈目連中と互角に戦える人間なんて、存在する方がありえねえだろ……」
ヨルグの忠告を聞いたエリィは驚きの表情をし、リィンとティオは考え込み、ランディは疲れた表情をし
「……………………………次は結社の”計画”についてお願いします。。」
ロイドは真剣な表情で黙り込んだ後尋ねた。
「先ほども言ったようにわしも詳細は知らぬ。ただ、伝え聞く話によるとこんな風に呼ばれているらしい。―――『幻焔計画』と。」
「『幻焔計画』……」
「……意味深な名前だね……」
「……その計画は……1年前のリベールのような異変をクロスベルにもたらすものですか?」
「も、もしそうなら……絶対に認められません!」
「繰り返すが、わしも詳細は知らぬ。ただ、一つ言えるとしたらリベールほど”結社”の介入が大規模ではないというくらいだ。そもそも”結社”は闇の存在……本来あまり表舞台には出ぬからな。……だからこそクロスベルやメンフィルは表舞台に出ない事を逆手にとって国際犯罪者扱いし、通商会議でカルバードとエレボニアを陥れたのではないか?」
「……………それは…………」
「……まあ、結構当たっていますよね。」
「だ、だけどリベールの”異変”を起こしたような連中なんて、それこそ国際犯罪者じゃないですか……!」
「……実際あの通商会議の後、”結社”が国際犯罪者としてゼムリア大陸中に知らされ、各国が国際テロ組織扱いしているものな………」
ヨルグに尋ねられたエリィは複雑そうな表情をし、ティオは静かに呟き、ノエルは怒りの表情で呟き、リィンは真剣な表情で呟き
「…………後は結社と教団の関係についてお願いします。」
ロイドは真剣な表情で黙り込んだ後言った。
「”D∴G教団”か。わしの知る限り、直接のつながりがあった事は無いようだ。殲滅天使がいた連中の拠点を”結社”の指示によって”剣帝”と”漆黒の牙”が潰そうとした事実はあったが……その時は”英雄王”達が一足早く潰した為、撤退した事実は聞いている。」
「ええっ……!?」
「それって”楽園”っていう……」
「レーヴェさんとヨシュアさんが……」
ヨルグの話を聞いたロイドは驚き、エリィは真剣な表情で呟き、ティオは驚いた。
「うむ、各地の有力者を取り込むための場所だったらしいな。大方、”結社”の息がかかった有力者をターゲットにしたため、殲滅の対象となっていたのだろう。”殲滅天使”が生き延びたのは僥倖というよりほかにはないな。」
「…………………………」
「だからといって”結社”ってのがマトモとはとても思えねぇがな……」
ヨルグの説明を聞いたティオは複雑そうな表情で黙り込み、ランディは溜息を吐いた。
「正直、そんな説明だけじゃ納得できそうもないんだけど?」
「フフ、言っただろう。わしの知る限りと。どう判断するかはお前達次第だ。ふむ、これで3つか。―――時間を取られた。そろそろお引き取り願おうか。」
「っ……」
「で、でも……」
ヨルグの指示を聞いたロイドは唇を噛みしめ、エリィは反論しようとし
「ロ、ロイドさん……」
ノエルは不安そうな表情でロイドを見つめた。
「……―――そういう約束だ。今回はこれで引き上げよう。また、機会があれば話を伺いに来ても構いませんか?」
(――――それでいいのよ。下手に強硬手段を取って、重要な情報を持っていそうな者との繋がりを失くす方が駄目なのだから。)
見つめられたロイドは頷いた後尋ね、ルファディエルは口元に笑みを浮かべていた。
「まあ、気が向けばな。そもそも、お前達にとって気がかりは我々だけではあるまい。『国家独立』とやらを前にして、警戒しなくてはならぬ勢力が他に幾らでもあるのではないのか?」
「そ、それは……」
「……ま、確かにな。」
「そういった勢力の動きも全部知っていそうだけどね?」
「フフ、さてな。」
ワジに尋ねられたヨルグが口元に笑みを浮かべたその時人形がロイド達に近づいてきた。
「―――さあ、帰りもその子について行くがいい。はぐれたりしたら身の安全は保障できんぞ?
その後ロイド達は人形についていって屋敷を出て、ロイド達が屋敷を出た事を確認した人形はお辞儀をした後屋敷の中に入って行き、扉はしまった………
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