英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第74話
~ローゼンベルク工房~
「……なんだか………夢を見ているみたいだったわね。『幻焔計画』……そしてクロスベルを訪れるという2人の”使徒”の存在…………」
「正直、突拍子もなさすぎて現実感がないんですが……どこまでが本当なんでしょうか?」
「……リベールの異変を聞く限り、洒落にならない連中なのは確かだろう。ただ、リベールの時とは違って大規模な仕掛けをしているようには感じなかったけど……」
「まあ、巨大な飛行戦艦まで現れたっていう話だからねぇ。あの”パテル=マテル”っていう巨大人形もその時に持ち出して、戦艦ごとメンフィルに奪われたって話みたいだし。」
「よく知ってるな……一課の機密情報なのに。」
「そんなことまでホストの間では噂が広がっているの?」
ワジが呟いた言葉を聞いたロイドとエリィは驚きの表情でワジを見つめた。
「フフ、まあそんな所かな。まあ、僕なんかよりもメンフィルの軍人であるリィンの方がより詳しい事を知っていると思うけど?」
「………とは言っても俺が知っているのは”パテル=マテル”がメンフィルの主力の一つである事と、”グロリアス”が”結社”から奪った戦艦だってことを知っているぐらいだぞ?」
ワジに見つめられたリィンは苦笑しながら答え
「ええっ!?」
「あ、あの戦艦が”結社”から奪ったものだったのですか……てっきりメンフィルの技術だと思っていたのですが……」
「それをあんな世界中が注目する公式の場でくるなんて………………もしかしたらその”結社”をも超える力を持っている事を世界中に知らしめる為にわざとあの戦艦で来たのかもしれないわね…………メンフィルには他に巨大戦艦――――確か”モルテニア”……だったかしら?そんな名前の戦艦が存在すると聞いているわ。」
リィンの答えを聞いたロイドとノエルは驚き、エリィは目を閉じて呟いた後真剣な表情で呟き
「―――その話は俺達も聞いている。……ただ完成したのは数年かけてまだ一隻だけでさまざまな問題点がある事から、量産化にはまだ時間がかかると聞いた事はあるけど。」
「メンフィルは一体どこまで力を手に入れたら満足するのでしょうね?ただでさえ、その気になればゼムリア大陸中を制圧できる戦力があるとの噂があるのに……」
リィンの言葉を聞いたノエルは複雑そうな表情をしていた。
「「……………………………」」
一方ランディとティオは黙り込んでいた。
「どうした、2人とも?」
「いえ……」
「ああ……ちょっとな。ティオすけの方はまた別の考え事みてぇだな?」
「……そうですね。先程案内してくれた人形にしてもそうなのですが……”結社”というのはどうも、”遊び”が多い組織だと思いまして。」
「遊びが多い……?」
ティオの意見を聞いたロイドは眉を顰めた。
「ええ、エプスタイン財団やZCFを上回る技術力を持ちながらそれを無駄に使っているような……あの”パテル=マテル”にしてもあんな人形兵器を実用レベルで作ったら飛行艇50隻は造れてしまいそうです。」
「そ、そうなのか。」
「……実際メンフィルはその技術力を戦力として実用化している。――――例えばオーブメントのようにな。」
ティオの説明を聞いたロイドは驚き、リィンは静かな表情で言い
「……メンフィルのように豊富な資金源があるのか、それとも……」
エリィは考え込み
「……でも確かに、軍隊や犯罪組織は基本的に効率性重視の組織形態です。遊びの部分などは極力持たずに目的のために冷徹に動いていく………そういった合理性はあまり感じられませんでしたね。」
「俺が思ったのもそこでな。いかに凄い技術を持っていようが化物じみた連中を抱えていようが……”赤い星座”クラスの猟兵団や”黒月”みたいなシンジゲートの方が現実的な脅威は上かもしれん。ましてやメンフィルどころか、エレボニアやカルバードみてぇな大国とまともにやり合えるとも思えねぇ。」
「なるほど……」
「となると、そうした勢力が複雑な対立状況を作っている現在……”結社”のような連中がわざわざクロスベルに来て”何を”狙っているのかが問題なわけだ。」
ノエルとランディの意見を聞いたロイドは頷き、ワジは口元に笑みを浮かべて言った。
「そうね……テロリストたちを支援したのも単なる気まぐれだったみたいだし。どうも、現実的な勢力争いに積極的に関わっているわけではなさそうね。」
「だとしたら……”現実的ではない”目的のために動いているという事でしょうか?」
「そうなると、さすがに俺達にはお手上げになっちまいそうだなぁ。」
「で、でも実際に何かしようと企んでいるのは確かみたいですし…………」
「―――とにかく一度、支援課に戻ろう。課長やセティ達には話しておきたいし、警備隊やギルドにも連絡を取りたい。”結社”が何をするつもりでも最低限、備える事はできるはずだ。」
「ええ、わかったわ。」
「それじゃあ一旦、クロスベル市に戻るとすっか。」
そしてロイド達がクロスベル市に戻る為に車が駐車してある場所に向かっていると、ロイドのエニグマが鳴りはじめた。
~マインツ山道~
「おっと……」
「あら……」
「早速、どこかで問題でも発生したのかな?
鳴りはじめたエニグマに気付いたロイドとエリィは驚き、ワジは口元に笑みを浮かべた。
「はい、特務支援課、ロイド・バニングスです。」
「あ、ロイドさん!はー、やっとつながりました。」
「フランか、お疲れ様。ひょっとして、さっきからエニグマにかけてくれてたのか?」
「はい、でも何故だか全然、繋がらなくって……セティちゃん達は通じたのですけど、他の皆さんのエニグマにも一通りかけたんですけど。セティちゃん達に何か知っていないか聞いたら、みんな答えを濁していましたし……」
「(人形工房の地下に導力波を遮断する仕掛けがあったみたいだな……)すまない、ちょっと特殊な場所を訪ねていて……どうしたんだ?急ぎの支援要請でもできたのか?」
「いえ、そうではなくて……実は30分前、西クロスベル街道で列車の脱線事故が起きたんです。」
「なっ……!本当か、それは!?」
「はい、既に捜査二課が現場検証に向かっています。タングラム・ベルガードの両警備隊も動いていますし、ロイドさんたちが行く必要はないと思いますけど……念のため連絡しておこうと思いまして。セティちゃん達にも知らしておきましたが、リーダーであるロイドさんの判断なしで動く事はできないと言ってて、ロイドさんの指示を待ちながら支援要請をしているとの事です。」
「そうか……ありがとう、フラン。また何か続報があったらこちらにも伝えてほしい。」
「はい。ついでにあたしの方からセティちゃん達にロイドさんの指示を伝えておきましょうか?」
「助かるよ。……現場に行くとしてもあまり大勢で押しかけても迷惑だから俺達だけで行く事にするから、セティ達にはそのまま支援要請を続けるように言っておいてくれ。」
「了解しましたー。」
そしてロイドはフランとの通信を終えた。
「……何か問題でも?」
「フランからの連絡だったみたいですが……」
「ああ……」
西クロスベル街道での脱線事故の情報について説明した。
「なんだと……!?」
「脱線て……導力鉄道のことですよね!?」
「西クロスベル街道――――エレボニア、メンフィルの両帝国方面か………」
説明を聞いたランディとノエルは声を上げ、リィンは真剣な表情で考え込んでいた。
「ああ、既に二課とタングラム・ベルガードの両警備隊が現場に向かっているそうだから任せてもいいと思うけど……」
ランディ達の言葉に頷いたロイドは考え込み、仲間達もそのまま考え込んだ。
「……さすがに気になりますね。」
「ああ、このキナ臭い状況でタイミングが良すぎだろ。」
「まあ、単なる事故とはちょっと考えにくそうだね。」
「現在のクロスベルからの状況からして、”何か”がありそうだな……」
「ロイドさん……」
「どうするの?」
「”結社”についての情報は今日中にまとめて伝えればいい。俺達もこのまま事故現場の方に行ってみよう。例の”幻獣”か、それとも何らかの組織による仕業か……少なくとも、現場検証の手伝いくらいは出来るはずだ。」
「はいっ!」
「それじゃあ急ぎましょう。」
「こりゃ、車を使ってパーッと行った方が良さそうだな。」
その後ロイド達は車に乗って脱線事故が起こった現場に向かった……………
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