英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第63話
~深夜・ミシュラム~
(………………………”壁”……………行く手に立ちふさがる”壁”……………ディーター市長は彼なりのやり方で”壁”を突破しようとしているのか……そしてセシル姉の話にあったように………あのリウイ陛下達ですらも”世界の理”という”壁”を自分達のやり方で突破しようとしている……………でも俺達は………)
ディーターの言葉やセシルに聞いたリウイ達の話が頭の中に染み付いて、寝付けなかったロイドは考え込んだ後起き上がった。
(……マフィアの時は勝手に”壁”が消滅しただけだったし、”赤い星座”と”黒月”の時はルファ姉の策に”益”を見出したメンフィルやオリヴァルト皇子が協力し、反則としかいえないようなやり方で強引に”壁”を破壊しただけ……………そして、それ以上の”壁”が立ちふさがろうとしている今………俺達は――――俺はまたあまり役に立てないでいる……それで本当にいいのか………?)
考え込んだロイドは真剣な表情で黙り込んでいたが
(……駄目だ。疲れてるのに全然眠れない。ちょっとラウンジで水でも飲んでくるかな……)
疲れた表情になった後、普段着に着替えてラウンジに向かった。
(あ………)
ラウンジに着いたロイドはソファーに座って窓の外を見つめているある人物を見つけた。
「………………………」
ある人物――――リーシャは寂しげな目で外を見つめていた。
「……やあ、リーシャ。」
するとその時ロイドがリーシャに声をかけて近づいてきた。
「ロイドさん、でしたか……」
「……?ごめん、いきなり声をかけて驚かせたかな?」
「あはは、そんな……私はただ、ボーッとしていただけですし………………」
「えっと……そこ、いいかな?」
寂しげな笑みを浮かべた後黙り込んだリーシャを見たロイドはリーシャの対面になっているソファーに視線を向けて尋ね
「……………」
静かに頷いたリーシャの様子を見たロイドは対面のソファーに座ってリーシャと共に外の夜空を見上げた。
「……凄い月だな………クロスベル市と違って街明りが少ないおかげかな?」
「ふふ、そうですね………………………」
「その……朝、ワジのやつに変な風に突っ込まれたんだ。」
「……え………?」
「俺が、夜中にふと起きて女の子とバッタリ出くわして2人っきりになりかねないって。正直、意味不明だったんだけど当たっちゃったと思ってさ。」
「ふふっ………」
苦笑しながら言ったロイドの話を聞いたリーシャは微笑んだ。
「ロイドさんは不思議ですね。誰かに側にいて欲しい時に本当にそこに居てくれて……そこに居てくれるだけでなんだか安心できてしまう……ふふっ、支援課の皆さんが羨ましいです。」
(くかかかかっ!それがロイドに秘められし真の力よ!)
(あら……接した時間は少ないのになかなかわかっているわね。)
リーシャの言葉を聞いたギレゼルは笑い、ルファディエルは目を丸くした後口元に笑みを浮かべ
「はは、買い被りだよ。一人前の捜査官としてもみんなのリーダーとしてもまだまだ足りない所が多くてね。もっと……もっと大きくならなくちゃ。」
ロイドは苦笑した後複雑そうな表情をした。
「クス……」
「……―――なあ、リーシャ。失礼かもしれないけど……聞かせてもらってもいいか?」
「……?失礼だなんて……いったい何でしょうか?」
ロイドの言葉を聞いたリーシャは不思議そうな表情をして尋ねたが
「どうして君はそんなに………そんなに儚い目をして笑うんだ……?」
「………!」
ロイドの疑問を聞いて目を見開き
(こ、この子はまた無意識に……………ハア……頭が痛いわ……………)
(おっ♪まさか……まさかの展開か!?今日は調子いいじゃねえか!メヒーシャちゃんに続いてその娘とは………しかもとんでもない”裏”を持つ女に手を出すとは……さすがはロイドだ!そういうタイプは落とすのは難しいが一度落ちたら、とんでもなくデレる上尽くしてくれるし、どんな事でも叶えてくれるぞ♪くかかかかかっ!)
ルファディエルは疲れた表情をして溜息を吐き、ギレゼルは興味深そうな表情をした後、陽気に笑っていた。
「……思えば出会った時からそうだった気がする。イリアさんに望まれて最高のステージで活躍して………リーシャ・マオといえば今やクロスベルじゃ有名人だ。なのにどうして……どうして君はいつも何かを諦めたような微笑みを浮かべてるんだ……?」
「ど、どうしてそんな………」
「……よく知ってる人が一時期、浮かべていた笑顔だったからさ。」
戸惑いの表情で言ったリーシャの言葉を聞いたロイドはガイの葬式の時に見せたセシルの儚げな微笑みを思い出した。
「今ではもう、そんな儚げな笑顔は見せなくなってくれたけど………だけど君は、ふと気づいたらいつもそんな笑顔だった気がする。」
「…………………………………」
「その人の笑みは、大好きな人にもう会えないという哀しみに耐えようとするものだった。だったら、君は……?イリアさんが大好きな君はどうしてそんな風に笑うんだ?彼女はいつも君の側にいるのに。」
「…………………………………正直、驚きました。鋭いとは思っていましたけどまさかそこまでなんて……ふふ、さすがはあのルファディエルさんの契約者ですね……」
「……それじゃあ………」
「ふふ……正解です。多分私は……そう遠くないうちにクロスベルを去ると思います。」
「……やっぱりか。理由は……俺が聞けることじゃないか。」
「…………………はい。でも、そうですね。詳細は止めておきますが……私は本来……歩むべき道があるんです。」
「歩むべき道……?」
リーシャの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をした。
「ふふ、家業のようなものです。………小さい頃から……そのために生きてきました。気の遠くなるような昔から祖先が受け継いできた道……今となっては何のために歩んでいるのかわからない道を。」
「そうなのか……でも、だったら………」
「だからといって必要ない……そう否定もしきれない道です。少なくとも父は、その道を受け継ぐことに意味を見出しているようでした。世界そのものに働きかけ、歴史を動かすきっかけ足り得る、暗く密やかな道を……そして私もまた父からその道を受け継ぎ、今まで歩いてきました………そう、これからもまた………」
「…………………」
「ふふっ……変ですね、わたし。イリアさんが勧めてきたワインはちゃんと断ったんですけど………それとも月の光に酔ってしまったのかしら………」
「ハハ……そうかもな。……ゴメン。軽々しく立ち入ったかな?」
「いえ、いいんです。なんだか私も……一杯一杯になっていたので。話を聞いてくれてありがとうございました。」
申し訳なさそうな表情で言ったロイドにリーシャは笑顔を浮かべて言い
(よしっ!好感度は間違いなく上がっているぞ、ロイドっ!!)
ギレゼルは嬉しそうな表情で頷いていた。
「そっか……お役に立てたら光栄だけど。でも、リーシャ。もしかして君は―――」
一方リーシャの答えに頷いた後ロイドが何かを言いかけたその時
(……!まさかこの子……リーシャが”銀”だと疑っているのかしら?)
ロイドの言葉を聞いたルファディエルは目を見開いた。すると
「………ロイドー……?」
キーアの声が聞こえた後キーアがロイド達に近づいてきた。
「キーア……」
「……あら……」
「……あ……リーシャもいたんだー……ひょっとしてお話中……?」
「あ、ううん。もう終わったから。」
「ああ、大丈夫だぞ。……ひょっとして眠れないのか?」
「………うん……なんだか恐いユメをみたような気がして……」
「そっか……俺のベッドで一緒に寝るか?」
「………いーの?」
ロイドの提案を聞いたキーアは懇願するかの表情で尋ねた。
「ああ、特別だけどな。」
そしてロイドはキーアを抱き上げた。
「……えへへ……」
抱き上げられたキーアは嬉しそうな表情をした。
「ごめん、リーシャ。変な形で中断しちゃってさ。」
「ふふっ、とんでもない。ロイドさんのおかげで私も何だか眠れそうです。ありがとうございました。」
「そっか……」
「……先程の話、どうかイリアさんには内緒にしていてください。いずれ折を見て自分で話すつもりですから。」
「……わかった。頼りないかもしれないけど何かあったら声をかけてくれ。出来る限りのことはさせてもらうさ。」
「ふふっ……ありがとうございます。では、もし困った事があれば相談させてもらいますね。―――おやすみなさい。ロイドさん、キーアちゃん。」
「おやすみ、リーシャ。」
「おやすみなさーい……」
そしてリーシャはロイド達から去って行った。
「………リーシャ、どうしたの?いつも何だか哀しそうだけどちょっと感じが違ったねー……?」
「そっか、キーアもわかるか。……まあ、色々あるみたいだ。俺の方でもできるだけ気を付けておくつもりだよ。」
「えへへ……ロイド、キョクチョーみたいにカッコイイね。ロイドもキョクチョーみたいにたくさんの女のヒトたちをお嫁さんにするのなるのかなー?」
「からかうんじゃありません。……というか、局長と一緒にしないでくれ………さてと……とっととベッドに戻って寝よう。あ、トイレとか済ませたか?」
「むううっ……ロイド、でりかしーなさすぎ!」
その後ロイドはキーアと共に客室に戻って、キーアと同じベッドで眠りはじめた………
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