英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第60話
~夜・ミシュラム~
「はい……はい。……そうですか。それなら安心だと思います。すみません、自分たちだけ楽しんできてしまって……はは、わかりました。せいぜい充電してきます。ふう……支援課の方は何もなしか。さすがに気にしすぎだとは思うんだけど……」
客室の中で通信を終えたロイドは安堵の溜息を吐いた。
ウフフ……初めまして、支援課の諸君。お近づきの印に置き土産を置いていくから愉しんでくれると嬉しいな♪
(多分、あいつがテロリストにタワーのデータを流したんだろう。だけど……テロリストたちの仲間ってわけじゃなさそうだ。そして”銀”の言ったとおり、黒月や赤い星座、ラギール商会の一員でもない…………まてよ。そう言えば、タワーでティオが制御権を取り返した時、”剣帝”によろしくって言ってたな………という事は……まさか”身喰らう蛇”なのか!?)
ジオフロントで起こった出来事を思い出したロイドは考え込んだ後表情を厳しくした。するとその時扉がノックされた。
「……ロイド?まだ部屋にいるの?」
ノックされた後エリィの声が聞こえてきた。
「ああ、エリィか。いいよ、入ってきてくれ。」
ロイドの返事を聞いたエリィは扉を開けて部屋の中に入ってきた。
「あら、どこかに連絡していたの?」
部屋に入ったエリィはロイドが持っているエニグマに気付いた後尋ねた。
「ああ、課長にね。……留守中に支援課のビルで何か起きていないかと思って連絡してみたんだけど……取り越し苦労だったみたいだ。」
「そう……確かに通商会議の時に起こったことを考えると心配するのもわかるけど……今日くらいは何も考えずに休暇を楽しんだ方がいいわ。」
「はは……そうだな。ゴメン、ひょっとして迎えにきてくれたのか?」
「あ、うん……姿が見えなかったから。よかったら一緒に迎賓館まで行こうと思ったんだけど……その、迷惑じゃなければ。」
ロイドに尋ねられたエリィは頷いた後頬を赤く染めた。
「め、迷惑なわけないって!まったく……エリィ、からかってるだろ?」
「か、からかってるつもりじゃないんだけど……そ、それじゃあ一緒に迎賓館まで行きましょう。晩餐会まで時間はあるから少し寄り道してもいいし。」
「そ、そうだな。下の店とか覗いてもいいかもな。(って、なんで2人してこんなに慌ててるんだ……?)」
そしてロイドとエリィはホテルを出て、アーケードにある宝飾店に入った。
「ここが”ティアマンテ”……さすがに綺麗な宝飾品をたくさん扱ってるみたいね。」
宝飾店に入ったエリィは周囲を見回して呟いた後静かな笑みを浮かべた。
「ああ、エリィは昼間はブティックに行ってたんだったな。あれ、そういえば……エリィはここの会員じゃないんだな?マリアベルさんの幼馴染だし、てっきりVIP扱いかと思ってたけど。」
「うーん、前にベルと来た時は宝飾店には入らなかったのよね。ブティックで服を見ている方が性に合っている気がするし。」
「はは、なるほど。それじゃあ、せっかくだし一緒に色々と見てみようか?」
「ええ、そうしましょう。」
その後二人は宝飾品が飾ってあるガラスのケースを見つめた。
「ネックレスに指輪にブローチ……宝飾品といっても色々あるよなあ。」
「ふふ、そうね。どれもなかなか手が出ない高価な品だけど……見て、ロイド。この指輪なんか素敵だと思わない?」
「どれどれ……うん、確かに……エリィに似合いそうな気がするよ。」
「ふふ、お世辞なんて言ってくれなくてもいいのに。」
「いやいや、本当だって。(値段は俺の給料の3ヵ月分くらいか……やっぱり結構するよな。って、このコーナーって……!)」
嬉しそうな表情で言ったエリィの言葉に答えたロイドはガラスのケースの中にある指輪の値段を見て考え込んだ後、ある事に気付いた。
「お客様、婚約指輪をお探しでしょうか。よろしければ、お見繕いいたしますが。」
するとその時店員の一人がロイド達に近づいて尋ねた。
「…………え”。」
店員の言葉にエリィは固まった後呆けた声を出し
「はは、いや、え~っと……」
ロイドは苦笑していた。
「おや、お2人はこ結婚されるのでは……?失礼しました、エンゲージリングの一角を見てらしたので、つい。」
「え、あ……!そ、そのっ……ち、違いますから!私達はまだ婚約はしていないですし……!ロ、ロイド、違うからね!?別に今すぐ婚約してほしいって言ってるわけじゃないからね!?」
店員の言葉にエリィは頬を赤らめて言った後慌てた表情でロイドを見つめて言い
「わ、わかったから、そんなにあわてなくても……(”まだ”って事は”いつか”は考えてくれているんだ、エリィ……)」
ロイドは内心嬉しく思いながら苦笑していた。
「……ふむ、それではそういった話は近い内、と言ったところでしょうか。」
「で、ですからっ……!」
そして店員の言葉を聞いたエリィは再び慌て
(はは、いつかは婚約もしたいとは思ってるけど………でも、そうだな。エリィには色々助けられてるし、何てたって恋人だしな。結婚指輪じゃないにしろ、贈り物は充分アリかもしれない。恋人同士になって、エリィに恋人としてまだプレゼントした事もないし……)
エリィの様子を見たロイドは苦笑した後静かな笑みを浮かべ、そしてガラスの中にある宝飾品や上に置いてある宝飾品を見回した。
「(この翠耀石のブローチ……エリィに似合いそうだな。値段は……10000ミラか。結構するけど……)……すみません、このブローチを包んで欲しいんですけど……」
ガラスの上にあるブローチを見て購入する事を決めたロイドは店員に申し出
「おや……」
「ロ、ロイド……!?」
申し出を聞いた店員は意外そうな表情をし、エリィは頬を赤らめてロイドを見つめた。
「はは、恋人同士になってエリィにはまだ何もプレゼントした事がないしさ。良ければプレゼントさせてくれないか?」
「ロイド……………ありがとう、嬉しいわロイド。それじゃあ、お返しに……私からもあなたに似合いそうなものを見繕わせてもらおうかしら。」
ロイドの言葉を聞いたエリィは頬を赤らめて嬉しそうな表情をした後、ロイドにある提案をした。
「えっ、いいのか?」
「ふふ、せっかくだし。それじゃあ、良い物を探してみるから少し待っててちょうだいね。」
その後、ロイドとエリィはそれぞれ買った宝飾品を店員に包んでもらい、互いにプレゼントしあうのだった。
「ご購入ありがとうございました。フム………それにしても本日マリアベルお嬢様に紹介された方々のおかげで、1日の平均の1,3倍ほどは売れました。さすがはマリアベルお嬢様のお知り合いの方々ですね。」
「え……」
「俺達の他にも誰か購入したのですか?」
店員の言葉を聞いたエリィは呆け、ロイドは意外そうな表情で尋ねた。
「はい。たくましい身体つきをしている男性の方は美しい蒼い髪の妙齢の女性の方に高価な指輪をご購入されましたし……金髪の整った容姿の男性の方はお客様達と同じくらいの年齢に見えるピンクブラウンの髪の女性の方、金髪の女性の方、後は銀髪と明るい緑の髪を持つ異種族の女性の方達にそれぞれ高価な指輪やブローチ、後はネックレス等をご購入されました。」
「そ、それって………」
「ギュランドロス司令と局長達よね…………」
店員の話を聞いたロイドは表情を引き攣らせ、エリィは疲れた表情で溜息を吐いた。
「そうだよな……………というか、局長達――――金髪の男性の方達は店で目立っていませんでしたか?一人の男性が複数の女性を連れているなんて……」
「いえいえ。重婚を認めているアーライナ教とイーリュン教が現れてから、複数の女性のお客様と共にこの店にいらっしゃる男性のお客様がいらっしゃいますので。私達共としましてはとてもありがたい話であります。」
「ハ、ハア……………」
「同じような人達がいるって知っても喜んでいいのか、悪いのかわからないわね……………」
店員の話を聞いたロイドは苦笑し、エリィは疲れた表情で溜息を吐いた。その後店を出た二人はベンチに座っているセシルとセシルの傍に寝そべっているツァイトを見つけて、近づいた……………
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