真田十勇士
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巻ノ五十 島津家の領地その九
「だからな」
「はい、それでは」
「我等これまで以上にです」
「慎重に進めて参ります」
「隠密としての働きを」
「そうしようぞ、見破られてはな」
それこそというのだ。
「元も子もない」
「ここを去るしかありませんから」
「だからですな」
「断じてです」
「見破られてはなりませぬな」
「そういうことじゃ、我等なら刀を抜かれても避けられる」
それだけの腕はあるというのだ、主従には。
「しかしな」
「それでもですな」
「避けても返り討ちにしても」
「それでもですな」
「見破られては去らねば」
「簡単に隠密としての働きが出来ませぬ故」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「去るしかなくなる」
「では何としても」
「慎重に進みましょう」
「大隅は順調に調べていますし」
「薩摩もですな」
「調べる為に」
「そうしていこう、それとじゃ」
ここで幸村はこうも言ったのだった。
「島津家はやはり鉄砲が多いな」
「はい、かなり」
「思った以上にですな」
「鉄砲が多いですな」
「話は聞いていましたが」
「相当に多いです」
「当家よりもです」
彼等の家である真田家以上にというのだ。
「多いですな」
「数も割合も」
「どちらも」
「相当なものですな」
「種子島で相当に作っておるしな」
それにというのだ。
「大隅や日向にも鉄砲の鍛冶場が多くあったな」
「はい、刀や槍だけでなく」
「鉄砲も造っています」
「それも多く」
「それ故にですな」
「そうじゃな、あの鉄砲の多さは」
こう言うのだった、幸村も。
「我が家もそうしたいのう」
「はい、鉄砲は大きいです」
「多く持ちたいものです」
「全くじゃ」
「では銭を使ってでも」
「これからは」
「そうしたい、ではな」
幸村はあらためて言った。
「上田に帰ればな」
「はい、大殿にですな」
「この島津家のことをお話し」
「そのうえで、ですな」
「今以上に鉄砲の数を増やす」
「そうしていきますか」
「そう考えておる、当家は貧しいが」
それでもというのだ。
「やはり備えは必要じゃ」
「だからこそ」
「鉄砲もですな」
「多く必要ですな」
「これからは」
「うむ、後な」
こうも言う幸村だった。
「元寇の時にあったな」
「元寇、ですか」
「あの鎌倉幕府の頃の」
「フビライが攻めて来た」
「あの時のことですか」
「あの時元の兵達は派手に鳴る玉を投げておったな」
こう十勇士達に話すのだった。
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