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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第30話

七耀歴1204年――――初秋。新クロスベル市長にして、IBC総裁、ディーター・クロイスが提唱した『西ゼムリア通商会議』が始まった。



西の大国、エレボニア帝国からは”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンに加え、粋人(すいじん)として知られるオリヴァルト皇子―――



東の大国、カルバード共和国からは庶民派として支持を集めているサミュエル・ロックスミス大統領―――



北東にあるレミフェリア公国からは若くして国を治めるアルバート大公―――



南西にあるリベール王国からは女王代理としてクローディア王太女――――



異世界の大国、メンフィル帝国からは”聖魔皇女”として名高く、メンフィル皇帝の次期継承者でもあるリフィア皇女に加え、”英雄王”リウイ皇帝と”闇の聖女”ペテレーネ神官長の娘の一人であるレン皇女――――



いずれも国賓クラスのVIP達が今まさにクロスベルに集まりつつあった。



~クロスベル駅~



駅に到着したエレボニア政府関係者専用の鉄道からはエレボニア帝国政府代表”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンがレクター書記官や数人の将校達と共に現れて一課の刑事の先導によって、どこかに向かい、宰相達が向かうと、同じように列車からエレボニア帝国皇帝名代、オリヴァルト・ライゼ・アルノール皇子が黒髪の軍人や将校と共に出た後、一課の刑事の先導によってどこかに向かった。



~東クロスベル街道~



東クロスベル街道からは多くの車両に守られるにように囲まれた白いリムジンの中にはカルバード共和国政府代表、サミュエル・ロックスミス大統領がキリカ補佐官と共に乗っており、リムジンはクロスベル市に入った。



~クロスベル国際空港~



空港にはリベール王国の高速巡洋艦”アルセイユ”やメンフィル帝国の巨大戦艦”グロリアス”が停泊し、アルセイユからは王国親衛隊隊長や親衛隊員と共にリベール王国王太女、クローディア・フォン・アウスレーゼが、グロリアスからはメンフィル帝国の親衛隊員や銀髪の青年、そしてメンフィル機工軍団団長シェラ元帥と共にメンフィル帝国皇帝名代リフィア・イリーナ・マーシルンが黒髪のメイドを連れて現れ、リフィア皇女に続くように皇帝名代補佐、レン・H・マーシルン皇女が現れ、親衛隊員や銀髪の青年、そしてシェラ元帥と共に歩き出してクローディア王太女と合流して会話をしながら歩いていた。すると空港の入口で護衛や秘書と共にレミフェリア公国国家元首、アルバート・フォン・バルトロメウス大公がやって来て、クローディア王太女やリフィア皇女達と共に会話をした後どこかに向かった。そしてその様子を記者達が空港内から写真を撮っていた。その後各国の首脳たちを乗せたリムジンは警察車両の先導によってある場所に向かった。



~???~



その後ある場所に到着し、リムジンから降りてきた各国の首脳達はクロスベル自治州共同代表、ヘンリー・マクダエル議長とディーター・クロイス市長と挨拶をしていた。



(……す、凄いな…………)

その様子を離れた場所で見守っていたロイドは驚きの表情で呟き

(ええ……さすが一国をまとめあげる人達ばかりね。)

エリィはロイドの言葉に頷いた。

(しかし”鉄血宰相”か……かなりガタイがいいじゃねぇか。)

(フフ、共和国の大統領の方は飄々としたタヌキって感じだね。)

ランディは目を細めてオズボーン宰相を見つめ、ワジは静かな笑みを浮かべてロックスミス大統領を見つめていた。

(リベールのクローディア王太女も素敵ですね……それにあのユリア准佐をこんな所で見られるなんて……!)

ノエルは嬉しそう表情でクローディア王太女達を見つめ

(エリゼ……どうやらしっかりとリフィア殿下の侍女を勤められているようだな……)

リィンは口元に笑みを浮かべてリフィア皇女の傍にいる黒髪のメイドを見つめ

(あの人達もヴァイスやリセルが”影の国”で出会った戦友達ですか…………)

(フフ、貴方にとっては懐かしい人達ばかりじゃないの?ヴァイスハイト。)

アルはクローディア王太女やリフィア皇女、オリヴァルト皇子達を順番に視線を向け、エルファティシアは視線を向けた後ヴァイスに微笑み

(ああ…………フッ。皆、元気そうだな…………)

エルファティシアの言葉にヴァイスは頷いた後静かな笑みを浮かべていた。



「―――各国首脳の皆様。ようこそ、遠路はるばるクロスベルへいらっしゃいました。クロスベル市の市長、ディーター・クロイスであります。」

そしてディーターは記者達のカメラのフラッシュの中話し始めた。

「この度は『西ゼムリア通商会議』に参加して頂き、誠に有難うございます。通例ならば、この場で歓迎の意と共に開会宣言をさせて頂くところですが……その前に、この記念すべき日にことよせて皆様のお時間を頂きたいと思います。」

各国の首脳達に話したディーターは背を向け、シャッターに覆われた巨大な建物を見つめ、各国の首脳や周りの人物達も建物を見つめた。

「―――ご紹介申し上げます。クロスベル市の新市庁舎として。貿易・金融都市クロスベルを象徴する新たなランドマークとして。何よりも、大陸全土の平和と発展に貢献する国際交流センターとして。皆様にお披露目させていただく、大陸史上初の超高層ビルディング―――”オルキスタワー”であります!」

そしてディーターが笑顔で叫ぶとシャッターが開かれ、超高層ビル――――オルキスタワーが現れ、さらに花火がオルキスタワーの周囲に打ちあがった!



「こ、これが……”オルキスタワー”……!」

「概要は知っていたけどここまで壮麗だったなんて……」

「な、なんだか見てるだけで圧倒されそうですね……」

「ああ……こんな高い建物、今まで見た事ないな……」

「こちらの世界は私達の世界と違って科学的な事が特に発展しているとは思っていたけど、まさかここまで高い建物を作るとはね……」

オルキスタワーを見上げたロイド、エリィ、ノエル、リィン、エルファティシアは驚き

「ああ……見事としか言いようがないな。」

「これほどの存在感があるビルでしたら、必ずクロスベルの象徴になるでしょうね……」

ヴァイスは静かな笑みを浮かべて呟き、アルは驚きの表情で呟き

「あり得ねぇだろ……どんだけミラがかかってんだよ。」

「フフ、気の遠くなるようなミラが投入されたんだろうねぇ。」

ランディは溜息を吐き、ワジは静かな笑みを浮かべていた。



(いやはや……さすがに度肝を抜かれたねぇ。)

(……技術の進歩というのは凄まじいものだな……)

一方オリヴァルト皇子は驚きの表情でオルキスタワーを見上げ、オリヴァルト皇子の隣にいる黒髪の軍人―――ミュラー少佐は目を伏せて呟いていた。

(……まるでリベル=アークを思い出してしまいますね……)

クローディア姫は懐かしそうな表情でオルキスタワーを見上げ

(ええ……さすがに中枢棟(アクシスピラー)ほどの高さではありませんが……)

クローディア姫の隣にいるリベール王室親衛隊隊長、ユリア准佐は静かな笑みを浮かべて頷いた。

(うむ!見事じゃ!まさかこれほど見事な建物を建造するとは……我等メンフィルも負けていられんな!オルキスタワーに負けぬほどの立派な城を建てねばな!)

(もう……ミルス城だって威厳があって立派じゃない……)

リフィア皇女は口元に笑みを浮かべて呟き、リフィア皇女の言葉を聞いたリフィア皇女専属の侍女兼秘書であり、さらに護衛も兼ねている娘――――侍女エリゼは呆れた表情で溜息を吐き

(クスクス。”平和の象徴”ねぇ?…………教団の裏に隠れていた黒幕である者がよく言えたものだわ。)

(…………さて……………”結社”は一体どこまで関与している………?”環”の件を考えれば奴等は必ず”至宝”に関わるはずだしな……)

(…………………………)

レン皇女は小悪魔な笑みを浮かべた後目を細めてディーターや傍にいるマリアベルを睨み、レン皇女の傍に居るレン皇女の姉、プリネ皇女専属親衛隊副隊長にしてリフィア皇女とレン皇女の護衛として派遣されているレオン少佐は目を細めてオルキスタワーを見上げ、同じく2人の護衛であるシェラ元帥は何も語らず周囲を警戒していた。

(はっはっは、何とも豪気じゃないか!キミの報告を受けていたがまさかここまでとはなぁ!)

一方ロックスミス大統領は豪快に笑いながら隣にいるキリカ補佐官に話しかけ

(ええ、私も実物がここまでとは思いませんでした。さすがはIBCの資本力と言ったところでしょうか。)

話しかけられたキリカ補佐官は頷いた後口元に笑みを浮かべた。

(フフ、実際大したものだ。この因縁の地にこれほどの大伽藍を築くとはな。)

そしてオズボーン宰相は感心した後口元に笑みを浮かべ

(んー、とりあえず一度、屋上に登ってみたいねぇ。市長さんに頼んでみたら登らせてくれっかなァ?)

レクター書記官は興味深そうな表情でオルキスタワーを見上げていた。

「―――それでは改めまして。首脳の方々、およびこの場にいる全ての関係者の立会の下―――『西ゼムリア通商会議』の開催を宣言させていただきます!」

そしてディーターは振り向いて各国の首脳達に宣言した。



「……大したものですね。」

その様子を建物の屋上で見守っていたラウは感心し

「フフ、素晴らしい。この光景を見ただけでもクロスベルに来た甲斐があったというものです。」

ツァオは笑顔で言った後不敵な笑みを浮かべた。

「……殊勝なことを。―――まあいい、私は行くぞ。どうも奇妙なネズミどもが入り込んでいるようだからな。」

一方銀は鼻を鳴らした後ツァオ達に背を向けて言い

「ええ、そちらはお任せします。それと、明日のイベントには是非とも協力をお願いしますよ?貴方が来てくださるだけで相当な箔が付きますからね。」

背を向けた銀にツァオは言い

「フン、まあいいだろう。」

銀は答えた後空間の中へと入って行って消えた。

「ふう……相変わらず神出鬼没ですね。あの気まぐれさえなければこちらも助かるのですが……」

銀が去った後ラウは溜息を吐いたが

「フフ、どうやら気まぐれというわけではなさそうです。”彼”がこちらに協力してくれるタイミングにはルールがある……それを見極めておけば滅多に断られたりしませんから。」

「そ、そうなのですか?しかし、そのルールとは一体……?」

ツァオの説明を聞いて驚きの表情で尋ね

「フフ、まだヒミツです。」

尋ねられたツァオは笑顔で答えを誤魔化し、そして眼鏡をかけ直し

「―――ここまでは段取り通り。明日のイベントの成功のため、もうひと頑張りしておきましょう。」

不敵な笑みを浮かべて言い

「は!」

ツァオの言葉にラウは頷いた。



「うっわーっ!あのビル、とんでもないね~!ねえねえ、シャーリィたちでブッ壊せたりしないかな!?」

一方オルキスタワーを見つめていたシャーリィは笑顔でとんでもない事を言い

「フフ……気持ちはわかるが止めとけ。いずれあのビルにも役立ってもらうつもりだからな。」

シグムントは口元に笑みを浮かべて言った。

「むー、残念。まあいいや、街の方をブラついてくるね?あのビルのせいですごく賑わってるみたいだし♪」

「ああ、行ってくるがいい。」

そしてシグムントの返事を聞いたシャーリィは身軽な動作で建物から降りて行った。

「はは……さすがお嬢だぜ。よっぽどあのビルが気にいったんスかね?」

その様子を見ていた”赤い星座”の部隊長の一人、ザックスは感心しながら呟き

「フフ、それもあるだろう。だがそれよりも―――血の予感に酔ってるんだろうさ。」

ザックスの言葉にシグムントは答えた後不敵な笑みを浮かべた。

「……!」

「……なるほど。シャーリィ様らしいかと。」

シグムントの言葉を聞いたザックスは目を見開いてシグムントを見つめ、傍に居たガレスは納得した様子でシグムントを見つめて言い

「クク……さすがは俺の娘。どうやら明日はたっぷりと愉しませてやれそうだ。」

シグムントは口元に笑みを浮かべた後、不敵な笑みを浮かべてオルキスタワーを見つめていた。



「かくして運命の塔は顕れ、数多の因縁を巻き込みながら螺旋を描いてゆく―――フフ、ブルブランがいかにも好きそうな場面(シーン)だな。まあこれだけのイベント、彼なら勝手に見に来てそうだけど。」

一方その頃片腕の少年は端末の画面にオルキスタワーを映しながら端末を操作していた。

「おっと、来た来た。」

そして少年が呟くと端末の画面に何かの図面が出てきた。

「ウフフ……あとは”彼ら”に渡すだけか。それじゃあ、せっかくだからお愉しみの準備もしとこうかな♪」

それを見た少年は嬉しそう表情で言った。



「す、すごいわ……!」

「あのビル、IBCのテコ入れでやっと完成したんだっけ!?」

「まさかあんな綺麗なビルが建てられていたなんて……!」

「やっぱディーター市長はやる事がデカすぎるぜ!」

百貨店”タイムズ”の屋上でオルキスタワーを見つめていた市民達は興奮し

「す、すっげ――――ッ!なあなあアンリ!探検に行ってみようぜ、探検!」

リュウは興奮した後アンリに言い

「ま、また怒られるってば~!まあ……気持ちはわからなくもないけど。」

アンリは溜息を吐いた後苦笑した。

「……ス、スゴイの……」

そしてリュウ達と同い年くらいの女の子は驚き

「た、確かに凄いビルだな……カルバードじゃ考えられないぞ!うーん、ウチがこの街にこだわるのもわかる気がする……」

東方風の服を着た男の子は驚いた後考え込んでいた。

「ふふっ……みんな、すごく盛り上がっているね。あんなにおっきなビルを見たら、誰だってそうなるよ。……ね、キーアちゃん?」

眼鏡をかけたシズクは微笑みながらオルキスタワーを見つめながらキーアに話しかけ

「……………………」

話しかけられたキーアは何も答えず呆けた表情で黙り込んでいた。

「キーアちゃん……?どうしたの?」

答えが返って来ないキーアの様子に不思議そうな表情をしたシズクはキーアがいる方向に振り向いてキーアを見つめて尋ね

「あっ――――ゴメンね、シズク。えっとね、すっごく大きいよね!?色も青と白でキレーでスラッとしててカッコよくて!」

尋ねられたキーアはシズクに振り向いて嬉しそう表情で言い

「ふふっ、そうだね。」

キーアの言葉にシズクは微笑みながら頷いたが

「……でも……」

「?どうしたの?」

考え込んでいるキーアを見て不思議そうな表情で尋ね

「あ……ううんっ、なんでもないっ。」

尋ねられたキーアは答えを誤魔化した後オルキスタワーを見つめ

(なんでだろ……はじめて見るはずなのに……キーア、あのビル……どこかで見た事がある気がする。)

不安そうな表情でオルキスタワーを見つめ続けていた………… 
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