英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~それぞれの動き~
~夜・エレボニア帝国・帝都ヘイムダル某所~
「―――まだ起きていたのか。明日の出発は早い。いい加減、寝たらどうだ?」
エレボニア帝国の帝都―――ヘイムダルのある場所で黒髪の軍人は机で書類仕事をしている金髪の青年に近づいて行った。
「あー……うん……一応、こちらの報告にも目を通しておきたいからねぇ。」
「士官学校か……まさかお前がそこまで真面目に職務に励むとはな。」
青年の言葉を聞いた軍人は口元に笑みを浮かべて青年を見つめた。
「フフ、あくまで名目上の理事でしかないけどね。あの子達も頑張ってるみたいだし、このくらいはさせてもらわないと。」
「フ……まあいいだろう。―――しかしどうやら例の話は確かなようだな。カイエン公の手の者が密かに手を回しているようだ。」
「あのヒトか……そんな所じゃないかと思ったけど。規模の方は掴めているのかい?」
軍人の話を聞いた青年は考え込んだ後尋ねた。
「いや、そちらは不明のままだ。情報局もその辺りは掴み損ねているようだな。」
「アハハ、自業自得とは言え宰相殿も災難だねぇ。フフ、意外とボクもまとめてターゲットにするつもりかな?」
「……洒落になっていないぞ。やはり第七師団からの護衛を増員した方がいいのではないか?今からねじ込む事も可能だろう。」
笑いながら言った青年の言葉に溜息を吐いた軍人は真剣な表情で提案した。
「いや、それには及ばない。宰相殿ならともかく。ボクのキャラでそれをやったら築いたイメージも台無しだろう。それに――――」
しかし青年は静かな表情で軍人の提案を否定し
「ボクにはキミがいるからね♪キミの腕の中で守ってもらえればもうそれだけで十分さっ!」
両手を広げ、輝かしい笑顔で軍人を見つめて言った。
「―――さて、俺も早く寝るか。」
しかし軍人は青年の言葉に返事せず、青年に背を向けて言った。
「スミマセン、調子に乗りました。いずれにしても、明日の内に姫殿下やリフィア殿下達と話をしておきたいかな。そちらの段取りはどうだい?」
「ああ、准佐殿と”剣帝”と連絡は取れている。明日の昼食会の後――――夕方くらいの時間になるだろう。」
「そうか……フフ、1年ぶりくらいか。エステル君達が残っていたら同窓会が開けたんだけどねぇ。シェラ君も忙しそうだから出張できる余裕はなさそうな上ティオ君もまだクロスベルには戻って来ていないようだし。」
「……そうだな。……だが、その代わりお前にとって話が合う人物がクロスベルにいるだろう?」
青年の言葉を聞いた軍人は静かな笑みを浮かべて青年に言い
「話が合う人物……ああ、ヴァイスか。いや~……彼の事を知った時は驚いたねぇ。女神も中々面白い奇蹟を起こしてくれたものだね♪………おっと。この場合はエステル君が起こしたと言うべきかな?」
「……おい。”彼女”の最高機密をみだりに口にするのは止めておけ。」
嬉しそう表情で言った青年の言葉を聞いた軍人は真剣な表情で青年を見つめて言った。
「おっと、そうだったね。フフ、しかしヴァイスがいるなら、彼と共に最先端のアーバンリゾートで満喫しながらリゾートで解法的になっているレディ達と仲良くするのもいいね。あ、キミと准佐殿の逢引を邪魔するつもりはないから安心してくれたまえ♪何だったら噂のテーマパークでデートしてきたらどうだい?」
「―――余計なお世話だ、阿呆。しかし、いつも以上に下らん戯言が多いようだが。……まさか良からぬ事を考えてるんじゃないだろうな?」
「ギクッ……ハハハ、ヤダナア。ソンナワケナイジャナイカ。」
軍人に睨まれた青年は片言で答えた。
(……明日は首に縄でも付けておくか。)
一方青年の反応を見た軍人は考え込んでいた。
「―――まあ多分、これが最後の外遊になるだろう。宰相殿の狙いを探りつつ、大陸全土の動向も見極める……相変わらず苦労をかけるけどよろしく頼むよ―――親友。」
「フッ、無論だ。」
そして真面目な表情で言った青年の言葉に軍人は静かな笑みを浮かべて答えた。
~リベール王国上空・高速巡洋艦”アルセイユ”~
「……いい風……この雲の流れ具合だと……向こうの方も晴れなのかしら?」
白を基調とした美しい巡洋艦の甲板で高貴な衣装を着た可憐な娘は外を見つめて独り言を呟いた。すると
「ピューイ!ピュイ、ピュイ、ピューイ!」
一羽の白ハヤブサが飛んできて娘の肩に止まって鳴いた。
「ふふ、いつもご苦労様。」
白ハヤブサに微笑んだ娘は白ハヤブサの足に括り付けてある紙を取って内容を読み
「…………………………やっぱり共和国方面でも火種がくすぶっているみたい。そして”黒月”の存在と大陸有数にして”異変”の時にも現れた猟兵団の介入……やはり”鉄血宰相”の配下として働いているのは……」
真剣な表情で黙り込んだ後独り言を呟き、再び考え込んだ。
「ピュイ?」
「ふふ、何でもないわ。明日は北東に向かうからこのまま船に乗っていてね?いくらあなたでも外国まで付いていくのは大変でしょうから。」
「ピューイ!」
娘の言葉に答えた白ハヤブサが甲板の手すりに止まったその時
「―――殿下。こちらにいらっしゃいましたか。」
女性士官が娘に近づいてきた。
「ふふっ……風に当たりたくなって。どうやら明日からの会議に少し緊張しているみたいです。」
「ふふ、ご冗談を。ああ、ジーク。戻ってきていたのか。」
「ピュイピュイ。」
「……これを。R&Aリサーチからの報告を届けてくれました。」
「リシャール殿からの……!拝見させていただきます。」
女性士官は娘から紙を受け取って内容を読んだ。
「………急進的な民族主義者……それに共和国政府の動きですか。どうやら想定外の事態が各方面で進行しているようですね。」
「ええ、皇子やリフィア殿下達とお会いしたらそのあたりもご相談しないと。それと―――ちょっとしたツテを頼らせてもらうかもしれません。」
「ツテ……ですか?」
「ええ、本当に頼っていいのか見極める必要がありますけど。もしかしたら私達の助けになってくれるかもしれません。そちらにはヴァイスさんやティオちゃんもいますし……」
「ああ、エステル君達が言っていたという……なるほど、ギルド方面とは別に当たってみる価値はありそうですね。」
「ええ……―――お祖母様が主導された”不戦条約”が結ばれて2年。戦争は回避できましたが大陸全土で、目に見えぬ圧力が高まりつつあるようです。何とか不戦条約に代わる新たな枠組みを模索しないと―――」
女性士官の言葉に頷いた娘は空を見上げて考え込んでいた。
~ラギール商会~
「夜分遅くにわざわざ面会して頂き、ありがとうございます、チキさん。」
支援課のビルを出たルファディエルはラギール商会を尋ね、チキと対面していた。
「いえ…………まだ営業時間ですし…………それにルファディエル様とは契約の件もありますので…………それで今日は一体……何の御用でしょうか……?」
「はい。実はそちらにとっても有益になるかもしれない話がありますので、その事についてご相談させてもらおうと思いまして。」
「私達にとって有益、ですか……?一体……何なのでしょうか……?」
ルファディエルの話を聞いたチキは不思議そうな表情で尋ね
「……上手く行けば銀を貴女達の手駒にでき、さらに”クリムゾン商会”や”黒月”を纏めてクロスベルから一掃できるかもしれない事です。」
「えっ!?”黒月”や”クリムゾン商会”を一掃するどころか、銀を…………!?一体どうやって……」
ルファディエルの話を聞いて驚いた後尋ねた。
「はい、ただその為には私が出す複数の”依頼”を貴女……いえ、”メンフィル帝国”が受けて頂き、さらに私が欲しいある情報についても教えて頂きたいのですが。」
「……わかりました…………詳しい話をお願いします……」
そしてルファディエルの説明を聞いた後頷き、ルファディエルと話し合いを始めた。その後チキとの話し合いを終えたルファディエルはラギール商会の店舗を出た。
(……上手く話が纏まってよかったわ。これで2大国の反論や脅しも封じ込められるわね。さて……後は戦力の確保ね。メヒーシャ達は当然として、”戦妃”についてもチキが本人に交渉すると約束してくれたし、ヴァイスハイト局長やアル警視、ギュランドロス司令達にも手伝ってもらわないとね。後は…………”神殺し”セリカ・シルフィル。彼や彼の従者達もいれば、完璧な布陣になるわね。問題は彼らが手伝ってくれるかどうかだけど…………幸いヴァイスハイト局長が彼らと親しいようだから彼に交渉を頼みましょう。私の持つ情報を聞けば、クロスベルで名を上げたい局長達も私の策に乗るでしょうし………―――”彼ら”の狙いは恐らく明後日の会議の最中。暗殺の方法は空からの侵入、もしくはヘリか飛行艇を使っての銃撃。そして暗殺が失敗した時の逃走経路は爆弾でも仕掛けて、そちらに護衛達の目が行っている間に地下に降り、オルキスタワーの地下と繋がっているジオフロントからの撤退でしょうね…………そうなると……”彼ら”や黒月、赤い星座との戦いに備えて今の内に罠を仕掛けておいた方がいいかもしれないわね…………下手をすればそれぞれの勢力の全構成員と戦う事になるかもしれないし…………今までとは比べものにならないくらいの……2大国とメンフィル帝国をも巻き込んだ大規模な策……必ず成功させないとね…………)
店舗を出たルファディエルは考え込みながら歩いてある場所に向かい、そこで何かの作業をした後支援課のビルに戻って行った………………
~リベール王国上空・巨大飛行戦艦”グロリアス”~
「……………………」
赤を基調とした巨大な戦艦の甲板でどこか大人びた雰囲気を纏わせる漆黒を基調としたフリフリドレスを着た菫色の髪の少女は複雑そうな表情で外を見つめていた。
「……ここにいたのか、レン。」
その時二房が付いた変わった帽子をかぶり、高貴な衣装を着た娘が黒髪のメイドと銀髪の青年と共に少女に近づいてきた。
「リフィアお姉様。ちょっと風に当たりたくてね…………」
「…………そうか…………やはりヘイワース夫妻の事が気になるか?」
少女の言葉を聞いた娘は真剣な表情で少女に尋ね
「……まあ、ね。……けど、大丈夫よ。今のレンなら正面を向いてあの人達と話せる。…………メンフィル皇女、レン・H・マーシルンとして。」
尋ねられた少女は複雑そうな表情で答えた後真剣な表情で娘を見つめて言い
「ほう…………この間まで自由気ままな生活をしていた癖に言うようになったではないか。お前もようやく、メンフィル皇女としての自覚が出てきたようだな。」
少女の言葉を聞いた娘は口元に笑みを浮かべた。
「…………その台詞、リフィアが言えるの?頻繁に政務を投げ出した上外出して、挙句の果てには皇女とはとても思えない型破りな行動をするリフィアが。」
するとその時メイドはジト目で娘を見つめて言い
「ぬ……余はメンフィルをより良い未来にする為に城の中では学べない事をだな……」
ジト目で見つめられた娘は唸った後答えかけたが
「シルヴァン陛下が帝位を継いだ年齢をとっくに過ぎている上、リウイ陛下達と共に邪龍討伐、リベールの”異変”、そして”影の国”に関わっておいてまだそんな事を言っているの?」
「クッ…………ええい!お主、侍女の癖に遠慮がなさ過ぎじゃぞ!それでも余専属の侍女か!?」
ジト目で言ったメイドの指摘に唸った後メイドを睨んで言ったが
「リウイ陛下やシルヴァン陛下、カミーリ皇妃からは貴女に対して遠慮する必要は一切ないと言われている上貴女に対してある程度無礼な態度や行動をしていいと許可をもらっているし、さらに『首根っこ捕まえてでもリフィアを回収していい』って言われているし。」
「クッ!リウイ達も余計な事ばかりエリゼに吹き込みおって……!」
「リウイ陛下達は貴女やメンフィルの未来を心配して私に言っているのよ?……それに私が初めて貴女に挨拶をした時、貴女自身が私に貴女に遠慮する必要はないと言ったでしょう?」
「むう…………確かにそう言ったが、まさかあれだけ清楚で礼儀正しかったお主がここまで変わるとはな………………」
「私がここまで変わったのは貴女のせいでしょうが……まさか侍女なのに秘書みたいな事をさせられる事になるとは思わなかったわよ…………ハア…………」
メイドの説明を聞いて再び唸った後溜息を吐き、娘の言葉を聞いたメイドは呆れた表情で溜息を吐いて娘を見つめ
「クスクス♪メイドに呼び捨てされ、さらには政務関係もできるメイドを持つ皇女なんてリフィアお姉様ぐらいよ♪」
「フッ………さすがは”聖魔皇女”が認めた専属侍女と言った所か。……随分と肝が座っている。」
少女は小悪魔な笑みを浮かべ、青年は静かな笑みを浮かべてメイドを見つめ
「……リフィアの型破りさに付いて行き、さらにフォローができるようにならないと、リフィアの専属侍女はやって行けませんので。」
見つめられたメイドは疲れた表情で溜息を吐いた。
「クスクス、いいじゃない♪パパも貴女がリフィアお姉様を見張ってくれているおかげで大分手間が省けたってぼやいていたし、貴女自身、”姫将軍”さんから剣術や魔術、政務関係を教えてもらって色々と成長したじゃない♪」
メイドの言葉を聞いた少女は小悪魔な笑みを浮かべてメイドを見つめ
「……まあ、だからこそ余もお主にエステル達のように私的な場では呼び捨てで余の名前を呼ぶ事や、気軽な態度で接する事を許したのだしな。……余の忠実にして優秀なる下僕にして信頼ある友になったからには絶対に手放さないから、覚悟しておけよ?」
娘はメイドの言葉に頷きながら話した後不敵な笑みを浮かべてメイドを見つめ
「それはこちらも望むところよ。貴女に信頼してもらえればシュバルツァー家もメンフィル皇家や貴族の方々に信頼されるし。」
見つめられたメイドは口元に笑みを浮かべて答えた。
「フフ、余が帝位に着いた時はシュバルツァー家を信頼ある家臣の貴族として宣言するつもりだから安心するがいい。その時になればシュバルツァー家もメンフィル帝国の名門貴族へと成り上がるだろう。」
「それはどうもありがとう。その日が来る事を楽しみにして待っているわ。」
「うむ!………………そう言えばシュバルツァーで思い出したが……お主の兄は”特務支援課”とやらに出向しているのだったな。……まさかその者の報告のおかげで”結社”がクロスベルに潜入している事がわかるとは予想もしていなかったな…………」
「―――――カンパネルラとノバルティス博士か。”見届け役”であるカンパネルラが現れた時点で”輝く環”の件のような事件がクロスベルで起きる事はもはや決定しているだろう。」
そして娘が呟いた言葉を聞いた青年は目を細めて呟き
「…………”幻の至宝”――――”虚ろなる神”ね……………フウ…………クロスベルってつくづく”魔都”としか言いようがないわね。」
少女は複雑そうな表情で呟いた後溜息を吐き
「まったくじゃな。エレボニアとカルバードの動きの件もあるしな…………さて。お前は今のこの状況でどう動くか楽しみにさせてもらうぞ?ヴァイスハイトよ…………」
少女の言葉に頷いた娘は不敵な笑みを浮かべて夜空を見上げた。
~ジオフロントB区画~
「―――ウフフ、なるほど。なかなかどうして使いやすい端末じゃないか。」
一方その頃片腕の少年がかつてヨナが使っていた端末を操作していた。
「財団きっての天才SE、ヨナ・セイクリッド少年か。旧式のネットワークとはいえここまでの環境を構築するとはね。”殲滅天使”が捕捉されたっていうのもあながちマグレじゃなさそうだな。」
少年が端末を操作すると端末の画面になんとリベールで暗躍した謎の組織――――”身喰らう蛇”の紋章が現れた!
「”星辰のコード”のインストールを完了……それじゃあ始めようかな。―――位相空間にアクセス。導力ネットの全領域を開始。複数ルートからの侵入経路を確保。第一、第二、第三防壁をクリア……ロジックキーの解除に成功、メイン端末への最終防壁への攻略……」
少年が端末の操作を追えると画面に”MISSION COMPLETE"という文字が現れた!
「フフ、さすが博士が自慢するだけはあるかもね。さてと、お楽しみは取っておくとして仕掛けのネタを漁ろうかな。」
するとその時、警告する画面が出てきた。
「おっと……こっちでふんじゃったか。ウフフ……やるねえ、ソバカス君。でも、この仕掛けだと明日くらいまでバレないかな?せっかくだから色々、愉しませてもらおうっと♪」
その後少年は端末の操作を続けていた…………
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