英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第31話
~特務支援課~
「―――なるほど。通商会議の本番は明日ですか。」
その後支援課のビルに仲間達と共に戻ったロイドは昼食を取りながらセルゲイから説明を受けていた。
「ああ、今日のところは昼食会に各種懇談会って所だな。夜には晩餐会に加えてアルカンシェルの観劇があるらしい。ちなみに首脳達は全員、ミシュラムの迎賓館に泊まる予定だ。」
「迎賓館というと、ハルトマン元議長の屋敷ですね。」
「へえ、あの馬鹿デカイ屋敷、そんな風に使われてんのかよ?」
「まあ、妥当な使い方ね。豪華さで言えばクロスベルでは一番でしょうし。」
エリィの言葉を聞いたランディは意外そうな表情で尋ね、エルファティシアは納得した様子で頷いていた。
「まあ、ハルトマンについては汚職や違法取引に関する罰金が凄まじいほどの額になったからな。その代償として没収されて迎賓館として使われたってわけだ。」
「うーん……まあ、自業自得でしょうね。」
「屋敷を没収されるほどって……一体どれだけの金額になったんでしょうね?」
セルゲイの話を聞いたノエルは考え込みながら呟き、リィンは驚きの表情で疑問を口にし
「一般市民なら一生遊んで暮らせる金額でしたね。」
「そ、そんなに凄い金額だったんですか……」
リィンの疑問に答えたアルの話を聞いたロイドは驚きの表情で呟いた。
「それじゃあ当然、ミシュラム方面は封鎖ってわけかい?」
そしてワジはある事を尋ねた。
「ああ、通商会議の期間中はホテルやテーマパークも臨時休業だ。そっちは警備隊が詰めているから心配する必要はないだろう。」
「わかりました。俺達の方は、昨日に続いて支援活動に専念しますが……」
「それで構わんだろう。招待客の中には、昼食会の後、クロスベル各地を訪れる者もいるようだ。何か問題が起きるかもしれんからお前らでフォローしとくといいだろう。」
「了解しました。」
セルゲイの指示にエリィは頷いた。
「しかし、さすが招待客どもは並みのオーラじゃなかったな。特に”鉄血宰相”………ありゃあタダモンじゃねえぞ。」
「ああ、あのレクター大尉が控えていたのも気になったけど……宰相本人はそれ以上に、圧倒的な雰囲気の持ち主だったな。共和国のロックスミス大統領は親しみの持てる雰囲気だったけど……でも、すぐ近くにあのキリカさんが控えていたな。」
「カルバードの諜報組織、”ロックスミス機関”の人間……庶民派で知られる大統領だけどやっぱり一筋縄では行かなさそうね。」
ロイドの言葉にエリィは真剣な表情で言った後呟き
「まあ、ああいうタイプは表で笑って裏で何を考えているかわからないタイプだ。……俺やエルファティシアのようにな。」
「うふっ♪確かにそうね♪」
ヴァイスは不敵な笑みを浮かべて呟き、ヴァイスの言葉にエルファティシアは頷き
「きょ、局長…………」
「アハハ、同類だからわかるってヤツ?」
「ワジ君だって同類でしょうが……」
「確かにこいつも何考えているか、サッパリわかんねぇしな……」
2人の言葉を聞いたロイドは冷や汗をかき、ワジは笑顔で言い、ワジの言葉を聞いたノエルとランディは溜息を吐いた。
「でも、リベールのクローディア姫はさすがに気品がありましたよね。一緒にいたユリア准佐もすっごく格好よかったですし!」
「ああ、リベール王国の王室親衛隊の女性隊長だっけ?何でもそのスジじゃ、熱狂的なファンがいるらしいけど。」
興奮した様子で言ったノエルの言葉を聞いたワジは静かな笑みを浮かべて尋ね
「う、うん……そうだけど。」
「あはは……私もちょっとファンだったりして。」
尋ねられたノエルは苦笑しながら頷き、エリィも苦笑しながら頷いた。
「へえ、そうなのか?」
「なんだなんだ~?お嬢、そういう趣味だったのかよ?」
「別に趣味ってわけじゃないけど……その、前にリベールに滞在した時、王室親衛隊のパレードを見物して……写真集なんかも出ていたらから思わず買っちゃったのよね。」
「な、なるほど。」
「それ、後で見せて下さい!」
エリィの話を聞いたロイドは苦笑しながら頷き、ノエルは真剣な表情で言い
「あはは……うん、いいわよ。」
ノエルの言葉にエリィは苦笑しながら答えた。
「やれやれ、嘆かわしいねぇ。」
「フフ、男装の麗人は一種のロマンだからねぇ。僕としてはエレボニアの皇子殿下も結構気になったけどね。」
ノエルの様子にランディは溜息吐き、ワジは静かな笑みを浮かべて言った。
「オリヴァルト皇子か……最近、わりと聞く名前だけど。」
「リベールの異変の解決に一役買ったことで有名な方ね。それから色々な催しに出席して評判になっているみたいだけど……たしか皇位継承権は持っていらっしゃらないのよね。」
「そうなのか……あれ、リベールの異変の解決に一役買ったっていうことは……エステル達と知り合いだったりするのかな?」
エリィの話を聞いたロイドはある事に気付いてエリィに尋ね
「ああ、そう言えば……」
「エステルちゃん達、顔が広そうだったしあり得るかもしれねぇな。ってそう言えば確かティオすけの写真に写っていなかったか?」
尋ねられたエリィも気づき、ランディも頷いた後ある事に気付いて声を上げた。
「そう言えばそうだったな………確か局長もエステルやティオ達と一緒に”影の国”という場所を冒険したんですよね?」
「ああ。まあ、俺とリセルはあのメンバーの中で”影の国”に現れた時には探索も終盤に入っていたからな。ちなみにオリビエもエステル達の知り合いだぞ。」
ロイドに尋ねられたヴァイスは頷いた後答えた。
「オリビエ?」
ヴァイスの言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情になり
「オリヴァルト皇子の事だ。……当時はエステル達に自分の身を明かさず、彼女達と共に旅をした事があるらしい。……後で奴の事を知ったエステル達はかなり驚いたそうだぞ?」
「まあ、皇子と一緒に旅をしていたなんて事実、普通の人の感覚でしたら驚いて当然ですね。」
「ハハ、さんざん俺達を驚かせたエステルちゃんをも驚かせるとか中々凄いンすね、その皇子。……そういえばレンの嬢ちゃんが本当に来るとはな……しかもあんな公の場で姿を現すなんて…………」
ロイドの疑問に答えた後説明したヴァイスの話を聞いたアルは納得した様子で頷き、ランディは笑った後真剣な表情になった。
「ハロルドさん達、今回の件でレンちゃんの事を知っちゃったわよね……どうするつもりなのかしら……」
「………………レンの事はハロルドさん達自身の問題だ。俺達は彼らに相談されるまでは見守るしかないよ。……それよりレンの隣にいた皇族の衣装を着た女性がリフィア殿下なんだよな?」
不安そうな表情で呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは静かな様子を纏って呟いた後ある事を思い出してリィンに尋ね
「ああ。あの方が現メンフィル皇帝夫妻のシルヴァン陛下とカミーリ皇妃の一人娘にして、リウイ陛下とカーリアン様の孫であるリフィア殿下さ。」
「へえ……あのお姉さんの。……にしてはスタイルや背とか小さいよな?”戦妃”のお姉さんはスタイル抜群なのに。」
ロイドに疑問に答え、説明したリィンの話を聞いたランディは意外そうな表情で言った。
「お、おい、ランディ!」
「貴女、殿下にとって何て失礼な事を言っているのよ……」
ランディの言葉を聞いたロイドは慌て、エリィは呆れ
「……その言葉、絶対に本人の前で言うなよ……殿下にとってスタイルや背の事に関しては禁句なんだからな。噂だと殿下の身体的特徴を口にして、殿下の耳にでも入れば男女関係なく殿下の魔術によって罰せられるって聞いたからな。」
「ぞ~っ!なんておっかない姫さんなんだよ…………でも、その姫さんの隣にいたメイドさんはよかったよな!清楚な雰囲気をバリバリ出していた上容姿は可憐……ありゃ絶対良い所のお嬢さんだぜ!」
溜息を吐いた後説明したリィンの話を聞いたランディは身体を震わせた後嬉しそうな表情で言った。
「ああ。けど、それを言ったらエリィだってそうじゃないか。」
「も、もうロイドったら……」
ランディの言葉にロイドは口元に笑みを浮かべて頷き、ロイドの言葉を聞いたエリィは顔を赤らめ
(こ、この男は……)
(くかかかかっ!平然とそんな言葉を口にするお前はさすがだよ、ロイド!)
(……それが良い所であり、悪い所なのよね……)
メヒーシャは表情を引き攣らせ、ギレゼルは笑い、ルファディエルは溜息を吐き
「ア、アハハ…………」
「フフ、相変わらずバカップルだね。こっちまで火傷しそうだよ。」
「うふっ♪、若いわね~。」
「ったく、俺達のいないところでやれっつーの。」
その様子を見ていたノエルは苦笑し、ワジは静かな笑みを浮かべ、エルファティシアは口元に笑みを浮かべ、セルゲイは呆れ
「そう言う所がヴァイスと似ていますよね、やっぱり。」
「そうか?俺からしたらまだまだだぞ?」
アルは頷きながら呟き、アルの言葉を聞いたヴァイスは静かな笑みを浮かべて言い
「ハハ………けどまあ、そんな風に見られているのなら俺も兄として誇らしいかな。」
リィンは苦笑した後口元に笑みを浮かべて言った。
「へ…………」
「もしかしてリフィア殿下の隣にいた侍女の方が話にあった妹さんなの?」
リィンの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは驚きの表情で尋ねた。
「ああ。殿下の傍にいた侍女―――エリゼは義妹だよ。」
「何だと!?あんな清楚で可憐なお嬢さんがお前の妹だと!?しかも義妹!く~っ!ロイドと言い、リィンと言い、局長と言い、挙句の果てにはワジまで!なんで俺と課長以外の支援課の男共はそんなに麗しい女性達と縁があるんだよ、このリア充野郎ども!」
そしてリィンの答えを聞いたランディは驚いた後悔しそうな表情で叫んだ後ロイド達を睨み
「ハッハッハ!男の嫉妬はみっともないぞ?」
「フフ、これが持つ者と持たざる者の差ってヤツ?」
「焚き付けるなよ、ワジ……」
ランディの様子を見たヴァイスは笑い、ワジは口元に笑みを浮かべ、ワジの言葉を聞いたリィンは呆れ
「いや、意味わかんないから。」
ロイドは呆れた表情でランディに突っ込んだ。するとその時
「ただいまー。」
キーアがツァイト共にビルの中に戻って来た。
「キーア、ツァイト、お帰り。」
「ウォン。」
ロイドの言葉に頷くかのようにツァイトは吠え、キーアはロイド達に近づいた。
「あら、シズクちゃんは一緒じゃなかったの?」
「あ、うん、おとーさんと病院に戻っちゃった。でも、ビルのおひろめはいっしょに見たよー。すごかったねー!ロイドたちは近くで見たんでしょ?」
「ああ、正直大きすぎてよくわからないくらいだったよ。」
「ま、とんでもないビルってのはイヤってほどわかったけどな。」
「ふふっ、キーアちゃんの方がバッチリ見えたかもしれないね。」
「うんっ!すっごくカッコよかったー!ハナビ……だっけ?あれもすごくキレイだったし!でも……」
「ん、どうしたんだ?」
嬉しそうな表情で言った後不安そうな表情をしたキーアを見たロイドは尋ねた。
「あ、ううん、何でもない。ロイドたちはこれからまた仕事に出かけるのー?」
「ああ、夕方には戻ると思うけど。課長の方はどうですか?」
「今日は俺はここで待機だ。何かあったら連絡するから遠慮なく出かけて来い。」
「はい、お言葉に甘えて。……ちなみに局長達は?」
「俺とアルは今日からは特に用事はないな。警護に関しては一課に任せているからな。だから、通商会議の期間中はお前達と長い時間、共に行動できる。……こういう時に優秀な部下はありがたい。」
「きょ、局長…………ダドリーさん達が聞いたら烈火のごとく、怒りますよ?」
「ンな事する暇があったら、もっと他の事をしてくださいよ……」
ヴァイスの言葉を聞いたロイドとセルゲイは呆れた表情で溜息を吐き
「ハア…………それじゃあ端末をチェックしてから出かけましょうか。」
エリィは溜息を吐いた後気を取り直して提案した。その後昼食を済ませたロイド達は端末に来ている支援要請のチェックをし終えた。
「色々来ているけど……どれも気になるな。この演奏家の捜索っていうのはちょっとよくわからないけど。」
支援要請のチェックを終えたロイドは真剣な表情で呟いた後溜息を吐いた。
「いや~、でもまさか遊撃士のお姉さんたちの要請とはねぇ。訓練ってのは色気がねぇけど時間があったら寄りたいよな。」
「ふふ、いい機会かもしれませんね。こちらの猫の捜索というのはあのご家族からみたいですけど……」
「ああ、東通りに引っ越したボンドさんのところだな。あの猫とも縁があるし……出来れば力になってあげたいな。」
「そうね、私も賛成。私達を頼ってくれたみたいだし、忘れずに訪ねてみましょう。」
「ああ、そうだな。…………ただ、もしよければだけどエリゼの支援要請も受けてほしい。」
エリィの話に頷いたリィンは真剣な表情で呟き
「『お嬢様の捜索』って内容だったが……リィンの妹のあの可憐なお嬢さんが仕えているのはリフィア皇女だろ?つーことは…………」
ランディは言った後黙って考え込み、ロイド達も黙って考え込んだ。そして
「ど、どう考えてもこれは………」
「”大陸最強”と名高いメンフィル帝国のお転婆姫の捜索って訳だね。」
ノエルは大量の冷や汗をかき、ワジは口元に笑みを浮かべて言い
「絶対に引き受けましょう!皇位継承者でもあるリフィア殿下に何かあったら一大事どころの話じゃ済まないわ……!」
「ああ…………必ず見つけないと。」
エリィは必死の表情で言い、ロイドは真剣な表情で頷き
「そんなに心配する事はないと思うぞ?リフィア皇女の実力なら暗殺者や誘拐犯に襲われた所で返り討ちだぞ?」
ヴァイスは意外そうな表情で答え
「確かにそうですけど殿下の戦闘タイプは魔術師タイプですよ?いくら実力があるとは言っても危険すぎますよ……」
リィンは不安そうな表情で言った後溜息を吐いた。
「そうよね。それに………殿下にお会いする事ができればハロルドさんが出してくれた依頼を達成できるかもしれないしね……」
リィンの言葉に頷いたエリィは複雑そうな表情になり
「……あのレンって嬢ちゃんとの面会の手伝いの依頼か。」
「………………問題はレン自身が会ってくれるかどうかだけど…………その件についてはリフィア殿下に直接頼むしかないな。」
ランディは重々しい様子を纏って呟き、ロイドは複雑そうな表情で考え込んだ後溜息を吐いた。
その後ロイド達は支援要請を片付ける為に行動を開始した………………
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