英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第18話
~ノックス森林道~
「~~~~♪」
車を運転しているノエルは嬉しそう表情で鼻歌を歌い
「これは凄いな……」
「ええ、スピードが出ているのにすごく安定しているし……エンジン音もとっても静かだわ。」
「それでいて心地よい振動が感じられるのもニクイよね。」
「さすがは天下のZCFだな。俺も個人的に一台、乗り回したいくらいだぜ。」
ロイド、エリィ、ワジ、セルゲイはそれぞれ感想を言った。
「はあ、警備隊の装甲車もお気に入りなんですけど……浮気しちゃいそうで何だか後ろめたいです……」
一方ノエルは溜息を吐いた。
「はは、そんなものなんだ?」
「フフ、カーマニアならではの感性みたいだね。」
ノエルの様子を見たロイドは苦笑し、ワジは静かな笑みを浮かべていた。
「へえ……バスにも乗った事があるけど、バスと違ってエンジン音がしないし、早いわね。」
一方リィンが運転する車に乗っているエルファティシアは呟き
「ええ、そうですね。ハハ……まさかこれほど乗り心地がいいとは思いませんでした。これなら長時間、運転しても疲れなさそうですね。」
エルファティシアの言葉にリィンは頷いた後口元に笑みを浮かべた。
「フフ、その内私達にも運転を教えてもらってもいいかしら?興味があるし。」
「は、はあ……それはいいのですが……」
エルファティシアの言葉を聞いたリィンは戸惑いながら答え
「ん?どうかしたのかしら。」
「えっと…………とても森の中での生活をしているルーンエルフ族が口にする言葉とは思えなくて………それに昔から抱いていた御伽噺の中のエルフのイメージに合わないですし……」
エルファティシアに尋ねられたリィンは苦笑しながら答えた。
「うふっ♪私はルーンエルフ族の中でも”変わり者”って言われて、ルーンエルフ族らしくないってよく言われているわ♪」
「な、なるほど……」
そして口元に笑みを浮かべて言ったエルファティシアの言葉を聞いたリィンは苦笑していた。そして2台の車がある場所を通り過ぎたその時
「ヒュウ!すげえ導力車だな。」
その様子を見ていた警備隊の服を身につけているランディは感心していた。
「ランディ、あなたね……丸5日のサバイバル訓練明けなのに何でそんな平気なのよ……」
一方ランディの傍で地面に膝をついているミレイユは信じられない表情でランディを見上げて呟き
「ハハ、正直クタクタさ。一緒にシャワーを浴びて同じベッドで眠りたいくらいだぜ。」
ミレイユの呟きを聞いたランディは苦笑した後軽口をミレイユに言った。
「も、もう……馬鹿なことばかり言って。」
ランディの言葉を聞いたミレイユは焦ったが
「クク……そうは言うが本心はそうして欲しいんだろ?……もしくは抱いて欲しいとか。」
「なっ…………!ふざけた事を言わないでよ!?」
ランディの傍に浮遊していたエルンストが口元に笑みを浮かべて自分を見つめて言った言葉を聞き、一瞬顔を真っ赤にした後すぐに気を取り直してエルンストを睨み
「ハハ、からかうのはそれぐらいにしておけ、エルンスト。後が怖いからな。」
「クク、何言ってんだい。本当は気付いているんだろ?ただの照れ隠しだって。」
「こ、このお調子者コンビが…………!ハア…………それにしても……見た事ない車だったわね。警察に導入されたヴェルヌ社あたりの新型かしら?」
ランディとエルンストの会話を聞いたミレイユは怒りの表情で身体を震わせた後溜息を吐き、気を取り直して言った。
「いや、ZCF製みたいだな。まさかあんな高そうな車が2台も支援課に支給されるとはなぁ。」
「ZCFって……導力車は作ってないはずだけど。それに、どうして貴方の課に支給されたなんてわかるわけ?」
ランディの言葉を聞いたミレイユは驚いた後ランディに尋ね
「いや、ロイドとお嬢が車内に座っていたし、もう一台の車にもエルファティシアちゃんが座っていたからさ。課長と新人たちも乗ってたし多分、ウチに支給されたんだろ。」
「良い目をしているじゃないか。さすがは”闘神の息子”ってか?」
「だから、その呼び方はやめろっつーの。」
ミレイユの質問に答えたランディの説明を聞いたエルンストは不敵な笑みを浮かべてランディを見つめ、エルンストの言葉を聞いたランディは疲れた表情で溜息を吐いた。
「よ、よくあんな遠くの車内まで確認できるわね……ZCF製っていうのも車体に書かれていたから?」
一方ミレイユは驚きの表情でランディを見つめた後尋ね
「ああ、ボディの脇にエンブレムが刻まれてたぜ。いや~、こりゃあ帰るのが楽しみになってきたな!帰ったら新車はあるし、新人は増えているし、さらに綺麗所のエルファティシアちゃんやルファディエル姐さん、止めにセティちゃん達とも一緒に生活できるしな♪圧倒的に女性の比率が高い職場って最高だぜ♪」
尋ねられたランディは頷いた後嬉しそう表情をしたが
「クク、そうは言うけど支援課の女共のほとんどはロイドかあのヴァイスハイトとかいう男のモノじゃないか。」
「ガクッ!現実を突きつけるんじゃねえっての………それに肝心のロイドはお嬢と熱愛中だから、今のところはルファディエル姐さん達に手は出す暇はないだろう。だから、まだチャンスはある!……しかし声だけ俺と同じ癖にあのエルファティシアちゃんやフランちゃんどころか、典型的なツンデレ搭載済みのエルミナ大尉、そしてクールビューティーでありながらもどこか天然が入っているアル警視も侍らしている上、肉体関係まで進んでいる上ハーレムを公言しているあの新局長はズルすぎだろっ!くう~……!声や女好きという性格は同じなのにどうしてここまで差があるんだ!?」
口元に笑みを浮かべて言ったエルンストの言葉を聞いて肩を落とした後真剣な表情で呟き、そして表情を悔しそうに変えて唸った後叫んだ。
「………………ねえ、ランディ。やっぱりこのまま警備隊に戻って来ない?」
一方ミレイユは複雑そうな表情で考え込んだ後、真剣な表情でランディを見つめて尋ねた。
「へ………」
ミレイユの言葉を聞いたランディは呆けた声を出してミレイユを見つめ
「だって、あなたの能力はどう考えても軍隊向きだし……それにライフルだって今回の訓練ではちゃんと……」
「ははっ……模擬弾を使った演習だったからな。実戦じゃ使い物にならねぇのはお前も知ってるだろ?」
ミレイユの話を聞いて苦笑しながらミレイユを見つめ
「そ、それに今の司令と貴方、話が合って、よく一緒にお酒を飲んでいたりしているじゃない……」
「まあ、ギュランドロスのオッサンと色々話が合うのは否定しねぇよ。………それに俺がいなくてもあんな化物じみた強さを持ち、見た目や豪快な性格に反して中々な戦術眼を持っているギュランドロスのオッサンや有能だらけのルイーネ姐さん達がいる限り、警備隊は大丈夫さ。……まあ、ベルガード門の部隊が誇る綺麗所だらけの3人の新たな上層部―――ルイーネ姐さんとエルミナ大尉、パティちゃんがいる職場と離れるのはちょ~っと惜しい気もするがな。」
「で、でも…………」
何とか自分を警備隊に引き止めようとするミレイユに近づき、ミレイユの頭を撫で
「……あ…………」
頭を撫でられたミレイユは頬を赤らめた。
「ま、ピンチになったらいつでも駆けつけてやるからよ。リハビリ訓練の仕上げと行こうぜ。」
「わ、わかってる!」
ランディに微笑まれたミレイユは顔を赤らめて答えた後慌てて立ち上がって崖の傍まで近づき
「―――遅い!いつまでグズグズしている!あと10分で全員登ってこないともう半日延長するわよ!」
崖下を見つめて怒鳴った!
「ひえええっ……!」
「イ、イエス、マム!」
「もうヘビはイヤだ~っ!」
「ダラダラするな!迅速かつ安全に登れ!」
すると崖下から警備隊員の悲鳴や慌てた様子の声が聞こえてきた。
「やれやれ、あの”鋼鉄の鬼上官”と恐れられているエルミナ大尉と同じくらい鬼上官だねぇ。」
「クク、ただの照れ隠しじゃないか。」
一方ランディは溜息を吐き、エルンストは口元に笑みを浮かべ
「うるさいっ、馬鹿コンビ!」
2人の言葉を聞いたミレイユは2人を睨んで怒鳴った!すると
「ガッハッハッハッ!威勢がいいじゃねえかっ!!」
ギュランドロスが豪快に笑いながらルイーネ達と共にランディ達に近づき
「し、司令!?それにルイーネ一佐達も……!お疲れ様です!」
「よお、オッサン。美人の奥さんとエルミナ大尉達を引き連れて何しに来たんだ?訓練明けの迎えに司令が動く程じゃねえだろ?」
ギュランドロス達を見たミレイユは姿勢をただし、ランディは意外そうな表情をして尋ね
「あらあら。相変わらずヴァイスさんみたいに口が上手いわね、ランディ君は。」
「あはは!しかも声もヴァイスと似ているしね~。」
「ええ……ふざけた態度といい、声といい、本当に色々と似ている男ですよ……」
ランディの言葉を聞いたルイーネは微笑み、パティルナは笑い、エルミナは忌々しそうな表情でランディを睨んでいた。
「な~に。5日もロクなモンが喰えなかった可愛い部下達に少し褒美をやろうと思ってな…………この後帰ったら打ち上げだ。肉は喰い放題、酒は飲み放題だ。既に用意はしてある。」
「ええっ!?……私達の為にわざわざ手配して頂き、ありがとうございます!」
「おおっ!相変わらず太っ腹なオッサンだぜ♪」
「クク、相変わらず前司令とは比べものにならないくらい、上に立つ者として相応しい男じゃないか。」
口元に笑みを浮かべて言ったギュランドロスの言葉を聞いたミレイユは驚いた後敬礼し、ランディは嬉しそう表情をし、エルンストは口元に笑みを浮かべていた。
「そういや、いつも疑問に思っているがそんな大金、どこから出しているんだ?」
「フフ、前司令が司令室に残した調度品を全て売り払ったのよ。」
「まあ、ギュランドロス様の趣味じゃないものばっかりだったからね~。」
「……前司令はどうやら帝国貴族に憧れていたらしく、調度品はどれも高価な物で、元々処分するつもりだった物が全てかなりの高値で売れたのです。」
ランディの疑問を聞いたルイーネ、パティルナ、エルミナはそれぞれ答えた。
「あー、そういや、そんな物があったな。……ハハッ!初めてあの元阿保司令が役に立ったじゃねえか!」
「フフ……確かにそうね。」
3人の話を聞いたランディは呟いた後笑いだし、ミレイユは口元に笑みを浮かべてランディの言葉に同意した。そしてギュランドロスはミレイユの隣に移動し
「―――お前ら!訓練を終えて、帰ったら打ち上げだ!全て俺の奢りで肉は喰い放題、酒は飲み放題だっ!早く全員登って来い!」
崖下を見つめて大声で叫び
「い、今の声は司令!?」
「に、肉喰い放題に酒は飲み放題……!?」
「おおっ!さすが司令!相変わらず太っ腹!」
「よっしゃあっ!やる気が出てきたぜっ!」
「いや~、いつも思うけど前司令と比べたら天と地の差だな!」
「おいおい、何言ってんだよ。あんなのと比べたら司令に失礼だぜ!」
「ハハハハハッ!確かにそれは言えてるな!」
「イエス、サー!」
崖下からは警備隊員達の歓声が聞こえてきた。するとその時エルミナがギュランドロスの隣に移動し
「―――ただし、8分以内に全員登って来ないともう2日延長です!」
崖下を見つめて怒鳴り
「―――さらに後4分以内に半数は登って来ないと例え8分以内で登って来ても連帯責任で全員、もう1日延長するわよ!」
ミレイユも続くように崖下を見つめて怒鳴った!
「げえっ!?エルミナ大尉まで来ているなんて……!しかもさっきより増えてる……!」
「ミ、ミレイユ准尉とエルミナ大尉のダブル叱咤はおっかなすぎる……!」
「イ、イエス、マム!」
「急げっ!肉喰い放題と酒飲み放題が遠ざかるっ!!」
「口を動かす暇があったら手と足を動かして迅速かつ安全に登れ!」
崖下からは悲鳴や慌てた様子の声が聞こえてきた。
「ハハ……まさに飴と鞭ってヤツだな。」
その様子を見ていたランディは苦笑していた。
~夕方・西クロスベル街道~
「―――隻眼、赤毛の偉丈夫か。」
車の中でロイド達の話を聞いたセルゲイは呟き
「ええ……既に一課には連絡しました。」
「ま、何者かは知らないけどどう考えても普通じゃないよね。あんな異常な戦闘力を隠そうともしてないんだから。」
「……問題はそこだな。テロリストや猟兵だった場合、自分の戦闘力は隠すはずだ。いくらクロスベルに、連中を直接、取り締まれる法律が無くてもな。」
ワジの言葉を聞いて真剣な表情で言った。
「ですよね……」
「黒月や帝国政府も不穏な動きを見せていますし……ルバーチェ消滅後の揺れ戻しが水面下で始まったみたいですね。」
セルゲイの言葉にノエルは頷き、エリィは真剣な表情で言った。
「水面下というにはちと露骨すぎるみたいだがな。今月末には通商会議もある。お前らも相当、忙しくなるだろう。」
「ええ、心得ています。……とりあえず、あの男の素性は確かめる必要がありそうだな。」
「そうね……どこに滞在しているのかしら?」
その後2台の車はクロスベル市に入り、西通りに到着した……………
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