英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第17話
警察学校に到着したロイド達は受付に向かった。
~警察学校~
「おー、やっと来やがったか。」
ロイド達に気付いたセルゲイは声を上げ
「ロイド君、ノエル曹長。しばらくぶりだね。」
セルゲイの近くにいた男性は自分達に近づいて来るロイド達に話しかけた。
「ただいま到着しました。遅くなって申し訳ありません。」
「ああ、さっき連絡があったが暴走車の取り締まりを手伝っていたそうだな。まあ、そういう事なら遅刻も大目に見てやろう。……ご苦労だったな。」
「はは、ありがとうございます。それと、ホアン事務長、ご無沙汰しています。」
「お元気そうで何よりです。」
「はは、ノエル君とはこの前の定期演習以来か。ロイド君は卒業以来だから10ヶ月ぶりになるかな。いや、しばらく見ないうちにすっかり立派になったもんだ。」
「はは……まだまだ半人前ですよ。」
「えっと……」
「察するに警察学校の責任者といった所かな?」
和やかに会話しているロイドと男性―――ホアンを見たエリィは戸惑い、ワジは尋ねた。
「ああ、周辺施設の管理全般を担当されているホアン事務長だ。」
「いやいや。そんな大層なもんじゃないよ。それじゃあ、セルゲイ君。ミーティングルームは自由に使ってくれたまえ。」
「ええ、そうさせてもらいます。」
そしてホアンはロイド達から去って行った。
「―――さて、時間が惜しい。早速始めるからとっとと付いて来い。」
ホアンが去った後セルゲイはロイド達に行った後どこかに向かいかけたが
「え……」
「あの、セルゲイ課長?」
「えっと……結局どんな用件なんですか?」
「いきなり『来い』と言われても困るわよ。」
セルゲイの行動にリィンは呆け、エリィは戸惑い、ロイドは尋ね、エルファティシアは溜息を吐いた。
「なんだ、まだ気づいてないのか?色々ヒントはあったはずだが……クク、まだまだヒヨッ子って所か。」
「うっ……ま、待ってください!色々なヒント……この場所に俺達を呼ぶ意味……もしかして――――そうか……交通基本法の講習ですね?」
セルゲイに言われたロイドは唸った後考え込み、そしてある事を察して尋ねた。
「あ……!」
「クク、正解だ。」
「えっと……それはもしかして?」
「ああ、このたび特務支援課に導力車が支給される事になった。これを機に、交通法のイロハを頭に叩き込んでもらうぞ。」
その後ロイド達はミーティングルームに向かい、セルゲイから色々な事を教えてもらった。
「―――以上が導力車を扱う上で最低限覚えておく交通基本法だ。一応、頭に叩き込んだか?」
「な、何とか。」
「結構色々覚える事があったわね。」
「やれやれ、こんな所で授業が待っているとはね……」
「さすがに予想していなかったな……」
セルゲイに確認されたロイドは疲れた表情で頷き、エルファティシアは呟き、ワジは溜息を吐き、リィンは苦笑していた。
「……でも、思ったよりも簡単なルールしかないんですね。さっきの暴走車の事件みたいに、外国人への罰則が弱い面ももちろんありますけど…………この先、導力車が増えてきたらこれだけでは対処できなさそうな気がするんですが…………」
「そいつは今後の課題だな。自家用導力車が普及し始めてからまだ10年と経っていない。いずれ、厳密なルールが求められることになるだろう。外国人への罰則などに関してもな。」
「今だと役所に申請すれば簡単に運転免許が交付されるわけですが……たしか試験制度の導入も検討されているんですよね?」
「ああ、そうなった場合も各種講習に実技試験も入ってくるだろう。ま、とりあえず今日のところは基本のルールを叩き込んでおけ。実際の運転は―――ノエルとリィン。お前達にやってもらおう。」
ノエルの疑問に頷いたセルゲイはノエルとリィンに視線を向けて言い
「はい、了解しました!」
「了解しました。」
視線を向けられたノエルは力強く頷き、リィンも頷いた。
「そうか、ノエルは当然、導力車を運転できるんだよな。」
「警備隊車両をあれだけ自在に運転できるくらいだものね。」
「へえ、そうなんだ?」
ロイドとエリィの話を聞いたワジは意外そうな表情でノエルを見つめて尋ね
「あはは……入隊して以来、副司令に叩き込まれたから。それよりリィン君も運転できるんだ?」
尋ねられたノエルは苦笑しながら答えた後リィンに視線を向け
「ああ。メンフィル軍の訓練兵の訓練の中には導力戦車の操縦も訓練の内に入っているからね。多少勝手は違うけど、運転はできると思う。」
視線を向けられたリィンは頷いた。
「よし、それじゃあ早速、お前らに導力車を支給する。外に用意するから付いて来い。」
そしてセルゲイはロイド達から去って行き
「はは……とんだサプライズだな。」
「ええ、課長達も人が悪いわね。」
「これで、市外に出るとき一々バスを待つ必要がなくなったわね。」
「そうですね…………それに自分達が決めた所に止めておけますから街道で何かを探すときにも役に立ちますね。」
セルゲイが去った後ロイドとエリィは苦笑し、エルファティシアとリィンは口元に笑みを浮かべ
「しかし導力車か。僕はあんまり詳しくないけどヴェルヌ社かラインフォルト社のどちらかになるんだっけ?」
ワジはノエルを見つめて尋ね
「うん、自家用導力車といえばその2大メーカーしかないからね。で、ヴェルヌ社の方が老舗でラインナップも豊富なの。小型車から中型車、バスまで手広く扱っているし。」
尋ねられたノエルは嬉しそう表情で説明した。
「ラインフォルト社が出しているのは運搬車やリムジンが多いのよね?」
「ええ、どちらかというと頑丈で高級なものが多いですね。導力列車や導力戦車の技術を転用したものが多いみたいですし。」
「うーん……いきなりで実感が無かったけどちょっとドキドキしてきたな。よし、見に行ってみよう。」
その後ロイド達は外に出て、2台の車の傍にいるセルゲイに近づいた。
「こ、これが…………」
「特務支援課に支給される導力車……」
「へえ……2台も支給されるなんてね。」
車を見たロイドとエリィは驚き、エルファティシアは意外そうな表情をした。
「へえ……2台とも悪くないデザインだね。」
「けど見た事ないタイプだな……」
2台の車を見たワジは口元に笑みを浮かべ、リィンは不思議そうな表情をし
「こ、これって…………ヴェルヌにもラインフォルトにも見えないデザインラインですけど……」
ノエルは真剣な表情で呟き
「クク………正解だ。そいつらの型番はXD-78。リベール製――――ZCF(ツァイス中央工房)の新型だ。」
「ええっ!?」
「ZCFが導力車を開発していたんですか!?」
セルゲイの話を聞いてロイドと共に驚いた。
「そんなに驚く事なのかい?」
「確かリベールが導力技術が一番優れているんでしょう?」
2人の様子を見たワジとエルファティシアは意外そうな表情をして尋ね
「ええ、リベールは国土が険しいこともあって導力車が普及していないの。その代わり、ZCFは世界最高の飛行船メーカーとして知られているんだけど……」
2人の疑問にエリィは答えた。
「そ、そのZCFが導力車を開発したなんて!スペックは!?最高時速はどのくらいですか!?」
一方ノエルは興奮した様子でセルゲイに尋ね
「どうどう、落ち着け。何でも飛行船用の新型エンジンの小型版が搭載されているらしい。最高時速にしたら1500セルジュは固いらしいぞ。」
尋ねられたセルゲイは苦笑しながら答えた。
「す、凄いです……!」
「鉄道以上の速さですか……」
セルゲイの説明を聞いたノエルとロイドは驚いた。
「でも、よくこんな車を2台も手配することが出来ましたね?まだ正式に発売されていない新型みたいですけど………」
「ああ、本当ならお前らに支給されるはずがない代物だ。こいつを融通してくれたのはディーター新市長とヴァイスハイト新局長でな。」
「ディーター市長と局長が!?」
「た、確かにおじさまならZCFとの付き合いもあるから納得ですけど……け、けどまさか局長までZCFと付き合いがあるなんて……」
セルゲイの話を聞いたロイドとエリィは驚き
「ああ。何でも局長はあのラッセル博士の孫娘と知り合いらしくてな。その縁を使ってラッセル博士に直接交渉してもう一台融通してもらったらしい。」
「ええっ!?」
「”導力革命の父”と呼ばれるあのラッセル博士の孫娘と局長が知り合いなのですか……!」
(ラッセル博士の孫娘というと…………”環”や”影の国”の事件に関わったティータ・ラッセルか。フフ、”影の国”の縁を活用しているねぇ。)
さらにヴァイスの予想外の知り合いを知ったロイドとエリィは驚き、ワジは静かな笑みを浮かべていた。
「は~、さすがは天下のIBC総裁と色々と凄い局長ですね!」
「フフ、ここまで用意がいいと逆に警戒しちゃうけどねぇ。」
「まあ確かに………」
一方ノエルは嬉しそう表情をし、ワジは笑顔で言い、ワジの言葉を聞いたリィンは苦笑していた。
「クク、まあその分、働いて返せってことだろう。荷が重いんだったら辞退することもできるぞ?その場合、警察で採用されているヴェルヌ社の汎用車を回してやる。」
「いえ……ありがたく使わせてもらいます。2台とももう動かせるんですか?」
「整備と試運転は済んでいる。ほら、コイツがキーだ。」
ロイドに尋ねられたセルゲイは答えた後ロイドに番号が振られてある車両のキーを2つ渡した。
「……はは……何だかちょっと感慨深いな。」
「そうね…………一課の人達を羨ましがってたのが懐かしいわ。」
(2台か…………これなら今後の仕事でも2チームに分かれての車での移動が可能だから、移動や仕事が効率的にできるわね。)
キーを渡されたロイドは静かな笑みを浮かべ、エリィは頷き、ルファディエルは口元に笑みを浮かべていた。
「フフ、それじゃあ早速、ひとっつ走りしてみるかい?」
「ああ、せっかくだからこれでクロスベル市に戻ろう。ノエル、リィン、運転をお願いできるか?」
「ええ、お任せ下さい!」
「ああ、任せてくれ。」
ロイドに視線を向けられたノエルとリィンは頷いた。
「フッ、そんじゃあ俺も便乗させてもらうとするか。」
その後ロイド達は車両に乗り込み、ノエルが運転する車の後ろをエルファティシアを隣に乗せたリィンが運転して、ノエルが運転する車を付いて行った………………
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