英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第19話
~西通り~
「あ…………」
車の窓から見える特務支援課の裏口付近にある2箇所の車庫を見たロイドは声を上げた。そしてロイド達は車から降りて車庫を見つめた。
「ふむ、いい仕上がりだな。」
「課長、これって……」
「もしかしてこの2台の導力車のための?」
「ああ、スロープ化と駐車スペースの増設工事だ。予算は局長が本部から出してくれた。」
明るい表情をして車庫を見つめるロイドとエリィにセルゲイは静かな笑みを浮かべて答え
「へえ……いいですね!あれだけのスペースがあれば整備とかもできそうですし!」
「フフ、導力車が2台も使える生活か。なかなか潤いがありそうだね。」
ノエルは嬉しそう表情をし、ワジは静かな笑みを浮かべ
「はは……キーアが飛び上がって喜びそうだな。」
ロイドも静かな笑みを浮かべていた。すると
「うわ~っ、なにこれ!?」
「キレイな車……」
リュウとアンリが興奮した様子でロイド達に近づいた。
「やあ、リュウにアンリ。」
「ふふ、また会ったわね。」
「すっげー!こんなクルマ見た事ない!もしかしてコレ、兄ちゃんたちが買ったの!?」
「はは、そんな訳ないって。でも一応、支援課で使えることになったんだ。」
「ホ、ホントですか!?」
「兄ちゃんたち、いつの間にそんな出生したんだよっ!?」
ロイドの話を聞いたアンリとリュウは驚いた。
「いや、別に出世したわけじゃないんだけど……そういえば今日はキーアと一緒じゃないのか?」
「ひょっとしてモモちゃんと一緒かしら?」
「いや、わかんねーけど。日曜学校から一緒に戻ってきたわけじゃねーし。」
「え、そうなのか?」
リュウの話を聞いたロイドは意外そうな表情をした。
「キーアちゃん、マーブル先生に用事があるって残ったんです。ひょっとしたらまだ大聖堂にいるのかも……」
「そうなのか……」
「どうしたのかしら……」
そしてアンリの話を聞いたロイドとエリィは考え込んだ。
「やれやれ。相変わらず過保護だねぇ。」
「よっぽどキーアちゃんが可愛くて仕方ないんですね。」
「ハハ、まるで本当の親子みたいだな。」
「フフ、確かにそうね♪」
ロイド達の様子を見たワジ達はそれぞれ口元に笑みを浮かべて言い
「い、いや~……そんな事はないと思うけど。」
「え、ええ。保護者として常識の範囲よ。」
4人の言葉を聞いたロイドは苦笑し、エリィは頬を赤らめて言った。
「クク、そんなに心配なら大聖堂に迎えに行ったらどうだ?せっかく足もあることだしな。」
「あ、それもそうですね。」
「ノエルさん、お願いできる?」
「ええ、お安い御用です。」
セルゲイの言葉にロイドは頷き、エリィはノエルに頼み
「それじゃあ俺は自分が乗って来た車を車庫に入れるておくよ。」
リィンはある事を申し出
「ああ、頼む。それと車庫入れが終わったら先に休んでいていいよ。エルファティシアさん、リィンが車庫入れする時、後ろの誘導をお願いしてもいいですか?エルファティシアさんも車庫入れが終わったら休んでもらって構いませんので。」
申し出を聞いたロイドは頷いた後エルファティシアに視線を向け
「わかったわ。」
視線を向けられたエルファティシアは頷いた。
「え、なに!?キーアを迎えに行くの!?オレもオレも!いっしょに乗せてくれよ!」
一方ロイド達の会話を聞いていたリュウは興奮しながら言い
「ちょ、ちょっとリュウ!おじさんに早く帰って来いって言われてたんじゃないの?」
「うぐっ、そうだった。今日は珍しくねーちゃんが帰ってるんだよな……」
アンリは慌てながらリュウに忠告し、忠告されたリュウは唸った。
「はは、だったら早く帰ってやらなくちゃな。また今度、2人とも乗せるからさ。」
「ぜ、絶対だからな!」
「それじゃあボクたちこれで失礼します。」
「ふふ、気を付けて帰ってね。」
そしてリュウとアンリはロイド達から去って行った。
「よし、そんじゃあとっとと行って来い。俺は一足先に戻るからな。」
「はい、了解しました。」
「それでは行ってきます。」
2人が去るとセルゲイもロイド達から去って、支援課のビルに向かった。
「ふふ、それじゃあ大聖堂に向かいましょうか。ここからだと、中央広場から歓楽街方面に抜けますね。」
「わかった、お願いするよ。……うーん、キーアが驚く顔が目に浮かぶなぁ。」
「ふふっ、あの子導力車が大好きだものね。」
「やれやれ。ホント親バカだなぁ。」
その後ロイド達を乗せた車は大聖堂に向かって行った。ロイド達の車が大聖堂に向かったその頃、七耀教会のシスターがパン屋から出て来てどこかに向かい
「…………グルル…………」
その様子を支援課のビルの屋上にいたツァイトは唸りながら見つめていた。
~マインツ山道~
「さてと……キーアはまだいるのかな?」
山道の端に車を止め、車から仲間達と共に出てきたロイドは呟き
「とにかく日曜学校の教室に行ってみましょう。」
エリィは提案した。
「やれやれ、まさか教会に僕が来ることになるなんてね。」
一方ワジは溜息を吐き
「ワジ君って礼拝とか全然行ってなさそうだもんね。」
ワジの言葉を聞いたノエルは呆れた表情をしていた。
「別に女神は嫌いじゃないけど昔から教会の空気は苦手でね。こう、ムズ痒くなってこないかい?」
「宗教がかった不良グループを率いてたくせによく言うなぁ……」
「よくケンカで『聖戦』とか言ってなかったかしら?」
そしてワジが呟いた言葉を聞いたロイドとエリィは呆れた表情でワジを見つめ
「フフ、あれはどちらかというとアッバスの趣味なんだけど。」
見つめられたワジは静かな笑みを浮かべて答えた。すると
「……あの。」
1人の女性の声が聞こえ
「え……」
「あら……?」
声を聞いたロイド達が振り向くとシスターがロイド達に近づいてきた。
「突然、すみません。クロスベル大聖堂というのはこちらで宜しいのでしょうか?」
「あ、はい、そうですけど。(大きなトランクだな……)」
シスターに尋ねられたロイドは頷いた後、シスターが持つ大きなトランクを見つめて内心驚き
(………何?あのシスターは……!……何故、あのシスターがこのクロスベルに来た……?エリィの話では”星杯騎士”はクロスベルに来られないという話なのに……)
(あのシスターはティオが持っていた”影の国”で撮った写真の中にいたシスター………という事は彼女があの”星杯騎士”なのかしら?七耀教会で戦闘能力を持つ者達はその集団だという情報だし……)
メヒーシャはシスターを見て驚き、ルファディエルは真剣な表情で考え込んでいた。
「リ、リースさん!?」
「エリィさん……どうもお久しぶりです。そういえばクロスベルの出身と仰っていましたね。」
一方エリィとシスター―――リースは互いの顔を見て驚いていた。
「ええ……!ふふっ、まさかリースさんとこんな場所で再会できるなんて。」
「えっと……エリィの知り合いなのか?――――って!よく見たら貴女はティオが持っていた”影の国”で撮った写真の中にケビン神父と一緒に映っていたシスター……!」
リースと仲良さげに会話をしているエリィを見たロイドは不思議そうな表情をした後リースの顔をよく見て驚いた。
「ええ、私が各地に留学していたのは話したと思うけど……2年前、アルテリア法国に留学した時にお世話になったの。」
「アルテリア法国……」
「へえ、たしか七耀教会の本拠地がある場所だったかな?」
「ええ、その通りです。―――初めまして。リース・アルジェントです。この度、クロスベル大聖堂に赴任することになりました。よろしくお願いします。」
「こ、こちらこそ。」
「よろしくお願いします。」
リースが名乗るとロイドとノエルは会釈をした。
「そうですか……リースさんがクロスベルへ。フフ、ティオちゃんや局長が知ったら驚くでしょうね。」
「そういえばティオさんは仕事の関係でクロスベルに行くとおっしゃっていましたが、まさか警察に出向とは。それより局長という事は警察局長ですよね?何故クロスベルの警察局長が私の事を……?」
エリィの話に頷いたリースはある事を思い出して不思議そうな表情をし
「フフ、新局長の名前はヴァイスハイト・ツェリンダー局長です。リースさんならこの名前に聞き覚えはあると思いますが。」
「え!どうしてヴァイスさんがこの時代に……!?」
エリィの話を聞いて驚いた。
「何でも生まれ変わってこの時代にいるそうです。」
「そうですか……ヴァイスさんが。フフ、ひょっとすればリセルさんも生まれ変わっていそうですね。」
エリィの説明を聞いたリースは静かな笑みを浮かべて頷いた後、微笑んだ。
「リセルさん……何でも話によれば局長の正妻の方だったそうですけど一体どんな方だったんでしょうね……?………………あら?そう言えばリースさんって…………」
リースの話を聞いたエリィは呟いた後ある事を思い出して不思議そうな表情をし
(……エリィさん。一つ聞きたいことがあります。)
エリィの様子を見たリースはエリィに近づいて小声で話しかけた。
(はい、何でしょうか?)
(私の身分はティオさんやヴァイスさんは明らかにしましたか?)
(い、いえ……)
(そうですか…………なら、一つお願いがありまして……私の身分は他言無用にしていただけませんか?)
(……あ……や、やっぱりそうですよね。その……何か事情があって赴任を?)
(ええ、いずれエリィさんやティオさん達には詳しいことをお話します。クロスベルの状況についてお聞きしたい事もありますし。)
(わ、わかりました。)
「えっと、エリィ?」
小声で会話している2人を見たロイドは不思議そうな表情でエリィを見つめ
「あはは、何でもないの。」
見つめられたエリィは苦笑しながら答えた。
「着任の挨拶があるので私はこれで失礼します。……そういえば皆さんも大聖堂へ用事が?」
「えっと、知り合いの子を迎えにきたんです。多分、日曜学校の教室にいると思うんですけど……」
「そうですか。……それではまた。」
そしてリースロイド達から去って行った。
「何か独特の雰囲気を持ったシスターさんだったな……すごく落ち着いていたけど俺達よりも年上なのか?」
「私の一つ上だったから19歳のはずよ。アルテリアに滞在していた時にたまたま知り合って……ふふ、色々と美味しいお店に連れて行ってくれたわ。」
「美味しいお店、ですか?」
エリィの話を聞いたノエルは不思議そうな表情で尋ねた。
「ええ、ああ見えて食べる事が大好きな人なの。クロスベルに来たんだったら良い店を紹介しなくちゃ。」
「ふふっ、さぞかし紹介しがいがありそうですね。」
「なあ、エリィ。一つ聞きたいんだけどいいか?」
「?何かしら?」
「リースさんも”星杯騎士”なのか?」
「ええっ!?どうしてそう思ったの?」
ロイドに尋ねられたエリィは驚いた後尋ね
「ほら……ティオが持っていた写真に写っていたじゃないか、あの人。あの人の隣に写っていた神父の方とハルトマン元議長達を捕まえる際に出会ってさ。その時の神父の方、”星杯騎士”って名乗っていたし。」
「う~ん、それは私にもわからないわ。”星杯騎士”って七耀教会の中では機密の集団だから例え彼女が”星杯騎士”だろうと関係のない私には名乗らないでしょうし……第一クロスベルはエラルダ大司教の意向で”星杯騎士”は派遣されないから違うと思うわよ?」
「そうか……」
冷や汗をかきながら説明するエリィの話を聞いたロイドは考え込み
「ワジ、どうした?じっと見つめたりして……」
微動だにせずリースが去った方向を見つめているワジに気付いて声をかけた。
「……いや。面白い気配をまとったお姉さんだと思ってね。」
「!?」
「面白い気配……?」
「確かにシスターだけあって清らかな感じはしたけど……」
ワジが呟いた言葉を聞いたエリィは驚き、ロイドは首を傾げ、ノエルは不思議そうな表情で言った。
「いや、どちらかというとタダ者じゃない雰囲気かな。……どうやら誰かさん達は何か知っているみたいだけど。」
「な、何のことかしら?」
そして口元に笑みを浮かべて言うワジに見つめられたエリィは冷や汗をかきながら笑顔で答え
「???」
「……………………まあいいや。そろそろ日が暮れる。早くキーアを迎えに行こう。」
エリィの様子を見たノエルは首を傾げ、ロイドは真剣な表情でエリィを黙って見つめた後気を取り直して提案し
「そ、そうね。(ロイドとワジ君、鋭すぎるわ……)」
ロイドの提案にエリィは疲れた表情で頷いた。
その後ロイド達は大聖堂に向かい、キーアがいると思われる日曜学校の教室に入った…………
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