英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第71話
補給を終えたロイドが1階で買った飲み物を飲み終わるとロイドのエニグマが鳴りはじめたのでロイドは通信を始めた。
~IBC~
「はい、特務支援課、ロイド・バニングスです!」
「ああ、私だ。ディーター・クロイスだ。すまない、警察本部からの連絡あたりと勘違いさせたかな?」
「い、いえ………もしかして、どこかと連絡が取れたのでしょうか?」
「いや、残念ながらまだだ。実は、ゲート前の警備員から気になる報告があってね。休憩中に悪いが、私の部屋まで来てくれないだろうか?」
「わかりました。すぐに伺います。」
そしてロイドは通信を終え
(警備員からの報告……嫌な感じがするな。一応、装備だけでもちゃんと確認しておこう。)
真剣な表情で考え込んだ後、装備を確認し、ディーター総裁がいる部屋に向かって入るとエリィは既に待機していた。
「―――失礼します。」
「ロイド……!」
「おお、来てくれたか。」
「一体、何があったんですか?」
「ああ、警備隊の隊員が2人程ゲート前に来たらしい。」
「それで……!?」
ディーター総裁の話を聞いたロイドは表情を厳しくして尋ねた。
「今の所、攻撃する事もなく留まっているだけみたいですわね。まあ特殊合金製のゲートですから突破も難しいでしょうけど。」
「そうですか…………俺達がここにいるとバレた可能性は高そうだな。」
「……ええ………」
マリアベルの話を聞いたロイドは推測し、エリィは頷いた。
「……失礼します。」
するとその時、ティオ達が部屋に入って来た。
「ティオ、ランディ、レン、アーシアさん。」
「何でも警備隊員がゲート前に来たらしいな?」
「ああ、今の所、何もしていないみたいだけど………」
(不味いわね……ゲートが閉じられている事で恐らく私達がいる事に気づいたのでしょうね……)
ランディの確認にロイドが答え、ルフィナが厳しい表情で考え込んだその時、ディーター総裁の傍にある通信機がなり、ディーター総裁は通信を始めた。
「―――私だ。………なに……ふむ………ふむ……………………なんだと?」
(………どうしたんだ………?)
(嫌な予感がするわね……)
どこかと通信をして眉を顰めているディーター総裁を見つめていたロイドは厳しい表情をし、エリィは考え込んでいた。そしてディーター総裁は通信を切って通信内容をロイド達に伝えた。
「………ゲート前の警備隊員が妙なことをし始めたらしい。円筒状の装置のようなものを設置しているとの事だが……」
「!!」
「まさか……」
「指向性の導力爆弾か!?」
ディーター総裁の話を聞いたレンは血相を変え、ティオは表情を厳しくし、ランディは叫んだ。
「な、なんだそれは!?」
「軍隊で使われている破壊工作用の導力爆弾だ!」
「特殊合金製のゲートでもさすがに保たかないかと………」
「そんな……」
「ゲートを破壊されて建物内に警備隊員がなだれ込んで来たら最悪の事態ね。」
「くっ、そんなものが………」
「……操られているくせに知恵が回りますのね。」
ランディとティオの説明を聞いたエリィは驚き、レンは真剣な表情で呟き、ディーター総裁は唸り、マリアベルは厳しい表情で呟いた。
「……―――仕方ない。ランディ、打って出よう。」
するとその時考え込んでいたロイドはランディに視線を向けて提案し
「ああ………それしか無さそうだな。」
ロイドの提案にランディは頷いた。
「ロイド君……!?」
「あなたたち………無駄死にをするつもり!?」
2人の会話を聞いたディーター総裁は驚き、マリアベルは厳しい表情で尋ねた。
「いや、その導力爆弾の設置を妨害するだけです。」
「ま、そのまま小競り合いになっちまう気はしますけど。」
「勿論、私達も行くわよ。」
「うふふ、当然レンも行くわよ。」
「メンバーとして当然です。」
「私も出るわ。セルゲイ警部からも貴方達の事を頼まれているしね。」
「ああ………サポートは頼んだ!」
「エリィ、レンさん、ティオさん、アーシアさん………」
エリィ達の言葉を聞いたマリアベルは真剣な表情で女性陣を見つめ
「ふふっ………これが私の仕事だから。」
「……心配ご無用です。」
「まあ、レンとアーシアお姉さんが関わった”リベールの異変”での修羅場と比べれば、天と地の差よ♪」
「それ以前に比較対象が間違っているでしょう……」
自分達の心配は必要ない事を伝える為にエリィは微笑み、ティオは静かな表情で答え、小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンにルフィナは呆れた表情で指摘した。
「無論、俺達も無駄死にするつもりはありません。警察本部か副司令の部隊か……応援が来るまでの辛抱ですから。」
「ゲート前なら地形の利もある。ま、俺達に任せて下さいよ。」
「………わかった。女神の加護を―――くれぐれも気を付けたまえ!」
そしてロイド達は総裁室を出て、エレベーターに向かおうとしたが、その時マリアベルの私室からキーアが出てきた。
「あれー?………ロイド達、どこ行くのー?」
「キーア……」
「はは……ちょいとお仕事でな。」
「ふぅん。キーアも付いてっていい?」
ランディの話を聞いたキーアは無邪気な笑顔を見せて尋ねたが
「そ、それは………」
「………えっと………」
エリィとティオは言い辛そうな表情になって言葉を濁し
「……だめだめ。子供はもう寝る時間だろう?シズクちゃんだってちゃんと寝てるんだから―――」
ロイドはキーアをいさめた後話し続けた。するとその時シズクがキーアの背後に現れた。
「シズクちゃん……」
「……起こしちまったか。」
「ご、ごめんなさい……目が覚めてしまって……」
「いや……うるさくしてゴメンな。―――マリアベルさん。2人のことを頼みます。ちゃんと寝かせておいてください。」
謝罪するシズクにロイドは微笑んだ後、自分達を見送りについてきたマリアベルに視線を向けた。
「……ええ、わかりましたわ。―――さあ2人とも。ココアでも淹れてあげますわ。暖かくしてお休みなさい。」
「え、え……」
「………………………」
そして戸惑うキーアと黙り込んでいるシズクはマリアベルに押されるかのように、マリアベルの私室に入り、ロイド達はエレベーターに乗って降りはじめた。
「………………」
「絶対に……守らないとね!」
「……はい……!」
エレベーターが下に向かっている間ロイドは静かな笑みを浮かべて黙り込み、エリィの言葉にティオは力強く頷いた。
「一応言っておくが……クロスベル警備隊は精鋭だ。操られているとはいえ、薬の影響も馬鹿にはならねぇ。多分、今までで一番、厳しい戦いが待ってるはずだ。」
「ああ……わかってる。俺達のチームワークが試されるってことだな。その……ルフィナさん。ルフィナさんは――――」
ランディの忠告に頷いたロイドは心配そうな表情でルフィナを見つめてある事を口にしようとしたが
「『自分達がやられた時に備えてビル内に残っていて欲しい』なんて頼みは聞かないわよ。一応私は今は特務支援課の指揮下――――セルゲイ警部の指示である『自分達の代わりにロイド君達をフォローする事』に従って動いているのだから。」
「う”っ………」
「クスクス、先回りされちゃったわね♪――――支援課のビルが襲撃される直前に市外の街道や山道に潜伏しているジョーカーお兄さん達や”西風”の二人に状況を手短に伝えて、救援に来るように指示をしておいたから、警備隊の動きでレン達がどこにいるかわかったら、援軍に来てくれるから、それまでに耐え抜けば警察本部やタングラム門からの応援が来るまで確実に凌げるわ。」
ルフィナが先回りして自分の頼みを断り、それを聞いて唸り声を上げているロイドをからかいの表情で見つめていたレンは気を取り直してロイド達を見回して答えた。
「フフ、まさかこの状況が起こる事も予想して既に手を打っているなんて、さすがレンちゃんね。」
「……ですね。ミシェラムでわたし達を助けてくれたあの人達が来てくれたら冗談抜きで助かりますね。」
「というかレンちゃん……貴女、また猟兵を雇っていたのね……まさかとは思うけど”リベールの異変”の時同様”銀”も雇っていないでしょうね?」
レンの説明を聞いて微笑んだエリィの言葉にティオは静かな笑みを浮かべて頷き、ルフィナは疲れた表情で溜息を吐いた後ジト目で訊ねた。
「うふふ、ルフィナお姉さんったらおかしな事を言っているわね。”銀”の”今の雇い主”は”黒月”である事はルフィナお姉さんも知っているでしょう?まあ、”黒月に雇われる前”は誰かに雇われていたら”銀の本当の雇い主”はわからないけど♪」
そして笑顔を浮かべて答えたレンの答えを聞いてレンが銀を雇っている事の可能性もある事を察したロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
(今の言い方だと銀もレンちゃんが雇っているのではないかと思うわよね……?)
(同感です。それによく考えてみたら銀さんは限られた人達しか所有していないラインフォルトグループが開発した新型戦術オーブメント――――”ARCUS”を所有しているのですから、マジで銀さんと繋がっているんじゃないですか?)
疲れた表情をしたエリィの小声に同意したティオはジト目でレンを見つめた。
「ハア……それで?『西風の二人』と言っていたけど、もしかしてその二人は”リベールの異変”の時に”西風の旅団”が派遣した罠使い(トラップマスター)と破壊獣かしら?確か”西風の妖精”は”西風の旅団”解散後サラに保護されたとの話だし。」
「ええ、その二人よ。”闘神の息子”に加えてあの二人も加わったら、鬼に金棒よね♪何せ”大陸最強”と恐れられている猟兵団の隊長クラスが揃って戦うのだし。」
「マジでその名前で呼ぶのは止めろっつーの。……それ以前にシャクに触る話だがミシェラムで”破壊獣”も言っていたように、今の俺は猟兵時代の俺と比べればしばらく”猟兵”として戦っていないブランクの影響で腕が落ちているから、ぶっちゃけ今の俺はあの二人よりも確実に弱いぞ。」
ルフィナの問いかけに答えたレンに意味ありげな笑みを浮かべて見つめられたランディは疲れた表情で溜息を吐いた後話を続けた。
「今でも十分強いのに、それでも腕が落ちている状況なのか………」
「ハハ……せめて、猟兵時代に愛用していた本来の得物が手元にあったらちょっとはマシになるんだがな。ま、無い物ねだりをしても意味はねぇしな。」
驚きの表情のロイドに見つめられたランディは苦笑しながら答えた。
「ランディ………――まずは導力爆弾の撤去。そのままゲート前で隊員達の突入を阻止する。女神の加護を!くれぐれも気を付けてくれ!」
ランディの様子を心配そうな表情で見つめていたロイドだったがすぐに気を引き締めて仲間達に号令をかけ
「おおっ!」
「「「ええ!」」」
「はい………!」
ロイドの号令に仲間達は力強く頷き、1階に降りると急いで外へと向かった。そして警備隊員達が円筒状の物体をゲート前に設置し終えたその時!
「させるか!」
「ヒャッホー!」
ロイドとランディが強襲して警備隊員達を吹っ飛ばした!吹っ飛ばされた警備隊員達は立ち直った後武器を構え、ロイド達に襲い掛かった!
こうしてロイド達のIBC防衛戦が始まった――――!
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