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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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外伝~相棒~

~夜・IBC~



「―――よう、相棒。お疲れさん。マジでとんでもない事になっちまったなぁ。」

「………………………」

軽く手を挙げて近づいてきたランディの言葉を聞いたロイドは呆けた表情でランディを見つめ

「ん、なんだ?何か変な事を言ったか?」

ロイドの様子を見たランディは不思議そうな表情で尋ねた。

「い、いや………でも、率直な所、ランディはどう思う?警備隊や悪魔に本格的に攻められたらここがどこまで保つのか………」

「ま、正直厳しいだろうな。悪魔達の強さは僧院で思い知ったし、クロスベルの警備隊はれっきとした軍事組織だ。戦車や飛行船こそ持ってねぇが練度も高いし、個人レベルじゃ最高の武装が供給されている。いくら最新のビルとはいえ、要塞でもない民間施設がそうそう保つもんじゃねぇだろ。」

「やっぱりそうか………となると、何とかして警察本部や遊撃士達、後はセティ達とも合流して連携する必要があるし、できればリウイ陛下達やさっき東通りで助けてくれた剣士の人達―――セリカさん達にも協力をお願いする必要があるな………せめて通信が回復するまではこのビルを守りきらないと。」

「ま、そういうこった。………ったく、こんな事ならアレを持ってくるんだったな。」

「アレ?」

ランディの言葉を聞いたロイドが不思議そうな表情をしたその時

「……………………俺が2年前まで使っていた導力ライフルだ。とてつもない火力を持った、な。」

ランディは考え込んだ後ロイドに背を向けて話し

(へぇ………それは初耳だねぇ。あんだけライフルを使うのを嫌がっていた癖に………)

ランディの言葉を聞いたエルンストは興味深そうな表情になり

「そうか猟兵時代の…………”赤い星座”だったか。あれから少し調べたけどその筋ではかなり有名みたいだな?」

ロイドは察した後考え込み、そして尋ねた。

「ハハッ………”悪名高い”の間違いだろ。大陸西部最凶の猟兵団……戦場を蹂躙する赤き死神……ちょっと前には、共和国方面で”黒月”とやり合ってたらしい。それこそ正真正銘の殺し合いをな。」

「……そうなのか……………………………」

(クククク……いいね、いいね!大蛮族の長にして”死神”の異名を持つあたいの契約者としてピッタリな過去だよ!)

ランディの話を聞いたロイドは呟いて考え込み、エルンストは不敵な笑みを浮かべていた。そしてランディはロイドに振り向いて苦笑しながら言った。



「………悪ぃ。引かせるつもりじゃなかった。ま、警備隊が本気を出したらかなりヤバイことになるだろう。しかも配備されたばかりって話の新型装甲車まで持ち出されたら―――」

「―――なあ、ランディ。前に言った事だけど………撤回させてもらってもいいかな?」

「へ………」

自分の話を中断し、予想外な事を言ったロイドの言葉を聞いたランディは呆けた。

「旧市街のレースの後の話さ。兄貴みたいな一人前になるまでランディの過去は聞かないっていう。」

「あ…………」

「―――前にも話したけど兄貴は俺にとってヒーローみたいな存在だった。課長やダドリーさん、アリオスさんも言ってたけど……そこにいるだけでどんな逆境も何とかしてくれるって思わせてくれるような人だった。」

「……らしいな。ったく、どんだけ化物じみたヤツだっつーの。」

ロイドの話に頷いたランディは溜息を吐いた。

「はは、別にそこまで腕っ節が強かったわけじゃないと思うけど。………最初はさ、そんな兄貴の代わりにならなきゃいけないと思ってたんだ。じゃないと、クロスベルに俺が戻ってくる資格はない…………ルファ姉からは兄貴になる道ではなく、俺自身としての目指す道を目指せばいいって言ってたけど、俺はそう思えなくて、死にものぐるいで捜査官資格を取って今まで頑張ってきたけど……やっぱり………どこか無理があったみたいだ。多分、ルファ姉は最初からそれがわかっていたんだろうな…………」

(………例え兄弟とはいえ、決して同じ人物にはなれないわ。)

ロイドの話を聞いていたルファディエルは静かな表情で呟き

「………そうか…………しかし、その割にゃ妙にスッキリした顔をしてやがるな?」

ランディは頷いた後口元に笑みを浮かべて言った。

「ハハ、まあね。……そこまで行くと逆に変な風に前向きになってさ。俺は兄貴みたいには凄くなれない……かと言ってルファ姉みたいな正面からぶつかる兄貴とは真逆の凄さ―――智謀や策によって相手を嵌めるような活躍で凄くなれないし、多分俺には合ってない………―――だったら、俺は俺として凄くなれればいいんじゃないかと思ったんだ。」

「!」

そしてロイドの言葉を聞いたランディは目を見開き

「まあ、どんな風に凄くなるのかはまだわからないけど………キーアも引き取ってみんなも一応引っ張ってる立場でウジウジ悩んでもいられないだろう?幸い、ランディ達も助けてくれるし、俺が凄くなくても何とかやれる………だったら今はその状況に甘えさせてもらおうと思ってさ。」

(フフ、ちゃんと自分の事をわかっているわね。)

「はは………なんだよお前………もう十分、一人前のツラしてんじゃねーか。」

ロイドの話を聞いたルファディエルは微笑み、ランディは笑った後感心してロイドを見つめた。

「ランディはさ、わかってたんだろう?兄貴の背中を追い続けてるだけじゃいずれ俺が行き詰まるって………」

「………まーな。だが、そうして挫折すんのもお前の糧になるんじゃねーかと思った。しかし、まさか挫折する前に自分で気付いちまうとはなぁ。」

「はは、俺一人だったら気付けなかったと思うけどね。―――だから、あの時、カッコ付けて聞かなかったことを聞いてみたいと思ったんだ。兄貴みたいに俺の成長を見守ってくれた誰かさんのことをもっと知りたいと思ったから。」

「………ハハ………………」

ロイドの言葉を聞いたランディは寂しげな笑みを浮かべた後ロイドに背を向けて黙り込んだ後、ロイドに背を向けた状態で話しかけた。



「―――なあ、ロイド。お前、俺が今までどれだけ戦場で敵を殺してきたと思う?」

「………想像も付かないな。多分、俺の生きていた世界とはかけ離れた所の話だろうから。」

「クク、正解だ。俺も正直覚えてねぇくらいだ。……物心付いた時から戦場という世界で生きてきた。4つの時にナイフを渡され、6つで拳銃の撃ち方を習った。……実戦は9歳だ。親父の部隊で斥候として働き、ふたりの敵兵を殺した。そして12で小隊を、14で中隊を任されて………5年間………犬のように戦場を駆け回った。」

「…………………………」

(ククク………あたいの予想以上の修羅場を潜っているじゃないか!)

ランディの話を聞いたロイドは目を見開いて黙り、エルンストは好戦的な笑みを浮かべた。

「………だが、俺は逃げた。ガルシアのオッサンみてぇに望まれて抜けたわけじゃねえ………クソみたいな殺し合いに嫌気が差したわけでもねぇ……ただ、何かを見失って戦場からさ迷い出てきただけだ。腐った死人(しびと)みてぇにな。」

「…………………………」

「その後、あちこちさ迷って、最後にクロスベルに流れ着いて………警備隊に潜り込んだはいいが、ライフル使うのを拒否ってたら阿保司令にクビにされかけて………そして課長に拾われて………何故かこんな場所に立っている。それが俺………ランドルフ・オルランドって男だ。」

「ランディ……ありがとう。話してくれて。」

「ったく………お前、Mっ気でもあるんじゃねえか?どうしてこんなクソみてぇな野郎の過去をわざわざ知りたがるんだか……引いてねぇとは言わさねぇぞ?」

自分の話を聞き、予想外の反応をしたロイドにランディは振り向いてロイドを見つめて溜息を吐いた後、複雑そうな表情をした後、真剣な表情で尋ねた。

「はは………引いたといえば引いたけど。それでもやっぱりどうしても知りたかったんだ。それに、俺の事情ばっかりランディに知られているのもシャクだったし………お互いをある程度知ってこその”相棒”なんじゃないか?」

「え………」

そしてロイドの答えを聞いて呆けた表情をした。

「だってランディが”相棒”って言ったんだろう?さっき俺に声をかけた時に。」

「いや、あれは挨拶代わりっつーか………え、あれ。俺、今までお前をそんな風に呼んだことなかったっけ………?」

「……多分。えっと、だからさっきはちょっと嬉しかったんだけど。」

「……………」

ロイドの答えを聞いたランディは黙ってロイドを見つめ続けた後

「ククッ…………はははははっ!」

大声で笑った。



「そ、そんなに笑うことないだろ?自分でもちょっと気恥ずかしいんだからさ。」

(おお!まさか今の言葉に恥ずかしさがロイドにあったとは……意外だ。)

笑っているランディに言ったロイドの話を聞いたギレゼルは驚いた後、意外そうな表情をした。

「クク……それが理由でここまで引っ張ったのかよ……しかも先に自分曝け出して俺を追い込みやがるとは……いやいや、Mと思わせておいて実はSってパターンだったとはなぁ。」

「なんだそりゃ………」

笑いながら言ったランディの言葉を聞いたロイドは戸惑った。

「クク………さてと。俺は念の為1階のエントランスに降りておくことにするぜ。」

「わかった、俺の方は補給と装備の確認をしておくよ。」

「おお、任せたぜ。」

ロイドの言葉に頷いたランディは去りかけたが、ロイドに背を向けたまま立ち止まり

「―――警備隊と悪魔達が押し寄せたら最後まで動けるのは俺らや俺以上の戦場を経験したエルンストやルファディエル姐さん達だろう。お嬢やティオすけにはあんま無茶させたくないしな。」

真剣な表情でロイドに警告した。

「………ああ、わかってる。悪魔の相手は空中戦もできるルファ姉達にしてもらって、警備隊の相手は俺とランディの2人で何とか喰い止める必要があるな。」

「背中は任せたぜ―――相棒。」

「あ………―――了解!」

そしてランディの言葉にロイドは一瞬呆けた後力強く頷き、ランディはロイドから去って行ってエレベーターで下に降り、ランディと入れ違いになるかのようにエリィがロイドに近づいてきた………


 
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