英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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外伝~エリィの告白~
~夜・IBC~
「ロイド………」
「エリィ、どうしたんだ?」
「うん……ちょっとこれからの事を思うと不安になって貴方と話したくてね………貴方を探してたの。」
「そっか。………改めて言うのも何だけど大変な事になったよな。市内にいる人達………無事でいるといいんだけど。」
「そうね…………………騒ぎに気付いたセティちゃん達なら市内にいる人達を守ってくれると思うし………それにお姉様が傍にいるのだから、リウイお義兄様達もきっと市民達を守ってくれるでしょうね…………………………………」
ロイドの言葉に頷いたエリィは静かな表情で呟いた後黙り込んだ。
「……エリィ。マクダエル市長なら大丈夫だ。警備隊や悪魔を操る黒幕にも市長を害するメリットはないさ。それに今、クロスベル市にはリウイ陛下達が滞在しているだろう?彼らが騒ぎに気付いてくれれば、マクダエル市長も助けてくれるよ。エリィやセシル姉の事を大切にしている人だし。………何とかこの事態を打破して市長たちを解放しよう。」
「ロイド……うん、ありがとう。そうよね、おじいさまは何度も紛争を経験されている………この程度の危機くらい何とか切り抜けられるはずよね。それにリウイお義兄様達もいるし、大丈夫よね。」
「ああ………あの人なら絶対に大丈夫さ!」
「……ふふっ………………あーあ、何で貴方はそんな風に私のことがわかっちゃうのかしら。」
ロイドの励ましに微笑んだエリィは溜息を吐いて呟き
「え。」
エリィの言葉を聞いたロイドは呆けた。
「………考えてみれば不公平よね。私はもう………色々なものを貴方に曝け出してしまった。なのに貴方の方は…………」
「え、えっとエリィ………?」
そしてジト目のエリィに見つめられたロイドは戸惑い、エリィは黙り込んだ後静かな口調である事を尋ねた。
「―――ねえ、ロイド。お兄さんやルファディエルさんの背中、少しは近づいてきた?」
「あ………」
エリィの問いかけにロイドは呆けた表情で声をあげた。
「たぶん貴方は………お兄さんの背中をずっと追い続け………ルファディエルさんの警察内での功績を知ってからはルファディエルさんも追い続けたのでしょうね。貴方がよく言っている”壁”という言葉………あれはひょっとしてお兄さんやルファディエルさん自身の事を指してもいるんじゃないかしら?」
「………ああ、多分そうだと思う。…………………」
エリィに尋ねられたロイドは頷いた後黙り込み、近くの手すりに近づいて、手すりにもたれかかって話し始めた。
「―――昔からさ、兄貴は俺のヒーローでルファ姉はもう一人の憧れの人なんだ。兄貴はどんな逆境にもめげずに何でもやり遂げる凄いヤツで、ルファ姉は厳しいけど、優しい人で俺の知らない事は何でも教えてくれる人………そして兄貴とはまた違った”凄さ”でどんな難事件もやり遂げる凄い人。………だけど3年前………兄貴の背中がなくなって途方にくれてしまって………多分、俺は逃げたんだと思う。」
「え………」
「だって俺は………兄貴みたいになれる自信が無かったから。兄貴みたいに色んなものを守れる自信が無かったから………だから………ルファ姉の俺が一人前になるまで見守ってくれるという優しさに甘えて、知らない町へ逃げ出したんだ。」
「………でも、貴方はクロスベルに戻って来た。それは、どうして?」
ロイドの話を聞いたエリィは優しげな微笑みを浮かべて尋ねた。
「はは、やっぱり………この街が好きだったからかな。兄貴や、セシル姉やルファ姉。一緒に過ごした友人たち………他の町で暮らしていてもやっぱりそれは俺の一部で、忘れることはできなかったから………だから俺は無理して警察学校のうちに捜査官資格を取ったんだと思う。少しでも兄貴に追いつけないと………兄貴の代わりになれないとクロスベルに戻ってくる資格はないと思ったから………」
「で、でもそれで本当に捜査官資格を取るんだもの。お兄さんに負けないくらい素質はあったのでしょう?」
「いや……白状するとそれもズルしたようなものさ。なにせ規格外ではあるけど捜査官としては一流の人間をずっと見てきて………一課をも超えるルファ姉からも色々教わっていたから………兄貴やルファ姉だったらどうするだろう、兄貴だったら絶対に諦めない、ルファ姉はこの場合、どうするか………そう自分に言い聞かせて俺は何とかやって来れたと思う。でも……それは俺が、俺自身として強くなれたわけじゃない。」
「…………………………」
(…………………………)
ロイドの話を聞いたエリィは真剣な表情で黙り込み、ルファディエルは目を伏せて静かな様子を纏って黙り込んでいた。
「………最近になってやっと気付けた気がするんだ。兄貴やルファ姉の背中を追い続けるだけじゃ本当の意味で強くはなれないってね。はは、それに気付けるのにどれだけかかってるんだよって話なんだけど…………」
「…………ロイド。」
ロイドが苦笑していると、エリィがロイドを背中から優しく抱きしめた。
「エ、エリィ………?」
(お!?またもや面白そうな事が起こる予感!)
エリィの行動にロイドは戸惑い、ギレゼルは興味深そうな表情になった。
「………ねえ、ロイド。私はガイさんを……貴方のお兄さんを知らないし、ルファディエルさんの全ても知らない。でも、一つ言える事があるわ。今まで私達を引っ張っていってくれたのは他ならぬ貴方自身だってこと。」
「え………」
「いつであって貴方は………私を―――私達を導いてくれた。この灰色の街で迷うだけだった私や、ティオちゃんや、多分ランディやセティちゃん達も………優しくて、ひたむきで、肝心なところではニブいけど………でもやっぱり、大切な時には側にいてくれて一緒に答えを探してくれる………そんな貴方がいてくれたから私達はここまで辿り着けた。ガイさんやルファディエルさんでも、他の誰でもなく貴方だから出来たことよ。」
「……あ………」
「だから私は………この街で貴方に出会えた幸運を空の女神に感謝しているわ。ふふっ、幼い頃に日曜学校で出会っていればもっと良かった………そんな益体もないことを考えてしまうくらいに。」
「エリィ………」
「自信を持って。ロイド・バニングス。お兄さん達に憧れている所も自分自身であると足掻く所もすべてが貴方だから………そんな貴方が私達は………ううん―――私は好き………いえ、愛しているから。だから………貴方は貴方であるだけでいい。(うっ……勢いに任せて言っちゃった……私の気持ち………ロイド………貴方は私の事をどう思っているの……?……お願い、答えて…………!)」
(ロイド。エリィが勇気を出してここまで言ったのだから、貴方もちゃんと自分の今の気持ちをうそ偽りなく答えてあげなさい。)
「(わ、わかっているよ、ルファ姉。)………エリィ………………」
エリィの話とルファディエルの念話を聞いたロイドはエリィの名を呼んだ後、振り向いてエリィを見つめ
「………ぁ……………」
見つめられたエリィは頬を赤らめてロイドを見つめた。
「最初はさ………ぼんやりとした憧れだったんだ。」
「え………」
しかしロイドが呟いた話を聞いて呆けてロイドを見つめた。
「その子は可憐で、凛としてそれでいて包容力もあって……出会った時から、色んな意味で綺麗な女性だなって思った。これでも最初は、カッコ付けて平気なフリをして話していたけど………白状すると………ずっとドキドキしていたんだ。」
「ロ、ロイド………」
そしてロイドの説明を聞いたエリィは頬を赤らめてロイドを見つめ
(おおおおおおおおおおっ!?これはまさか………まさかの!)
(フフ………)
ギレゼルは興奮し、ルファディエルは微笑ましそうに見守っていた。
「さすがに一ヵ月もすれば、住む世界が違うお嬢様なんて風には思わなくなったけど………それでもずっと………その子の同僚であるということは俺にとっての密かな誇りだった。その子の相談を受けたり、ささやかだけど力になれたのは俺にとって何よりも嬉しかった。」
「…………………………」
「そして2ヵ月以上経って、楽しい事や苦しい事を全部、一緒に乗り越えてきて………今も出会った時のように……いや、それ以上にドキドキしている。」
「………ロイド…………」
ロイドの言葉を聞いたエリィは頬を赤らめて嬉しそうな表情をし
「―――好きだよ、エリィ。仲間として………家族としてだけじゃなく。一人の女の子として、君が。」
「嬉しい………!…………ん………!」
ロイドの告白を聞くと、自分の唇をロイドの唇に重ねた。
(エリィ………)
エリィと口付けをしているロイドは静かな笑みを浮かべ
(いけ!そこで押し倒せ!!そうしたらはれて童貞を卒業にしてハーレムへの一歩目だ!!)
(フフ……ロイドと付き合う上で色々と苦労するだろうけど………私は応援しているわよ、エリィ。)
(ななななっ………!?エリィ!そういう事は私がいない時にしろ!!)
その様子を見ていたギレゼルは焚き付け、ルファディエルは微笑み、メヒーシャは顔を真っ赤に染めて慌てていた。するとその時、アナウンスが入った。
―――ビル内に残っている皆様にお知らせいたします。非常時につき、これより一部フロアの照明を落とさせていただきます。また、保安上の理由からエントランス以外の非常口は全て閉鎖させていただきます。どうかご理解の元、火元などにはくれぐれもお気をつけくださるようお願い申し上げます。
アナウンスが流れている間2人はずっと口付けをし続け、アナウンスが終わると2人は離れ
「はは……」
「ふふっ………」
2人は互いの顔を見つめて頬を赤らめて微笑んだ。
「えっと……エリィ。順序が逆になったけど……その……これからは恋人同士としてよろしくお願いします。」
「はい、喜んで………!……フフ……ロイドと恋人同士になれたのは嬉しいけど、きっと私はこれから色々と苦労するんだろうなぁ……」
ロイドの言葉に嬉しそうな表情で頷いたエリィは微笑んだ後、苦笑した。
「ハハ……苦労するのは俺の方だと思うんだけど…………何せエリィのお姉さんはあの”聖皇妃”で義理のお兄さんは”英雄王”なんだから、認めてもらうのに凄く苦労する事は目に見えているし……」
「あら。お姉様は元々見習い侍女の身で皇家に嫁いだ方だし、リウイお義兄様も身分で判断するような器量が狭い方ではないし、他のメンフィル皇家の方々もそうよ。……私が苦労するって言ってるのはロイドの女性関係よ。」
「へ……………」
ジト目のエリィの言葉を聞いたロイドは呆け
「………私の知っている限りでも貴方に好意を抱いている女性は結構いるんだから。………みんなが貴方を好きになる気持ちはわかるから、他の人達と付き合っても怒らないけど、私を蔑ろにしたら許さないからね。………私が貴女の一番の恋人なんだから。」
「いやいやいや!エリィがいるのに、他の女性と付き合うなんてどう考えても浮気だろ!?そんなエリィの気持ちを裏切るような事をするつもりはないよ!」
エリィの話を聞いたロイドは慌てながらエリィに言った。
「あら、知らなかったの?七耀教会は重婚を認めていないけど、アーライナ教会やイーリュン教会は重婚を認めているわ。…………だから、その………みんな纏めて責任取るのだったら、浮気にはならないし、私も怒らないわ。」
「エ、エリィまでティオと同じような事を言うんだな……………」
「………ティオちゃんが?………ねえ、ロイド?一体ティオちゃんと何があったのかしら??………怒らないから正直に!話してね?」
(………エリィが来る前に既に他の女性と仲が深まっていたのか………!)
(また余計な事を………)
(お?早速修羅場か?かかかかっ!)
溜息を吐いて呟いたロイドの言葉を聞いたエリィは意外そうな表情をした後、威圧感を纏った笑顔でロイドに尋ね、メヒーシャは顔に青筋を立て、ルファディエルは呆れ、ギレゼルは陽気に笑っていた。
「はい……………」
エリィの威圧感に圧されたロイドは冷や汗をかいた後、ティオとあった出来事を説明した。
「フウ………早めに告白して正解だったわね………ティオちゃんも中々油断できない相手ね…………危うく一番目を取られる所だったわ………でも、一番油断できないのはルファディエルさんよね………寝る時もロイドと一緒にいるんだから、いつロイドの”初めて”を取られるかが一番怖いわね………」
ロイドの説明を聞いたエリィは溜息を吐いた後、小さな声で呟き
「???告白して正解ってどういう意味なんだ………?」
ロイドは不思議そうな表情でエリィを見つめたが
「ギロッ。」
「うっ………」
エリィに睨まれ、黙り込んだ。
「……私はベルの所に戻るわね。………その………さっきの続きは全部解決した時にでも……」
「え。」
そして顔を真っ赤にしているエリィの言葉を聞いたロイドは呆け
(なっ!?まさか………!)
メヒーシャは驚いた。
「ん………そ、それじゃ私は戻っているから……」
そして呆けているロイドの唇にエリィは軽く口付けをした後、真っ赤になった顔でロイドから去って行った。
「さっきの続きって………キス以上に一体何があるんだ………?――――!!ま、まさか………!」
エリィが去った後不思議そうな表情をしていたロイドだったが、ある事に気付いて顔を赤らめた。するとその時、ロイドの両肩に誰かの手がポンと置かれた。
「?………!!!ル、ルファ姉………!それにギレゼルまで………!?」
両肩に手を置かれた事に気付いたロイドが振り向くとそこには微笑んでいるルファディエルと口元に笑みを浮かべ、もう片方の手に親指を立てているギレゼルがロイドを見つめ、2人を見たロイドは驚き
「(しまった!ルファ姉とギレゼルも見ていた事をすっかり忘れていた………!)ま、ま、まさか………2人とも今のやり取りを全部……!」
エリィの告白をルファディエル達が見ていた事に気付いたロイドは心の中で青褪めた後、顔を真っ赤にして慌てた様子で尋ね
「ええ、最初から最後までね。フフ、おめでとう、ロイド。今回の件が解決したらセシルにも報告しないとね♪」
尋ねられたルファディエルは頷いた後微笑み
「くかかかかっ!ハーレム一人目、ゲットだな、ロイド!………それでいつ、メヒーシャちゃんが契約しているあの女の処女を貫くんだ~?ちなみにお前は中派か?それとも外派か?もしくは意表をついて口か?」
「………まあ、貴方も男の子で、初めてできた恋人と”そういう事”をしたいのは当然の事だし、恋人同士ならいつかはする事になると理解しているから、止めるつもりはないけど………一つだけ忠告しておくわ。せめて避妊はちゃんとしなさいよ?でないと後で大変な事になるんだから。特にあの娘は”聖皇妃”達の関係者なんだから、嫁入り前のあの娘が妊娠してしまったら、かなり大変な事になるわよ♪」
ギレゼルは陽気に笑った後、興味深そうな表情でロイドに尋ね、ギレゼルに続くようにルファディエルは苦笑しながら言った後、からかいの表情でロイドを見つめて言った。
「なななななななっ!?」
一方ロイドは顔を真っ赤にして慌てだした。
その後2人にさんざんからかわれたロイドは気を取り直した後消耗品等の補給をする為に1階に降りた……………
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