英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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外伝~芽生えるほのかな想い~
その後一端解散したロイドはフロアのガラス張りの巨大な窓の傍で外の景色を見つめているティオに気付いて、近付いた。
~夜・IBC~
「…………………………」
「ティオ………?」
外の景色を見つめているティオに近づいたロイドは不思議そうな表情で話しかけ
「………ロイドさん。」
話しかけられたティオは振り向いてロイドを見つめた。
「どうしたんだ―――って、そうか。外の様子を伺っててくれたんだな?」
「………ええ、まあ。やっぱり気になりますし。でも、よくわかりましたね……?」
ロイドに尋ねられたティオは頷いた後意外そうな表情で尋ねた。
「そりゃ、ティオの力にはいつも助けられてるからな。それで………市内の方はどんな様子なんだ?」
「………散発的に銃撃や魔術、アーツが飛び交う戦いが起きているようです。多分、セティさん達が警備隊や悪魔達と戦っているかもしれませんし、後はセリカさん達もそうですし、ひょっとしたらリウイ陛下達も別の地区で戦っているかもしれません。」
「そうか………セティ達ならなんとか自力で生き残る事は可能だと思うけど………一番心配なのは市民に被害が出てるかもしれないことだな。」
「…………………………」
ロイドの話を聞いたティオは何も語らず黙り込んでいた。
「………?ひょっとしてティオ、疲れてるんじゃないのか?街中を走り回ったばかりだし、キーアたちと一緒に休んだ方が……」
ティオの様子を見たロイドはティオを心配したが
「………ジロッ。」
「い、いや別に子供扱いしてるわけじゃ!」
ジト目のティオに見つめられて焦り出し
「ふふ………わかってます。わたしは”影の国”の件で体力が大幅についていますし。それに、少し興奮気味みたいで眠れそうにないですから。」
「そっか……しかし本当にとんでもない事になったな。ティオは本来、警察官じゃないのにこんな状況に巻き込んじゃって………」
「ジロッ。」
「いや別に、関係ないとか言ってるわけじゃなくって!」
さらに墓穴を掘ったのか余計なことまで言って再びティオに睨まれてより焦り出した。
(まったく……ティオを侮り過ぎだ。あの”影の国”を乗り越えたティオは一人前の”戦士”と言ってもおかしくないのだからな。)
(かかかかっ!ホント、見ていて飽きないねぇ~、ロイドは!)
(フウ………余計な所まで、本当にガイそっくりね………)
その様子を見守っていたラグタスは呆れ、ギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは溜息を吐き
「……まったく。」
ティオは呆れた表情で溜息を吐いた後、少しの間考え込んで話し始めた。
「……………で、でも………確かにこんな事態になったら今後どうなるかは心配ですね。わたしの出向についても財団がどう判断するか………」
「え。」
「魔導杖のテストに関してはクロスベル以外でもできる上、既に”影の国”での実戦テストも行っていますし。財団の方針しだいではわたしの出向も取りやめになることだって………」
「そ、そうか……………………」
ティオの話を聞いたロイドは驚いた後考え込んだ。
「………その…………そうなったら少しは寂しく思ってくれますか?」
ロイドの様子を見たティオはロイドを見つめて尋ねたが
「う、うーん………それ以前に、ちょっと想像しにくいものがあるな。」
「え……」
ロイドの答えを聞いて呆けた。
「いや、ティオがいない支援課っていうのが何だか想像できなくって………あの端末だってティオの特等席みたいなものだったじゃないか。俺達や、他の人間が座って操作するのはピンと来なくてさ。」
「……………………………」
「でも、そうか………出向が取りやめになることもあり得るのか………参ったな。そんなこと考えもしなかった。」
そしてロイドが溜息を吐いたその時
「―――あくまで可能性としてはです。財団は最先端の技術をクロスベルに投入していますし、かなりの投資もしています。こんな大事件が起こったとしても引き上げる可能性は低いと思います。そうである限り、魔導杖のテストもこの地で行うのがベストですから。」
ティオが静かな表情説明をしたが
「そ、そっか。―――うん、だったら何としてもこの事態を打開して事件を解決しないとな!ティオに支援課に居続けてもらうためにも!」
「…………………っ…………………」
ロイドに微笑まれて驚いた後、ロイドに背を向け
(この男の”これ”は何とかならんのか、ルファディエル……………)
(おおおおおおおおおおおっ!ここで追撃か、ロイド!そこでもっと攻めろ!今ならその娘もメヒーシャちゃんが契約している娘みたいに完全に墜ちるぞ♪)
(………いつものまた悪い癖が………フウ………後で将軍から苦情を言われなきゃいいんだけど………)
その様子を見たラグタスは顔に青筋を立て、ギレゼルは興奮し、ルファディエルは呆れた後疲れた表情で溜息を吐き
「って、また俺、無神経なことを言ったか!?」
ロイドは焦り出した。
「………ええ。正直、言語道断ですね。やっぱりエリィさんの言う通りロイドさんは危険です………まさかそんな反応をされるとは思いませんでした。」
「そんな反応………?」
ティオの言葉を聞いたロイドが不思議そうな表情をしたその時
「っ……ロイドさんがダメダメで、にぶちんでヘタレ弟キャラということです!ある意味、その点においてはガイさんを超えていますね……!」
ティオはロイドに背を向けたまま、ロイドを責めた。
「いや、意味不明なんだけど………うーん、でも兄貴か。確かにニブいっていうか朴念仁なところはあったよな。長い間、セシル姉の気持ちに気付いてなかったみたいだし………何度、蹴っ飛ばして気付かせてやろうと思った事か。」
そしてティオの話を聞いたロイドが考え込みながら呟いたその時
「えい。」
ティオがロイドの足を蹴っ飛ばした!
(ロイド……あなたは人の事は言えないわよ?)
(かかかかっ!駄目だ………!笑いが止まらん!)
その様子を見たルファディエルは呆れ、ギレゼルは笑い
「って、ティオさん………?」
蹴飛ばされたロイドは苦笑しながらティオを見つめた。
「―――失礼、何となく。ですが今のは正直、自業自得ではないかと。」
(まったくだな………我としても最低でも一発は殴っておきたいのだがな………)
見つめられたティオは呟き、ラグタスは頷いていた。
「???」
一方ロイドは不思議そうな表情をした。
「……そろそろわたしは地下の端末室でお手伝いをしようと思います。ヨナあたりと連絡が取れれば色々選択肢も出てきますし。」
「そっか………よろしく頼んだよ。俺は補給や装備の確認をしてくるからさ。」
「よろしくお願いします。………」
ロイドの言葉を聞いたティオは考え込み
「………ティオ?(また怒らせちゃったのか………?)」」
ティオの様子を見たロイドは不思議そうな表情をして尋ねた。
「………以前、ロイドさんがしてくれるといった”約束”………覚えていますか?」
「あ、ああ……兄貴との約束じゃなくて、俺自身の言葉でってやつか。ゴメン、あれから色々と考えてはいるんだけど良いのが思いつかなくてさ。」
「でしたら………わたしの方から希望があります。それでもいいですか?」
「あ、ああ……もちろん構わないけど。よし―――どんと来い!」
ティオの言葉に頷いたロイドは口元に笑みを浮かべてティオを見つめ
「……………………」
見つめられたティオはロイドを黙って見つめた後ロイドに背を向けて話し始めた。
「………ミシュラムのテーマパーク。この騒ぎが無事解決したらあそこに連れて行ってください。」
「へ……ええっ………そんなのでいいのか!?いや、でも………もうちょっとこうシリアスな約束の方がいいんじゃないか?ティオが困った時には何があっても助けに行くとか。」
ティオの提案を聞いたロイドは呆けた後、驚き、そして真剣な表情で言ったが
「いえ、これで十分です。それに、この事態を解決しないとこの約束も果たされない……その意味では十分シリアスなのではないかと。」
ティオは満足げな笑みを浮かべて説明した。
「そうか……うん、確かにそうだな。よし―――約束だ。この事件が無事解決できたら一緒にテーマパークに遊びに行こう。あっと、他のみんなも一緒の方がいいかな?」
(あ、ロイド。それ禁句。)
(やってしまったわね………)
(何故そこで”察する”事ができん………)
説明を聞いたロイドは頷いた後ある事を思い出して口にし、それを聞いていたギレゼルは呟き、ルファディエルは溜息を吐き、ラグタスは呆れ
「ジロッ……」
ティオは振り向いてロイドをジト目で睨んだ。
「だ、だよな。ティオとの約束なんだし。うーん、できたらキーアも連れて行ってあげたかったけど………」
「でしたら内容は修正です。まずは支援課のみんなで………その後、ロイドさんとわたしで。それでノープロブレムでは?」
「あ、ああ………それなら確かに問題ないか。」
「ふふっ……楽しみにしていますね。………………………」
ロイドの答えを聞いたティオは微笑んだ後ロイドを黙って見つめ
「ティオ?」
見つめられたロイドが不思議そうな表情したその時、ティオはロイドに近づいて背伸びをし
「ん…………」
なんとロイドの頬に口付けをした!
「!!!???」
口付けをされたロイドは混乱し
(なっ!?)
(おおおおおおおおおおっ!?ここでいきなり急展開か!)
(あらあら………エリィといい、ロイドに好意を持つ女性は積極的ね。)
ラグタスは驚き、ギレゼルは興奮し、ルファディエルは微笑んでいた。
「ティ、ティオ………い、い、今のは一体………!」
そしてロイドは混乱した様子でティオを見つめ
「ふふっ……遅くなりましたけどわたしがずっと悩んでいた翼を”綺麗”だって言ってくれたお礼です。…………それにこうでもしないと、ロイドさんは気付いてくれそうにないですしね。」
見つめられたティオは頬を赤らめて微笑んだ後、恥ずかしそうな表情でロイドから視線を外した。
「き、気付くって一体何を……」
「ロイドさんお得意の推理で答えを出して下さい。………ああ、それとロイドさん。」
「な、何だティオ?」
「わたしは既にリウイ陛下やウィルさん達という例を見ていますし、七耀教会では認められていませんが、アーライナ教会やイーリュン教会では認められているそうですから、”そういう事”になっても、ちゃんとわたしを含めた皆さんを大事にしてくれれば、わたしは構いませんので。」
「へ……………」
ティオの言葉を聞いたロイドは呆け
(まさかのハーレム公認!くかかかかっ!面白くなってきたじゃねえか!)
(………ハア……頭が痛くなってきたわ…………一体何人の女性と関係を持つ気よ、この子は……)
(………………………………)
ギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは疲れた表情で溜息を吐き、ラグタスは顔に青筋を立てて膨大な怒気を纏って黙り込んでいた。
「……それでは失礼します…………」
そしてティオは頬を赤らめた状態でエレベーターに走って向かい、エレベーターに乗った。
「ま、まさか……ティオ…………」
その様子を見ていたロイドは驚きの表情で呟いて少しの間固まっていた。するとその時、エレベーターからランディが降りてきてロイドに近づいてきた……………
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