呪いの指輪
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5部分:第五章
第五章
「一体どちらで」
「実はですね。この指輪は」
「はい、それは」
「拾ったものなんです」
こうだ。ジンツァーは気恥ずかしい顔で答えたのだった。
「ライン河のほとりで。たまたま拾いまして」
「えっ・・・・・・・」
ヒルダはその話を聞いてだ。顔が青くなった。まさかと思ってだ。
「すぐに警察に届けましたが拾い主がいなくて」
「それでなんですか」
「はい。それでこの指輪は只のおもちゃだと鑑定士の人にも確めてもらいまして」
「おもちゃですか、その指輪は」
「はい、そう言われました」
こうだ。微笑んで話すジンツァーだった。
「只のおもちゃだと。そんな変な色の貴金属はないと言われまして」
「そうですね。確かに黄金にしては変わった色ですね」
「はい。只のおもちゃならと思いまして」
それでだというのだ。
「私が貰っておきました」
「警察に届けて拾い主もなかったので」
「そうしました。それで今は私が持っています」
「そうして見に着けておられるんですね」
「はい、そうです」
ジンツァーは微笑んで話した。
「私が拾ってこうして身に着けるまで一年かかっています」
「一年もですか」
「政治家になる前のことです」
それを聞いてまただ。蒼白になったヒルダだった。彼女は確信したのだ。
指輪は間違いなくだ。あの指輪だと。それでだ。
彼女はテレビを観ながらだ。こう言ったのである。
「あの指輪だわ。それなら」
ジンツァーが危ない、指輪の呪いがあるというのだ。それでだ。
彼女はすぐにだ。ジンツァーのサイト等にメールを送った。しかしだった。
そんなメールを信じる者がいる筈もなかった。それは何処に送ってもだった。
だがそのヒルダを見てだ。母はこう言うのだった。
「そんなことをしてもおかしいって思われるだけよ」
「けれどお母さん、あの指輪は」
「呪いの指輪だっていうのね」
「そうよ、間違いないわ」
顔を強張らせてだ。それで言うヒルダだった。
「このままじゃ大統領が」
「暗殺されるっていうのね」
「そうなるわよ。どうすればいいのよ」
「そう言われてもあんたの言ってることを信じる人はいないから」
まさに御伽噺だからだ。これは当然のことだった。
ヒルダもそれはわかっている。だがそれでもだったのだ。
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