魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第三十二話 ミサキの戦い
文化祭も無事終了。全達は普通に日常に戻っていた。
しかし、全は今非日常の中にいる。
「どっからでもかかってきやがれ」
「お手柔らかにな」
全がいるのはアースラの観戦室。そして訓練室にいるのははやての持つ魔道書「夜天の書」の守護騎士の一人、ヴィータだ。
もう一人は、ミサキだ。
実は、文化祭の二日目に全とミサキは彼女と……否、彼女らと偶然遭遇したのだ。
―回想―
今日は全は午前中から三十分ほど休憩を貰っていたので学園内を回っていた。そんな全と彼女らは出会った
「げっ……」
「ん?」
全は二日目は自由に見回ろうと思っていた。にしても、まさか知人と出会うとは思ってはいなかったが。
「橘、か」
「ああ、そうだな。じゃ、文化祭楽しめよ。八神は自分のクラスにいるから」
そう言って足早に全は立ち去ろうとする。
「ちょっと待てよ!」
しかし、そんな全を小さい女の子、ヴィータが止める。
「何だ?俺は休憩時間中で色々な所を見回ってみたいのだが……」
「え、えっと、その……」
ヴィータは何やら口ごもる。
「端的に言うと、迷ったのだ」
「おい、ザフィーラ!」
大柄の男、ザフィーラが説明する。
何でも、ヴィータが率先して案内していたらしいのだが、この学園は結構広い。というわけで迷ってしまったそうな。
それならば魔力を辿ればいいのではと思うのだが、日常生活で魔力は使いたくはない、という事らしい。
「…………方向音痴ならば、率先して案内などしなければいいものを」
「言うんじゃねぇよ!?あたしだって後悔してんだからよ!?」
どうやら、ヴィータの自業自得らしい。
「はぁ……いいよ。案内する」
「いいのか?」
「いいよ。多少時間くうけど。それでも案内しなかったら案内しなかったでちょっと罪悪感とか感じるし。ほら、いくよ」
そう言って全は先頭に立ち、彼らを先導する。
実際全の言うとおり、知り合いが迷っているのを知らない振りするのは全にとっては辛い事なのだ。
「……変わったな、橘」
「そうかしら?ああやって油断させてっていうのもありえるような気がするのだけれど……」
全に聞こえない小さな声でピンク色の髪をしている女性、シグナムと金髪ショートヘアーの女性、シャマルは話し合う。今の全は自分達を油断させようとしているのではないかと。
「それはないと思うぞ」
しかし、小さな声で話していた二人にザフィーラはそれはないと言う。
「何で言い切れるんだ?」
「あいつの目だ。あの時もそうだったが……瞳の輝きが言っている。あいつは本心で俺たちを案内している」
「そうかねぇ……おい、橘」
「?なんだ?」
「お前、明後日暇か?」
「???ああ、確かに振り替え休日で暇だが……」
今日は土曜日。故に明後日である月曜日は振り替え休日で休みとなっているのだ。
「思えばさあ、あたしらってお前と模擬戦したことねぇなって思ったんだよ」
「?はぁ……で?」
「はぁぁぁぁ……だから!明後日、あたしと模擬戦しねぇかって聞いてんだよ!」
「…………?」
何の脈絡もなく言ってくるので全には訳がわからなかった。
「……要するに、今のお前が安全かどうか、模擬戦の中で確かめるという事だろう」
「………………戦闘狂かよ」
全は呆れるしかなかった。まあ、騎士だから仕方ないかもしれない、とは思ったが。
「……その日のコンディション次第ですけど……でも……」
そう言って全は視線をシグナムに向ける。
「む?どうした?」
「俺としては、貴女と模擬戦してみたいなって思ったりして……」
あはは、と頭を掻きながらそう言う全。
「私は別に構わんが……なぜだ?」
「いえ、大した理由ではないのですが……ぶっちゃけこの中で一番腕が立つのが貴女だと思っただけなので……自分の今の限界点を知るいい機会になるのではないかと……」
「……限界点がわかって、それからどうするんだ?」
と、ザフィーラが何やら疑問を感じたようだ。それもそうだろう。誰が好き好んで自身の限界を知ろうというのか。
しかし、全は違う。
「いえ。限界点を知れば、そこからさらに突き詰めれる点も分かりますし。いつもそうやって鍛えてますから」
そう、全は自身の限界点をあえて知る事で、自分はこれ以上に成長できると確信が持てるのだ。
限界点というのはその人物が勝手に決め付けた事。ならば、さらにもう一分張り出来る。そう、全は結論付けた。
実際、全の師匠である麻子も自身に限界はないと言っているのを全は知っている。
『いいか東馬。限界ってのはな。勝手に人が決め付けた設定されたゴールって奴だ。でも、ゴールするっていうのはそこで進化は止まっちまう。そこからさらに一歩踏み込めるかどうか。それが、強さに胡坐を掻く奴と止めどない進化を続ける奴の違いだ』
まあ、私は後者だがな。と胸を張って喋っていたのを全は鮮明に覚えている。
――――これがこのような子供がたどり着ける境地か?
ザフィーラは戦慄した。この年齢でそのような事を考えるとは思えなかったからだ。
そして、それはシグナムも感じ取ったようで
「……わかった、引き受けよう」
「あ、ありがとうございます。あ、それだと……」
そう、それだとヴィータが余ってしまう。それはどうしようかと思っていた矢先
「ならば、私が相手になろう」
今まで沈黙を保っていたミサキが名乗りを上げた。
「へ?何で執務官とやる事になるんだ?」
「いや、最近何だか舐められている気がしてな……ほら、私デスクワークが主だろう?」
「ま、まあ確かに……」
ミサキの言葉に同意するシャマル。
「それでなのか、最近疑問の声が上がってきているんだ。「ミサキ執務官は本当に試験に合格して執務官になったのか、本当は実力はないのではないだろうか」とな」
「なるほど。確かに」
「確かとはどういう事かな、ぜぇん」
「い、いふぁいいふぁい。頬ほつねはないで」
全が確かにと言ったらミサキは全の頬をつねる。何だか昔に戻ったようで全としても嬉しいような悲しいような感じだ。
――――な、何だか微笑ましい物を見ている気分だ……。
シグナムはそんな事を考えていたが口には出さなかった。何だかずっと見ていたくなるような光景だったからだ。
「で?結局あんたが模擬戦してくれんのか?」
「ああ、不満か?これでも実力はあると自負している」
「わかった。やってやろうじゃねぇか」
こうして、最初はミサキvsヴィータ、次に全vsシグナムとなったわけだ。
―回想終了―
という経緯を経て、ミサキとヴィータは対峙しているのだ。
「ねぇ、全」
「ん?るいか」
と、この試合を観戦しているなのは達から離れて見ていた全の傍にるいがやってきた。
「実際、ミサキさんってどれくらい強いの?戦った所見たことないからどうにもわからなくて……」
「まあ、俺が死ぬまでの評価でいいなら言えるけど……ヴィータの戦闘方法は神楽院の記憶にあるから……難しいとしかいえん」
「それって……ミサキさんが?」
「いや。ヴィータが、だ」
ミサキSIDE
私は戦う前に、両手のひらを合わせる。
「あん?なんだ、それ?」
そんなヴィータの言葉にも耳を貸さない。いや、貸す余裕などあってはならない。
これから行われるのは戦い……そう、戦いなのだから。
私は両手を離し……閉じていた目を開く。細く鋭く、尖らせるように。
「っ!!へぇ……こりゃ、余裕かましてられねぇな」
どうやらヴィータも私の変わりように気づいたようだな。かといって手加減する気もない。
手加減など相手を最も侮辱する行為だと、私は双覇さんから聞いている。
故に、そのような考えは頭から弾き飛ばし、ただ冷徹に考える。どうすれば、勝てるのかを。
「……ふぅ、行くぞ。『ウロボロス』」
『了解です、マスター』
私のデバイスであるグローブ型のデバイスである『ウロボロス』が応える。
「…………ふっ」
私はまずヴィータに接近し、右手でのストレートを放つ。
「おらっ」
ヴィータも自身の手に持っている槌型のアームドデバイス『グラーフアイゼン』を私の拳にぶつけてくる。
そのままの状態のまま、数秒が経過する。
なるほど。この背丈に似合わない凄まじい膂力だ。下手をすれば吹っ飛ばされかねない。
「へっ。スピードやキレはあっても肝心の力パワーはあんまりないみたいだな」
ヴィータからの指摘通り、私はあまりパワーを持っていない。
というのも、私の戦闘方法では逆にパワーは邪魔にしかならないからだ。
「まあ、そうだね。でも、私にとってパワーは……邪魔にしかならない!」
「なっ!?」
私は、わざと力を抜いてヴィータのグラーフアイゼンから手を離す。そして無論支えを失ったグラーフアイゼンは力を乗せていた方にそのまま向かっていき、ヴィータの懐はがら空きになる。
そのまま流れに逆らわずに、私はヴィータの懐に腕を持っていき、一気に振りぬく。
「ぐっ!?あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
ヴィータは驚くほど吹っ飛んでいった。まあ、それも仕方ないだろう。力という物は反対側に無理やり方向を変えればそれまで向かっていた方向への力も同時にそちらに傾く。
そう、私の戦闘方法は接近戦ではカウンターなのだ。
カウンターで主に受けの体制を取り、隙を見つけ次第、腕や足を振りぬき相手の距離を取る。
そして距離を取った後こそ、私の真骨頂だ。
「く、くそっ!だったら、これで!」
というと、ヴィータは自身の周りに鉄球を展開する。
「なるほど。ゲートボールのようなものか?」
「はんっ!あれよりも凄まじいショット見せてやらぁ!!」
…………やってるんだな、ゲートボール、などと戦闘中だというのに思ってしまった。
「おっらぁ!!!」
鉄球を力任せに打ち付けてきた。が、そこはやはり歴戦の騎士といった所か。その鉄球は真っ直ぐに飛んでくる事なくそれぞれバラバラになりながらも、私に迫ってくる。
「ふっ……全方位からの攻撃、か……私には死角などない!!『チェーンバインド』!」
私は右手の平からチェーンバインドを作り出す。
さあ、見せてやろう。前世での戦い方を!
SIDE OUT
「美咲さん、本気だな」
「え?」
観戦室で見守っていた全の言葉にるいは驚く。
「本気って……今までは本気じゃなかったって事なの?」
「いや、あの一撃は確かに本気で打ち込んでいたと思う。でもそれは素手での話だ」
「素手?じゃあ、ミサキさんは本来は違うって事?」
「そっ。ほら、あの鎖みたいなの……えっと、チェーンバインドだっけ?あれを使うんだろう」
「でも、チェーンバインドは相手を捕らえる為の魔法よ。そんなのをどうやって」
「そうやって、固定概念に捕らわれるからだよ」
使うの、と続こうとしたるいの言葉を全は言葉で止める。
「見てなよ」
そう言われたので、るいが訓練室を見て見る。そこには……チェーバインドを振り回しながらヴィータを追い詰めるミサキの姿があった。
「…………は?」
「「「「…………え?」」」」」
「やっぱりか……」
「いつも通りだな」
は……?となったのはるい。え?と呆然としたのはなのは、フェイト、アリシア、はやて。やっぱりかと頭を抱えているのはクロノ。いつも通りだなと言ったのは全だ。
「ぜ、ぜぜぜぜぜぜ全っ!?あ、あああああれってててててて……」
「見て分からないか?鎖を振り回してるんだが」
「いやいやいや!それはわかるから!なんでチェーンバインドを振り回してるの!?」
「いや。だからな……あの人はチェーンバインドをバインドとしてではなく、チェーン……つまり鎖として扱ってるんだよ。他にもアルケミックチェーンっていう魔法とかもあったけど、そっちは鉄とかもいれないといけないからこっちを選択したんだろうな」
「にしても、チェーンバインドを武器として使うなんて……」
「ミサキさんはそういう人だ。僕との執務官試験の時だってチェーンバインドを使っての戦いで僕は負けた」
「って、クロノだったの!?ミサキさんの執務官試験の試験官って!?」
「ああ、そうだよ。それで、負けたのさ」
「そろそろ、終わるんじゃないか?」
全の言葉通り、訓練室ではヴィータがチェーンバインドに捕らえられていた。
『くそっ!?離しやがれ!?』
『離せと言われて離す馬鹿はいないと思うが?』
ミサキは捕らえたヴィータを上空まで持ち上げると、自身の足元から次々にチェーンバインドを作り出していく。
『鎖よ、今こそ蛇となりて彼の者に刃を突き立てよ!!』
そして鎖達が寄り集まっていく。すると、それはやがて巨大な蛇の姿になった。
『呑まれよ……無限鎖の刃っ!!』
『っ!!!!????』
鎖に呑まれていったヴィータ。勝敗は明らかだった。
後書き
ミサキさんは前世でも鎖を使って戦っていました。というのも本文で言っていた通り、美咲さんには力がなかったんです。そこを考慮に入れて力を使わない武器という事で、鎖になりました。
当初は銃なども考えられたそうですが、銃の反動に腕が耐えられないので却下。その点、鎖はそこまで重くもなく、非力であったとしても手首のスナップだけで大きな攻撃力に変換できるからです。
あ、でも今回出てきた技は前世では使っていませんよ?前世ではあれを一本だけでやっており、その一本を力一杯引っ張って相手を倒しておりました。
ちなみにミサキさんも転生特典を貰っております。ここでその発表しておきます。
1.鎖型の武器
2.身体能力向上
3.東馬の来世が幸せになるようにする
1に関しては神様(ぶっちゃけると真白)は鎖型の武器はこれしかないと「BLAZBLUE」のハザマが使用する蛇双・ウロボロスを上げました。
ウロボロスを使うのは本当の本気の時だけです。デバイス自身もウロボロスの存在は知っているので混同しないかと戦々恐々しているとか。
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