魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第三十一話 文化祭回り
前書き
遅くなったな、久々の更新だっ!
「ぜ、ぜぜぜぜ全っ!?な、なななな何でっ!?」
るいが動揺して変な声になりながらも全にどうして女装していたのか聞く。
「何でも何も……家にエプロンがあったが、女物だったから、女性の姿のほうが見栄えがよくなると思ったからだが……」
「だ、だからって本気でやるのっ!?」
アリシアも驚きだ。というか、全員驚いている。あの聖ですらだ。いや、驚いているというかドン引きか。
「?やりたいと思ったからやったまでだが……そんなにおかしい事か?」
「「「「「「「おかしいよっ!!」」」」」」」
クラス全員の意見が一致した瞬間だ。
「…………あああーーーーーっ!!!!」
と、何かを考え込んでいたアリサいきなり大声を出す。
「ど、どうしたの、アリサちゃん?」
皆の気持ちを代弁して聞くすずか。
「思い出した!思い出したのよすずか!」
何かを嬉しそうに伝えるアリサ。しかしすずかには何が何なのかわからないので首を傾げる。
「?思い出したって、何が?」
「ほら、私達が初めて出会ったあの日!」
「うぅん……?……………………あああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
と、すずかも思い出したのかすずからしからぬ大声を出す。
「うん、うん!思い出したよ、アリサちゃん!」
「そうでしょ!?やっぱりそうよねっ!?」
と、二人で何やら納得していた。
しかし、二人にわかっても他の皆が訳がわからないとなっている。
「そうか、そういえばそうだったな」
と、今度は全が納得顔をしていた。
というのも、アリサやすずかが全と出会った時。全は女装していた。
まあ、誤解がないように言っておくが、今回のように全自身の意思で女装をしていたわけではない。
全の両親である秀二とアトレは日本の政財界においても何かしら重要な人物であったのだ。
というのも秀二の姓名は秋良。この姓名は日本の政財界において知らない人間はいない程だ。
そんな秀二とその嫁であるアトレに子供が出来たのだ。パーティーにお呼ばれされるのは当然というもの。
しかし、ここで問題が発生。なんと以前面白半分で女装させた際の姿が見られていたからなのか、全は息子ではなく、娘として認知されていた。
そこで、パーティーなどに参加するのは今回だけという条件で全は女装してパーティーに参加した。
しかし、そこは全。前世においても女装して活動などもしたことがあったので幼い女性の仕草なども完璧。それに秀二やアトレは何も言わなかったが、全は気にしない事にし大人達と接した。
そのパーティーにおいてアリサやすずかと出会ったのだ。
つまり、最初の出会いは女装していた状態だったという事である。
彼女達の記憶にその事がなかったのは恐らくその後起こった誘拐事件の方が驚きが多かったからだろう。
まあ、全が覚えていなかったのは女装を前世でも結構多用していたからだ。
「にしても、なぜばれた?女装は完璧だった筈。声も特製の変声機で変えていた筈……」
ただの文化祭に変声機まで使って女装するのは恐らく全世界を探しても全位だろう。
「ふふ、以前にもこうやって女装をしていた仲間がいてな。特徴が完璧に一致していたからわかっただけだ。普通の人が見てもわからないと思うぞ」
「…………へぇ、そうなんですか」
俺みたいな変り種が他にもいるのか、と全は思わず感心した。というか、感心する部分が違うと思うが。
「そう。たかが潜入任務に本気で女装して女性の仕草を完璧にマスターして、特製の変声機まで使って……………な?東馬?」
「っ!!!???」
全は思わず考えを放棄してしまった。それ位に衝撃的だったのだ。この世界で自身の前世の名前を知っているのはるいだけだった筈なのに、と。
「な、何で……」
「ふふ、最も近い場所で見てきたからわかりますよ、全?それより、早く案内してください」
「は、はぁ……」
しかし、今の言い回しに全は既視感を感じた。以前にもそうやって対応された時があった気がするのだ。
(そうだ、あの時もこうやって、彼女を自分の部屋に入れて……)
全は空いている席にミサキを連れて行き、席を引く。その席に座るミサキ。
「ありがとう。気が利くんだね」
その所作にまで既視感を感じる全。そこまで考えてわかった。彼女、緋村美咲を思い出すのだ。
「?どうかしましたか、全?」
「…………あの、ご質問よろしいですか?」
「ええ、何なりと」
「…………過去に、お嬢様学校などに通っていたのですか?何か気品などが溢れているので……」
「ええ。深奥学園という学園です」
「っ…………」
やっぱりなのか?という考えが全の脳裏をよぎる。
「その考えで合ってるわ。東馬、久しぶり」
「やっぱり、なのか…………美咲、さん……」
「積もる話は後。休憩時間を教えて。校門で待ってる」
「あ、ああ。わかった。えっと……」
全はミサキに自身の休憩時間を言う。ミサキは時間を確認する。もう少しすれば全の休憩時間だ。休憩時間は大体一時間らしいので学校を回れはするだろう。
「わかったわ。それじゃメニューだけど……」
そうして、ミサキはメニューの中から紅茶とケーキを頼んだ。
それらを食していたミサキを見たクラスメイトはこう言った。「超お嬢様みたいだった……」と。
「それじゃ、俺は休憩に行って来るから。まわし方はある程度慣れただろ?」
「ええ。ありがとう、橘君。あんまりにもヤバかったら電話するから」
「オッケー。じゃあ、あがる~」
全はそう言ってエプロンを外し、バックの中から財布と携帯電話。それにシンを取り出し首にかける。
『マイスター。お疲れ様です』
「まあ、どうってことないよ。前世じゃ執事なんて貴重な体験もしたしな。その時の我侭お嬢様に比べたらこの位」
あの時は辛かった。いくら護衛任務とは言っても執事をさせられて一日中ずっと依頼人の娘さんの執事をさせられるとは思わなかったからだ。
あの時程、神経を使う事はあまりなかったなと全は思う。つまりはそれ程辛かったという事だろう。
『あの方はただ構って欲しかっただけだと思うのですが……』
「ん?どうかしたか?」
『いえいえ。何も』
そんな会話をしながら校門に向かう。無論小さい声でシンとは会話していたので周りにばれる事はなかった。
「っと、いたいた」
校門前で背中に腕を回し、そのまま校門に寄りかかっているミサキに全は駆け寄る。
「すいません。お待たせしましたか?」
「いいえ。先ほどついたばかりなので。それにしても楽しい学園ですね、ここは」
ミサキは聖祥大付属小学校を見上げる。その顔には笑顔があった。
と、見上げていたのを止めてミサキは全に顔を向ける。
「それじゃ改めて……久しぶりだね、東馬」
「やっぱり、美咲さんだったんだな……」
「うん、久しぶり」
とびっきりの笑顔を全に向ける美咲。それもそうだろう、美咲が初めて出会った時全は気絶してしまっていたから、話すことが出来なかったからだ。
「それにしても、美咲さんまでもこの世界に転生してたとはな……まさか、母さんの所為か?」
「?母さん?母さんって……東馬のお母様?」
「ああ。そういえば説明してなかったっけ?」
「うん。お会いしたことなかったし」
「それもそうだな。それじゃ歩きながら話すか」
そして全と美咲は歩きながら文化祭を周る。その途中途中で全は自身の母親の事を話した。
全の前世、東馬の母親。名前は上月真白。性格は自由奔放。しかも根は頑固で一度こうと決めたら誰にも一歩も引かない。それが例え神憑家当主だとしてもだ。
ちなみに補足しておくと、神憑家には分家がたくさんあり、確かにかみつきとは呼べるけど、語呂合わせのような漢字の組み合わせの家もあった。上月家はその中では一番まともな部類だ。
そんな彼女に憑いていた神。誰もが一度は聞いた事があるであろう。日本の神、天照大御神だ。
しかも真白は天照大御神に認められ、神憑となった。上月家の人々は大いに喜んだ。何せあの時、神憑に認められる程の逸材は五十年に一人見つかればいい方のような感じだったからだ。
しかし、そのせいであの悲劇が起こってしまった。
「そうか。そんな事が……」
「ああ、もう気にもしてないしな。それに転生する際に出会ったの、母さんだったし」
「えっ!?お母様、神様になってたんですかっ!?」
「ああ。俺はあんまりにも投げやりな対応してたから、ぜんぜん気づけなかったけどな。まあ、後々考えたらって感じだ」
「そうなんですか……」
話をしながらそれぞれのクラスを見て回る。お化け屋敷や全達のクラスと同じ喫茶店。小さなライブなど色々あった。
「そうだ。どれくらいこっちにはいるんだ?確か出向扱いだったよな?」
と、全は思っていた疑問をぶつけてみた。再会出来たはいいものの、美咲は今はミサキ執務官。アースラには出向という扱いで来ているのだ。出向という事はいつかは本局に戻ってしまうという事。
その戻る時期を全は知りたかった。
「ああ。当分はアースラ勤務だ。何でも本局は高宮に期待しているようでな。まあ、あんな努力という言葉を勘違いして使ってるような奴が期待というのもおかしい話だがな」
仕事の話になったからか、ミサキはキリッとした口調に変わる。この辺がミサキの凄い所だ、と全は思っている。
美咲は切り替えが上手いのだ。日常生活などでは先ほどのようなお嬢様口調で話すのに対し、仕事関係では今のような男のような口調を取る。
「努力を勘違いって?」
「あいつ、少し走りこみをしていたり、剣を振ったり……それらをやっただけで後は何もしていないんだ」
「あぁ、なるほど……」
そりゃ確かに勘違いしてるなと全は思った。
そもそも努力というのは自身の限界に挑むという事でもある。そして何か目標を作り、その目標が達せられれば、また新たな目標を作り自身を鍛えぬく。努力とはそういう物だ。
だが、聖は何も目標などなくただ走りこみやただ剣を振っているだけ。それでは力などはつくが決して強くはなれない。
目標などがあればこそ人間はそこに向かって頑張る。心の成長にも繋がるのだ。
全はその点、恵まれていただろう。全には師匠がいた。彼女こそ全の超えるべき壁であり今でもなお、彼女は壁として存在している。それが全に負けないという強さをくれるのだ。
「まあ、個人個人の事情ってのがあるからな。あんまり深いところまでいかなければいいんじゃないか?」
「そうかな?全然頼りないんだけど……双覇さん直伝の練習法でも伝授するか?」
「それは止めろ。あれは現代人には拷問に等しい」
全は本気で双覇の出した特訓メニューを聖にかそうとするミサキを全力で止める。
彼の特訓メミューは常人が聞けば顔を真っ青にする事間違い無しなメニューだからだ。
例を出せば
朝 7:00
腕立て伏せ×100回 腹筋×100回 走りこみ×1キロ スクワット×100回
8:00
剣の素振り×100回 剣でのイメージ稽古(感じとしては敵を想定してその敵相手に戦う)×三十分
9:00
素手での型の確認×一時間
これが朝のメニュー。これらを時間内に出来なければどんどん前倒しになっていき、休憩時間などもなくなる為全は死に物狂いでやっていた。麻子はこれを涼しい顔でやっていたが。
ちなみにこれらの他にも一日通してやるようなメニューを朝の三時間で終わらせろとかそんな無茶振りまで双覇は全に課した。それは全に期待していたからだ。そして全もそれに応えた。
何日か三途の川が見えかけた、というか渡りかけたがな。とは全の言葉だ。
「えぇ?私が出来たんだから、あいつにだって出来るさ」
「出来たの、美咲さん!?」
まさかそこまでポテンシャルが高いとは思わなかったので素直に感心する全。
「ああ、東馬が死んだ後、死に物狂いになってな。ああ、安心してくれ、殺されたとかじゃなくて天寿は全うした」
「そうだったんだ……あの、誠悟さんは?」
「あの人も天寿を全うしたよ。あの人のお嫁さん達もね」
「そっか。ならいいんだ」
全にとっては前世の心残りがそこだった。誠悟や神那島でお世話になった人たちがいたが、何もしてやれなかったからだ。
「さて。それじゃ、残り少ない休憩時間。楽しみましょう?」
「ああ。エスコートしますよ、お嬢様」
その後、全は休憩時間が終わるまで美咲と共に行動をしていた。
ちなみに
「「「ぐぬぬぬぬ…………!!!」」」
「「あ、あはは……」」
全との大切な記憶を思い出した少女たちは全と一緒に文化祭を周れなくて悔しい思いをしていたのだった。
後書き
遅くなった理由?ははっ………………ずっと夜勤で書く意欲が湧かなかったんだ。いや、ネタはあるんだよ?ただ、そこまでくっそ長いってだけで。まあ、そこに至るまでもうちょっと。はやて編が終わればそこにいけるんで、頑張ります。
次回からはいよいよはやて編!
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