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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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東馬の過去 始まり編

 
前書き
今回は、過去編で……まあ、簡単に言えば東馬と師匠の出会いです。 

 
ザザッ…………ザザザッ

『こちら、キング。潜入に成功。ターゲットは動いてないな?』

『こちら、タワー。依然、ターゲットは我らが誘導した部屋からは動いていない模様。馬鹿な男ですね、自分から殺されに来ているのに』

『まあ、そう言うな。逆に言えばそこに隠れるという事は自分が今までやってきた事が悪い事だと自覚しているって事だろう?』

『確かにそうですが……というか、もう少し静かに出来ないんですか、アルファ。貴方の周りが五月蠅くてよく聞き取れないのですが』

『それは仕方ないっすね。僕ら、陽動組なんで敵さんとたくさん戦うんすよ?五月蠅くしないっていうのはあまりにも鬼畜な言葉っすよ?』

『無駄口を叩くなよ?もう少しで終わるから、帰ったらあたしの手料理をたらふく食わせてやるから』

『『『よっしゃ!!!』』』

『……………食事に釣られるってどんだけだよ、お前ら……』

以上、今宵の作戦『正義の獣(ハウンド・ドッグ)』(仲間の一人が命名)の際に行われた彼らの通信の一部である。















麻子SIDE

「ふぅ……終わった終わった…………そっちはどうだ?」

『こちら、ピエロ。敵さんはようやく自分達の依頼人が死んだと知ったようで大急ぎで部屋に向かってるっすよ』

「わかった、一応近くにタワーがつけている車があるからそれを使ってアジトに帰れ。あたしももう少ししたら帰るから」

『了解っす』

私は通信を終えて、耳につけていたイヤホンを取り出す。これは通信や録音などが出来る優れもので盗聴対策も完璧といううちのメカニックの自信作だ。

というか、あいつキャラ変わりすぎじゃないか?私と出会った時は内気な女だったのに、今では完全にマッドサイエンティストへの道を着々と歩き始めているぞ?

「まあ、私のせいかもしれんが……ん?公園か……小さい頃はよく遊んだっけな」

私は帰る道すがら、小さい公園を見つけたので入ってみる。

滑り台やブランコ、シーソ—などありきたりな遊具がある。

「うぅ、寒っ……さすがに冬だから冷えるなぁ……今日は鍋だな、うん」

私は今日の献立を決めながら、おそらくお腹を空かせて待っているであろう私の仲間達の元へと帰る事にする……筈だった。

「………………………ぅ…………………」

「?うめき声、か?」

公園から出ていこうとした瞬間、うめき声のような物が聞こえてきた。

「……嫌々、ありえないだろう。今は夜だぞ、夜。そんな時間にこんな小さな公園に人がいるわけが……」

私はそう結論付けて再び、公園を出ていこうとするが

「………………血の、匂い?」

血の匂いがしたので再び立ち止まる。

普段から血生臭い現場にいるからか、血の匂いには敏感になっていると思う。

「何だ?それに肉が焼ける匂いも……」

これはあきらかにおかしいと思い、私は再び公園に入り、気配を探ってみる。

「隠れれる場所って言ったら、あそこだけだよなぁ……」

私が見つめるのは、ドーム型の遊具。その中ならあまり見つからないが……

「ダメ元で行ってみるか……」

心の中で仲間に謝罪しながら、中を覗いでみる。

「誰かい、る…………」

私はそこで予想だにしない光景を見た。

そこには少年がいた。年齢は背丈から見て、おそらく10歳前後だろう。だが、問題は体の方だ。

まず、服がズタズタになっている。何か鋭利な刃物で何度も斬りつけられたのか。その証拠に見える素肌にはいくつもの裂傷が見られる。

靴は履いておらず、足元には血が滴っている。おそらく、裸足で走ったからだろう。

そして、問題は右腕だ。皮膚に焼けた跡があるし、何より腕が曲がってはいけない方向に少しだけ曲がっている。

折れてはいないかもしれないが、恐らく骨に罅が入っているのだろう。

どう見ても、公園に残って遊んでいた子供ではなかった。

「何だい、こりゃぁ……こんなの、普通の子供がしていい怪我じゃないだろう?」

生来、私はお人好しだ。それは周りにも言われてるし、自覚もしている。でも、これはお人好し云々以前に助けないと、人として終わってると思う。

「助けないと……」

私はそう呟き、その子供を背負って、アジトへと帰った。








「おかえりなさい、麻子さ…………どうしたんですか、その子供」

「おお、メリル。ただいま、ちょっとベッド一つ使うぞ」

「はい、構いませんが……ちょ、どうしたんですか、その子供!?傷だらけじゃないですか!?」

「そうだ。そこで悪いんだが、救急箱持ってきてくれ。右腕に至っては折れてるかもしれないから、何か固定できる物も頼む」

「わかりました」

メリルに処置に必要な物を頼み、私はベッドまで子供を背負って静かに横たわらせる。

「何だってこんなに夥しい傷がこんな子供に……」

「ボスッ!!」

「子供が傷だらけになっててそれを奪ってきたってホントっすか!?」

「ふんっ!!」

「「ぶげらっ!?」」

双覇は別に構わんが……。

「おい、東吾(とうご)、奪うってどういう事だ?お前、また悪い癖で変な想像をしたな?」

「な、なんでそんな事で殴られないといけないんっすか!?」

「というか、なんで俺まで殴られたんだ!?俺別に関係ないだろ!?」

「黙れ。お前ら、この子の傷に響いたらどうする」

((自分が一番声が大きいのに……))

「あん?」

「「なんでもないです」」

「よろしい」

五月蠅い二人を黙らせる。

「ボス、救急箱と急増ですが、木材で固定具を作りました」

「ああ、メリル。すまんな、ありがとう」

私はメリルにお礼を言って、まず子供のズタボロな服を脱がせ、傷口に薬を塗っていく。

「……………………」

―—————傷口に染みるから起きても不思議ではないんだが……それだけ血が抜けてるって事なのか?

私はそんな疑問を持ちながら、傷に薬を塗っていき、右腕を固定具で固定する。

「よし、これで問題ないだろ」

「…………………………」

処置を済ませふと隣を見てみると、東吾が子供の顔をじっと見つめていた。

「?どうした、東吾?」

「あ、いえ。なんでもないっす」

「???」

こいつは時々よくわからんからな。

月神(つきがみ)東吾。こいつを仲間にしたのは丁度二年前。私が少しヘマしてしまい、敵に囲まれた際、どこからともなく現れて、私の窮地を救った。

その時の第一声が

『いやぁっ!窮地に陥った女の子をカッコイイ僕様が助ける!ラノベでは王道っすからね!当然の事っすよ!!』

すぐにわかったな、こいつオタクだと。

まあ、その後なんやかんやで仲間になった。そしてわかった。こいつ、滅茶苦茶強いのだ。

下手すると、双覇並に強い。すなわち、肉弾戦、というか接近戦でこちうに勝てる奴は早々いないという事だ。

「ほら、処置は終わったんだから、さっさと出てった出てった」

私がそう言うと皆部屋を出ていく。私自身も料理の支度をしないといけないので、部屋を出る事にした。

その時、私が気づかなかった。

「まさか、そうなのか……?姉さん……」

東吾が、そんな事を呟いている事を私は気づけなかった。












それから数日が経ち、子供が目を覚ました。名前は上月東馬。あの付近に住んでいた子供だったらしい。

傷が癒えたら家に帰そうと言ったんだが

「いえ、行きたくないです……行った所であそこにはもう誰もいないですし……僕は、独りぼっちなんです」

それを聞いてわかった。この子の親は既に死んだという事が。

だったら、親戚に頼めばいいとも思ったのだがそれを言った瞬間

「嫌ですっ!!あんな自分達の私利私欲しか考えてない人達の所になんか行きたくないっ!!!」

頑ななまでに拒否した。そこでもう一つ仮説が生まれた。

この子の両親は、もしかしたら親戚一同に殺されたんではないかと。

「じゃあ、どうする?お前には帰るべき場所がないって事になるが?」

「…………………ここに、置いてください。なんでもします!あんな人達の所になんか行きたくないんです!!」

「…………わかった、いいだろう」

「ありがとうございます!」

むろん、これは皆に反対されると覚悟しての選択だった。

「本気ですか!?あの子はまだ子供!こんな大人の血生臭い世界に関わらせるべきではありません!!」

「ブランケットの言う通りだぜ!こんな所に子供を置くなんて!!」

「そうっすよ!!!あの子はまだ子供です!俺たちの事情に巻き込ませるべきじゃありません!!」

「じゃあ、どうするんだ?あの子には帰る家はない。親戚に頼ろうともしたくない。だったらその事情を知っている私たちが面倒みるしかないだろう?」

「それはそうっすけど……でも、断固僕は反対っす!!!!」

東吾はそう大きな声で叫ぶと、部屋を出て行った。

「め、珍しいですね。月神君があそこまで怒鳴るなんて……」

「何かあんのか?」

「さあな。だが、これは決定事項だ。覆る事はない」

そうして、私はあの子供、上月東馬を引き取る事にした。 
 

 
後書き
今回出てきた、月神東吾君。ええ、彼が結構前に全が言っていたオタクの暗殺者です。

名前からして、どんな方かみなさんわかりますかね?わかったら凄いと思う。そしてなぜ彼が全君達の前から消えたのか、わかると思う。まあ、その辺は後々語りますけどね。 
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