英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第20話
~ウルスラ間道~
「分析を開始します…………火属性が弱点です!」
戦闘を開始したティオはクラフト――――アナライザーで魔獣達の弱点を見抜いてロイド達に助言し
「わかった!エリィとティオは後方から火属性の魔法攻撃で援護を頼む!ランディは俺と一体ずつ相手するぞ!」
「わかったわ!」
「了解です!」
「アイサー!」
助言を聞いたロイドはエリィ達に指示をした後、ランディと共にそれぞれ魔獣に向かい
「とうっ、やっ、はっ!!」
「ふんっ!!」
それぞれ魔獣に武器で攻撃した!しかし大型の魔獣の皮膚は厚く、あまりダメージを受けている様子はなく
「「……………」」
「くっ!?」
「なっ!?」
反撃に腕を振るって、ロイド達を攻撃し、ロイド達に傷を与えると同時に吹っ飛ばした!
「エニグマ駆動!ヒートウェイブ!!」
そこにエリィが地表を高熱で覆い、敵を焼き尽くすアーツ―――ヒートウェイブを放った!
「「!?」」
弱点属性である火属性攻撃を受けた敵達は怯み
「デミガンナー起動………ボルカニックフレイム!!」
「「!?」」
続けてティオが魔導杖を変形させて放った炎の魔法弾を受け、さらにダメージを受けた!
「そこだっ!!」
「エニグマ駆動!ファイアボルト!!」
そしてランディは龍の如き姿を伴う、炎の衝撃波―――サラマンダーを、ロイドはアーツを放って追撃した!
「「………………」」
一方ダメージを受け続けた敵達だったが、体力が高いのか平気の様子で力を溜め始めた。
「させるか………よっ!!」
「させるかっ!!」
敵達の行動を見たランディとロイドは行動を妨害する為にランディはクラフト―――大切斬を、ロイドはトンファーに強力な電撃を流し、行動を妨害するクラフト―――スタンブレイクを放ったが
「「………………」」
攻撃を受けた敵達は平気の様子で力を溜め、一体は後方のエリィ達に、もう一体はその場で跳躍して地面に自分の身体を叩き付け、衝撃波を発生させた!
「くっ!?」
「あっ!?」
「うわっ!?」
敵達の攻撃によってロイド達はそれぞれダメージを受けたが、防護製が高い戦衣を着ているティオだけは無傷で済み
「エニグマ駆動………リカバーモード起動…………これで大丈夫です。」
「ありがとう。」
「サンクス。」
オーブメントを駆動させた後クラフト―――エナジーサークルでロイドとランディの傷を回復し
「えいっ!ティアラ!!」
「ありがとう、ティオちゃん。」
さらに駆動を終えたオーブメントで回復アーツを発動させ、エリィの傷も回復した。
「チッ!分断されちまった………か!」
一方ランディは舌打ちをした後、敵の攻撃を回避し
「2人とも、すぐにそちらに向かうから耐えていてくれ!………くっ!?」
ロイドはエリィ達に言った後、敵の攻撃をトンファーで受け止めて吹っ飛ばされ、受け身を取った。
「私達は大丈夫よ、ロイド!近距離戦もできるから!………ハッ!」
そしてエリィは銃をホルダーに収めた後、敵の攻撃を回避し、鞘から細剣を抜いて構えた後ロイド達に言った。
「…………………」
エリィに攻撃を回避された敵はティオに狙いを定め、腕を振りかぶった!
「ティオちゃん!」
それを見たエリィは警告したその時、敵はティオに重い一撃を放った!
「無駄です。」
「!?」
しかしティオは魔導杖を持った手で魔力による簡易結界を展開して防御し、攻撃を防がれた敵は驚いた。
「行きます。連続魔水弾!!」
「!?」
そしてティオは簡易結界で防御している間、片手で形成した魔力弾を敵の顔にぶつけて、怯ませた!
「エリィさん、今の内です!」
「わかったわ!」
ティオの呼びかけに頷いたエリィは細剣に魔力を溜め
「ラインバル!!」
魔法剣技―――ラインバルを放った!雷魔力が込められた一撃によって敵の厚い毛皮が焼き尽くされ、皮膚がむき出しになった。
「行きます…………はぁああっ!!」
そこにティオがクラフト―――ビームザンバーを放ってむき出しになった皮膚に攻撃して大ダメージを与え
「星よりも清かに…………エクストリームスターズ!!」
「――――!?……………」
エリィは細剣でむき出しになった皮膚を集中攻撃し、最後の一撃によって敵の皮膚を貫いた!無数の流星の如く 武器を上中下と高速で連続で突き分けて 攻撃をするエリィのSクラフト――――エクストリームスターズによって身体を貫かれた敵は叫び声を上げた後消滅した!
「このっ!!」
一方ランディと共に敵に対峙したロイドは武器をトンファーから2丁の銃に変えて、敵の背中を何度も撃って敵の注意を惹きつけ
「こいつを………喰らいなっ!!」
「!?」
その隙に魔力をスタンハルバードに溜めたランディはクラフト――――ヒートスマッシュを放って、敵の弱点をついてダメージを与えると共に怯ませた。それを見たロイドは武器を銃からトンファーに持ち替え、敵に向かった。
「……………」
自分に向かって来たロイドを見た敵は腕を振るって攻撃したが
「ハッ!」
ロイドは側面に跳躍して回避をし
「行くぞ………せいっ、はっ、たぁっ!!」
トンファーに光の魔力を溜めた後連続攻撃を行うクラフト―――ホーリーラッシュを放って、ダメージを与えた!
「こいつはどうだい?はぁあああ………」
一方ランディはスタンハルバードに闘気による炎を籠め
「クリムゾンゲイル!!」
渾身の薙ぎ払いを放って、敵の身体を真っ二つに切断して消滅させた!
「ふう………かなり手強かったな。」
「そうね………ずいぶん大きかったけれどどこから現れたのかしら。」
「………どうやら森林地帯に棲息する種のようですが………何かのきっかけで街道に出てしまったのでしょう。」
「ふぅん………?珍しこともあるもんだな。」
戦闘が終了し、安堵の溜息をロイド達が吐いているとバスのドアが開いて運転手が出て来た。
「あんたら、よくやってくれた!いや~、助かったよ!一時はどうなることかと………」
「いえ、無事でよかったです。今の魔獣のせいで足止めをくらってたんですね?」
「ああ、そうだけど………その前に、導力エンジンが故障を起こしちまったんだ。仕方ないから一旦停車して調べてみようとしたんだが……」
「それに今の魔獣が現れて立ち往生する羽目になったのか。」
「通信器の調子が悪かったのもエンジントラブルが原因ですか?」
「ああ、バスに搭載してる通信器はエンジンから導力を取ってるからな。おっと、こうしちゃいられない。何とか直せないか確かめないと………」
ロイド達の話に答えた運転手はバスのエンジンの部分を開けて、調べ始めた。
「………この様子だと復旧にはまだかかりそうね。」
その様子を見守っていたエリィはロイドに視線を向け
「うーん、いったん街に戻って交通課の人に報告した方がいいか。」
エリィに視線を向けられたロイドは提案した。
「はあ………これも運命ですか。」
提案を聞いたティオは溜息を吐き
「ま、面倒だけど、そうするしかねぇかもな―――」
ランディも頷きかけたその時
「………おい!」
何かに気付いたランディが警告して視線を向け、ランディの視線をロイド達が見つめるとそこには先程倒した同じ魔獣が6体ロイド達を囲むように分散していた!
「ひ、ひいいいっ!?」
「なっ………!?」
「そんな………」
「まだいたの………!?」
新手の魔獣達を見た運転手は悲鳴を上げ、ロイド、ティオ、エリィは驚き
「さすがにマズイな………おい、ロイド!こうなりゃ、エルンスト達を呼んで総力戦で一気に決めるぞ!」
「………わかった!」
「!来ます!」
ランディは目を細めて呟いた後、提案し、ルファディエル達を召喚しようとしたが魔獣達が一斉に近付き、それに気づいたティオが警告したその時!
「うりゃあああああああああっ!!」
娘の叫び声がした後、栗色の娘がロイド達の前に飛び込み、棒で威嚇攻撃を行って魔獣達を怯ませ、そして栗色の娘に続くように双剣を構えた黒髪の青年、長剣を構えた蜂蜜色の髪の女性、槍を構えた金髪の女性が現れた!
「え………」
「な………」
それを見たロイドとランディは驚いた!
「ヨシュア!ミント!一気に決めるわよ!フェミリンス!貴女は向こうの魔獣達をお願い!」
そして栗色の娘は青年達に号令をかけ
「―――ああ!」
「―――うん!」
「―――わかりましたわ!」
青年達はそれぞれ頷き
「そこだっ!!」
黒髪の青年は一瞬で魔獣の数体を攻撃した後下がり
「はぁぁぁぁぁ………!!」
栗色の娘は棒ですざましい連打を浴びせた後下がり
「えーいっ!!」
蜂蜜色の髪の女性は魔獣達の目の前で長剣を地面に叩きつけ、すざましい衝撃波を発生させて、魔獣達を舞い上がらせた後栗色の娘と共に跳躍し、栗色の娘は鳳凰の姿に、蜂蜜色の髪の女性は竜の姿になり、そして黒髪の青年は写し身を数体作った後、3人はそれぞれ同時に突撃した!
「「「究極奥義!太極烈波――――ッ!!」」」
3人が魔獣達に突撃すると魔獣達の全身はズタズタに切り裂かれ、さらに魔獣達の中心地で超越した大爆発が起こり、魔獣達を塵も残さず消滅させた!
「我が奥義!受けて見なさい!」
一方金髪の女性は槍で残りの魔獣達に目にも止まらぬ早さで舞うかのような動作で乱舞攻撃を行い、そして一端下がって槍を横に構えてすざましい魔力や神力、闘気を溜めこみ
「神技!姫神乱舞!!」
強烈な薙ぎ払いを放った!金髪の女性が放った最後の一撃を受けた残りの魔獣達は身体を真っ二つにされ、さらに魔獣達の中心で起こった光の超越した大爆発に巻き込まれ、塵も残さず消滅した!
こうして突如現れた栗色の髪の娘達の活躍によって魔獣達は一瞬で全滅した!
「………あ………」
「す、凄い………」
(………!あの人間は………!)
(へ~、やるじゃないか!)
栗色の娘達が魔獣を倒し終えるところを見ていたロイドとエリィは呆け、メヒーシャは驚きの表情で栗色の髪の娘を見つめ、エルンストは栗色の髪の娘達の実力に感心し
「………え………あの人達は…………」
(うむ。まさかこんな形で再会する事になるとはな………)
ティオは驚きの表情で栗色の髪の娘達を見つめ、ラグタスは静かな表情でティオと共に見つめていた。
「………ふう。何とか間に合ったかな。エステル、ミント、フェミリンス。大丈夫かい?」
そして戦闘を終えた青年は娘達と共に武器を仕舞って娘達に視線を向け
「ミントは勿論、大丈夫だよ!」
「無用な心配ですわ。」
視線を向けられた蜂蜜色の髪の女性と金髪の女性はそれぞれ頷き
「うん、あたしは別に。何とかみんなの切りこみのタイミングを作れてよかったわ。それはそうと………」
栗色の髪の娘は頷いた後、ロイド達に視線を向けた。
「えっと、もしかしてクロスベル警察の人かしら?南口のところで、交通課の人から話を聞いたんだけど。」
「あ、ああ………その、君達は………」
「あ、いきなり現れて混乱させちゃったみたいね。」
困惑しているロイドに栗色の髪の娘は苦笑した後、気を取り直して自己紹介を始めた。
「初めまして!あたしはエステル。エステル・ブライトよ。」
「ミントでーす!よろしくね!」
「僕はヨシュアと言います。遊撃士協会・クロスベル支部に正式配属になったばかりです。」
「………私の名はフェミリンス。遊撃士ではないけれど、エステル達の仕事を手伝っていますわ。」
「(やっぱり遊撃士か………)自分達はクロスベル警察、特務支援課に所属する者です。危ないところをありがとう。本当に助かったよ。」
栗色の娘達―――エステル達の自己紹介を聞いたロイドは心の中で溜息を吐いた後、一歩前に出て名乗り出た。
「あはは、いいって。あなたたちも結構やりそうだし、余計なお世話かなってちょっと思ったんだけど………」
「いや………正直、危なかったよ。―――俺はロイド。ロイド・バニングスだ。」
「うっす。ランディ・オルランドだ。」
「エリィ・マクダエルです。………お久しぶりですね、エステルさん。」
「………お久しぶりです、エステルさん、ヨシュアさん、ミントさん、フェミリンスさん。まさかこんな形で再会する事になるとは思いませんでした。」
ロイドとランディはそれぞれ名乗り、エリィは名乗った後エステルに微笑み、ティオは静かな笑みを浮かべて軽く頭を下げた。
「ロイドさんにランディさん………って!エリィさんにティオちゃんじゃない!2人とも久しぶり~!まさか2人が揃って同じ仕事をしているなんて、ビックリだわ!」
「久しぶりだね、ティオ。」
「えへへ………また、会えたね!」
「フフ…………………」
ロイド達の名前を聞いたエステルは驚きの表情でエリィとティオを見つめた後笑顔になり、ヨシュアとミントはティオに微笑み、フェミリンスはエステル達の様子を微笑みながら見つめていた。
「え………」
「お嬢とティオすけの知り合いなのか?」
エステル達の様子を見たロイドは呆け、ランディは驚いた様子でエリィとティオに尋ね
「え、ええ………まさかティオちゃんもエステルさんと知り合い同士だなんて………」
尋ねられたエリィは戸惑った様子で答えた後、驚きの表情でティオに視線を向け
「………私も驚きました。」
視線を向けられたティオも驚きの表情でエリィに視線を向け
「あはは、凄い偶然があるものね!」
その様子を見ていたエステルは笑顔で言った。
「………というか、フェミリンスさんの自己紹介を聞いた時、かなり疑問に思ったのですが、何でフェミリンスさんがエステルさん達の仕事を手伝っているんですか。エステルさん、その方が何者か一番よく知っているでしょう?」
そしてティオはフェミリンスに視線を向けた後、ジト目でエステルを見つめて尋ねた。
「ん?どうせずっと一緒にいるのだからあたし達と同じ立場でみんなを見直してもらおうと思って、あたし達の仕事を手伝ってもらっているのよ。第一、フェミリンスは凄い実力を持っているんだから、眠らせておくのはもったいないじゃない!」
「そういう問題じゃないと思うのですが。…………というか貴女もよくエステルさんの頼みに応じましたね。貴女の事を知っている身としては正直、信じられない思いなのですが。」
エステルの話を聞いたティオは呆れた後、ジト目でフェミリンスを見つめ
「………この娘の説得と強引さに負けてしまったのですよ…………それに……エステルとミントがどうしてもと頼みますから、彼女達に救ってもらった身としては断りきれないですし………」
フェミリンスは溜息を吐いた後、苦笑した。
「なんというか………わたしやエステルさん達と出会った時と比べて、随分性格が変わりましたね…………」
「フフ…………エステルとずっと付き合っている影響ですかね?自分でも以前と比べ、性格が変わった事は感じていますよ。………今、こうしてエステル達と共にいる事…………何故かその事にとても穏やかに感じています。」
ティオの言葉を聞いたフェミリンスは苦笑した後、穏やかな目をした。
「ハ、ハア…………(凄いですね、エステルさん………まさか”神”の性格を変えるなんて………)」
フェミリンスの話を聞いたティオは戸惑いながらフェミリンスを見つめていた。
「そういえば………導力バスの方はどうですか?どうやらエンジントラブルを起こしているようですけど………」
一方ヨシュアは運転手に状況を尋ね
「あ、ああ………結晶回路の接続不良が原因なのは確かみたいだが………困ったな、こんな事ならもう少しちゃんと整備研修を受けとくんだったぜ。」
「その、よかったら少し見せてもらえますか?ひょっとしたら何とか修理できるかもしれません。」
「ほ、本当か!?」
ヨシュアの話を聞いた運転手は明るい表情をした。
「そういえばヨシュア、飛行船の操縦とか出来るもんね。簡単な整備ならお手のものか。」
「いや~、さすが遊撃士!いざっていう時は頼りになるなぁ!」
「いえ、たまたまですから。」
運転手に賞賛されたヨシュアは静かな表情で答え、その様子はロイド達は黙って見つめた後
(なあティオすけ………お前、エンジン修理とかは?)
ランディは小声でティオに尋ね
(いえ………門外漢です。導力ネットの関連機器ならそこそこわかりますけど…………(こんな事ならティータさんに少しでも教わっておけばよかったです………))
尋ねられたティオは心の中で後悔しながら疲れた表情で答えた。
「そういえば………あなた達はどうしてここに?」
「あたしたちみたいに手配魔獣を捜しに来たとか?」
「い、いや……そういう訳じゃないけど。」
「警察の任務で、この先にある病院に向かう所だったんです。そこで丁度、この騒ぎに出くわしてしまって。」
「この先の病院………”聖ウルスラ医科大学”でしたか。」
「へ~、そんな場所があるんだ。あ、それじゃあこの場はあたし達が引き受けるわよ。用事があるんだったら先に行った方がいいんじゃない?」
「バスの運転手さん達はミント達が護衛するから、安心して大丈夫だよ。」
「そ、それは………」
エステルとミントの話を聞いたエリィは戸惑い
「………折角だからお願いしよう。えっと………エステルさんにヨシュア君、ミントさんにフェミリンスさんだったかな?」
ロイドは考え込んだ後頷き、そして確認した。
「あ、呼び捨てでいいわよ。見た所同じ年くらいだし。」
「そうだね………できればお近づきの印に。」
「ミントもいいよ~。」
「今更呼び方に拘りませんわ。貴方達の好きにしなさい。」
「あ、ああ………―――それじゃあ、エステル、ヨシュア、ミント、フェミリンスさん。導力バスのこと、よろしくお願いするよ。」
「うん!」
「ええ。」
「ミント達に任せて!」
「君達の方も気を付けて。」
そしてヨシュアはバスのエンジンの修理を始め、ロイド達はエステル達から去って行き、徒歩で『聖ウルスラ医科大学』に向かい、ある程度エステル達から離れると立ち止まった。
「ふう………遊撃士協会の新顔、エステルとヨシュア、ミント、そして3人のサポーターのフェミリンスさんか………」
立ち止まったロイドは溜息を吐いた後、考え込み
「まさかエステルさんがクロスベルに来るなんて………エステルさんもそうだったけど、他の3人の身のこなしも凄かったわね。きっとエステルさん達は相当高位の遊撃士じゃないかしら?」
「ああ、間違いねぇだろ。あの身のこなしと技のキレ………かなりの修羅場をくぐってるぜ。」
「エステルさん達が今後の商売敵だと思うと気が重いですね………」
「そうだな………―――落ち込んでも仕方ない。俺達は俺達で頑張ればいいさ。それに商売敵というよりいいライバルって考えておこう。その方がやる気がでてこないか?」
エリィ達の話を聞いていたロイドは考え込んだ後、気を取り直して提案した。
「………ライバルというには実力差がありすぎる気が………」
ロイドの提案を聞いたティオはエリィ達と共に脱力した後ジト目でロイドを見つめ
「ま、それでもあのアリオスってオッサンよりはまだ追いつけそうではあるかもな。」
「うーん、それは確かに………」
ランディとエリィは納得した様子で頷いた。
「まあ、気の持ちようってことさ。」
「………まあ、モチベーションを上げる為として良いとは思いますが………エステルさんとミントさんはあの”ブレイサーロード”と”黄金の百合”ですよ?ぶっちゃけ彼女達をライバル視するのは無謀としか言いようがないのですが。」
「へっ!?」
「そ、そういえばそうだったわね………」
そしてティオの説明を聞いたロイドは驚き、エリィは疲れた表情で頷き
「なんだぁ?その2つ名は。あの嬢ちゃん達、そんなに凄い遊撃士なのか?」
3人の様子を見たランディは不思議そうな表情で尋ねた。そしてロイド達はエステルとミント―――”ブレイサーロード”と”黄金の百合”について説明した。
「遊撃士でありながら貴族の上、メンフィル兵を私兵として持っているって………おいおい………あの嬢ちゃん達、そんなとんでもない存在だったのかよ!?しかもエステルちゃんは6種類の異種族と契約してるって…………いくらなんでも反則じゃねえか、それは!?」
「(正しくは7種類ですけどね………)…………………」
説明を聞いたランディは驚き、ランディの言葉を聞いたティオは静かな表情で黙り込み
「俺もどこかで聞いた名前とは思っていたけど………まさか彼女達がそうだったなんて………」
ロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。
「そういえば………2人とも、エステル達と知り合いのようだけど………」
そしてある事を思いだしたロイドはエリィとティオに尋ね
「え、ええ。姉の結婚式で知り合ったの。どうやら姉とエステルさんが知り合いだったようで………その関係でエステルさんを結婚式に呼んだみたい。ちなみにその時に、メヒーシャに食事の楽しさを教えてくれたのよ。」
尋ねられたエリィは一瞬焦った後、答えた。
「へ~………ティオはどんな縁で会ったんだい?」
一方エリィの答えを興味深そうな様子で聞いたロイドはティオに尋ねた。
「…………わたしは”特殊な事情”でエステルさん達と行動を共にすることがありましたので、その時にです。」
(ま、また………)
(………ペテレーネ様やエステルさん達と知り合いだったり、”魔神”と契約したり、凄い防具を創ってもらったり、体力がついたりって………本当に一体どんな”事情”でそうなったのかしら…………)
(マジで気になるぜ………)
そしてティオの説明を聞いたロイドとエリィは苦笑し、ランディは真剣な表情でティオを見つめた。
「それで話の続きになるのですが、2人の事を知ってなお、本当にエステルさん達をライバル視しておくんですか?」
「ああ。さっきも言ったけど気の持ちようさ。」
「そうそう!なんてったって俺達にはルファディエル姐さんが付いてるしな!」
「フフ、そうね。」
ジト目のティオの疑問を聞いたロイドは頷いた後口元に笑みを浮かべ、ランディは笑顔で言い、エリィは微笑んでいた。
(フフ………丁度いい目標が現れてくれてよかったわ。)
ロイド達の会話を聞いていたルファディエルは微笑み
(エステルさんが契約している人達の中にはルファディエルさんの位階の上の天使であるニルさんや”神”のフェミリンスさんがいることは教えない方がよさそうですね………)
ティオは静かな表情で黙り込んでいた。
その後街道を徒歩で進んでいたロイド達は『聖ウルスラ医科大学』―――通称、ウルスラ病院に到着し、ある人物を呼び出して貰う為に受付に向かった………………
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